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本編
第7話_盲を穿つ牙-1
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翌日、講義の合間に大学構内のカフェテリアで友人たちと休憩していた蒼矢のスマホに、SNSが届く。
「…!」
「誰? …エイト先輩じゃん」
画面を見て一瞬後少し眉を寄せた蒼矢を見、隣の席の沖本がスマホを覗き込んできた。
「見るなよ」
「そんな変な顔するから気になっちゃったんだよ。先輩、また迎えに来るって?」
「…」
「すごいな。最近ほぼ毎日じゃん」
「先輩の大学ここから近いとはいえ、髙城ん家まで送ってから帰るんだろ? 愛されてんなぁー」
「何でそういう話になるんだよ…」
率直な感想を述べただけなのに、誤魔化すでも謙遜するでもなくただ憮然とした表情を返す彼に、沖本と対面に座っていた川崎は顔を見合わせた。
そんな2人の反応へは目もくれないまま、蒼矢はスマホを伏せて手元に視線を落とす。
「…もちろん助かるし気持ちは嬉しいけど、負担になってるのは確かだろ? ガソリン代だって馬鹿にならないだろうし。…先輩は、俺が返せないことばかりしようとしてくるんだ。それが嫌で断ってるのに、いつもはぐらかしてくるし…。厚意からなんだろうってことは感じるけど…」
「いやいや…"だろう"じゃなくてさ。そりゃ間違いなく好意じゃんか」
「そうだよ、愛情だよ。無償の愛なんだよ」
顔をあげ、ぽやっとした面持ちを返す彼へ、ここぞとばかりに川崎と沖本は影斗の代わりに畳みかける。
「いいか? エイト先輩は同じようなことを誰に対してもやってくれるような聖人君子じゃない。むしろ本質はドライな方だと思う。お前だって長年付き合ってるんだろうからわかるだろ?」
「現に俺らには見向きもしないぞ、あの人。…先輩にとって、お前だけが"特別"なんだって。素直に甘えてやれよ! あの人の胸に飛び込んでってやれよっ…」
そこまで熱く語ったところで、2人は口走り過ぎたかとやや焦り、一旦言い止めて目を合わせる。
蒼矢は黙ったまま彼らの思いのたけを受け止めていたが、再び視線はテーブルへ落ちた。
「相手の気遣いに一方的に甘えるとか、フェアじゃないから出来ない。先輩と後輩の仲であっても、俺はそういう情の部分は対等な関係でいたいんだ」
2人が目を点にする中、蒼矢は荷物をまとめて席を立つ。
「じゃ、助教に時間作ってもらってるから」
「…!? おい、エイト先輩の件はどうなるんだよ?」
「断った。今日は図書館寄りたいから遅くなるし、待ってもらっても困る」
「――。」
口を開けたまま固まる友人たちを置き、蒼矢はカフェテリアを後にしていった。
彼の姿がなくなるまで見送ると、沖本はテーブルに顔を突っ伏した。
「…あいつなんなんだよ!? あんなっ…他に引く手数多だろう超イケメンにあれだけ大事にされておいて…こんな仕打ちっ…! あれか、あいつの心に響く相手はアンドロイドか犬猫くらいなのか!?」
「あながち間違ってないけど、髙城の恋愛対象にどこまで許容があるかって話の前に、そもそもあいつにとってエイト先輩が"先輩"である限り、そこから何も進展しないんだ」
そう返しながらスマホを取り、川崎は真顔で操作し始める。
「…? 誰に連絡取ってんだ?」
「エイト先輩」
「……は!? お前、いつの間に連絡先…ずるいぞ!?」
「貰う時わりと工夫が要ったぞ。俺たちはエイト先輩の想いが成就して欲しい。だろ?」
「もちろんだ。で、どうするんだ?」
「先輩に直訴する。…もっと強引にいってもらわないと駄目だ」
「…!」
「誰? …エイト先輩じゃん」
画面を見て一瞬後少し眉を寄せた蒼矢を見、隣の席の沖本がスマホを覗き込んできた。
「見るなよ」
「そんな変な顔するから気になっちゃったんだよ。先輩、また迎えに来るって?」
「…」
「すごいな。最近ほぼ毎日じゃん」
「先輩の大学ここから近いとはいえ、髙城ん家まで送ってから帰るんだろ? 愛されてんなぁー」
「何でそういう話になるんだよ…」
率直な感想を述べただけなのに、誤魔化すでも謙遜するでもなくただ憮然とした表情を返す彼に、沖本と対面に座っていた川崎は顔を見合わせた。
そんな2人の反応へは目もくれないまま、蒼矢はスマホを伏せて手元に視線を落とす。
「…もちろん助かるし気持ちは嬉しいけど、負担になってるのは確かだろ? ガソリン代だって馬鹿にならないだろうし。…先輩は、俺が返せないことばかりしようとしてくるんだ。それが嫌で断ってるのに、いつもはぐらかしてくるし…。厚意からなんだろうってことは感じるけど…」
「いやいや…"だろう"じゃなくてさ。そりゃ間違いなく好意じゃんか」
「そうだよ、愛情だよ。無償の愛なんだよ」
顔をあげ、ぽやっとした面持ちを返す彼へ、ここぞとばかりに川崎と沖本は影斗の代わりに畳みかける。
「いいか? エイト先輩は同じようなことを誰に対してもやってくれるような聖人君子じゃない。むしろ本質はドライな方だと思う。お前だって長年付き合ってるんだろうからわかるだろ?」
「現に俺らには見向きもしないぞ、あの人。…先輩にとって、お前だけが"特別"なんだって。素直に甘えてやれよ! あの人の胸に飛び込んでってやれよっ…」
そこまで熱く語ったところで、2人は口走り過ぎたかとやや焦り、一旦言い止めて目を合わせる。
蒼矢は黙ったまま彼らの思いのたけを受け止めていたが、再び視線はテーブルへ落ちた。
「相手の気遣いに一方的に甘えるとか、フェアじゃないから出来ない。先輩と後輩の仲であっても、俺はそういう情の部分は対等な関係でいたいんだ」
2人が目を点にする中、蒼矢は荷物をまとめて席を立つ。
「じゃ、助教に時間作ってもらってるから」
「…!? おい、エイト先輩の件はどうなるんだよ?」
「断った。今日は図書館寄りたいから遅くなるし、待ってもらっても困る」
「――。」
口を開けたまま固まる友人たちを置き、蒼矢はカフェテリアを後にしていった。
彼の姿がなくなるまで見送ると、沖本はテーブルに顔を突っ伏した。
「…あいつなんなんだよ!? あんなっ…他に引く手数多だろう超イケメンにあれだけ大事にされておいて…こんな仕打ちっ…! あれか、あいつの心に響く相手はアンドロイドか犬猫くらいなのか!?」
「あながち間違ってないけど、髙城の恋愛対象にどこまで許容があるかって話の前に、そもそもあいつにとってエイト先輩が"先輩"である限り、そこから何も進展しないんだ」
そう返しながらスマホを取り、川崎は真顔で操作し始める。
「…? 誰に連絡取ってんだ?」
「エイト先輩」
「……は!? お前、いつの間に連絡先…ずるいぞ!?」
「貰う時わりと工夫が要ったぞ。俺たちはエイト先輩の想いが成就して欲しい。だろ?」
「もちろんだ。で、どうするんだ?」
「先輩に直訴する。…もっと強引にいってもらわないと駄目だ」
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