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犬宮賢と陰陽師
「御子柴様のために――……」
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神社に戻る途中、心優の気を紛らわせるように二人は、恋話や普段の業務に対する不満などを話していた。
一度口から出た不満などは止まらず、お互いにストレスを吐き出している。
「まったく、なんで私達がこんなお買い物だのなんだのしないといけないんだろう!! せめて、お買い物も分担してほしいよ!」
「それはそうなんだよねえ。しかも、こんな夜にお願いされる。普通ならもっと早い時間にお願いされるよね……」
うーんと心優が首を傾げていると、巴が「そうだよねぇ~」と曖昧に答える。
すぐに話は違う話題へと切り替わり、今度は恋の話に。
そんな話をしているとすぐに神社に戻ってくることができ、二人はいつものように買ったものを定位置に入れ込む。
今は袋から巴が食料を取り出し、冷蔵庫に心優が入れている。
そんな時、心優のポケットから白い紐が出ていることに気づき、巴は問いかけた。
「心優ちゃん、ポケットに何か入れてるの?」
「ん? あ、うん。お守りを入れてるよ」
「え、お守り? なんで?」
「もらった物なの。なくさないようにいつも肌身離さず持っているんだよね」
心優がポケットからお守りを取り出し見せようとしたが、黒い部分が広がっており目を見張る。
「え、黒い……」
「何か零したの? 心優ちゃん」
「ううん、何も…………」
お買い物から出る前より黒い部分が広がっている。
まじまじ見ていると、今も黒い部分がほんの少しずつだが広がっているのが見えた。
「なんか、汚れ、広がってない?」
「うん、なんでだろう…………」
ジィっと二人で見ていると、巴が目を細め「これか」と、呟いた。
「ん? これ? 何が?」
心優が問いかけると、巴は笑みを浮かべ「なんでもない」と返す。
不思議に思いながらも袋から出した食料を渡され、心優は慌ててお守りをポケットに入れ受け取る。
これ以上は何も質問する事が出来ず、疑問に思いながらも冷蔵庫に食材を入れ終わった。
「ふぅ、それじゃ部屋に戻ろうか」
「う、うん…………」
巴は何事も無かったかのように笑顔を浮かべ、部屋へ戻ろうと心優を促す。
なぜか、今の巴には先程の言葉について再度聞くことが出来ず、心優は渋々自室へと向かった。
廊下を歩く心優の後ろ姿を見て、巴は笑みを消し視線を落とす。
降っていた手を下ろし、無の表情を浮かべた。
「――――あれが、邪魔をしていたんだ」
『そうみたいです、巴様。私が近づけなかったのは、あのお守りに阻まれての事かと。いかがいたしますか』
巴の背後に突如、一人の女性が姿を現した。
白い着物を身に纏い、水色の長い髪を翻す。
白い肌に浮かぶは藍色の瞳と、笑みを浮かべる赤い唇。
「あのお守りは、私が何とか奪い取るわ。貴方は変わらずあの子を凍らせて。氷柱女房」
『主様の意のままに』
会話が終わると、氷柱女房は姿をすぅと、闇の中に溶け込むように消した。
残された巴は紅色の瞳を光らせ、心優の向かって行った方とは反対側に歩き出す。
「御子柴様のために――……」
※
次の日、心優と巴はいつものように朝ご飯の準備をした後、洗濯籠を持ち空を見上げ、天候を確認していた。
今日の天候は曇り。
風は冷たく、雨がいつ降り出すか分からない。
そんな不安定な空を見上げ、二人は外で干そうか悩んでいた。
「心優ちゃん、今日は外で干すのやめた方がいいかな」
「そうだね……。午後から雨が降ると予報でも言っていたし、今日は仕方がないから部屋干ししようか」
巴と心優は廊下を歩き、洗濯籠を運ぶ。
神社の中には大広場があり、そこは宴会などと言った集まりで使われることが多い。
だが、普段は使われないため許可を取り、雨の日は洗濯物を干すために使わせて貰っていた。
二人は何回か脱衣所と大広場を行き来し、洗濯籠を運び出す。
「ふぅ、いつもだけど、運ぶだけでも一苦労よね」
「そうだよねぇ~。私が心優ちゃんみたいに、一気に二つとか運べたらいいんだろうけど…………」
巴はどう頑張っても洗濯籠一つしか持つことが出来ず、心優は肩に一つともう片方に二つ目を持って運んでいた。
どれも山盛りに洗濯物が入っている為重たいはずなのだが、心優は余裕そうに運び出しており、巴はいつも尊敬の眼差しを向けていた。
「私は子供の時から鍛えていたからだよ。普通は持てないと思う」
「やっぱり、心優ちゃんはかっこいいね!!」
「ありがとう」
――――かっこいいって、誉め言葉でいいんだよね?
私、女子力ないとか、遠回しで言われている訳じゃないよね?
うーんと心優が眉を顰めていると、巴はニコニコと笑いながらポケットに目を向ける。
目を細め、ゆっくりと手を伸ばす。
心優は考え込んでしまっている為、気づいていない。
巴がポケットに触れる一歩手前――……
「真矢さん、ちょっといいかしら」
――――バッ!!
