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魔力の入れ替え

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 リヴィエールの言い分もノエルの言葉も理解はできた。
 どの世界においても大多数のものを守るために犠牲になっている少数のものはある。それを知っていても心を痛める人は少ない。何故ならば目の前で行われていないからだ。
 そんな状況を目の当たりにしたとして、見過ごせるだろうか。
 倉野には見過ごすという選択ができない。
 立ち去ろうとするリヴィエールの背中に倉野が言葉を投げかけた。

「待ってください!」

 背中に刺さる強い言葉に動きを止めたリヴィエールは、そのまま振り返る。

「クラノ殿、私はこの国の民を守らなければならないのです。たとえ、この手で幾千の罪なき者の命を刈り取ろうとも」
「わかっています・・・・・・ですが、目的はあくまでも国民を守る事なはずです。命を奪うことが目的ではない」
「言葉遊びをするつもりはありませんよ。目的でなくとも目的のための必要な手順です」

 倉野の言葉に対して冷静な答えを出すリヴィエール。
 だが、そのような返答が返ってくるのは予想の範囲内だった。
 倉野が欲したのはメディーナの命を奪うことが目的ではないという言葉である。
 その言葉をリヴィエールから引き出した倉野は即座に口を開いた。

「だったらこうすればいいんですよね。スキル説明発動。対象はメディーナを殺すことなくブレイズを止める方法」

 そう倉野が唱えると再び説明画面が現れる。
 いきなりの行動に驚くリヴィエールたちだったが、倉野は気にせずに画面を読み上げた。

「方法はいくつもあるが全ての結論はメディーナの病を治すことである。メディーナの病は先天性の魔力腐敗と呼ばれており、生まれ持った魔力が体とあわず徐々に生命力を奪っていく。数千万人に一人ほどの可能性で発症する病のため、いまだ治療方法は見つかっていない。生きるためには生命力を補充するしかなく、発症したものは若くして命を落とすことになる。発見されていない方法ではあるが、魔力を入れ替えれば完治させることができる」

 スキル説明の画面通りに読み上げる倉野の言葉を聞いたレインは首を傾げる。

「魔力腐敗なんて聞いたことがないよ。それに魔力を入れ替えるなんて」

 それを聞いていたリヴィエールは小さく頷いてから、口を開いた。

「確かに我が国では聞き慣れない病名ですが、生まれつき魔力が体に合わないという話は聞いたことがあります。ですが、魔力を入れ替えるなんて話は聞いたことがありませんね。そもそも魔力に決まった形はありませんし、何かの臓器から発生しているわけでもない。それを入れ替えるなんて、精神を入れ替えると言っているようなものですよ」

 そうリヴィエールが話すと、倉野は一つの答えへとたどり着き小声で呟く。

「そうか、精神交換だ。確かに精神交換をしているときは僕の体にイスベルグさんの魔力が流れてた・・・・・・だったら・・・・・・イスベルグさんがメディーナに」
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