おいでませ!?DIVERPG世界でセカンドライフの時間だよ!

祁季みのる

文字の大きさ
20 / 27
■第2楽章:2つの異なる道標

EPISODE 20:トネリコ

しおりを挟む
 







 “5年前の事件”について話をする前に、“トネリコという存在”について先に話をするべきかと思って話をする。


「“アヴァロンガーデン”は、少数精鋭“4人”だけのクラン」

「“4人”?え、トネリコさんとレーヴェ、それにシュレイドさんとリーシェさんとヨシュアさんの“5人”なんじゃないんですか?」

「ううん、“4人”であっているんだよ。フェイトくん」

「リコは、“プレイヤー”じゃない」

「!?」


 トネリコとレーヴェ以外のクロム達はレーヴェの発言に驚愕の表情をして、困惑な表情でトネリコを見ると苦笑いを浮かべているトネリコが居るだけだった。


「直球だなぁー、相変わらず」

「もう事実を隠すなんて、しないんだろ?だったら、全部話をすべきだ」

「うん、そうだね。アタシは“異世界”と“現実”という“歪み”によって生まれた“異質な特異点”で、βテストでレーヴェと出逢ったのが最初だね」

「あぁ」


 βテストの際にレーヴェと出逢い、其処で沢山の事をレーヴェに教わり“プレイヤー”と同じように様々なスキルをマスターして現在の強さを手にしていた。

 “異世界”側ならば、“プレイヤーのスキル”としてではなく“能力”という固定したモノへと変換されている筈なのだ。
 だが、トネリコのは“能力”という固定ではなく“プレイヤー”と同じようなステータスの造りとなっていた。

 だから、全然気付く事もなかった。

 普通に“ログアウト”と“ログイン”をして、普通の生活をしているかのように“その日は、何をしていたのか”に対して答える事も出来ていた。


 “異質な特異点”たからこそ、何かしらを書き換えて“トネリコ”という存在を作り上げていたのだろう。


「だけど、それがいけなかったんだよ」

「リコ」

「アタシが“アタシという存在”を確立させた事が、“5年前の事件”を招いたっ!!“アタシ”が生まれたと同時に、“アタシを通じて知識を得ていた“もう1人の特異点””を成長させていたのっ……。それか“アイツ”なんだと、あの事件の当日に思い知った」


 “最後のダンジョン”に、“アイツ”が居た。

 “アイツ”はトネリコの心を乱すために、転送トラップと共に魔物大発生のトラップを仕掛けてクランを分断させようとしていた。

 だが、ヨシュアはトネリコに触れようとしたが“透けて掴めなかった”せいで1人だけの残された。
 一瞬だけ見えたのは、転送と共に発動した魔物大発生のトラップでヨシュアは辛そうな表情をしては優しく笑みを浮かべていた。
 何かを悟ったかのように、ヨシュアはトネリコに首を振っていた。


【自分を責めるな。キミはトネリコ。他の誰でもない、僕達の大切な“仲間”であり、大切な“家族”の一員なんだから】


 融合した後に其処へと戻れば、其処には沢山の数え切れない魔物の死骸と共に首を喪ったヨシュアの遺体だけが残されていた。


「ヨシュアは、1人で戦い1人で亡くなった……っ」


 転送後には、流石最後のダンジョンと呼ばれているだけあり何処となく神秘的な赤黒い水晶の群生と共に白と黒の神殿のような宮殿のような場所だ。

 黒寄りの灰色の髪色をしたウルフカットで頭には黒色の狼の耳があり、切れ長なツリ目をした朱色の瞳色をした背の高い男性が立ち止まり周りを嗅いでいる。


【シュレイドさん?何か見つけました?】

【トネリコ、俺様の気の所為かなんて分からない。だが、さっきとは違う気配と違う匂いが微かにするんだ】

【匂い、ですか?】

【シュレイド、何かに気づいたのか?】

【レーヴェ。一応、警戒はしておいてくれないか?なんか、可笑しいんだ】


 シュレイドの隣へと金色の髪色をした背中ぐらいのロングストレートで頭には帽子を被っており、少しツリ目をした緑色の瞳色をした背の高いエルフの女性が立っては周りを見渡す。


【匂いに関しては分からないけど、この“マナ”の流れは何だか危険な流れがするわ。なんだか、此処へと集まってきているような……そんな感じだわ】

【っ!?、あぶねぇリーシェ!!?】


 シュレイドは何かに気付いてリーシェを突き飛ばすと、シュレイドに赤黒い霧が纏わりつくだけではなくシュレイドの身体を貫いて中へと侵入し、侵食するようなモノがシュレイドの身体に浮き出ていた。


【シュレイドさん!?】

【シュレイドっ!!】


 アレがシュレイドを侵食して“フラグメント”を書き換えただけではなく、“魔物という本能”を高めて暴走させたんだ。
 シュレイドの暴走によって、自分達の目の前でシュレイドの手によってリーシェは殺された。

 そんなシュレイドは、レーヴェがどうにかして大きな大穴へと落として難を逃れた。


「そして、残ったアタシとレーヴェは“最後のダンジョン”の奥へと向かった。其処は、今までとは違った場所で、その空間そのものが行きているかのように鼓動の音がしていた」


