犬宮賢の行動理念

桜桃-サクランボ-

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犬宮探偵事務所と本領

「終わったね」

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 情報交換すると、心優の顔が真っ青になってしまった。

「……………………お父さん」

「大丈夫」

 心優がココアの入っているマグカップを持ち顔を青くしていると、犬宮が力強く「大丈夫」だと言い切った。

「大丈夫だよ、信三さんは強い。陰陽師になんて負けないよ。真矢家自体、普通に強いしね」

 珈琲を飲みながら言う犬宮に、心優は胸を抑える。

 ――――確かに、悔しいけどヤクザとしての力は本物。
 裏社会との繋がりもあるし、何より腕っぷしを強い。
 そう簡単に負けるとは思えない。

 でも、相手は陰陽師。
 人ではない何かを使われてしまえば、いくらお父さんが強くても対応出来ないんじゃ……。

 不安に思っていると、小さな手が伸び心優の手を握る。
 顔を上げると、最古の漆黒の瞳と目が合った。

 驚きすぎて何も言えないでいると、最古が口をゆっくりと動かした。

「だいじょうぶ。だいじょうぶ」

 ニコニコと笑いながら、心優を安心させるように同じ言葉を繰り返す。

「だいじょうぶ、だいじょうぶ」

 甘く、温かい声。
 手も小さいけど頼もしく、冷たくなってしまった心優の手がほんのりと温かくなっていく。

「――――うん、そうだよね。私のお父さんは強い、ありがとう、最古君」

 笑顔になった心優は最古の手を握り返す。
 ニコニコ笑顔を浮かべている最古も笑顔を返し、笑い合った。

 二人の温かい空気に、黒田と犬宮は目を合わせほくそ笑む。

「必ず、この因縁は断ち切らないとな」

「そうだね。頑張ろうか、黒田」

「おうよ」

 ※

 紅城神社には御子柴と巴、他にも複数の陰陽師や巫女が一つの大部屋に集まっていた。

 御子柴と老人が集団の前に隣り合わせで座り、沢山の人達の前で姿勢を正し正座で座り話していた。

「まだ、狗神と奇血きけつは捕まえられていないのか」

 老人がしわがれた声で陰陽師達に問いかける。

 その問いに答える声はなく、静か。
 そんな中で、御子柴が凛々しい声で答えた。

「うまく逃げ回っているみたいですが、もうそろそろ逃げ道は無くなっているはずですよ。陰陽頭おんみょうがしら様」

「ふむ、そうか。それはいつだ」

「慌てないでください。もう少しです」

 顔を下げ、御子柴は言い切る。
 隣に座る彼女を横目で見て、陰陽頭は鋭い瞳を覗かせた。

 殺気が含まれている、鋭利な刃物のような瞳。
 向けられている御子柴の額には、一粒の汗が浮かび上がる。

 それでも表情一つ変えず、御子柴は頭を下げ続けた。

「――――早く捉えよ。それで、狗神消滅させ、依代となっていた犬宮賢の体は研究院へ引き渡し、奇血きけつは我々が引き取る。邪魔しようとする者がおれば、躊躇することなく、殺せ――……」

 ※

「んじゃ、俺達にはもう戻れる所がないのか」

「今のように逃げ回っていても、必ず俺達の場所は見つけ出される。呪異が協力してくれるのなら、大きな騒ぎにしないようにする下準備と、決戦場所探しだね」

「そうだなぁ~。俺的には、怪異達が引き詰められているホラースポットとかがおすすめだが…………」

「それだと人間世界の被害は抑えられるけど、怪異世界がどうなるかわからないよね」

「そうなんだよなぁ~」

 黒田と犬宮の会話についていけない心優は、ココアを片手に聞き専を務める。

「陰陽師かぁ~。うーん」

 腕を組み考え込んでしまった二人。

 心優も何かいい案がないか考えるが、今まで考える事は全て犬宮に任せていたため、何も思いつかない。

「……もう、また潜入して内側から神隠しみたいなことが出来ればいいのに……。そうすれば、吊り橋効果で薔薇BLが出来上がるかもしれない」

 真剣に考えていたかと思うと、何故か徐々に目を輝かせ始め、BL脳になってしまった。

 そんな心優を横目に、二人はため息。
「また始まった」と、黒田は頭を抱えた。

 犬宮も最初は呆れていたが、先ほどの心優の言葉に何か引っかかるものがあり顎に手を当てた。

「潜入……。そう言えば、黒田。俺や翔を逃がした時、黒田は確か陰陽寮に潜入していたんだよね?」

「お? おん、そうだぞ。潜入していないとお前らを逃がす事出来ないだろう」

 ――――ん? 何かひらめいたのかな。
 犬宮さんの目、輝かせているような気がする。

「俺の時はまだ黒田は怪しまれていなかったんだよね? 陰陽寮に潜入している時」

「そうだな」

「でも、二回目は? 翔の時はどうしたの?」

「翔の時は最小限の関わりにしていたのと、首元や顔をうまく隠しばれないようにしたんだよ。あとは、気配を消し最低限の行動のみで終わらせた」

 腕を組み天井を見上げながら思い出す。

「それと、今回もそう。心優を助けた時、警備員になって侵入したんだよね?」

「侵入……。せめて潜入という言い方をしてくれ……」

「それはどうでもいい。それも、同じ? さすがに三回も同じことをすればばれるでしょ?」

 犬宮は口角を上げ目を細め指を差す。

 最初こそ犬宮が言いたいことがわからなかった黒田だったが、先ほどの心優の言葉も兼ね合わせるとすぐに分かった。

 八重歯を見せ、にんまりと笑る。

 二人の悪魔のような笑みを見て、いつもならBL脳になる心優ですら、今回ばかりは顔を青くしココアを啜った。

「……………………二人は絶対に敵に回してはいけないんだろうなぁ。終わったね、紅城神社」
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