「あ、はーい!! ――? どうしたの? 巴ちゃん」
「い、いや、何でもないよ!」
心優が呼ばれたことで、巴はすぐに手を引っ込める。
なにかに動揺している彼女を不思議に思った心優は問いかけるが、答えてはくれなかった。
これ以上聞くことはせず、心優は「わかった」と、その場から離れる。
――――なんか、何かを隠しているような感じだったなぁ。どうしたんだろう、巴ちゃん。
一度口から出た不満などは止まらず、お互いにストレスを吐き出している。
「まったく、なんで私達がこんなお買い物だのなんだのしないといけないんだろう!! せめて、お買い物も分担してほしいよ!」
「それはそうなんだよねえ。しかも、こんな夜にお願いされる。普通ならもっと早い時間にお願いされるよね……」
うーんと心優が首を傾げていると、巴が「そうだよねぇ~」と曖昧に答える。
すぐに話は違う話題へと切り替わり、今度は恋の話に。
そんな話をしているとすぐに神社に戻ってくることができ、二人はいつものように買ったものを定位置に入れ込む。
今は袋から巴が食料を取り出し、冷蔵庫に心優が入れている。
そんな時、心優のポケットから白い紐が出ていることに気づき、巴は問いかけた。
「心優ちゃん、ポケットに何か入れてるの?」
「ん? あ、うん。お守りを入れてるよ」
「え、お守り? なんで?」
「もらった物なの。なくさないようにいつも肌身離さず持っているんだよね」
心優がポケットからお守りを取り出し見せようとしたが、黒い部分が広がっており目を見張る。
「え、黒い……」
「何か零したの? 心優ちゃん」
「ううん、何も…………」
お買い物から出る前より黒い部分が広がっている。
まじまじ見ていると、今も黒い部分がほんの少しずつだが広がっているのが見えた。
「なんか、汚れ、広がってない?」
「うん、なんでだろう…………」
ジィっと二人で見ていると、巴が目を細め「これか」と、呟いた。
「ん? これ? 何が?」
心優が問いかけると、巴は笑みを浮かべ「なんでもない」と返す。
不思議に思いながらも袋から出した食料を渡され、心優は慌ててお守りをポケットに入れ受け取る。
これ以上は何も質問する事が出来ず、疑問に思いながらも冷蔵庫に食材を入れ終わった。
「ふぅ、それじゃ部屋に戻ろうか」
「う、うん…………」
巴は何事も無かったかのように笑顔を浮かべ、部屋へ戻ろうと心優を促す。
なぜか、今の巴には先程の言葉について再度聞くことが出来ず、心優は渋々自室へと向かった。
廊下を歩く心優の後ろ姿を見て、巴は笑みを消し視線を落とす。
降っていた手を下ろし、無の表情を浮かべた。
「――――あれが、邪魔をしていたんだ」
『そうみたいです、巴様。私が近づけなかったのは、あのお守りに阻まれての事かと。いかがいたしますか』
巴の背後に突如、一人の女性が姿を現した。
白い着物を身に纏い、水色の長い髪を翻す。
白い肌に浮かぶは藍色の瞳と、笑みを浮かべる赤い唇。
「あのお守りは、私が何とか奪い取るわ。貴方は変わらずあの子を凍らせて。氷柱女房」
『主様の意のままに』
会話が終わると、氷柱女房は姿をすぅと、闇の中に溶け込むように消した。
残された巴は紅色の瞳を光らせ、心優の向かって行った方とは反対側に歩き出す。
「御子柴様のために――……」
※
次の日、心優と巴はいつものように朝ご飯の準備をした後、洗濯籠を持ち空を見上げ、天候を確認していた。
今日の天候は曇り。
風は冷たく、雨がいつ降り出すか分からない。
そんな不安定な空を見上げ、二人は外で干そうか悩んでいた。
「心優ちゃん、今日は外で干すのやめた方がいいかな」
「そうだね……。午後から雨が降ると予報でも言っていたし、今日は仕方がないから部屋干ししようか」
巴と心優は廊下を歩き、洗濯籠を運ぶ。
神社の中には大広場があり、そこは宴会などと言った集まりで使われることが多い。
だが、普段は使われないため許可を取り、雨の日は洗濯物を干すために使わせて貰っていた。
二人は何回か脱衣所と大広場を行き来し、洗濯籠を運び出す。
「ふぅ、いつもだけど、運ぶだけでも一苦労よね」
「そうだよねぇ~。私が心優ちゃんみたいに、一気に二つとか運べたらいいんだろうけど…………」
巴はどう頑張っても洗濯籠一つしか持つことが出来ず、心優は肩に一つともう片方に二つ目を持って運んでいた。
どれも山盛りに洗濯物が入っている為重たいはずなのだが、心優は余裕そうに運び出しており、巴はいつも尊敬の眼差しを向けていた。
「私は子供の時から鍛えていたからだよ。普通は持てないと思う」
「やっぱり、心優ちゃんはかっこいいね!!」
「ありがとう」
――――かっこいいって、誉め言葉でいいんだよね?
私、女子力ないとか、遠回しで言われている訳じゃないよね?
うーんと心優が眉を顰めていると、巴はニコニコと笑いながらポケットに目を向ける。
目を細め、ゆっくりと手を伸ばす。
心優は考え込んでしまっている為、気づいていない。
巴がポケットに触れる一歩手前――……
「真矢さん、ちょっといいかしら」
――――バッ!!
「あ、はーい!! ――? どうしたの? 巴ちゃん」
「い、いや、何でもないよ!」
心優が呼ばれたことで、巴はすぐに手を引っ込める。
なにかに動揺している彼女を不思議に思った心優は問いかけるが、答えてはくれなかった。
これ以上聞くことはせず、心優は「わかった」と、その場から離れる。
――――なんか、何かを隠しているような感じだったなぁ。どうしたんだろう、巴ちゃん。
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