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本編
第14話_"空き家"の密談_4
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これまでの推測からそう結論をまとめるふたりを、陽が上目遣いでうかがった。
「…苡月が標的なのは、揺るぎないってことか…?」
「『セイバー』関連だと匂わす言動もあったから、ほぼ確定だと思う」
「…うぅ」
蒼矢から確信を持ってそう返され、陽は肩を落とした。
烈はドッグタグを指で挟み、天井の蛍光灯に透かしながら呟く。
「…なんでこんな証拠になるようなもん残してったんだろ?」
「さっき蒼矢が言ってた通り、条件が揃わない限りただの板でしかねぇし、さして重要なもんじゃねぇってことだろ。鉱石に反応はするが、だからって『セイバー』にどうこう出来るってわけでもねぇし」
「[奴]が再び楠瀬邸へ来られるよう、わざと置いていった可能性はありますが」
「"専用口"みたいなもんか。…なんでそんな回りくどい真似をするんだろうな」
烈の新たな気付きに、ほか面々も改めて[侵略者]の意図をはかり直す。
「…確かに、直接攻めてこれるものをわざわざ道具を介して接触してくるって行動は、思考が読めねぇな。前日にワンクッション置いてきたって行動も含めると、ますます意味不だ。こだわりが強いってプロファイリングにつながるのか?」
「俺としては、明確な目的だっただろう苡月の捕獲を仕損じてることも気になるんです。前日から時間をかけてみずからお膳立てしておいて、最終的になぜ置いて還ったのか…」
「ただのサイコパスなのか、それ以外にも理由があるのか、はかり知れねぇな」
「…やっぱり、なにか独特なポリシーがある個体には感じますが…」
[犲牙]に襲われた際、"[浬]の獲物だから"という、基本自分本位な[侵略者]らしからぬ理由で捕獲を免れた蒼矢は、そう言葉端を濁しつつ、内で思考を巡らす。
…あの時の[犲牙]の言動に、他になにかヒントはあっただろうか…?
「――つーわけで、苡月は更に要監視対象になるわけだが…、…まずいことになった」
蒼矢が点々とする記憶を辿り、思案に埋もれていこうとしたところで、影斗は重い口調で切り出す。
「…! 苡月が実家に帰されるかもしれねぇって話か…?」
「ああ。親の立場からしちゃ、至極真っ当な判断だ。期間が限られるだろうとはいえ、中坊にひとり暮らしはさせられねぇわな…」
保護者である葉月を長期入院という形で失ってしまった苡月には、移住から2か月あまりという短期間で、再び母方の実家へ戻される可能性が浮上してきていた。
選択肢としては、居住地を実家に戻して実家近郊の中学へ再転校するか、居住地のみを戻して現在の東京の中学へ長距離通学するかの2択が考えられた。
おそらく再転校は、苡月へのストレスと本人の志望高を考慮して回避されるだろうが、長距離通学に関しては、卒業まであと数か月ということもあり、一時的な金銭負担と本人の根性次第で全く都合がつかない状況というわけでもない。
いずれにせよ、中学生の苡月が今の東京の楠瀬邸で期間不確定のひとり暮らしを続ける選択肢は皆無、ということである。
「…苡月が標的なのは、揺るぎないってことか…?」
「『セイバー』関連だと匂わす言動もあったから、ほぼ確定だと思う」
「…うぅ」
蒼矢から確信を持ってそう返され、陽は肩を落とした。
烈はドッグタグを指で挟み、天井の蛍光灯に透かしながら呟く。
「…なんでこんな証拠になるようなもん残してったんだろ?」
「さっき蒼矢が言ってた通り、条件が揃わない限りただの板でしかねぇし、さして重要なもんじゃねぇってことだろ。鉱石に反応はするが、だからって『セイバー』にどうこう出来るってわけでもねぇし」
「[奴]が再び楠瀬邸へ来られるよう、わざと置いていった可能性はありますが」
「"専用口"みたいなもんか。…なんでそんな回りくどい真似をするんだろうな」
烈の新たな気付きに、ほか面々も改めて[侵略者]の意図をはかり直す。
「…確かに、直接攻めてこれるものをわざわざ道具を介して接触してくるって行動は、思考が読めねぇな。前日にワンクッション置いてきたって行動も含めると、ますます意味不だ。こだわりが強いってプロファイリングにつながるのか?」
「俺としては、明確な目的だっただろう苡月の捕獲を仕損じてることも気になるんです。前日から時間をかけてみずからお膳立てしておいて、最終的になぜ置いて還ったのか…」
「ただのサイコパスなのか、それ以外にも理由があるのか、はかり知れねぇな」
「…やっぱり、なにか独特なポリシーがある個体には感じますが…」
[犲牙]に襲われた際、"[浬]の獲物だから"という、基本自分本位な[侵略者]らしからぬ理由で捕獲を免れた蒼矢は、そう言葉端を濁しつつ、内で思考を巡らす。
…あの時の[犲牙]の言動に、他になにかヒントはあっただろうか…?
「――つーわけで、苡月は更に要監視対象になるわけだが…、…まずいことになった」
蒼矢が点々とする記憶を辿り、思案に埋もれていこうとしたところで、影斗は重い口調で切り出す。
「…! 苡月が実家に帰されるかもしれねぇって話か…?」
「ああ。親の立場からしちゃ、至極真っ当な判断だ。期間が限られるだろうとはいえ、中坊にひとり暮らしはさせられねぇわな…」
保護者である葉月を長期入院という形で失ってしまった苡月には、移住から2か月あまりという短期間で、再び母方の実家へ戻される可能性が浮上してきていた。
選択肢としては、居住地を実家に戻して実家近郊の中学へ再転校するか、居住地のみを戻して現在の東京の中学へ長距離通学するかの2択が考えられた。
おそらく再転校は、苡月へのストレスと本人の志望高を考慮して回避されるだろうが、長距離通学に関しては、卒業まであと数か月ということもあり、一時的な金銭負担と本人の根性次第で全く都合がつかない状況というわけでもない。
いずれにせよ、中学生の苡月が今の東京の楠瀬邸で期間不確定のひとり暮らしを続ける選択肢は皆無、ということである。
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