 それは、心臓の中を歩いているんじゃないかと思うような錯覚を覚えていた。
 更に奥へと向かえば其処には、“何処となくトネリコに似た青年”が立っていた。

 そいつこそが、融合した世界を作り上げた元凶で全てを狂わせた人物だ。


「ソイツは、言った」

【待っていたヨ、ボクの欠片。キミが手にしてきたモノ、ボクに還してもらうヨ。さぁ、一つになろうカ】

「アタシは、ソイツの声を聞いて動けなくなり意識も途切れていた」


 その間、レーヴェは“ソイツ”と戦っていた。


 否。


 レーヴェが戦っていたのは、紛れもなく“トネリコ”だったんだ。
 だから、レーヴェも本気で戦うことが出来ず“トネリコ”の刀剣で心臓を貫かれていた。


 それと同時に、温かい体温でアタシは意識を取り戻してレーヴェに強く抱きしめられていた事に気付いた。

 アタシは何が起きたのか、分からなかった。
 ただ分かるのは、レーヴェがアタシに“アイツを倒すために、俺に錬金術を施せ”という言葉と共に錬金術を使い“生体錬金術”を行った。

 レーヴェが“ホムンクルス化”し、“アイツ”と互角に戦い“アイツ”を瀕死にさせると同時に“アイツ”は“世界を融合”させていた。


「これが、“5年前の事件の真相”だよ。アタシが同行していなければ、世界なんて融合する事もなかった。ううん、アタシがレーヴェと出逢ったりしなかったら……こんな事には」

「それは、違うぜ?リコちゃん」

「ヴェイグさん」

「結局は起こることは“当たり前”だった。それが、早いか遅いかって話だ」


 トネリコとレーヴェが出逢わなくても、トネリコが共にダンジョンに行かずとも“定められた運命”というものは停まることもしないだろう。

 結局は、起きていた事だ。


「……トネリコは“ソイツ”を倒す事が“目的”なんですよね?」

「うん。世界をあるべき形に戻すために、何事もなかったように戻すために……アタシは、“アイツ”を倒すと決めている」

「“ソイツ”を倒したら、トネリコは…」

「間違いなく“アイツ”と共に、何もない空間“虚無”へと還る事にはなるだろうね」

「っ……」


 “異質な特異点”ならば、“特異点”が消えると共に一緒に消えるのが当たり前な事だ。
 2つで1つの“存在”ならば、それは当たり前な事だろう。


「アタシは、もう覚悟している。自分が消えようとも、皆が元の世界に戻って平穏に過ごせるならアタシ1人の犠牲で済むならばアタシは自分を切り捨てる」

「まぁ、リコちゃんらしい答えだよな」

「ヴェイグさんっ」

「オズワルド、これはリコちゃんが苦渋の決断で決めた事だぜ?オレ達がとやかく言える立場じゃねぇーよ」

「ヴェイグさんは、それでいいんてすか!?アナタだって、トネリコの事を愛しているんじゃなかてたんですか!?」


 オズワルドがヴェイグの胸倉を掴んでは睨みつけば、ヴェイグは目を細めて冷静にオズワルドの言い分を聞いていた。


「あぁ、愛している。だからこそ、リコちゃんの“気持ち”に応えるだけだ。もしも、“ソイツ”との対面でリコちゃんがリコちゃんとしての意識を失うってんならオレは“トネリコを殺す”」

「っ……」

「それが、オレからリコちゃんへの愛情ってもんだ。引導を渡してやるのも、それは1つの愛だって思うぜ?確かに、オレだって本当はキツイっての……。それでも、やらないといけないだろ?レーヴェの旦那やオズワルドには重すぎるだろうからな」


 ヴェイグは1番の年長だからこそ、手を出せないレーヴェやオズワルドの代わりに自分がやらねば誰が最後をやらないといけない。

 誰もやらなかった場合、トネリコの決意と想いは無駄になるだけだ。


 オズワルドは項垂れてヴェイグの胸倉を手放すと、部屋を1人で出ていくとフェイトはトネリコやヴェイグを見てからオズワルドを追いかけて部屋を出ていく。


「ヴェイさん」

「クロムさん。もしもの時は、アイツらを支えてやってくれよ?オレは“ホムンクルス化”しているから、もしかしたらトネリコを殺そうとしても停止するかもしれねぇーから……無理矢理やれば、多分オレは滅びるだろうからよ」

「……わかってましたよ。ヴェイさんなら、基本的にソレを選ぶってのは。任せて下さいよ、一応ボクはヴェイさんの相棒なんですから」

「おう、そうだったな」


 クロムとヴェイグのやりとりを聞いていたトネリコは、隣に立っているレーヴェを見上げればレーヴェは迷っている表情していた。


「レーヴェ」

「頭では、わかってはいるんだよ。だけどさ、俺は、トネリコを愛しているんだ。だから、あの時も戦えずトネリコの剣を受けた」

「レーヴェは、本当に最初から優しかったからね。何も知らなかったアタシに、戦いも暮らしも全てを教えてくれていたから。アタシは、凄く嬉しかったよ」

「リコ……」


 トネリコは目を閉じては、レーヴェとの初めての出逢いから色んな事を学んだ事を思い出しては優しく笑みを浮かべていた。


「だから、思い残す事はない。アタシは、“自分を殺せる”よ。そして、皆の日常を取り戻したいんだ」


失われた“平穏”。

失われた“日常”。


全てを取り戻すためには、“自分”を殺さないといけないんだ。





“ゼロ”へと、何もかも。






NeXT
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

処理中です...