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本編
第12話_静かな正義-2
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机に身を預けたまま動かない啓介と、室内にいる面々の顔を見回して、諒はひと声あげる。
「ラーメン、食べに行かないか?」
にわかに湧いて出た提案に、重苦しい空気が少しだけ動いて、視線が諒へ集まった。
「北門近くに少し前にオープンした店、聞いた話だと結構美味いみたいで。ずっと気になってるんだ」
「俺知ってる! 登下校に北門使ってるから。…でも外観眺めるだけで入ったことないんだよね…ひとりじゃ入り辛くて」
「へー、初めて聞いた。何ラーメン? 家系?」
「グルメサイトで調べたら、本格中華だって。ラーメン以外にも色々食べられるみたいだよ」
「いいねぇ。なんか猛烈に腹減ってきた!」
諒の提案に、理学部生たちの顔に少しずつ生気が戻っていき、我も我もと同行に名乗りをあげ始める。
うつ伏せになっていた啓介の頭もいつの間にか起き上がっていて、興奮の面持ちで頬を紅潮させていた。
「あー、俺もガッツリにんにくが恋しくなってきたわ。よーし、そうと決まればこんな湿気込んだ空間からは早くおさらばしようぜ。全員でラーメン屋殴り込みだ」
「髙城も行こう」
すっかり中華に脳内が支配され、拳を振り上げ雄叫びをあげる同級生たちの様子を一歩引いて眺めていた蒼矢へ、諒が声をかける。
誘われた蒼矢はすぐには返答出来ず、戸惑ったような表情を返した。
「…いや、俺は…」
「遠慮すんなって。俺たちには等しくリフレッシュが必要だ。…美味いもん食べて、気晴らししようぜ」
「そうだよ髙城、一緒に行こうぜ」
啓介は躊躇する彼の背中を押し、その場に居る同級生たちも笑顔を送っていた。
しかし蒼矢はやはり、申し訳なさそうな面持ちを浮かべながら俯くだけだった。
諒がもう一声かけようと口を開きかけた時、入口の引き戸が軋むようなレール音と共に開かれる。
「髙城君、いる?」
「…!」
開口一番に投げられた良く通る声は、少し沈黙が流れていた室内に響き、後ろからはやはり覚えのある顔と初顔の者が併せて数名続き、ぞろぞろと室内に足を踏み入れてくる。
声には出さなかったが、啓介は無遠慮に入室してくる彼らへ向け、鋭い視線を浴びせた。
呼びかけてきた男は、理学部生たちが今絶賛影響を被っている事案の根源である『T大ニュース』のサークルメンバーであった。
「ラーメン、食べに行かないか?」
にわかに湧いて出た提案に、重苦しい空気が少しだけ動いて、視線が諒へ集まった。
「北門近くに少し前にオープンした店、聞いた話だと結構美味いみたいで。ずっと気になってるんだ」
「俺知ってる! 登下校に北門使ってるから。…でも外観眺めるだけで入ったことないんだよね…ひとりじゃ入り辛くて」
「へー、初めて聞いた。何ラーメン? 家系?」
「グルメサイトで調べたら、本格中華だって。ラーメン以外にも色々食べられるみたいだよ」
「いいねぇ。なんか猛烈に腹減ってきた!」
諒の提案に、理学部生たちの顔に少しずつ生気が戻っていき、我も我もと同行に名乗りをあげ始める。
うつ伏せになっていた啓介の頭もいつの間にか起き上がっていて、興奮の面持ちで頬を紅潮させていた。
「あー、俺もガッツリにんにくが恋しくなってきたわ。よーし、そうと決まればこんな湿気込んだ空間からは早くおさらばしようぜ。全員でラーメン屋殴り込みだ」
「髙城も行こう」
すっかり中華に脳内が支配され、拳を振り上げ雄叫びをあげる同級生たちの様子を一歩引いて眺めていた蒼矢へ、諒が声をかける。
誘われた蒼矢はすぐには返答出来ず、戸惑ったような表情を返した。
「…いや、俺は…」
「遠慮すんなって。俺たちには等しくリフレッシュが必要だ。…美味いもん食べて、気晴らししようぜ」
「そうだよ髙城、一緒に行こうぜ」
啓介は躊躇する彼の背中を押し、その場に居る同級生たちも笑顔を送っていた。
しかし蒼矢はやはり、申し訳なさそうな面持ちを浮かべながら俯くだけだった。
諒がもう一声かけようと口を開きかけた時、入口の引き戸が軋むようなレール音と共に開かれる。
「髙城君、いる?」
「…!」
開口一番に投げられた良く通る声は、少し沈黙が流れていた室内に響き、後ろからはやはり覚えのある顔と初顔の者が併せて数名続き、ぞろぞろと室内に足を踏み入れてくる。
声には出さなかったが、啓介は無遠慮に入室してくる彼らへ向け、鋭い視線を浴びせた。
呼びかけてきた男は、理学部生たちが今絶賛影響を被っている事案の根源である『T大ニュース』のサークルメンバーであった。
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