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打算的邂逅

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 すると冨岡は優しく首を横に振った。

「いえ、そうは言っていませんよ」

 ダルクから話を聞いた時、冨岡はチャンスだと心の中でガッツポーズを決めた。
 これは貴族とのつながりを作る千載一遇の機会である。おそらくダルクの主人であるキュルケースという昨夜の男は冨岡に対して、何らかの話があるのだろう。
 ここでその好機を逃すという選択肢はない。
 そこで冨岡はこう提案する。

「全て買い上げてもらわなくても、ぜひお話を聞きたいと思っています。ただ俺がこの店から離れると何か問題が起きた時に対応できません。ですから、どうでしょう。俺の代わりにこの店を守ってくれる方をご紹介いただけませんか? そうすれば、今すぐにでもお伺いしますよ」

 移動販売『ピース』自体はアメリアに任せても問題ない、と昨日で分かった。冨岡がハンバーガーを作らなくてもアメリアは作りながら接客できる。それでも冨岡が調理係として屋台にいるのは『心配だから』だ。アメリアたちに何かあれば自分が飛び出すと決めてにここにいる。
 冨岡が何の力になるのかはまた別問題だ。気持ちの話である。
 冨岡の提案を聞いたダルクは少し考えてから頷いた。

「ふむ、それでは我が家から私兵を寄越しましょう。確かにそちらの女性と小さなお嬢さんだけでは心配でしょうし、商売としてここで売り切れになるのは得策ではありませんね。目先の利益は増えますが、将来的には多くの人に行き渡る方が良い。店主様がおっしゃっていることはごもっともでございます」
「分かってもらえてよかったです」

 冨岡がそう答えると、ダルクはさらに話を進める。

「うーん、それでは足りませんね」
「足りない、ですか?」
「ええ、店主様はこの店を守りながら調理もされております。ゆえに代役となれば私兵だけでは足りないでしょう。我が家から調理係も呼びましょうか」

 優しく提案するダルクだが、冨岡はその裏にある思惑に気づき口角を上げた。

「調理すればハンバーガーの作り方を覚えられる、ということでしょうか?」
「そのようなことはございませんよ。ただ、覚えないとお手伝いできないでしょうから、仕方ない部分はあります」
「ははっ、大丈夫ですよ。ハンバーガーの作り方なんて公表してもいいくらいです。美味しいものはみんなで分け合いましょう」
「これは大きな器をお持ちですね。さて、話は決まりましたのですぐに準備をして参ります」

 そのままダルクは広場から離れていく。先ほど話していた私兵と調理係を呼びにいったのだろう。
 ダルクの背中を見送ってからフィーネが心配そうに冨岡に近寄った。

「トミオカさん、どっかいくの?」
「うん、ちょっと話を聞いてくるよ。もしかすると新しい商売を始められるかもしれないしね」

 冨岡の言葉を聞いたアメリアは横から声をかける。

「本当に気をつけてくださいね」
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