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■第1楽章:融合した世界
EPISODE 3: フラスコの“中身”
しおりを挟む巨大な真っ白なワーム“雪のワーム”の討伐を終えて、拠点に戻りトネリコの家のリビングで金髪のエルフの少女は椅子に座りトネリコが出してくれたカボチャのポタージュをスプーンて掬って食べている。
「おいしいっ…!」
「それは、良かったぁ~!おかわり、沢山あるから言ってね?」
「うんっ」
「そういえば、お名前は?」
「ぱめらっ!」
「パメラちゃんね」
「うんっ!なまえ、つかさがつけてくれた」
「つかさ??……もしかして、“白銀の狼”のリーダーの“黒埼 司(くろさき つかさ)”くん?」
「!、つかさ、しってる??」
「まぁ、1年前に少しね」
トネリコはパメラの向かいの席に座り、持ってきたココアが入ったコップを掴みココアを飲みながらも1年前の事を思い出しては笑みを浮かべていた。
「それで、パメラちゃん?キミの身に、何があったかを教えてくれる?」
「う、うん……」
「辛かったら、止めてもいいから」
「………つかさにも、伝えないと、いけないの……3か月前、“白銀の狼”に新人さん、きたの」
パメラの話によると3か月前“白銀の狼”に、薄めの茶色の髪色をしたセミロングで後ろで束ねており、少しタレ目をした緑色の瞳色をした青年が仲間入りしてきた。
最初は、そんなに目立った問題などは起きてはいなかったため何事もなく過ごしていた。
だが、そこから1ヶ月と少し経ってから“新人”の行動が怪しくなってパメラは“司”のためにも“新人”の事を探ろうとしていた。
「ある日、まちのろじうらで、新人さん、“ウェルト”がだれかと何かを、コソコソと、はなしを、してた」
新人“ウェルト”が、どうやら何者かと取引をしている所をパメラは目撃した。
その時に、逃げようと物音を立ててしまい“ウェルト”に見つかり取引相手と“ウェルト”に捕まってしまったのだ。
「………」
パメラは今にも泣きそうな表情をして下を俯いてしまい、出来事を思い出してしまったその小さな身体は微かに震えていた。
その震えは、明らかに寒さからくるものではないのはトネリコもクロム達も気付いていた。
「くちどめ、おそわれたっ……日にち、おいて、なんどもっ……とじこめられて、外にでれるチャンス、今日だった」
「……もういいよ、わかったから。パメラちゃんが、どんな目にあったのか……そして、そんな事になっても司くんに“新人”であるウェルトという人の悪事を早く伝えたかった、そうだね?」
「っ、うん……っ」
「ありがとう、話をしてくれて」
トネリコは身を乗り出してパメラの頭を優しく撫でると、席を立ってクロムとヴェイグの方を見つめる。
「こういう事は、融合が起きて間もなく多く起きている事案だよね?」
「あぁ、それは全クランの情報で出回っている内容だな」
「……“ハーフ”ってのは、そういう所から広がりをはじめているのは確かだな」
「始まりは一部の“力のあるモノ”による“奴隷制度”だね、それから全てが始まったって言っても過言ではないけど」
トネリコは窓側に立っては雨が降りそうな空を見上げては、その光景を目を細めて何かを感じたからなのか見つめていた目を閉じる。
「残念な話」
「リコちゃん?どうした??」
「多分その“ウェルト”らしき人物が、結界内に入ってきて此処に向かっていると思う」
「っ!?さ、さがしてる、わたしっ…!また、つかまったらっ……!!」
「大丈夫、パメラちゃんは“絶対に”アタシが守るから」
“ウェルト”の名前を聞いて怯えはじめたパメラを見てトネリコは優しく笑み浮かべると、クロムとヴェイグの方を見てから玄関へと向かう。
「大丈夫か、トネリコちゃん?」
「ふふっ、伊達に“第2位”ではないよ?それに、“彼”も此処にいるから“1人ではない”から安心して」
トネリコはクロムの問いにドヤっとした表情をしながらも、腰に身につけている大きめのフラスコを優しく撫でてから真っ直ぐ前を見ながらも怒りを抑えて玄関から外へと出ていく。
外は激しく雨が降り出していて、ウェルトは走りながらも周りを見渡してトネリコの拠点を見つけると走りを速くさせる。
(クソガキっ、まさか逃げ出すなんてな!あの商売がリーダーにバレたら、オレの商売が終わってしまうじゃねぇーかっ!!また、他の所を探すハメになるってのは面倒クセェ……それに、折角の性処理が居なくなるとか最悪だぜっ!!どうせ、あの家に逃げ込んだ筈だっ!どうにかして、連れ出して躾をしねぇーとな……)
ウェルトはイライラとした気持ちのままトネリコの領土に踏み込み、今までとは違った張りつめた空気を感じては急に足を止めて立ち止まる。
(なんだ?さっきとは、まったくと言ってもいいぐらいに……重い空気、か?)
