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本編
第10話_見定まった心-1(R18)
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★R18表現あり
---
烈は窓から身を乗り出して探したものの、鱗の姿は煙のように消え去っていた。
大きく肩を上下し興奮冷めやらぬ耳に、苦しそうに咳込む呼吸音が聞こえてくる。
「…! 蒼矢!! …っ!」
振り返り、駆け寄ろうとした烈の足がすくむ。
「……」
視界に入った蒼矢は髪を乱し、痩せた上半身を汗まみれにしながらベッドの上に倒れ込んでいた。
左胸の青い刻印には、上から深く引っ掛かれたような赤い筋が彫られ、腹には赤黒い大きな痣が出来ていた。ベッドの縁からだらりと垂れ下がる脚の間からは陰茎が露出し、シーツと床に白濁の液が点々と残っていた。
烈はその凄惨な姿を、呆然と眺めていた。
…一体、何が起きてるんだ?
…なんで、こいつがこんな目に遭わないとならねぇんだ…?
…俺はどれだけ、こいつに降りかかってた悪夢を知らなかったんだ…?
「そ…」
「…るな…っ…」
手を伸ばしかけると、倒れる痩躯から声が漏れる。
「…見るな…っ…!」
腕で顔を隠し、か細く震える声が、怒りにも似た感情をぶつけてくる。
「……」
立ち尽くしていた烈はゆっくりと蒼矢へ歩み寄り、ベッドに手を置くと、横たわる彼を正面から見下ろした。
「蒼矢」
「…っ」
至近距離で届いた声にびくりと揺れ、蒼矢は身体を丸める。その姿を見つめる烈はごく落ち着いた表情のまま、彼の肩に優しく手を置く。
「蒼矢、顔見せてくれよ」
「…っ…!」
「…お前がこんなにされて、俺がどうとも思わねぇと思ってんのか?」
静かながらも、表層に別の感情を滲ませる低い声が、蒼矢の耳に流れていく。
烈がそっと腕に触れ、持ち上げると、抵抗することなくゆっくりと剥がれていく。白い肌を火照らせ、弱々しく浅く息をする横顔は、彼をなおも拒むように視線をベッドへ落とす。
その横顔を見つめたまま、烈は彼の頭と腰に手を回した。蒼矢の身体は、烈の腕だけで簡単に持ち上がる。
「一回起きろ。その体勢じゃきついだろ」
「…!? 嫌だ、やめろ…!」
腕の中でもがき始める彼を、烈は支えながら身体に寄せる。
「落ち着けって、余計痛いだろうが。…大丈夫だ、寝かせるだけだから」
「嫌だっ…嫌だ!! 触るな!!」
声を荒げてわめく爪が、烈の肩口にくい込んでいく。
その痛みを受け入れ、烈はベッドに膝をつくと、全身で拒絶する蒼矢を両腕で包み込む。
「…俺は、これ以上お前に傷ついて欲しくない。傷つけたくないだけなんだ。…わかってくれよ」
「…っうぅ…っ…!」
蒼矢は声を震わせ、嗚咽し始めた。
烈は耳のそばで繰り返されるしゃっくり声と、零れ落ちる涙を受け止めながら、彼の身体を優しく抱きしめた。
「ごめん。…遅くなってごめんな…」
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烈は窓から身を乗り出して探したものの、鱗の姿は煙のように消え去っていた。
大きく肩を上下し興奮冷めやらぬ耳に、苦しそうに咳込む呼吸音が聞こえてくる。
「…! 蒼矢!! …っ!」
振り返り、駆け寄ろうとした烈の足がすくむ。
「……」
視界に入った蒼矢は髪を乱し、痩せた上半身を汗まみれにしながらベッドの上に倒れ込んでいた。
左胸の青い刻印には、上から深く引っ掛かれたような赤い筋が彫られ、腹には赤黒い大きな痣が出来ていた。ベッドの縁からだらりと垂れ下がる脚の間からは陰茎が露出し、シーツと床に白濁の液が点々と残っていた。
烈はその凄惨な姿を、呆然と眺めていた。
…一体、何が起きてるんだ?
…なんで、こいつがこんな目に遭わないとならねぇんだ…?
…俺はどれだけ、こいつに降りかかってた悪夢を知らなかったんだ…?
「そ…」
「…るな…っ…」
手を伸ばしかけると、倒れる痩躯から声が漏れる。
「…見るな…っ…!」
腕で顔を隠し、か細く震える声が、怒りにも似た感情をぶつけてくる。
「……」
立ち尽くしていた烈はゆっくりと蒼矢へ歩み寄り、ベッドに手を置くと、横たわる彼を正面から見下ろした。
「蒼矢」
「…っ」
至近距離で届いた声にびくりと揺れ、蒼矢は身体を丸める。その姿を見つめる烈はごく落ち着いた表情のまま、彼の肩に優しく手を置く。
「蒼矢、顔見せてくれよ」
「…っ…!」
「…お前がこんなにされて、俺がどうとも思わねぇと思ってんのか?」
静かながらも、表層に別の感情を滲ませる低い声が、蒼矢の耳に流れていく。
烈がそっと腕に触れ、持ち上げると、抵抗することなくゆっくりと剥がれていく。白い肌を火照らせ、弱々しく浅く息をする横顔は、彼をなおも拒むように視線をベッドへ落とす。
その横顔を見つめたまま、烈は彼の頭と腰に手を回した。蒼矢の身体は、烈の腕だけで簡単に持ち上がる。
「一回起きろ。その体勢じゃきついだろ」
「…!? 嫌だ、やめろ…!」
腕の中でもがき始める彼を、烈は支えながら身体に寄せる。
「落ち着けって、余計痛いだろうが。…大丈夫だ、寝かせるだけだから」
「嫌だっ…嫌だ!! 触るな!!」
声を荒げてわめく爪が、烈の肩口にくい込んでいく。
その痛みを受け入れ、烈はベッドに膝をつくと、全身で拒絶する蒼矢を両腕で包み込む。
「…俺は、これ以上お前に傷ついて欲しくない。傷つけたくないだけなんだ。…わかってくれよ」
「…っうぅ…っ…!」
蒼矢は声を震わせ、嗚咽し始めた。
烈は耳のそばで繰り返されるしゃっくり声と、零れ落ちる涙を受け止めながら、彼の身体を優しく抱きしめた。
「ごめん。…遅くなってごめんな…」
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