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お手伝いの二人

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 屋台の片付けを終わらせたところで冨岡は晩御飯の用意に着手した。
 フィーネと約束したこともあり、豪華な晩御飯にするための食材を選んでいると、ふと思い出す。

「あ、そういえば、キュルケース家のお二人はどうしたんですか? 俺が戻った時にはもういなかったですよね」

 冨岡が問いかけると、アメリアは厨房の中に小さな机を置いてフィーネに勉強を教えようとしているところだった。

「ああ、あのお二人なら屋台を閉めた時に帰っていただきましたよ。私とフィーネだけで出来る片付けに残ってもらうのは申し訳ないですから」

 アメリアの答えを聞いた冨岡は、どこか腑に落ちずに玉ねぎを手に取ったまま一瞬固まる。
 あのダルクと一緒に働く二人が素直にアメリアたちを置いて帰るだろうか。
 暑苦しいほど執事としての矜持を持つ『あのダルク』の同僚である。
 どうしても気になった冨岡は「もしかして」と言葉を続けた。

「半ば無理やり帰したんじゃないですか、アメリアさん」
「え、いや、そんなことは」
「アメリアさん?」

 冨岡がアメリアの顔を覗き込むように問いかけると、彼女は申し訳なさそうに頷く。

「はい・・・・・・すみません。貴族家の従者様に後片付けをさせるのが、心苦しくて」
「気持ちはわかりますけど、あの二人は護衛も兼ねているんですよ。片付けは自分たちでするとしても、最後までいるようにしてください」

 アメリアたちを心配する冨岡気持ちが伝わったのだろう。彼女は再び頷いてから「すみません」と繰り返した。
 冨岡としてはアメリアを責めたいわけではないので、特に何事もなかったことを喜ぶことにする。

「本当に何事もなくてよかったです。アメリアさんとフィーネちゃんが無事で本当によかった。それにしても、よくあの二人を帰せましたね? 護衛を全うする、って言い続けたんじゃないですか?」

 そう問いかけるとアメリアは首を傾げた。

「いえ、そうでもないですよ。『承知しました』ってすぐに帰っていきました」
「あれ?」

 キュルケース家の従者とはいえ、ダルクとの熱量の差があるのだろうか。アメリアと同じように冨岡が首を傾げていると、机の前で話を聞いていたフィーネが口を開く。

「手伝ってくれた二人ならずっといたよー」
「え?」

 アメリアが驚きながらフィーネの方に視線を向けた。

「どういうことですか?」

 そうアメリアが疑問を投げかけると、フィーネは思い出すように右上を見上げて答える。

「うーんとね、屋台を離れた後、二人は広場の端で隠れてこっちを見てたの。トミオカさんが戻ってきた時に、トミオカさんと一緒にいた人が車で連れて帰ってたよ」

 フィーネの話を聞いた冨岡はダルクの顔を思い浮かべた。
 もしかするとあの人は、アメリアの性格を感じ取っていたのかもしれない。
 遠慮がちなアメリアの言動を予見して、帰るように言われても隠れて護衛をする指示を出していたとすれば、全てが繋がる。
 その上で、冨岡と離れてからダルクが回収した。
 考えがそこまで至った冨岡は思わず笑ってしまう。

「はははっ」
「どうしたんですか、トミオカさん」
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