犬宮賢の行動理念

桜桃-サクランボ-

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犬宮賢と怪異

「最後はいいようにやってやったけどね」

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「犬宮さん、黒田さん、おはようございます」

 心優は一週間の休暇を頂き、出社。
 中を見回すと、いつもと変わらない光景があり、何故か安心した。

 最古はソファーであやとりをして一人で笑い、黒田は心優が来たことをいち早く気づいてくれて手を振り挨拶。そんな彼の膝には、ファイリングされている資料。

 奥のテーブルでは、頭に雑誌を乗せて寝ている犬宮の姿。

「色々と相変わらずで良かった。最古君、膝や腕の怪我は大丈夫?」

 近くまで移動し怪我を確認してみると、今はもうかさぶたになっていて、順調に治っていた。

 ――――良かった、もう痛みはなさそう。
 最古君、いつも笑っているから痛みがあってもわからないんだよなぁ。

 苦笑い浮かべながら、奥で寝ている犬宮を見る。
 一応、寝ていることはわかるが犬宮の事だ。
 心優を無視しているだけかもしれないと思い、近づき耳を傾ける。

「……………………はぁ、いいですけど」

 聞こえてきたのは寝息、完全に寝ている。
 ため息を吐きつつも、そのままにしてあげ黒田の隣に座った。

 ――――前の怪異事件について、少し聞きたかったんだけどなぁ。
 でも、犬宮さんも疲れているのかもしれないし、起こすのは忍びないから仕方がない。

 心優が不服そうに唇を尖らせていると、黒田に肩をつんつんと突かれる。
 顔を上げると、膝の上に乗せていたファイルを手に持ち見せてきた。

「これが、今回の事件の真相だ。賢と書いたから間違いもないだろうよ」

「え、み、見てもいいですか!?」

「どーぞ」

 黒田から何枚もの資料がまとめられているファイルを受けとり、心優は膝に置き開いた。

 ――――えっと。
 出だしとかは前に整理した時と同じ、雫さんが私達探偵社に来たところから始まっている。

 この時はまだ、アリバイを作る為だけで探偵社に来ていた。
 この資料にも、そう書かれている。

 あ、でも、付け加えられているな。
 私が犬宮さんに伝えた、路地裏での出来事が。

 桜花雫は探偵社に来たことで、もう一つの欲が芽生えてしまった。
 しかも、最初から怪異である飛縁魔が絡んでいたから、浮足立ってしまったと書かれている。

 確かに、怪異が自分の味方だとものすごく心強いよなぁ。

 本当に、心強い。

 ちらっと隣にいる黒田を横目で見ると、涙を零し欠伸をしていた。

 …………んー。心強いとは、普段の黒田さん達からすればまったく思えないけどね。
 犬宮さんも、普段は寝ているだけだし。

 心優からの視線に気づき、黒田は「なに?」と聞いたが、すぐに目を逸らし「なんでもないと」と、心優はまた資料に目を戻した。

 追加で書かれているのは、雫の真意。
 これは、私も知らないことが書かれてる。

 雫さんは昔から負けん気が強く、誰にも負けたくはないと思っていた。
 だから、自分が生まれた桜花家より上の存在、真矢家が憎くて憎くて仕方がなかった。

 でも、自身の親である桜花家の頭は、そこまで闘争心はなく、今の地位で満足していた。
 それが許せなくて、雫は親を焚きつけ抗争へと無理やり発展させる。

 自分の家族当然の人達がその時の抗争で死んでいく中、雫はその時「負けるな」としか思っていなかったみたい。

 それでも負けてしまって、雫は絶望。
 もう、真矢家には勝てないのかと諦め、自身の感情を押し込め生活していた。

 真矢家に勝てない家族なんていらない、そう言って家を出て普通の人と同じ生活を送っていると、新井岳弥に出会う。

 付き合い、結婚まで言ったが、亭主関白ぶりが結婚してから発揮され、もう嫌になってしまった。

 悩んでいると、そんな彼女の弱みに付け込んで飛縁魔が声をかけた――と。

「あの、黒田さん。聞いてもいいですか?」

「なんだ?」

「なんでこんな、事細かに雫さんの事が書かれているのですか?」

 これが憶測とは思えないし、雫さんの心情などもしっかりと書かれている。
 何処でこの情報を手に入れたんだろう。

「あぁ、これか。本人に聞いたんだよ、賢が」

「え、犬宮さんが? 面会に行ったって事ですか?」

「そうそう」

 雫は犬宮の通報により、今は捕まっている。
 そう簡単に話してくれる内容でもない。どのようにして聞いたのだろうと心優は首を捻った。

「ふふふっ……賢らしい、素晴らしい聞き方だったぞ」

「ど、どういうことですか?」

「面会に行って賢がちょーっと、本当にちょっーーーと、きつくお話したらぽろってくれたぞ」

「…………ソウナンデスネーソレナラヨカッター」

 これは絶対に、詳しく聞いてはいけないような気がした。

 また気を取り直して資料の続きを見る。

 雫の次に書かれているのは、怪異である飛縁魔の動き。

 飛縁魔の今回動き出した動機は、単純なモノ。

 ”自分以外に最恐はいらない”

 …………本当にくだらないなぁ。
 でも、これは雫さんと同じ思考。類は友を呼ぶって事かな。

 飛縁魔は黒田さんと犬宮さんを消そうとしたんだなぁ。
 結局、黒田さんの内に秘める首無しという怪異と、犬宮さんの事前準備によって消されたのは飛縁魔だったけど。

「――――あ」

 下の方に書かれてる、岳弥さんの殺害方法。

「壁の二つの穴って、ワイヤーを備え付けるための物だったんですね」

「みたいだな。人間が人間の首を切るなんて、何か小細工がないと不可能だろうし、納得」

「それもそうですね」

 えっと、最古君が見つけた壁の上に会った何かの印。あれは、岳弥さんの視線を誘導する物だったみたい。

 電話で上を向かせ、無防備に晒された首めがけて、壁に仕掛けていたワイヤーを動かし、首を切った。

 あそこは薄暗かったし、ワイヤーも黒く染められていたらそりゃ、気づかないよね。

 しっかりとした仕掛けを考え、仕掛けてから私達の所に……か。

「なんだか、いいようにやられたって感じだなぁ」

「最後はいいように殺ってやったけどね」

 ファイルを閉じため息を吐くと、窓側から声が聞こえ黒田と共に振り向いた。
 そこには変わらず、顔に本を乗せ眠っている犬宮の姿。

 二人の視線を受けるとのそっと動き出し、本を顔から取った。
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