人間にトラウマを植え付けられた半妖が陰陽師に恋をする

桜桃-サクランボ-

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秋晴れ

「あ、お味噌汁…………」

「こちら側は、銀さん達が移住してくることの許可を無事に取る事が出来ました。あと、食べ物も沢山持ってきたので、食べられるものを選んでいただければかと思います」
「さすがに仕事が早すぎないか?」

 優輝は、森から出て行ってから二時間弱で戻ってきた。
 手には、大きな鞄。中に様々な食べ物が入っているのだろうと予想させる。

 ついでというように、銀と話していたことまで実現しようと許可まで取ってきたため、銀は顔を引きつらせた。

 今は銀籠も起きており、優輝を出迎えるように見つめる。
 だが、彼は何故優輝が来たのか、何の話をしているのかよく分かっておらず、銀を見た。

「なんの、こほっ、話なのだ、父上」
「これには深い事情があったのじゃが、今は考えなくても良い。それより、現在進行形で床に広げられている様々なカップについて聞きたいぞ、優輝」

 銀が言うように、優輝は出来る限り銀籠から距離を取り、床に蓋付きカップを並べていた。

「風邪に効きそうで喉に優しい、体が温まるスープを持ってきました。保温カップに入れている為、まだ温かいはずです」
「だから、あんなに慌てていたのか…………」

 小屋のドアをぶち破るように入ってきた優輝の姿を思い出し、銀はため息。

 並べられたカップは五個、どれも触れてみるとほんのり温かい。

「あ、銀さん。カップにスープの名前を書いているので、選んでいただいてもよろしいでしょうか。俺はここから動きませんので」

 優輝が今いるのは、銀から一番離れられることが出来る出入口付近。
 隙間風が体を冷やすため、黒いコートやマフラーはつけたまま。

「ふむ、チキンスープに卵スープ。にんにくは……わしが苦手じゃなぁ……。あとは大根に味噌汁か。本当に沢山あるなぁ」
「大きな鍋で水を沸騰させ、一気に作りました。もっと選択肢を増やしたかったのですが、これ以上は食料の無駄だと姉さんに怒られ、断念してきたのです」
「う、うむ。確かにこれは、今の我では食べきれる自信が…………」

 銀籠も呆れながら、床に置かれているカップを見る。
 全て食べようとしている銀籠の言葉に、優輝は慌てて止めた。

「い、いや、待って。お腹壊すから一つだけ選んで」
「し、しかし…………」
「選択肢を増やしたかっただけだから、無理しないで」

 優輝の言葉にむむむっ……と、銀籠は悩みつつ一つのカップを取り、蓋を開けた。

 偶然手に取ったのは大根おろしスープ。
 まだ温かいため、湯気が立ち上り銀籠を温める。

「大根のおろし汁には消炎作用があるみたいだよ。鼻づまりや頭痛、発熱にも効果あり。あと、大根には沢山の消化酵素が含まれているから、胃腸の働きを助けてくれるんだって」
「よく調べておるなぁ」
「自転車で帰っている時に調べました。あとは、姉ちゃんやじじぃにも手伝って頂いたんですよ」
「す、すごいなぁ」
「当たり前です。だって、銀籠さんには早く元気になってほしいですから。銀籠さん、人が作った物なんて嫌かもしれないけど、本当に何も盛ってないから安心して食べて。疑うならどんな方法を使ってもいいよ、毒見でもなんでも」

 銀籠は優輝の言葉に何も返さず、手に持っている大根おろしスープを見下ろした。

「…………銀籠、心配しなくても大丈夫じゃぞ。どれも美味しそうじゃ」

 銀はチキンスープを手に取り、蓋を開ける。
 優輝が銀にスプーンを渡すと、銀籠より先にチキンスープを口に運んだ。

 熱すぎず、飲みやすい温度になっており、「美味いぞ」と優輝に感想を伝えた。

「それなら良かったです」
「本当に美味い、ありがとうぞ」
「いえ、銀籠さんの為ですので」
「…………わしは?」
「…………まぁ、はい」

 銀への言葉は冷たく、肩を落として項垂れた。
 二人の会話を見て、銀籠は迷いながらも手に持っているスープを見て、おずおずと喉に流し込む。

「っ! 美味しい…………」
「そ、それなら良かった」

 目を輝かせ、思わずと言ったように感想を零すと、優輝も安堵の息。
 銀が「わしと同じ感想なのに…………」と落ち込んでいることなど、二人の視界には入っていない。

 銀籠は体が温まるスープをゆっくり飲み、銀もチキンスープを飲みほした。
 他のスープも銀籠は飲もうとしたが、優輝がそれを阻止。無理しないでと、カップを回収してしまった。

「あ、お味噌汁…………」
「どうぞ!!!!!」

 悲しげに呟いた銀籠に、優輝は瞬時に一度回収したカップを差し出す。
 飲みたかった味噌汁が戻ってきて、銀籠は嬉しそうに目を細めた。

 そのまま、
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