13 / 16
復讐代行者
第13話 「事実を言った方が俺得だ」
しおりを挟む
ブシャッと、二人を覆いつくすように黒い影が湧き出てきた。
気づいた時には遅く、驚きの声を上げる間もなく、影に包み込まれた二人が姿を消した。
「よし、俺達も行くぞ」
言いながら累は影を操り、四季の「待って!」という制止すら無視し、裏の世界まで連れて行く。
二人が影に包まれ消える直前、一人の男性が白衣を靡かせ現れた。
自ら、累が作り出した裏世界への入り口に入り込み、共に姿を消した。
・
・
・
・
・
・
・
「ガハッ!!」
先に裏の世界に現れたのは、友恵と結城。
建物の隙間から飛び出すように現れた。
地面に四つん這いになりせき込んでいると、奥から累がフードをかぶり、現れる。
「だ、だれ――っ!?」
タンッと、軽やかに地面から現れた累は、咳き込む二人を見下ろす。
フードから覗き見える赤い瞳は、二人を蔑むように鋭く光っていた。
友恵と結城は顔を真っ青にして、見下ろしてくる累を見上げた。
声を出せず、体も震え動かせない。
「んじゃ、ここで復讐を開始する。俺との契約は覚えているな?」
「は、はい」
累の後ろから、険しい顔を浮かべながら四季が姿を現した。
なんでここに、しかもこんな怪しい人と四季が共に行動しているのか、二人にはわからない。
友恵と結城は喉が絞まり、疑問が浮かぶが何も質問できない。
そんな二人に、四季が近づき片膝を付いた。
「貴方達が悪いんだよ? だって、私を裏切ったから」
「う、裏切ってなんて……」
「実際、裏切っているじゃない。私の幸せを奪い取って、自分達だけ幸せになろうとしてさ。いや、元々、これが目的だったとか? ねぇ、結城さん」
友恵を見ていた四季は、隣に座る結城を見る。
最初は何も発しなかったが、状況が判断を鈍らせ、口を開かせた。
「そ、そうだよ。俺は最初からおめぇじゃねぇ、友恵ちゃんが狙いだったんだ。だが、普通に近づいても絶対に振り向いてくれない。だから、お前を利用した。それのどこが悪い!!」
恐怖でなのか、それとも女に、自分が利用していた四季に見下されているという現状にプライドが傷つけられたのか。
ペラペラとすべてを話し出す結城。
友恵も、ばつが悪そうに顔をそらした。
その反応だけでわかる。
友恵も知っていたのだ。結城が今まで考えていたことを。
知らなかったのは、四季だけ。
四季は、自分が利用されていたことに激高し、乱暴に結城の胸ぐらを掴んだ。
「ふっざけんじゃねぇぞ!! こんのくそ男!!!」
大人しかった四季しか知らない二人は、いきなりの豹変に困惑と恐怖が頭を占め、言い返せない。
「私は、嬉しかったんだ。なぜか、私は学校で友達を作れなかったし、避けられていた。そんな中で、唯一私と話してくれていたのは、二人だけだったのに。なのに、なんで……」
怒りのあまり涙を流し、顔を俯かせた四季を見て、結城は蔑むような顔を浮かべた。
後ろでは、友恵が目を逸らし現実から逃げている。
自分は関係ないと、目を逸らしている。
話がここで止まり、累がやっと動き出した。
「噂を流していたのも、男だろ」
「…………え?」
累が発した言葉に、四季は目を開き結城は固まった。
適当なことを言われたと思った結城は、動揺しつつ否定した。
「な、なんで、そんな……。適当なことを言うな!」
「なんで適当なことを俺が言わなきゃならん。ここでは、事実を言った方が俺得だ」
耳をほじりながら、累はめんどくさそうに吐き出す。
結城は、累の態度に何も言えない。口を金魚のようにパクパクと動かすのみだった。
「んで、話を進めるが。お前が噂を流し、この女を孤立させた。親友であるそっちの女は、どんな噂が流れようと離れて行かない算段はあったんだろうな。そんな中で、親友以外に手を伸ばされたら――まぁ、知らん相手だろうと異性だったら落ちるわな」
右手を腰に当て、げんなりしながら言う。
四季は、そんな累の言葉が頭を何度も何度も駆け回る。
今までの幸せが全て嘘だと言い切られたような感覚になり、呼吸が荒くなった。
「し、四季?」
友恵はずっと顔を逸らし、自分は関係ないというスタイルを貫いていた。
だが、急に胸を押さえ苦しみ始めた四季を心配し、手を伸ばした。
――――バシッ!!!
