転生したら、周辺環境がクソだったので、人形と共に改革していく 〜せっかく転生したのならゆっくりのんびり生きたい〜

甘夏かん

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88. <閑章> ミナトの来るちょっと前⑤

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私は慌てながらも慎重に自身の権能を使って冥界神の権能から生まれた効果を慎重に削る。
そして数時間が経ったゴチャゴチャにからまった糸を一本の糸に戻すような精密な作業をアルルトはほぼ完璧にこなしていた。そうしてあと少し…あと少しで完全に権能を無効化できるといったところまできた時にいきなり通信魔法がかかった時特有の鈴のような、鐘のような音がした。その音に私は驚き、権能の無効化に失敗した。残りの権能の力が暴走の兆候を見せ、無効化するのが不可能となってしまった。
「あ…」
そしてその力は通信魔法の魔法陣へと飛び込んだ。余談だが、通信魔法の魔法陣は上に置かれたものを通信相手に送ることのできる効果を持っている。
「わ、わあ!な、何これ!」
と通信先からバベルの声がするが、
「うっさい!あんたのせいよ!」
と魔法陣に叫ぶと、一方的に通信を切った。
「一難去ってなんとやらですね。」
とオシリスが哀れみの目を向けてくる。
「そう、マジでそれ。あ~もう、ダイダロスめ~面倒ごとしやがって!」
とアルルトの怒りのこもった叫びが神界の青空に響いた。

一方その頃バベルはと言うと…
「んぎぐぐぐ…」
暴走しかけの冥界神の権能を抑え込んでいた
「げ、限界~!えい!」
とバベルは自分の持つ世界へと権能を投げ込んだ。さらにコントロールをしてなるべく人が居ないようなところにコントロールをしようとしたが、権能はバベルのコントロールをはずれ、ふよふよと落下していった。
「ああ!だ、だめです!そ、そっちは!」
とバベルは慌てて落下地点を予測するとその場を一時的に誰も入らないように設定する。
「これでいいはずです。ちっちゃい虫さんは残念ですが…これも全部僕のミスなのです…」
と寂しそうに呟く。そうしているうちにも権能は地面へと落ちてきて…地面に直撃した…その瞬間だった、
「あ!」
直撃した権能の残滓の残る場所に1人の男性が踏み込んでしまった。しかもその影響で天命の残り時間が2秒にまで縮んだ。そして間も無くその天命は0になり…
「!」
その男性は車に轢かれて死んでしまった…さぁっと自分の顔から血の気が引いていく
「ま、まずいのです…と、兎にも角にもあの男性の魂を保護しなければ!め、メイリル!メイリルはどこですか!」
と僕は叫んだ。

そうして…半時間後…
「あ、いました。メイリル!今しがた来たはずの交通事故死した男性の魂を保護してください!」
と冥界の女神であるメイリルに慌てて言うと、
「ああ、あの不思議な雰囲気の子ね?なんだかアルルトちゃんのところの冥界神の力が混ざってたから弾いておきましたよ。そこの籐のバスケットの中ですよ。」
「あ、ありがとう。すごく助かるよ。」
「いえいえ。マニュアルに従っただけですから。あ、そうそう。アルルトちゃんとこの冥界神さんからのメモが届いていたので一緒にバスケットに入れといたよ。」
「わかった!後で確認しておくね!」
というと僕はバスケットを持って自分の領域へと戻る。魂と会合する前にメモを見ると、そこにはオシリスのカクカクした文字ではなく、アルルトの丸っこく稚拙な文字でこう書いてあった。
『ごめん、転生体が欲しいから魂を1つ分けて欲しい。お願いします。』
「予想通りってか…はぁ、この人に行ってもらうか…」
そういうと僕はバスケット内の魂に語りかけた。
「もしもし?起きてください。」

これからこの魂は時空神のいない環境へと送らなければならない。それに神を殺すことが目標とかいうふざけたことに巻き込まれるのだ。
「クソみたいな話だよな。周辺環境が終わっているような場所を改革するために君は殺されたんだ。…本当にごめんよ…」
この魂には本当に謝罪の念で一杯だ。それでも、僕はお願いするしかないのだ。この世界を離れ、クソ環境を改革してください…と
それしか僕にはできないのだから…
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