犬宮賢の行動理念

桜桃-サクランボ-

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犬宮探偵事務所と本領

『貴方の両親の仇です』

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「はぁ、はぁ……」

 ――――今、巴ちゃん、神社の裏手に向かって行った。
 怪我、してたよね。腕、包帯が見えた。

 まさか、私と黒田さんを逃がしてしまったから、とかじゃないよね。
 私のせいで、巴ちゃんがこの神社での立場が危うくなってしまった……とか。

 でも、あの場では私も危なかったし、逃げなければこっちが殺されていた。
 あの時は、あのようにするしか無かった……。

 口元を歪め、微妙な心境のまま走っていると、巴の後ろ姿を見つけた。

「巴ちゃっ――――」

 声をかけようとしたが巴の傍には前回、黒田と同等にやりあっていた式神、氷柱女房しがまにょうぼうがおり途中で口を塞いだ。

 何かを話しており、心優は冷静になり木の影に隠れ身を顰める。

氷柱女房しがまにょうぼう、私は失敗した。まさか、あそこから抜け出すなんて思っていなかった」
も予想していなかったでしょう。どこに実を顰めていたのか』
氷柱女房しがまにょうぼうもわからなかったの?」
『はい。怪異が潜んでいるなど、気づきませんでした』
氷柱女房しがまにょうぼうでもわからない程気配を消すのが上手って事?」
『主にも気づかなかったのですから、相当です』
「そうなんだ」

 二人の会話を聞いて、心優はなぜか鼻を鳴らし「当然でしょう、犬宮さんのお相手さんなのだから」と胸を張る。

「今回出てきた怪異って、首無しっていう……」
『えぇ、そうみたいです。貴方の両親の仇です』
「……………………そうね。御子柴様が言っていたもの。私の両親は、首無しという怪異に殺された。首無しは、私の仇……」

 巴の額には青筋が立ち、拳は強く握られる。
 背後にいる心優にも殺気がビシビシと伝わり、体が震えた。

「……………………黒田さんは、絶対にしていない。絶対に、してっ――」

 心優が、黒田は絶対にしていないと自身にも向けて否定しようとした時、頭の中である会話を思い出してしまった。


 ――――刀?

 ――――これが呪異の仮の姿。俺がまだやんちゃしていた時の愛刀だ


 やんちゃしていた時、黒田はそう言っていた。

 そのことを思い出し、心優の額には嫌な汗が流れ出る。

 ――――この、"やんちゃ"って、いつの時だろう。
 まさか、本当にやんちゃしていた時、呪異を使って人間を殺しまくっていたとか?

 口が震えてしまい、声が出ないように手で抑える。
 すると、気配なく後ろから肩を掴まれてしまい勢いよく振り返った。

「っ!!!」

『しーーーー!!!』

 振り向くと、黒田が汗を滲ませゲンナリしたような表情を浮かべ立っていた。

「く、黒田さん」

「お前、俺からなるべく離れるな。ここまで来るの苦労したぞ」

 黒田はすぐに任された仕事を全て終わらせ、心優を追いかけてきていた。
 必死に走ったのか、ウィッグの前髪部分が額にくっつき、行きは少し荒い。

 汗を拭き取りながら心優が見ていた光景を覗き込む。

「――――あぁ、確か巴って女だったか、あいつ。油断すると俺の気配で場所がばれるな……」

 心優は、自身の肩を掴む手を思わず見てしまう。

 もしかしたら、この手でもう何人の人を殺しているのかもしれない。

 信じたい、けど黒田の発言と巴の証言により、心優は疑心暗鬼に陥っていた。

 彼女の動揺は黒田にも伝わり、目を丸くし顔を覗き込まれる。

「どうしたんだ?」

「っ、い、いえ…………」

 流石に今は聞けない。
 そう思い誤魔化そうとするも、黒田はさらに追及しようと顔を近づかせた。

 だが、巴と氷柱女房しがまにょうぼうが動き出してしまい、今以上聞くことが出来なくなった。

「ちっ」

 巴と氷柱女房しがまにょうぼうは、地下へ進むため階段を降り始めた。

「追いかけるぞ」

「はい……」

 不安が心優の占める中、黒田も同じく疑問が胸に残りモヤモヤした気分を味わっていた。

 お互いに何も聞くことなく、二人は巴達を追いかけるため、地下へと降りていった。
 ・
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 巴達が地下に行き、後ろを心優達が付いて行く。

 気配を消し、足音に気を付け進む。
 下まで行くと前を歩いていた巴達は、心優が閉じ込められていた牢屋の前で足を止めた。

 中を見ると、まだ椅子は置かれ縄が地面に落ちている。
 心優が逃げ出してから何もしていないのがすぐにわかった。

 それだけ陰陽師達もあちこち走り回り、余裕が無い日々を過ごしていた。

 階段下で黒田と心優は足を止め、気配を殺し壁に床を付け顔を覗かせる。

 何をするのかと見ていると、巴が牢屋の扉を掴み、キキキッと音を鳴らし開けた。

「鍵、閉まってないのか……」

 牢屋の扉を開くことが出来たため、中に入る。
 無駄に触れないように気を付けながら椅子の周りを見たり、壁に触れ何かを探す。

「――――やっぱり、何か仕掛けがあるわけじゃないよね」

『隠れられそうな所もありません。誰かに成り代わっていたのかもしれませんね』

「成り代わってた……」

 心優が牢屋に閉じ込められている時の光景を思い浮かべ、巴は目を開きハッとした。

「警備員、顔とかは暗くてよく見えなかったけど、一番怪しいのはその人だった」

『可能性、ありますね』

「となると、また侵入している可能性がある?」

『かもしれません』

 ――――やばい、気づかれた。

 どうするのか黒田に聞こうと顔を上げると、何故か後ろにいたはずの黒田がいない。
 どこに行ったのだろうと顔をきょろきょろさせると、巴の小さな悲鳴が聞こえ振り向いた。

「――――やっぱり、侵入していたんだ」

「まぁな。俺の巫女装束、綺麗だろ?」

「ただただきもいです」

「……………………今の言葉が俺の心を抉った……」

 いつの間にか黒田が影から姿を現し、行動に移していた。
 
 軽口を叩きながら指先からは赤い糸を放ち、氷柱女房しがまにょうぼうの身体を拘束していた。
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