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27. フラグ回収…早くないですか?

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その日からはまさに冷戦という言葉が正しいほど学校内がピリピリしていた。そんな中では学園祭の出し物なんか決まるはずもない。だから授業時間でとられている準備時間も今にも取っ組み合いが始まりそうな空気感の中睨みを効かせる両派閥とその空気感の中出し物を勝手に考えて作る中立派という奇妙な構図が出来上がっていた。ちなみに僕らのクラスでは食べ物を出すらしく、僕は出店で使う垂れ幕を縫っていた。
「…………」チクチク
と無言で返縫いをしていると、
「なぁなぁ、これってどうするんだ?」
とルプスが聞いてくる。差し出されたのは屋台のマスコットとして飾る予定のタコっぽい何かの目につけるおっきいボタンとタコの形に切り抜かれた布だった。
「ああ、ここはね…」
と縫い方を教えていると、チャイムがなって時間が終わった。
「ナギエ、いろいろありがとな。…またなんか分からんくなったらやり方教えてくれねぇか?」
とルプスが聞いてくるので、
「もちろん。いつでも来てよ。」
というと、彼の尻尾を振る速さが少し早くなったような気がした。…うん、かわいい。
「ナギちゃ~ん、一旦着替えるから更衣室行こ~!」
とクロエがよんでくる。
「わかった!じゃ、ルーくんまた今度ね。」
と言い、更衣室にクロエと一緒に向かった。



その後男子更衣室…
「…おい…ルプス…お前、わかってるんだろうな?」
ナギエと別れたルプスは男子更衣室で数人の同級生に囲まれ尋問のようなものを受けていた。
「あ、あははは…どうしたんだい?みんな目が怖いよ?」
と俺は話を茶化そうとするが、
『『どうでも良いことを喋るな。』』
とドスの効いた声と共に色々な方向からどつかれる…うん、フツーに痛ぇ…
「なんだよ!俺なんかしたか?」
と少しばかり切れたように言うと、
「「ナギエ(ちゃん)と何話してんだよ!羨ましい!その場所変われ!」」
と完全ブチギレ状態の声が飛んでくる。
「別に?出し物の準備でやり方がわからなかったから聞きに行っただけやぞ?」
と言うと、
「いや、他にも聞くやつおるやろうが!なんでピンポイントであの子ナギエなんだよ!なんだ?当てつけか?」
と吐き捨てるように言う。
「いやお前らなんか忙しそうだったじゃん。この学校に平民なんかいらねぇ。みたいな感じで睨み合っちゃってさ。まあ俺からしたらどーでもいいけどさ、めちゃくちゃ話しかけづらいんだよ。だから穏健派で一番近かったナーちゃんに声をかけた次第だよ。特に他意はない。」
と冷静に自分のことを正直に話した…というか言わざるを得なかった。まぁ状況的には択をミスった瞬間即リンチのデスルートに片足突っ込んでいる状態だから内心では冷や汗ダラダラ状態だった。
しばらくの沈黙ののち、
「まぁ、下心がねぇならいいや。まぁ、もしもそんなことがあったら…わかってるよなぁ?」
と睨まれる。ヒィィィィ。こ、怖すぎる~。は、早くどっか行ってくれ~と言う心の声が通じたのか、
「…行くぞ。」
と言って奴らは自分達のロッカーへと戻っていった。
「…災難だったな…」
と隣のロッカーを使っているルイトが慰めてくれる。
「うん…バカ怖かった…ナーちゃんファンクラブ過激派すぎるやろ…」
と言うと、
「激しく同感…」
とルイトも肩を落としながら同意をした…ちなみにあの過激派のことをなぎ絵は知らないらしい。まぁこういうチヤホヤされることをナギエは嫌うから知らぬが仏、とか言うやつだろう。と2人は思い、同時に深いため息をつくのだった。
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