「やぁ、ようこそ?“お客様”?」
「!?(気配が、しなかった!?)えっと、此処の住人ですか?何者かしらねぇーが、ここの住人なら……)」
「はい、そうですけど?“お客様”は、どうして辺境な土地へ?迷いましたか?」
「いや、その……恥ずかしながら、知り合いとはぐれてしまって」
「それは、もしかして“金髪のエルフの子”ですか?」
「!!、そ、そうです!!もしかして、此方で保護して下さっているんですか!?ビンゴだぜっ!!)」
ウェルトは嬉しそうに笑みを浮かべるが、トネリコは軽く首を傾げて目を細めてウェルトの様子を眺めていた。
「えぇ、ですが憔悴しきっていましたし……何よりも凄く怯えていました」
「この辺り、魔物が多かったからでしょう……大丈夫、ボクが迎えに来ましたので彼女を引き渡してください!」
「それは、ふふっ出来ませんね~」
トネリコはウェルトが引き攣った笑みになったのを確認しては、トネリコは首を軽く傾げたままで口元は笑みを浮かべていた。
段々と、その化けの皮を出していくのをトネリコは愉快そうに眺めているのだ。
明らかな“人”としての“根”を観察するかのように、ウェルトの言動や行動などを“よく見ていた”。
「そ、それは困りましたね……どうしても、引き取らさせてくれないのですか?本人も、早く帰りたいと思うのですが……(クソッ、粘りやがってっ……!)」
「それなら、心配ありませんよ~?本当の“保護者”の方が、此方に向かっているらしいので」
「なっ、“司”が向かっているのか!?ふざけんなよ、クソ女っ、!?あ、いや、っ」
「ふふっ、あははっ!もー、可笑しいぃっ」
「な、何が可笑しい!?」
「アタシは、“司が来る”とは言っていないのに何故わかるのですか?それに、アタシは“金髪のエルフの子”としか言ってませんよ??……なのに、“彼女”とは?何故、女の子ってわかったのですかぁ?他にも“いるかもしれない”ってのにぃ?」
トネリコは敢えて“わかりにくい内容”を言ったというのに、確定するかのようにウェルトが全てを答えたからである。
ウェルトは驚いた表情をしては、怒り狂った表情をしてトネリコを鋭く睨んでいる。
「っ~、ふざけんなよ!!こっちが下手でに出れば、このクソ女!!!さっさと、“ハーフ”のガキを出せ!!連れ戻して、またキツい躾をしないといけねぇーんだよ!!!こっちは、次の商談も控えているんだ!!あの司に、バレるわけにはいかねぇんだ!!さっさと、差し出せっ!!」
「金にしか興味無しって感じですかぁ?まぁ、そうでしょうねぇー……“ハーフ”という存在は、世間的にもタブーとも言えるような存在ですから行き場もありません。ですが、そんな彼らだって彼らなりに“懸命に生きている”というのに……」
「はっ!あんな“化け物”達が??“懸命に生きている”だって??あははははっ!!笑わせてくれるじゃねぇーか!アイツらは、遊ばれて死んでいくだけじゃねぇーか!それに、どうせ直ぐに生まれて直ぐに成長するなら“ただの消耗品”だろうがっ!!!アイツの変わりなんて、直ぐに用意出来るってもんだ!!」
ウェルトがトネリコの言葉に嘲笑いながら反論していると、トネリコは何とも言えない表情しては目を閉じてはウェルトの話を静かに聞いていた。
(本当に救いようがない、それが“クズ”。それは、年々と増えているというのに世界統一政府機関は知っている筈なのに何もしないのは、どの時代の政府とも変わらない…いや、悪化している“世界そのものと同じで狂っている”って事かな?)
