ガイアセイバーズ5 -歪な虚構の翅-

独楽 悠

文字の大きさ
20 / 51
本編

第4話_漂う異臭-4

しおりを挟む
『転異空間』が解除され、3人は元いた『現実世界』の、転送地点である自然公園入口へ戻ってきた。
転送前の異様な空気はかき消え、暗がりに虫の鳴き声と風に揺れる木々の音が優しく聞こえてきていた。
「……」
蒼矢ソウヤは手元へ視線を落とし、何度かゆっくりと手のひらを握り直す。
…臭いも…痺れも無くなってる。何か関連はあったのか…?
「しばらく警戒、かな」
「だなー」
軽く言葉を交わす中、黙ったまま下を向いている蒼矢へ、レツ影斗エイトは目を留める。
「? …蒼矢?」
「おい、大丈夫か? 具合でも悪くなったか?」
「! …あ、いえ」
2人からの視線を浴び、蒼矢ははたと気づいてとりなした。
「転送前と『転異空間あっち』での臭いが気になって…、その件も含めて、俺から葉月ハヅキさんに報告しておきます」
「…了解、頼んだ」
3人は走ってきた元道を戻り、蒼矢と別れ、影斗は取り寄せを頼んでいた酒を受け取りに烈と花房ハナブサ家へ向かう。
「――なぁ、烈」
バイクを引きながら、影斗は前を向いたまま声をかけた。
「お前、蒼矢となんかあった?」
「……は?」
唐突な話題に、烈は眉をひそめながら影斗へ振り向く。
「何かって…なんだよ」
「俺が聞いてんだろ。ここんとこ、いつもと変わりなかったかってことだよ」
「……ねぇよ」
少し沈黙した後、足許へ呟くように返答した烈へ、影斗はちろりと横目を投げる。
「…お前さぁ、誰かと付き合ったこととかってあんの?」
「はぁ…!?」
いよいよ影斗の会話の流れがわからなくなった烈は、彼へ目を剥いた。声高になる烈のリアクションを受け流すように、影斗は続ける。
「あんの? ねぇの?」
「…ねぇけど」
「じゃ、男として・・・・気になったり、気分がアガったりする相手に出会ったことは?」
影斗は、ややボケたところがある烈の思考回路を見越すような言い回しで、問いかけていく。
彼の質問を受けて、瞬間戸惑った烈は徐々に冷静さを取り戻し、しばし考え込む。
「…わかんねぇ。中高共学だったけど野郎とばっかりつるんでて、女とは授業中とか校内イベントの時とかに話すくらいで、深く絡んでなかったし…、高校じゃ部活も委員会もやってなかったし…」
「あぁ、いや別に"女"に限定してるわけじゃねぇからな?」
思考の渦にのまれていきそうになる烈へ、影斗はごく自然に助言を入れた。
「女でも男でも構わねぇよ。性的に惹かれるとか、自分のものにしてぇとか、そういう風に感じた奴はいねぇのか?」
「――」
烈は思考が止まったのか、呆けた顔を向ける。目が合った影斗は、感情の読めない表情からわずかに烈の内情を探るような、鋭い視線を送っていた。
いつの間にか、二人の足は止まっていた。
「――っ」
「着いたぜ、お前んち」
間隙を経て、影斗は何か言いかけた烈からすっと目を外し、顎で彼の後方を指し示す。
「…!」
「酒、届いてるだろ。いくらだっけー?」
「あ…、えっと…」
「値段くらい頭に入れとけよ、三代目。…金用意してるから、早く取ってきて」
「お、おう」
影斗に急かされ、烈は慌てて店の奥へ消えていく。
「……」
後姿を見送りながら、影斗は真顔のまま、目を細めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

流れる星は海に還る

藤間留彦
BL
若頭兄×現組長の実子の弟の血の繋がらない兄弟BL。 組長の命で弟・流星をカタギとして育てた兄・一海。組長が倒れ、跡目争いが勃発。実子の存在が知れ、流星がその渦中に巻き込まれることになり──。 <登場人物> 辻倉一海(つじくらかずみ) 37歳。身長188cm。 若い頃は垂れ目で優しい印象を持たれがちだったため、長年サングラスを掛けている。 組内では硬派で厳しいが、弟の流星には甘々のブラコン。 中村流星(なかむらりゅうせい) 23歳。身長177cm。 ストリートロックファッション、両耳ピアス。育ててくれた兄には甘えん坊だが、兄以外の前では──。 表紙イラストは座頭狂様に描いて頂きました✨ ありがとうございます☺️

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

カルピスサワー

ふうか
BL
 ──三年前の今日、俺はここで告白された。 イケメン部下✕おじさん上司。年の差20歳。 臆病なおじさんと、片想い部下による、甘い夏の恋です。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

処理中です...