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本編
第11話_捕食者の慢心-6
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蒼矢は一時言いよどむ素振りを見せてから、再び口を開く。
「…『現実世界』にいた時からなんとなく察してたことなんですが、…[蜀]の狙いはどうやら俺だったようなんです」
「……!?」
驚愕の表情で固まる仲間たちを前に、アズライトは淡々と語り続けた。
「『現実世界』での[異形]の振る舞いは、場当たり的に出現して混乱を招き、逃げ遅れた人を捕獲する、という風に見てとれましたが、俺と…"連れ"の彼女への追い込みと追跡は執拗でした。主目的はもちろん不特定の人間からの搾取だったと思いますが、[侵略者]は俺をセイバーだと把握していて、捕獲を狙って出現してもいた、ということだと思います」
「『現実世界』の段階で、すでに狙われてたってことか…!?」
「おそらく。だから、『転異空間』に入る必要があった。…どちらでも捕獲できないとわかれば、[奴]は再戦を選ぶと思われたので」
[侵略者]とアズライトの一連の行動原理に、一同が少しずつ腑に落ちていく中、烈は眉をひそめながら声を張って口を挟んだ。
「…っだからって…こっちになんも詳しい事情話さねぇままタイマン張る必要はねぇだろ…! お前の挙動は危険過ぎる!」
「…急所を特定したかったから」
感情的になって憤るロードナイトへ、アズライトはそう小さく言葉を返した。
「[異形]に埋め込まれた欠片だけでは気配が微か過ぎて、[侵略者]のスペックは『水面』をもってしてもわからない。確実に姿をあぶりだして気配を強めるには、他からの介入を受けずに[奴]の目的である俺との一対一の状況をつくるしかないと思った」
「……!」
「それと同時に、『索敵』のためにできるだけ[奴]に接近して弱点を探る時間も作りたかったんだ。そのためには、水属性のままでいる必要があったんだけど、近接戦闘は苦手だから…想定通り、なにもできないまますぐに捕獲されてしまった」
「…!? まさか、『水面』なしで索敵してたのか…!?」
「…できれば戦闘に持ち込めればと思ってたんだけど。とても装具を使えるような状況じゃなかったよ」
アズライトは最後に、おのれの不甲斐なさを自嘲するように言葉を並べて締めた。
そして、呆然とし面差しの色を失ってしまったロードナイトを見上げた。
「ごめん、勝手して。…お前の言うとおり、危ないところまでいきかけた。無茶し過ぎたかもしれない」
「…っ…!!」
「でも、俺は頭の中であまり根拠もなく"大丈夫だ"って思ってたよ。お前がずっと呼びかけ続けてくれてたから。…外から見守り続けてくれてるって信じてた」
そう少し笑うアズライトの顔を見、ロードナイトは無言で彼へ寄り、覆い被さるように抱きしめた。
「…馬鹿野郎が。今更俺の気持ち試すような真似してんじゃねぇぞ…!」
「…ごめん」
優しく触れるだけの軽さがありながらも、気持ちの伝わる強い抱擁に、アズライトはうっすらと頬を染めた。
彼らが抱きあう姿を、他セイバーはそれぞれ違う表情をたたえながらも、黙ったまま『転異空間』が閉じるまで見届けていた。
「…『現実世界』にいた時からなんとなく察してたことなんですが、…[蜀]の狙いはどうやら俺だったようなんです」
「……!?」
驚愕の表情で固まる仲間たちを前に、アズライトは淡々と語り続けた。
「『現実世界』での[異形]の振る舞いは、場当たり的に出現して混乱を招き、逃げ遅れた人を捕獲する、という風に見てとれましたが、俺と…"連れ"の彼女への追い込みと追跡は執拗でした。主目的はもちろん不特定の人間からの搾取だったと思いますが、[侵略者]は俺をセイバーだと把握していて、捕獲を狙って出現してもいた、ということだと思います」
「『現実世界』の段階で、すでに狙われてたってことか…!?」
「おそらく。だから、『転異空間』に入る必要があった。…どちらでも捕獲できないとわかれば、[奴]は再戦を選ぶと思われたので」
[侵略者]とアズライトの一連の行動原理に、一同が少しずつ腑に落ちていく中、烈は眉をひそめながら声を張って口を挟んだ。
「…っだからって…こっちになんも詳しい事情話さねぇままタイマン張る必要はねぇだろ…! お前の挙動は危険過ぎる!」
「…急所を特定したかったから」
感情的になって憤るロードナイトへ、アズライトはそう小さく言葉を返した。
「[異形]に埋め込まれた欠片だけでは気配が微か過ぎて、[侵略者]のスペックは『水面』をもってしてもわからない。確実に姿をあぶりだして気配を強めるには、他からの介入を受けずに[奴]の目的である俺との一対一の状況をつくるしかないと思った」
「……!」
「それと同時に、『索敵』のためにできるだけ[奴]に接近して弱点を探る時間も作りたかったんだ。そのためには、水属性のままでいる必要があったんだけど、近接戦闘は苦手だから…想定通り、なにもできないまますぐに捕獲されてしまった」
「…!? まさか、『水面』なしで索敵してたのか…!?」
「…できれば戦闘に持ち込めればと思ってたんだけど。とても装具を使えるような状況じゃなかったよ」
アズライトは最後に、おのれの不甲斐なさを自嘲するように言葉を並べて締めた。
そして、呆然とし面差しの色を失ってしまったロードナイトを見上げた。
「ごめん、勝手して。…お前の言うとおり、危ないところまでいきかけた。無茶し過ぎたかもしれない」
「…っ…!!」
「でも、俺は頭の中であまり根拠もなく"大丈夫だ"って思ってたよ。お前がずっと呼びかけ続けてくれてたから。…外から見守り続けてくれてるって信じてた」
そう少し笑うアズライトの顔を見、ロードナイトは無言で彼へ寄り、覆い被さるように抱きしめた。
「…馬鹿野郎が。今更俺の気持ち試すような真似してんじゃねぇぞ…!」
「…ごめん」
優しく触れるだけの軽さがありながらも、気持ちの伝わる強い抱擁に、アズライトはうっすらと頬を染めた。
彼らが抱きあう姿を、他セイバーはそれぞれ違う表情をたたえながらも、黙ったまま『転異空間』が閉じるまで見届けていた。
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