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場所の選定

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「貴族の私有地・・・・・・そこまでは考えてませんでしたね」

 冨岡はそう呟いてから思考を巡らせた。
 もちろん、大通りで店を出すのだ理想。しかし貴族との繋がりなどあるはずもない。
 考えてみれば、最初に考えるべき問題だった。元いた世界でも勝手に店を出すことなどできない。露店であろうとも、どこかしらに許可を取る必要がある。
 少し考えた冨岡は思いつきを言葉にしてみた。

「じゃあ、大通りから少し外れた場所で店を出すのはどうでしょう」
「大通りから少し外れた場所・・・・・・居住区の通りということでしょうか?」

 アメリアが聞き返す。
 冨岡に街の構造などわかるわけもなく、居住区と言われても道中で見たイメージしか湧かない。

「そうなりますかね」

 曖昧な返事をするとアメリアの表情は難色を示していた。

「それは大通りよりも難しい話になりますね。居住区は国が所有している土地ですから」

 前途多難どころの話ではない。
 売るものが決まっても売る場所がないのだ。ファンタジーな世界だというのに、目の前に現れるのは現実的な問題。
 まったく、生きることは難しいものだ。
 冨岡が心の中で哲学『っぽい』ことを呟く。ネット上で呟いても大した反応は得られないだろう浅い言葉だ。子どもが遊ぶには適した浅瀬レベルである。
 
「大通りも居住区もダメなら・・・・・・うーん」

 冨岡がまとまらない考えをそのまま言葉にすると、ふとフィーネが口を開いた。

「じゃあ、ここは?」
「ここって、この教会で?」

 聞き返す冨岡。

「そう。そしたら、食堂で作れるよ」

 純粋な笑顔を浮かべながらフィーネが言う。
 灯台下暗しとはこのことだ。確かにこの教会ならば、アメリアの許可さえあればいい。それどころか厨房も倉庫も十分な設備が整っている。

「確かに! アメリアさん、どうですか?」

 感心した冨岡がアメリアに問いかけると、彼女は苦笑いを浮かべていた。

「私としては問題ないのですが・・・・・・」
「?」

 冨岡が首を傾げると、アメリアは言いにくそうに言葉を続けた。

「その、前にもお話ししましたがここは元々、白の創世の教会でした。その頃の知名度は高く、信徒も多く・・・・・・それが例の事件により、悪名へと変わってしまったのです。つまり、この場所は・・・・・・その、悪き思い出が詰まった場所と言いますか」
「広まった名前が一気に裏返り悪名に、信徒はアンチにってことですか。すみません、嫌なことを思い出させてしまって」

 アメリアの苦しげな表情で胸が痛み冨岡が謝罪する。するとアメリアは無理に微笑んで首を横に振った。

「いえ、全ては事実ですし過ぎ去ったことですから」
「うーん。確かに大きなスキャンダルがあるとファンの一部はアンチになっちゃうこともありますもんね。反転アンチってやつか」

 冨岡が言うとフィーネは首を傾げる。

「スキャンダル? ファン? アンチ? ご飯の名前かな?」
「ははっ、違うよ。そっかぁ、場所があっても集客が見込めないと商売として成り立たない。考えが甘かったかもしれません」
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