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本編
第8話_王室教師と-1
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多国籍の左派テロリストによる襲撃を経、それから数日間は、何事も無い穏やかな日々が続いた。
ハヅキ国王陛下は、相次ぐ凶事を受けて当面の公務を制限し、移動を伴う公務は首相や閣僚へ任せて王宮内で出来る公務に絞り、不自由の続く身体を押して、国の象徴たる王の務めを精力的に果たしていった。
イツキ王子殿下は、従前通り王宮内のみの生活を続け、外出機会は外部からの目の届かない中庭散策のみに留められていた。
基本的に午前中は王室教師による勉学、午後は読書や絵画、中庭で動植物と戯れるなどして過ごした。
王子付き護衛であるソウヤは、そんな彼をもちろん始終つきっきりで見守り、遊びに付き合ったり時には軽い運動に誘ったりなど、護衛任務からかけ離れた役目までもこなし、至極平和な毎日を送っていた。
その日もイツキ王子は午前中から王室教師のもと、自室で勉学に励んでいた。
「――お二人とも、そろそろお茶の時間に致しませんか?」
続きの間で用意したティーセットを手に、ソウヤが机に向かう王子たちへ声を掛け、ソファのローテーブルへ並べていく。
その声と漂う花の香りに、イツキ王子はペンの手を止め、顔をほころばせながら振り返った。
「…! 今日はローズヒップティーだね?」
「はい。スコーンとクロテッドクリームは、厨房の方にご用意頂きました」
早足で駆けつけソファへ座る王子へ、カップに紅茶を注ぎながらソウヤは微笑む。
遅れて腰掛けた王室教師・ユンへも、ティーカップとスコーン皿を差し出した。
華やかなテーブルセットを甲斐がいしく作り上げていくソウヤの所作を見、ユン氏は小さく唸りながら息をつく。
「改めて…、実に驚かされます。まさか護衛アンドロイドが、お茶の用意まで出来るとは」
「王宮へ参る前までは、創造主の元でこのようなお役目も頂いておりましたので。淹れ方は、動画などを見て自分で会得しました。…創造主にもお褒め頂いておりました」
ユン氏から感心の声と共に漏れる感想へ、ソウヤはにこりとそう返す。
「そういえば、元からの護衛機ではありませんでしたね。開発者…Dr.ミヤジマは、秘書機としてあなたを造られたとか」
「! ええ、そうなんです」
「まさに異色の護衛機ですね。いえ、あなたを否定している訳ではないんですよ。気に障ったなら失礼」
「いえ、お気になさらず…」
ユン氏の言葉にソウヤはそうとりなすものの、内心ではヒヤリとし、胸をなで下ろしていた。
ハヅキ国王陛下は、相次ぐ凶事を受けて当面の公務を制限し、移動を伴う公務は首相や閣僚へ任せて王宮内で出来る公務に絞り、不自由の続く身体を押して、国の象徴たる王の務めを精力的に果たしていった。
イツキ王子殿下は、従前通り王宮内のみの生活を続け、外出機会は外部からの目の届かない中庭散策のみに留められていた。
基本的に午前中は王室教師による勉学、午後は読書や絵画、中庭で動植物と戯れるなどして過ごした。
王子付き護衛であるソウヤは、そんな彼をもちろん始終つきっきりで見守り、遊びに付き合ったり時には軽い運動に誘ったりなど、護衛任務からかけ離れた役目までもこなし、至極平和な毎日を送っていた。
その日もイツキ王子は午前中から王室教師のもと、自室で勉学に励んでいた。
「――お二人とも、そろそろお茶の時間に致しませんか?」
続きの間で用意したティーセットを手に、ソウヤが机に向かう王子たちへ声を掛け、ソファのローテーブルへ並べていく。
その声と漂う花の香りに、イツキ王子はペンの手を止め、顔をほころばせながら振り返った。
「…! 今日はローズヒップティーだね?」
「はい。スコーンとクロテッドクリームは、厨房の方にご用意頂きました」
早足で駆けつけソファへ座る王子へ、カップに紅茶を注ぎながらソウヤは微笑む。
遅れて腰掛けた王室教師・ユンへも、ティーカップとスコーン皿を差し出した。
華やかなテーブルセットを甲斐がいしく作り上げていくソウヤの所作を見、ユン氏は小さく唸りながら息をつく。
「改めて…、実に驚かされます。まさか護衛アンドロイドが、お茶の用意まで出来るとは」
「王宮へ参る前までは、創造主の元でこのようなお役目も頂いておりましたので。淹れ方は、動画などを見て自分で会得しました。…創造主にもお褒め頂いておりました」
ユン氏から感心の声と共に漏れる感想へ、ソウヤはにこりとそう返す。
「そういえば、元からの護衛機ではありませんでしたね。開発者…Dr.ミヤジマは、秘書機としてあなたを造られたとか」
「! ええ、そうなんです」
「まさに異色の護衛機ですね。いえ、あなたを否定している訳ではないんですよ。気に障ったなら失礼」
「いえ、お気になさらず…」
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