「反論しないのかぁ?偽善者がよー?ああ?反論してみろよ!!」
「はぁ~………キミの思想はこれで理解したよ、今ので」
「あ?」
「そこまで、救いようがない“クズ”の代表格のような事をスラスラと簡単に話せるのは褒めてあげたいぐらい。でも、“命”を簡単に愚弄するような奴は“生きる価値はない”」
「てめぇ、このクソ女っ!!!言わせておけばっ!!!」
ウェルトが腰に身に着けていた剣を鞘から取り出してトネリコへと走り出すと、トネリコは口元だけ笑みを浮かべると腰に身に着けていた大きめのフラスコを取り出しては優しく撫でてから蓋を開けて下に向ける。
「“おいで”」
開けられた大きめのフラスコの入り口から、黒い何かが垂れて出て地面へと落ちていく。
それを目にしたウェルトは、フッと何かを思い出しそうになっていたが黒色の何かが地面に落ちると瞬時に、地面に広がり周りの植物の“マナ”が枯れて“死んで”いくのを見て立ち止まり何かを思い出していた。
【大きめのフラスコを持ち、瞳孔が変わった瞳をしたエルフの女】
(いや、まさか……?)
【その中身は、恐ろしい存在となったモノが閉じ込められている】
(こんな所に、いるわけがっ)
「“レーヴェ”」
トネリコが“レーヴェ”と告げると同時に、黒色の何かはトネリコを包むようにしてからトネリコの後ろへと移動して人の形に変わっていく。
【あの中身は、エルフの女のかつての仲間であり相棒でもあり】
【かつて、世界ランキング第1位に永らく君臨していた“最凶”となりし人物】
黒い何かがヒビが入り砕けると其処には、黒紫色と暗めのモスグリーン色のツートンカラーをさせたロングウルフカットで尻尾を三つ編みにしており、切れ長なキツめのツリ目をした暗めの青緑色の瞳をして瞳孔が獣眼をしていて、道化のような服装をして長いベルトのようなモノを左二の腕に巻き垂らすような形に身に着けた凄く背の高い青年がトネリコを後ろから愛おしそうに抱きしめるように立ち、トネリコの目を左手で覆っては妖しく笑みを浮かべていた。
「て、てめぇはっ!!!?」
ウェルトが声を発すると同時に、ウェルトは上を見ると黒い手のようなモノが自分を叩き潰そうとしいるのを見ると慌てて剣で防ごうとする。
だが、黒い手のようなモノは分散して無数の針のようになりウェルトの身体を無数の針で串刺しにする。
「がっ!?」
「悪いガキだな~、お前も」
「っ……?」
「リコを怒らせるってのは、“オレ”も怒らせるっていう同義だと言うのにねぇ?リコの怒りも、リコの悲しみも、リコの苦しみも………全てオレにとっては不快であり、“大っ嫌い”なんだよねぇ~殺したくなる……だから、さ?久々の食事をさせてくれよ、なぁ?腹減っているんだ、いいだろ??」
レーヴェが妖しく笑みを浮かべると同時に、ウェルトから抜けた無数の黒い針は地面へと落ちたと思えば大きな口が現れて大きく口を開きウェルトを丸呑みする。
一瞬だけウェルトの断末魔が聞こえたが、レーヴェは気にするような様子は一切なく自分の口元を舌で軽く舐めて笑みを浮かべる。
「まずい」
「食べていいとは、アタシは何も言っていないのに……勝手に食うから」
「だって、久々に食えるかと思ってぇ~……リコの手料理食べたい、凄く」
「はいはい、わかったから離れて?帰ったら、作ったばっかりのカボチャのポタージュがあるから」
「え~」
トネリコはレーヴェの左手を叩きながら手を離させると、レーヴェの方を振り向いては目を細めて呆れた表情をしていた。
「それで、調子は?」
「んー、5年前よりかはマシ?でも、長くは出て居られないでしょ~?リコの負担にもなるし」
「あれから、“マナ”の保有数字は増えたんだけどなぁ」
「長くて、そうだな~……1日?」
「……まぁ、何かあればマナポーション飲めば数日はいけそうだね」
「飲みすぎないでねぇ~、リコ?ポーション中毒者になっちゃうってぇ~」
トネリコは少し歩き出してから振り向いて、レーヴェを見つめればレーヴェは首を傾げてはトネリコを見つめ返していた。
「何、またまた惚れたぁ?」
「それはない、うん」
「えー???」
「ほら、帰るよー?そろそろ、クロムさんとヴェイグさんが心配で迎えに来ちゃう」
「あー、そういえばアイツら都市から追い出されたんだっけ?」
「レーヴェ…………あんまり、後輩達を虐めないでね」
「え?」
すっとぼけた答えをするレーヴェに対してトネリコは、これから先が思いやられると思いながらもウェルトが居た所をチラッと見てから家路へと歩みを進める。
(なんか、これから色々と大変な事になりそう……)
NeXT
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