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本編
第4話_漂う異臭-4
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『転異空間』が解除され、3人は元いた『現実世界』の、転送地点である自然公園入口へ戻ってきた。
転送前の異様な空気はかき消え、暗がりに虫の鳴き声と風に揺れる木々の音が優しく聞こえてきていた。
「……」
蒼矢は手元へ視線を落とし、何度かゆっくりと手のひらを握り直す。
…臭いも…痺れも無くなってる。何か関連はあったのか…?
「しばらく警戒、かな」
「だなー」
軽く言葉を交わす中、黙ったまま下を向いている蒼矢へ、烈と影斗は目を留める。
「? …蒼矢?」
「おい、大丈夫か? 具合でも悪くなったか?」
「! …あ、いえ」
2人からの視線を浴び、蒼矢ははたと気づいてとりなした。
「転送前と『転異空間』での臭いが気になって…、その件も含めて、俺から葉月さんに報告しておきます」
「…了解、頼んだ」
3人は走ってきた元道を戻り、蒼矢と別れ、影斗は取り寄せを頼んでいた酒を受け取りに烈と花房家へ向かう。
「――なぁ、烈」
バイクを引きながら、影斗は前を向いたまま声をかけた。
「お前、蒼矢となんかあった?」
「……は?」
唐突な話題に、烈は眉をひそめながら影斗へ振り向く。
「何かって…なんだよ」
「俺が聞いてんだろ。ここんとこ、いつもと変わりなかったかってことだよ」
「……ねぇよ」
少し沈黙した後、足許へ呟くように返答した烈へ、影斗はちろりと横目を投げる。
「…お前さぁ、誰かと付き合ったこととかってあんの?」
「はぁ…!?」
いよいよ影斗の会話の流れがわからなくなった烈は、彼へ目を剥いた。声高になる烈のリアクションを受け流すように、影斗は続ける。
「あんの? ねぇの?」
「…ねぇけど」
「じゃ、男として気になったり、気分がアガったりする相手に出会ったことは?」
影斗は、ややボケたところがある烈の思考回路を見越すような言い回しで、問いかけていく。
彼の質問を受けて、瞬間戸惑った烈は徐々に冷静さを取り戻し、しばし考え込む。
「…わかんねぇ。中高共学だったけど野郎とばっかりつるんでて、女とは授業中とか校内イベントの時とかに話すくらいで、深く絡んでなかったし…、高校じゃ部活も委員会もやってなかったし…」
「あぁ、いや別に"女"に限定してるわけじゃねぇからな?」
思考の渦にのまれていきそうになる烈へ、影斗はごく自然に助言を入れた。
「女でも男でも構わねぇよ。性的に惹かれるとか、自分のものにしてぇとか、そういう風に感じた奴はいねぇのか?」
「――」
烈は思考が止まったのか、呆けた顔を向ける。目が合った影斗は、感情の読めない表情からわずかに烈の内情を探るような、鋭い視線を送っていた。
いつの間にか、二人の足は止まっていた。
「――っ」
「着いたぜ、お前んち」
間隙を経て、影斗は何か言いかけた烈からすっと目を外し、顎で彼の後方を指し示す。
「…!」
「酒、届いてるだろ。いくらだっけー?」
「あ…、えっと…」
「値段くらい頭に入れとけよ、三代目。…金用意してるから、早く取ってきて」
「お、おう」
影斗に急かされ、烈は慌てて店の奥へ消えていく。
「……」
後姿を見送りながら、影斗は真顔のまま、目を細めた。
転送前の異様な空気はかき消え、暗がりに虫の鳴き声と風に揺れる木々の音が優しく聞こえてきていた。
「……」
蒼矢は手元へ視線を落とし、何度かゆっくりと手のひらを握り直す。
…臭いも…痺れも無くなってる。何か関連はあったのか…?
「しばらく警戒、かな」
「だなー」
軽く言葉を交わす中、黙ったまま下を向いている蒼矢へ、烈と影斗は目を留める。
「? …蒼矢?」
「おい、大丈夫か? 具合でも悪くなったか?」
「! …あ、いえ」
2人からの視線を浴び、蒼矢ははたと気づいてとりなした。
「転送前と『転異空間』での臭いが気になって…、その件も含めて、俺から葉月さんに報告しておきます」
「…了解、頼んだ」
3人は走ってきた元道を戻り、蒼矢と別れ、影斗は取り寄せを頼んでいた酒を受け取りに烈と花房家へ向かう。
「――なぁ、烈」
バイクを引きながら、影斗は前を向いたまま声をかけた。
「お前、蒼矢となんかあった?」
「……は?」
唐突な話題に、烈は眉をひそめながら影斗へ振り向く。
「何かって…なんだよ」
「俺が聞いてんだろ。ここんとこ、いつもと変わりなかったかってことだよ」
「……ねぇよ」
少し沈黙した後、足許へ呟くように返答した烈へ、影斗はちろりと横目を投げる。
「…お前さぁ、誰かと付き合ったこととかってあんの?」
「はぁ…!?」
いよいよ影斗の会話の流れがわからなくなった烈は、彼へ目を剥いた。声高になる烈のリアクションを受け流すように、影斗は続ける。
「あんの? ねぇの?」
「…ねぇけど」
「じゃ、男として気になったり、気分がアガったりする相手に出会ったことは?」
影斗は、ややボケたところがある烈の思考回路を見越すような言い回しで、問いかけていく。
彼の質問を受けて、瞬間戸惑った烈は徐々に冷静さを取り戻し、しばし考え込む。
「…わかんねぇ。中高共学だったけど野郎とばっかりつるんでて、女とは授業中とか校内イベントの時とかに話すくらいで、深く絡んでなかったし…、高校じゃ部活も委員会もやってなかったし…」
「あぁ、いや別に"女"に限定してるわけじゃねぇからな?」
思考の渦にのまれていきそうになる烈へ、影斗はごく自然に助言を入れた。
「女でも男でも構わねぇよ。性的に惹かれるとか、自分のものにしてぇとか、そういう風に感じた奴はいねぇのか?」
「――」
烈は思考が止まったのか、呆けた顔を向ける。目が合った影斗は、感情の読めない表情からわずかに烈の内情を探るような、鋭い視線を送っていた。
いつの間にか、二人の足は止まっていた。
「――っ」
「着いたぜ、お前んち」
間隙を経て、影斗は何か言いかけた烈からすっと目を外し、顎で彼の後方を指し示す。
「…!」
「酒、届いてるだろ。いくらだっけー?」
「あ…、えっと…」
「値段くらい頭に入れとけよ、三代目。…金用意してるから、早く取ってきて」
「お、おう」
影斗に急かされ、烈は慌てて店の奥へ消えていく。
「……」
後姿を見送りながら、影斗は真顔のまま、目を細めた。
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