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■第2楽章:2つの異なる道標
EPISODE 20:トネリコ
しおりを挟む“5年前の事件”について話をする前に、“トネリコという存在”について先に話をするべきかと思って話をする。
「“アヴァロンガーデン”は、少数精鋭“4人”だけのクラン」
「“4人”?え、トネリコさんとレーヴェ、それにシュレイドさんとリーシェさんとヨシュアさんの“5人”なんじゃないんですか?」
「ううん、“4人”であっているんだよ。フェイトくん」
「リコは、“プレイヤー”じゃない」
「!?」
トネリコとレーヴェ以外のクロム達はレーヴェの発言に驚愕の表情をして、困惑な表情でトネリコを見ると苦笑いを浮かべているトネリコが居るだけだった。
「直球だなぁー、相変わらず」
「もう事実を隠すなんて、しないんだろ?だったら、全部話をすべきだ」
「うん、そうだね。アタシは“異世界”と“現実”という“歪み”によって生まれた“異質な特異点”で、βテストでレーヴェと出逢ったのが最初だね」
「あぁ」
βテストの際にレーヴェと出逢い、其処で沢山の事をレーヴェに教わり“プレイヤー”と同じように様々なスキルをマスターして現在の強さを手にしていた。
“異世界”側ならば、“プレイヤーのスキル”としてではなく“能力”という固定したモノへと変換されている筈なのだ。
だが、トネリコのは“能力”という固定ではなく“プレイヤー”と同じようなステータスの造りとなっていた。
だから、全然気付く事もなかった。
普通に“ログアウト”と“ログイン”をして、普通の生活をしているかのように“その日は、何をしていたのか”に対して答える事も出来ていた。
“異質な特異点”たからこそ、何かしらを書き換えて“トネリコ”という存在を作り上げていたのだろう。
「だけど、それがいけなかったんだよ」
「リコ」
「アタシが“アタシという存在”を確立させた事が、“5年前の事件”を招いたっ!!“アタシ”が生まれたと同時に、“アタシを通じて知識を得ていた“もう1人の特異点””を成長させていたのっ……。それか“アイツ”なんだと、あの事件の当日に思い知った」
“最後のダンジョン”に、“アイツ”が居た。
“アイツ”はトネリコの心を乱すために、転送トラップと共に魔物大発生のトラップを仕掛けてクランを分断させようとしていた。
だが、ヨシュアはトネリコに触れようとしたが“透けて掴めなかった”せいで1人だけの残された。
一瞬だけ見えたのは、転送と共に発動した魔物大発生のトラップでヨシュアは辛そうな表情をしては優しく笑みを浮かべていた。
何かを悟ったかのように、ヨシュアはトネリコに首を振っていた。
【自分を責めるな。キミはトネリコ。他の誰でもない、僕達の大切な“仲間”であり、大切な“家族”の一員なんだから】
融合した後に其処へと戻れば、其処には沢山の数え切れない魔物の死骸と共に首を喪ったヨシュアの遺体だけが残されていた。
「ヨシュアは、1人で戦い1人で亡くなった……っ」
転送後には、流石最後のダンジョンと呼ばれているだけあり何処となく神秘的な赤黒い水晶の群生と共に白と黒の神殿のような宮殿のような場所だ。
黒寄りの灰色の髪色をしたウルフカットで頭には黒色の狼の耳があり、切れ長なツリ目をした朱色の瞳色をした背の高い男性が立ち止まり周りを嗅いでいる。
【シュレイドさん?何か見つけました?】
【トネリコ、俺様の気の所為かなんて分からない。だが、さっきとは違う気配と違う匂いが微かにするんだ】
【匂い、ですか?】
【シュレイド、何かに気づいたのか?】
【レーヴェ。一応、警戒はしておいてくれないか?なんか、可笑しいんだ】
シュレイドの隣へと金色の髪色をした背中ぐらいのロングストレートで頭には帽子を被っており、少しツリ目をした緑色の瞳色をした背の高いエルフの女性が立っては周りを見渡す。
【匂いに関しては分からないけど、この“マナ”の流れは何だか危険な流れがするわ。なんだか、此処へと集まってきているような……そんな感じだわ】
【っ!?、あぶねぇリーシェ!!?】
シュレイドは何かに気付いてリーシェを突き飛ばすと、シュレイドに赤黒い霧が纏わりつくだけではなくシュレイドの身体を貫いて中へと侵入し、侵食するようなモノがシュレイドの身体に浮き出ていた。
【シュレイドさん!?】
【シュレイドっ!!】
アレがシュレイドを侵食して“フラグメント”を書き換えただけではなく、“魔物という本能”を高めて暴走させたんだ。
シュレイドの暴走によって、自分達の目の前でシュレイドの手によってリーシェは殺された。
そんなシュレイドは、レーヴェがどうにかして大きな大穴へと落として難を逃れた。
「そして、残ったアタシとレーヴェは“最後のダンジョン”の奥へと向かった。其処は、今までとは違った場所で、その空間そのものが行きているかのように鼓動の音がしていた」
それは、心臓の中を歩いているんじゃないかと思うような錯覚を覚えていた。
更に奥へと向かえば其処には、“何処となくトネリコに似た青年”が立っていた。
