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絶望を越える絶望
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「嘘・・・・・・」
言葉を失いそうになりながら、リオネが呟く。
彼女がスキル『風読み』で感知したのは、ほぼ同時に飛来する数十本もの矢であった。
連射に自信のあるリオネとはいえ、数十本もほぼ同時に射ることなどできない。
「まさか・・・・・・連射能力まで・・・・・・」
ミミーよりも優れていると思っていた連射さえ足元に及ばず、敗北感を覚えるリオネだったが、そんな暇などなかった。
「は・・・・・・早く回避を・・・・・・どこに?」
スキル『風読み』で感知した矢の軌道を見る限り、今リオネがいる周辺一体に矢の雨が降ることは容易に想像できる。
逃げる場所などあるはずがない。
もしかすると、たかが数十本の矢だ、なんて思うかもしれないが、一本一本が風の魔法を纏っている。掠るだけでも肉が抉られる威力の矢だ。
大きく距離を取らなければ回避にはならない。
「私が矢を放ったとしても、撃ち落とせるのはせいぜい数本・・・・・・じゃあ、魔法で防御を・・・・・・ダメ、全てを叩き落とせるほどの威力はないわ・・・・・・くっ、ここにきてこんな攻撃を!」
いくらミミーの強さを恨んでも、矢は飛来する。ならば、弱音を吐いている場合じゃない。自分の限界を越えるしかなかった。
「せめて、私の周囲に飛来する矢だけでも落とせば!」
無理だと考えることをやめ、リオネは矢を手に取る。その本数は三本。
連射ながら精細さを欠くわけにはいかない。呼吸も鼓動も整え、手も震えを消し彼女は矢を放つ。
「お願い・・・・・・動いて、私の手!」
三本の矢を放ち終えたリオネは、即座に新たな矢を取り放った。それを繰り返し、自分の近くに落ちるだろう矢を射抜いていく。
自分が必要だと思う速度に体がついていかず、もどかしいどころか腹立たしい。どうして自分はこうも弱いのか。指の皮が剥け、血で滑る。
しかし痛みなど感じている暇はない。
「ぐっ!」
肩が外れるかと思うほどリオネは連射を繰り返すが、全ての矢を落とすまでは至らなかった。
それでも、なんとか自分の極めて近い位置に飛来するだろう矢を射抜き終える。
「こ、これで!」
その瞬間、リオネの『風読み』は絶望の第二波を感じ取った。
「なっ・・・・・・」
それは第一波である矢の雨を越える矢の嵐。
数十どころではない矢の飛来を感知したのだった。
「嘘・・・・・・でしょ・・・・・・そんな」
数十の矢の内、自分に近い矢を落とすだけでも精一杯だったリオネがそれを越える第二波に対応することなど不可能。
限界を越えるどころの話ではない。限界の先の先の先。立ちはだかっているのは壁ではなく、途方もない高さの山だった。
「こんなの連射どころの話じゃない・・・・・・」
言葉を失いそうになりながら、リオネが呟く。
彼女がスキル『風読み』で感知したのは、ほぼ同時に飛来する数十本もの矢であった。
連射に自信のあるリオネとはいえ、数十本もほぼ同時に射ることなどできない。
「まさか・・・・・・連射能力まで・・・・・・」
ミミーよりも優れていると思っていた連射さえ足元に及ばず、敗北感を覚えるリオネだったが、そんな暇などなかった。
「は・・・・・・早く回避を・・・・・・どこに?」
スキル『風読み』で感知した矢の軌道を見る限り、今リオネがいる周辺一体に矢の雨が降ることは容易に想像できる。
逃げる場所などあるはずがない。
もしかすると、たかが数十本の矢だ、なんて思うかもしれないが、一本一本が風の魔法を纏っている。掠るだけでも肉が抉られる威力の矢だ。
大きく距離を取らなければ回避にはならない。
「私が矢を放ったとしても、撃ち落とせるのはせいぜい数本・・・・・・じゃあ、魔法で防御を・・・・・・ダメ、全てを叩き落とせるほどの威力はないわ・・・・・・くっ、ここにきてこんな攻撃を!」
いくらミミーの強さを恨んでも、矢は飛来する。ならば、弱音を吐いている場合じゃない。自分の限界を越えるしかなかった。
「せめて、私の周囲に飛来する矢だけでも落とせば!」
無理だと考えることをやめ、リオネは矢を手に取る。その本数は三本。
連射ながら精細さを欠くわけにはいかない。呼吸も鼓動も整え、手も震えを消し彼女は矢を放つ。
「お願い・・・・・・動いて、私の手!」
三本の矢を放ち終えたリオネは、即座に新たな矢を取り放った。それを繰り返し、自分の近くに落ちるだろう矢を射抜いていく。
自分が必要だと思う速度に体がついていかず、もどかしいどころか腹立たしい。どうして自分はこうも弱いのか。指の皮が剥け、血で滑る。
しかし痛みなど感じている暇はない。
「ぐっ!」
肩が外れるかと思うほどリオネは連射を繰り返すが、全ての矢を落とすまでは至らなかった。
それでも、なんとか自分の極めて近い位置に飛来するだろう矢を射抜き終える。
「こ、これで!」
その瞬間、リオネの『風読み』は絶望の第二波を感じ取った。
「なっ・・・・・・」
それは第一波である矢の雨を越える矢の嵐。
数十どころではない矢の飛来を感知したのだった。
「嘘・・・・・・でしょ・・・・・・そんな」
数十の矢の内、自分に近い矢を落とすだけでも精一杯だったリオネがそれを越える第二波に対応することなど不可能。
限界を越えるどころの話ではない。限界の先の先の先。立ちはだかっているのは壁ではなく、途方もない高さの山だった。
「こんなの連射どころの話じゃない・・・・・・」
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