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本編
第4話_静寂のためらい_2
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そんな、疑わしい前例を数多く経験してきた蒼矢であったが、蔓田の言動を思い返してなお、肯定できずにいた。
…会って一緒にいた間だけで換算すればまだ数時間だし、単純な興味なだけかもしれない。
…誰か憧れの人物がいて、その人に投影しているだけかもしれない。
基本自分自身に否定的になりがちな蒼矢だったが、今回はそう考える方が正しいと感じ始めていた。
…きっとそうだ…多分、勘違いだ。
「――おまたせ」
葉月がお茶セットを手に戻ってくる。
「ありがとうございます」
「熱いからね」
ゆったりとした動作でお茶を差し出し、葉月は蒼矢の斜め前に座る。
口元に笑みを浮かべつつ視線は蒼矢へ注いでいたが、何も話さないでいるとやがて手元の本に移り、静かに読み始める。
葉月は、自分から聞き出すことは滅多にしない。
多くはただ黙って、こちらが話し始めるのを待っている。
蒼矢もそんな彼だから気が許せるし、何かがあるとこうして相談しに来るようにしている。
しかしどうしてか、今日は言い出すことが出来なかった。
なんとなく、恥ずかしさの方が前に出てしまっていた。
しばらく沈黙が続くと、葉月が口を開く。
「…手遅れにならないのなら、もう一度考えてから来るといいよ」
「…!」
蒼矢が顔をあげると、葉月も本から顔をあげ、にっこりと笑う。
その包み込まれるような笑顔に、蒼矢の思考が揺らいだ。
「っあの…葉月さん」
決意を決めた蒼矢が口を開きかけた時、双方の胸元が淡く光り出す。
「!」
「…こんな時に。話は後にしよう」
二人はほぼ同時に立ちあがり、急ぎ表へと向かった。
玄関を出、ひとまず鳥居の前まで走り出る。
「蒼矢、場所はわかる?」
「…多分T運動場です」
「近くて良かった。車を出すからちょっと待ってて」
家の裏に行きかけた葉月のスマホに、タイミングよく着信が入る。
「烈からだ。彼のお店の方が近いね」
「俺、直接場所伝えてきます」
「うん、お願い。すぐ追いつくから」
蒼矢は駆け出し、急ぎ烈のいる酒屋へ向かう。
店構えを視界に捉えると、ヘルメットを片手に入り口から飛び出してくる烈の姿が見えた。
「じゃ、かーちゃん店よろしく!!」
「烈!」
「! おうっ!」
烈は慣れた手つきで店脇の駐輪スペースからバイクを引きずり出し、後ろ向きに停める。
そして葉月から何か指示を受けたのか、走り来る蒼矢にヘルメットを投げて寄越した。
「葉月さん、車で直行するって。場所は?」
「行きながら伝える」
「了解!」
蒼矢はヘルメットをかぶり、タンデムにまたがった。
バイクがエンジンをふかし、勢いよく走り出す。
…会って一緒にいた間だけで換算すればまだ数時間だし、単純な興味なだけかもしれない。
…誰か憧れの人物がいて、その人に投影しているだけかもしれない。
基本自分自身に否定的になりがちな蒼矢だったが、今回はそう考える方が正しいと感じ始めていた。
…きっとそうだ…多分、勘違いだ。
「――おまたせ」
葉月がお茶セットを手に戻ってくる。
「ありがとうございます」
「熱いからね」
ゆったりとした動作でお茶を差し出し、葉月は蒼矢の斜め前に座る。
口元に笑みを浮かべつつ視線は蒼矢へ注いでいたが、何も話さないでいるとやがて手元の本に移り、静かに読み始める。
葉月は、自分から聞き出すことは滅多にしない。
多くはただ黙って、こちらが話し始めるのを待っている。
蒼矢もそんな彼だから気が許せるし、何かがあるとこうして相談しに来るようにしている。
しかしどうしてか、今日は言い出すことが出来なかった。
なんとなく、恥ずかしさの方が前に出てしまっていた。
しばらく沈黙が続くと、葉月が口を開く。
「…手遅れにならないのなら、もう一度考えてから来るといいよ」
「…!」
蒼矢が顔をあげると、葉月も本から顔をあげ、にっこりと笑う。
その包み込まれるような笑顔に、蒼矢の思考が揺らいだ。
「っあの…葉月さん」
決意を決めた蒼矢が口を開きかけた時、双方の胸元が淡く光り出す。
「!」
「…こんな時に。話は後にしよう」
二人はほぼ同時に立ちあがり、急ぎ表へと向かった。
玄関を出、ひとまず鳥居の前まで走り出る。
「蒼矢、場所はわかる?」
「…多分T運動場です」
「近くて良かった。車を出すからちょっと待ってて」
家の裏に行きかけた葉月のスマホに、タイミングよく着信が入る。
「烈からだ。彼のお店の方が近いね」
「俺、直接場所伝えてきます」
「うん、お願い。すぐ追いつくから」
蒼矢は駆け出し、急ぎ烈のいる酒屋へ向かう。
店構えを視界に捉えると、ヘルメットを片手に入り口から飛び出してくる烈の姿が見えた。
「じゃ、かーちゃん店よろしく!!」
「烈!」
「! おうっ!」
烈は慣れた手つきで店脇の駐輪スペースからバイクを引きずり出し、後ろ向きに停める。
そして葉月から何か指示を受けたのか、走り来る蒼矢にヘルメットを投げて寄越した。
「葉月さん、車で直行するって。場所は?」
「行きながら伝える」
「了解!」
蒼矢はヘルメットをかぶり、タンデムにまたがった。
バイクがエンジンをふかし、勢いよく走り出す。
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