そいつこそが、融合した世界を作り上げた元凶で全てを狂わせた人物だ。
「ソイツは、言った」
【待っていたヨ、ボクの欠片。キミが手にしてきたモノ、ボクに還してもらうヨ。さぁ、一つになろうカ】
「アタシは、ソイツの声を聞いて動けなくなり意識も途切れていた」
その間、レーヴェは“ソイツ”と戦っていた。
否。
レーヴェが戦っていたのは、紛れもなく“トネリコ”だったんだ。
だから、レーヴェも本気で戦うことが出来ず“トネリコ”の刀剣で心臓を貫かれていた。
それと同時に、温かい体温でアタシは意識を取り戻してレーヴェに強く抱きしめられていた事に気付いた。
アタシは何が起きたのか、分からなかった。
ただ分かるのは、レーヴェがアタシに“アイツを倒すために、俺に錬金術を施せ”という言葉と共に錬金術を使い“生体錬金術”を行った。
レーヴェが“ホムンクルス化”し、“アイツ”と互角に戦い“アイツ”を瀕死にさせると同時に“アイツ”は“世界を融合”させていた。
「これが、“5年前の事件の真相”だよ。アタシが同行していなければ、世界なんて融合する事もなかった。ううん、アタシがレーヴェと出逢ったりしなかったら……こんな事には」
「それは、違うぜ?リコちゃん」
「ヴェイグさん」
「結局は起こることは“当たり前”だった。それが、早いか遅いかって話だ」
トネリコとレーヴェが出逢わなくても、トネリコが共にダンジョンに行かずとも“定められた運命”というものは停まることもしないだろう。
結局は、起きていた事だ。
「……トネリコは“ソイツ”を倒す事が“目的”なんですよね?」
「うん。世界をあるべき形に戻すために、何事もなかったように戻すために……アタシは、“アイツ”を倒すと決めている」
「“ソイツ”を倒したら、トネリコは…」
「間違いなく“アイツ”と共に、何もない空間“虚無”へと還る事にはなるだろうね」
「っ……」
“異質な特異点”ならば、“特異点”が消えると共に一緒に消えるのが当たり前な事だ。
2つで1つの“存在”ならば、それは当たり前な事だろう。
「アタシは、もう覚悟している。自分が消えようとも、皆が元の世界に戻って平穏に過ごせるならアタシ1人の犠牲で済むならばアタシは自分を切り捨てる」
「まぁ、リコちゃんらしい答えだよな」
「ヴェイグさんっ」
「オズワルド、これはリコちゃんが苦渋の決断で決めた事だぜ?オレ達がとやかく言える立場じゃねぇーよ」
「ヴェイグさんは、それでいいんてすか!?アナタだって、トネリコの事を愛しているんじゃなかてたんですか!?」
オズワルドがヴェイグの胸倉を掴んでは睨みつけば、ヴェイグは目を細めて冷静にオズワルドの言い分を聞いていた。
「あぁ、愛している。だからこそ、リコちゃんの“気持ち”に応えるだけだ。もしも、“ソイツ”との対面でリコちゃんがリコちゃんとしての意識を失うってんならオレは“トネリコを殺す”」
「っ……」
「それが、オレからリコちゃんへの愛情ってもんだ。引導を渡してやるのも、それは1つの愛だって思うぜ?確かに、オレだって本当はキツイっての……。それでも、やらないといけないだろ?レーヴェの旦那やオズワルドには重すぎるだろうからな」
ヴェイグは1番の年長だからこそ、手を出せないレーヴェやオズワルドの代わりに自分がやらねば誰が最後をやらないといけない。
誰もやらなかった場合、トネリコの決意と想いは無駄になるだけだ。
オズワルドは項垂れてヴェイグの胸倉を手放すと、部屋を1人で出ていくとフェイトはトネリコやヴェイグを見てからオズワルドを追いかけて部屋を出ていく。
「ヴェイさん」
「クロムさん。もしもの時は、アイツらを支えてやってくれよ?オレは“ホムンクルス化”しているから、もしかしたらトネリコを殺そうとしても停止するかもしれねぇーから……無理矢理やれば、多分オレは滅びるだろうからよ」
「……わかってましたよ。ヴェイさんなら、基本的にソレを選ぶってのは。任せて下さいよ、一応ボクはヴェイさんの相棒なんですから」
「おう、そうだったな」
クロムとヴェイグのやりとりを聞いていたトネリコは、隣に立っているレーヴェを見上げればレーヴェは迷っている表情していた。
「レーヴェ」
「頭では、わかってはいるんだよ。だけどさ、俺は、トネリコを愛しているんだ。だから、あの時も戦えずトネリコの剣を受けた」
「レーヴェは、本当に最初から優しかったからね。何も知らなかったアタシに、戦いも暮らしも全てを教えてくれていたから。アタシは、凄く嬉しかったよ」
「リコ……」
トネリコは目を閉じては、レーヴェとの初めての出逢いから色んな事を学んだ事を思い出しては優しく笑みを浮かべていた。
「だから、思い残す事はない。アタシは、“自分を殺せる”よ。そして、皆の日常を取り戻したいんだ」
失われた“平穏”。
失われた“日常”。
全てを取り戻すためには、“自分”を殺さないといけないんだ。
“ゼロ”へと、何もかも。
NeXT
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