伸ばされた手は、四季が感情のままに弾き返した。
「四季……?」
「今更、なに心配してるの。どうせ、私を応援しながら裏では嘲笑っていたくせに……」
四季の顔を見た友恵は、「ひっ」と、小さな悲鳴を上げた。
四季の表情は、恨みに包まれていた。
充血した目はまるで、恨みの炎が燃え上がっているかのように赤い。
少しでも動けば、何をされるか分からない。
口を開けば、殺されるかもしれない。
脳に警告が走り、友恵は顔を青くし何も言えなくなった。
「へぇ……」
累は、四季の雰囲気を後ろから感じ、笑う。
ここまでの殺気を素人である四季が出せるとは思わず、感心。
累は、右手で上がってしまう口元を隠した。
「私を応援してくれたのも、私に声をかけてくれていたのも。全部全部、私を嘲笑う為だったんだね。私を玩具にして、楽しかった? 面白かった?」
淡々と静かに、問いかけ続ける。
二人は恐怖で体が震え、声が出ない。
何度も口を開くが、掠れた声しか出ず、友恵は身体を震わせた。
結城は、友恵を守るように後ろに下げ、何時でも動けるように片膝を立てた。
目の前にいる四季を睨みつけ、怒り、叫ぶ。
「つーか、もう、終わった話だろ。今更なぜ、そこまで怒る。振った時にでも言えばよかっただろうが!」
「その時に言っても、意味は無かった。私一人では、何も出来ないのは分かりきっていたから」
そこで大きく息を吐き、友恵に送っていた視線を結城に向けた。
「私は自分の実力を見誤って、後悔したくないんです。証拠とか、ばらされてはいけない何かを集めて復讐しようとか考えていました。そんな時、私の代わりに復讐してくれる人と出会ったんですよ」
二人の視線が、後ろで何も言わなくなった累に向けられた。
「あ?」
煩わしい視線に文句を言おうとしたが、それより周りの気配の違和感に気づき視線を至る所へと向けた。
「――――厄介なもんを、引き寄せる、ねぇ」
気づいた時には遅く、驚きの声を上げる間もなく、影に包み込まれた二人が姿を消した。
「よし、俺達も行くぞ」
言いながら累は影を操り、四季の「待って!」という制止すら無視し、裏の世界まで連れて行く。
二人が影に包まれ消える直前、一人の男性が白衣を靡かせ現れた。
自ら、累が作り出した裏世界への入り口に入り込み、共に姿を消した。
・
・
・
・
・
・
・
「ガハッ!!」
先に裏の世界に現れたのは、友恵と結城。
建物の隙間から飛び出すように現れた。
地面に四つん這いになりせき込んでいると、奥から累がフードをかぶり、現れる。
「だ、だれ――っ!?」
タンッと、軽やかに地面から現れた累は、咳き込む二人を見下ろす。
フードから覗き見える赤い瞳は、二人を蔑むように鋭く光っていた。
友恵と結城は顔を真っ青にして、見下ろしてくる累を見上げた。
声を出せず、体も震え動かせない。
「んじゃ、ここで復讐を開始する。俺との契約は覚えているな?」
「は、はい」
累の後ろから、険しい顔を浮かべながら四季が姿を現した。
なんでここに、しかもこんな怪しい人と四季が共に行動しているのか、二人にはわからない。
友恵と結城は喉が絞まり、疑問が浮かぶが何も質問できない。
そんな二人に、四季が近づき片膝を付いた。
「貴方達が悪いんだよ? だって、私を裏切ったから」
「う、裏切ってなんて……」
「実際、裏切っているじゃない。私の幸せを奪い取って、自分達だけ幸せになろうとしてさ。いや、元々、これが目的だったとか? ねぇ、結城さん」
友恵を見ていた四季は、隣に座る結城を見る。
最初は何も発しなかったが、状況が判断を鈍らせ、口を開かせた。
「そ、そうだよ。俺は最初からおめぇじゃねぇ、友恵ちゃんが狙いだったんだ。だが、普通に近づいても絶対に振り向いてくれない。だから、お前を利用した。それのどこが悪い!!」
恐怖でなのか、それとも女に、自分が利用していた四季に見下されているという現状にプライドが傷つけられたのか。
ペラペラとすべてを話し出す結城。
友恵も、ばつが悪そうに顔をそらした。
その反応だけでわかる。
友恵も知っていたのだ。結城が今まで考えていたことを。
知らなかったのは、四季だけ。
四季は、自分が利用されていたことに激高し、乱暴に結城の胸ぐらを掴んだ。
「ふっざけんじゃねぇぞ!! こんのくそ男!!!」
大人しかった四季しか知らない二人は、いきなりの豹変に困惑と恐怖が頭を占め、言い返せない。
「私は、嬉しかったんだ。なぜか、私は学校で友達を作れなかったし、避けられていた。そんな中で、唯一私と話してくれていたのは、二人だけだったのに。なのに、なんで……」
怒りのあまり涙を流し、顔を俯かせた四季を見て、結城は蔑むような顔を浮かべた。
後ろでは、友恵が目を逸らし現実から逃げている。
自分は関係ないと、目を逸らしている。
話がここで止まり、累がやっと動き出した。
「噂を流していたのも、男だろ」
「…………え?」
累が発した言葉に、四季は目を開き結城は固まった。
適当なことを言われたと思った結城は、動揺しつつ否定した。
「な、なんで、そんな……。適当なことを言うな!」
「なんで適当なことを俺が言わなきゃならん。ここでは、事実を言った方が俺得だ」
耳をほじりながら、累はめんどくさそうに吐き出す。
結城は、累の態度に何も言えない。口を金魚のようにパクパクと動かすのみだった。
「んで、話を進めるが。お前が噂を流し、この女を孤立させた。親友であるそっちの女は、どんな噂が流れようと離れて行かない算段はあったんだろうな。そんな中で、親友以外に手を伸ばされたら――まぁ、知らん相手だろうと異性だったら落ちるわな」
右手を腰に当て、げんなりしながら言う。
四季は、そんな累の言葉が頭を何度も何度も駆け回る。
今までの幸せが全て嘘だと言い切られたような感覚になり、呼吸が荒くなった。
「し、四季?」
友恵はずっと顔を逸らし、自分は関係ないというスタイルを貫いていた。
だが、急に胸を押さえ苦しみ始めた四季を心配し、手を伸ばした。
――――バシッ!!!
伸ばされた手は、四季が感情のままに弾き返した。
「四季……?」
「今更、なに心配してるの。どうせ、私を応援しながら裏では嘲笑っていたくせに……」
四季の顔を見た友恵は、「ひっ」と、小さな悲鳴を上げた。
四季の表情は、恨みに包まれていた。
充血した目はまるで、恨みの炎が燃え上がっているかのように赤い。
少しでも動けば、何をされるか分からない。
口を開けば、殺されるかもしれない。
脳に警告が走り、友恵は顔を青くし何も言えなくなった。
「へぇ……」
累は、四季の雰囲気を後ろから感じ、笑う。
ここまでの殺気を素人である四季が出せるとは思わず、感心。
累は、右手で上がってしまう口元を隠した。
「私を応援してくれたのも、私に声をかけてくれていたのも。全部全部、私を嘲笑う為だったんだね。私を玩具にして、楽しかった? 面白かった?」
淡々と静かに、問いかけ続ける。
二人は恐怖で体が震え、声が出ない。
何度も口を開くが、掠れた声しか出ず、友恵は身体を震わせた。
結城は、友恵を守るように後ろに下げ、何時でも動けるように片膝を立てた。
目の前にいる四季を睨みつけ、怒り、叫ぶ。
「つーか、もう、終わった話だろ。今更なぜ、そこまで怒る。振った時にでも言えばよかっただろうが!」
「その時に言っても、意味は無かった。私一人では、何も出来ないのは分かりきっていたから」
そこで大きく息を吐き、友恵に送っていた視線を結城に向けた。
「私は自分の実力を見誤って、後悔したくないんです。証拠とか、ばらされてはいけない何かを集めて復讐しようとか考えていました。そんな時、私の代わりに復讐してくれる人と出会ったんですよ」
二人の視線が、後ろで何も言わなくなった累に向けられた。
「あ?」
煩わしい視線に文句を言おうとしたが、それより周りの気配の違和感に気づき視線を至る所へと向けた。
「――――厄介なもんを、引き寄せる、ねぇ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜
二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。
そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。
その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。
どうも美華には不思議な力があるようで…?
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる