おいでませ!?DIVERPG世界でセカンドライフの時間だよ!

祁季みのる

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■第2楽章:2つの異なる道標

EPISODE 22:カウントダウン

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「猶予?」

「世界終末のためには、それなりの準備が必要でネ?そのために、世界に“深淵なるモノ”を放ってみたんだヨ」


 トネリコが深い笑みを浮かべると同時に、トネリコの背後に巨大な赤黒い羽根を纏った狼のようなモノが降り立ち咆哮を放っていた。


「彼らは“深淵なるモノ”、見覚えがあるでしょウ?そう、ゲームで君達が戦っていた“七つのダンジョンの主”だヨ!コレは、最大強化させたバージョンでネェ?それらを倒せば、“楔”が解けて繋がりが消えるんだよネェ」

「“楔”?繋がりが、消えるって……。それは、お前とリコの繋がりの事を言っているのか!?」

「ふふふっ、そうだヨ?嘘は嫌いだから、嘘なんてつかないヨ……人間って、簡単に嘘をつくでしょウ?でも、ボクは違う。ちゃんと、正直に話をするヨ!さぁ、始めようヨ!キミらが勝つか、ボクが勝つのか」


 トネリコは妖しく笑みを浮かべて目を閉じると倒れそうになるが、レーヴェが直ぐにトネリコを姫抱きにして暴れ出した巨大な赤黒い羽根を纏った狼から離れると同時に、オズワルドが刀剣で巨大な赤黒い羽根を纏った狼の左足前足を切り落としていた。


「オズワルド」

「早めに片付けた方がいいなら、スピード勝負って事でしょ?なら、さっさと倒して次のヤツを見つけるのが先決ってわけだ」

「それも、そうだな」

「師匠にも連絡して、協力を願います」


 レーヴェとオズワルドの互いのフォローは、昔も今も変わらない動きで互いが出来ない事をカバーをしながら巨大な赤黒い羽根を纏った狼の黒い炎の攻撃を避けながら、レーヴェは巨大な赤黒い羽根を纏った狼の真上に来ては黒い何かで全身を纏い巨大な赤黒い羽根を纏った狼の首を鋭い爪で引き裂き切り落とす。

 巨大な赤黒い羽根を纏った狼は、無数の白い羽根となり飛び散っていく。


「リコちゃん」

「ごめんね、ヴェイグさん」


 ヴェイグはトネリコを支えながら立たせると、トネリコは申し訳ない表情をしては青色の空へと舞っていく無数の白い羽根を見つめていた。

 かつて、“七つのダンジョン”の攻略の際に存在していた“憤怒のヘルハウンド”の事を思い出していた。


「今のアタシ達にとっては、そんなに苦難のある魔物ではないけど……他の人達にとっては、脅威でしかないよね」

「そうだな」

「師匠と連絡がついたんですけど、師匠の話によるとオレ達が相手しているのは“幻影”らしいです」

「え!?じゃあ、本体は……?」

「師匠達が、相手をしているようです」

「どういう事?」


 トネリコはヴェイグから少し離れてオズワルドの話を聞いて、顎に手を添えて考えていた。

 可能性が高いのは“本来の特異点”であるフィロソフィーへと“本能のままに”向かった、それが1番の可能性が高いのだろう。
 そうなってしまえば、フィロソフィー達が動けない状態になっているのでは?


「“本来の特異点”を殺そうとしている?そうする事で、世界終末の起こり方に変化が起きる事になっちゃう」

「どんな感じに?」

「“本来の特異点”は、完全な“文明リセット”が行える。“人工的な特異点”の場合、融合前までのリセットしか行えない。“アイツ”の狙いは、“人工的な特異点”で世界終末を起こして“ループする世界”へと変える事だと思う」

「なるほど、ね。だから、フィロが狙われたってわけ?」

「!?」

「師匠!?いつの間にっ」


 リーオはいつの間にかトネリコの背後に居て、トネリコに対して微かに冷めた眼差しで見下ろしていた。

 それに対して過剰に反応したレーヴェが黒い大鎌となりリーオを狙うが、リーオは前を向いたまま刀を後ろへと上に向けて上げれば黒い大鎌を防ぐ。


「“主”の危険を察知して、向かってくるなんて俺らと変わらないね」

「っ!」

「だけど、弱い」

「!?」


 リーオは身を低くして振り向き見えない斬撃をレーヴェに向けるが、オズワルドがレーヴェを突き飛ばしリーオの斬撃を全て防ぐ。


「どういうつもりですか、リーオ師匠」

「ちょっとした、八つ当たりって所かな?折角、フィロが作ってくれたアップルパイを台無しにされたし?だから、一人ぐらい殺してやろうかなって」

「それは、度が過ぎる八つ当たりじゃないですか?」

「別に、ソイツらは何度殺しても死なないでしょ?今まで溜まった“糧”があるなら、一度ぐらいの“消費”で問題にはならない。そうでしょ?“人間モドキ”さん?」


 おちゃらけた感じで話をしながらリーオは、トネリコとレーヴェを見ては目が笑っていない笑みを向けていた。

 彼らにとって“フィロソフィー”は幼馴染であり、大切な“人”だからこそ護るためならば何だってする。
 それこそ、“害ある存在”にもなるトネリコという存在は彼らにとっては排除対象となるのは確かな事だろう。

 オズワルドとレーヴェそれにヴェイグもトネリコを庇うようにすると、リーオは目を細めて嘲笑ったような笑みへと変わる。


「駄目だね。“俺”だけだと思っているなら、それは警戒心無しだよ?」

「!?」


 リーオの言葉に直ぐに反応したのはヴェイグで、ヴェイグはトネリコを引き寄せると同時に右肩に大きな機械の斧の回転している刃が掠めていく。


「ヴェイグさん!?」

「これぐらい、大丈夫だ」


 ヴェイグとトネリコが立っていた場所には、大きめの機械の斧が地面に刺さっており柄を掴んでいるのは、黒色の少しボサッとしたショートで、切れ長なツリ目をした暗めのモスグリーン色の瞳色をしている青年が立っていた。


「反応が良いみたいだな、一応」

「ジャックー、いきなりは卑怯だと流石に思うよ?」

「リーオ、お前が言ったじゃないか」

「えー?“ご挨拶しておきなよ”、それしか言っていないんだけど??フィロに怒られても知らんからなー」

「………」

「あ、いじけた」


 ジャックはフィロソフィーに嫌われるかもしれないと思ったのか、木の端っこに行っては明らかにいじけたかのように俯いて座り込んでいた。


「リーオ師匠」

「あははっ、まぁー冗談はさておき。キミらだけじゃ、“ソレ”の居場所とか分からないでしょ?だから、案内人としてジャックを連れてきた。ジャックなら、俺より強いし打たれ強さも1番だからねー。何かあれば、殿(しんがり)なんて簡単だろうから。フィロの心配は要らないよ、フィロも本気を出せば一瞬で命なんて奪えるし。それに、アッシュが居るから大丈夫」

「リーオさん、協力してくれるのですか?」

「まぁ、キミがどうなろうともどうでもいいんだけどね?解決させないと、フィロに被害がいくしフィロとの時間を取られたくないんでね。なので、ジャックを好きなように使うといいよ。明らかに、ジャックの方が“強敵”に出逢った時に対策なんて出来る」


 リーオはジャックの所に行っては、何かを手渡すと先程の項垂れていたジャックは元気よく立ち上がり嬉しそうな笑みを浮かべていた。


「ジャックを使うなら、“凄くヤバい強敵”に使いなよ?コイツなら、どんな相手でも最終的には一方的に殺せる」

「(一方的に??)そう、ですか。わかりました、ありがとうございます」

「そうそう、どんな事態になろうとも“諦めるな”ってのがフィロからの言伝ね」

「!!、それは……」

「フィロは嬉しかったから、キミらを見捨てるという事はしたくないんだと。フィロにとって、キミは“友達”なんだとさ」


 リーオの言葉にトネリコは唖然とした表情になるが、“友達”という一言の言葉を聞いて何処となく嬉しそうに笑みを浮かべていた。


「“友達”……ですか」

「そうだよ。フィロは、あの町から出るのが初めてであり“友達”が出来たのも初めてだから……。だから、俺からもフィロの“友達”としてキミらを助けるだけだよ」

「リーオ師匠、素直じゃないですね。相変わらず」

「五月蝿いよ、オズワルド。んじゃ、俺は一旦帰るわー。何かあったら、連絡よこせよー」


 オズワルドは扉のようなモノを空間から出してから扉を開けると、その扉の先には町が広がっており此方を見ては嬉しそうに手を振っているフィロソフィーが居た。

 そして、口パクで“頑張れ、トネリコちゃん”と言ってから指をピースさせては満面な笑みを浮かべていた。
 リーオが扉の先に入ると扉は音もなく閉まり、その扉は砕け散って消え去る。


「うん、頑張るよ。フィロソフィーさん」

「リコ」

「本体側については、フィロソフィーさん達がどうにか対象してくれるみたい。ジャックさん、案内を頼めますか?」

「あぁ、構わない。それが、フィロが望むならば僕は君達を安全に“根城”へと案内すると約束しよう」

「なら、トネリコ。色々と準備をしながらジャックさんに地図で確認してもらった方がいいんぞゃない?」

「うん、そうだね。ジャックさん、地図の確認をしてもらってもいいですか?」

「あぁ、分かった」


 トネリコ達が“もう1人の人工的な特異点”の“根城”について確認している頃、“旧ホノルル”があった大陸は赤黒い水晶の出来た巨大な大樹が存在しており最上の所には大きな黒い水晶の城が建築されていた。

 これが出来上がったのは、ほんの数日前の事である。

 その黒い城の最上階には、クーロンが立っていて目の前には血のように赤い水晶で出来た巨大な蕾が浮遊し鼓動の音がしている。


「さぁ、準備は整ったで。世界をリセットし、また新たな時代を作るために!我々を導き、我々が平穏を手にするまで繰り返すんや!“アナザー・メメントリ”様、アンタこそが“カミサマ”なんやろ?」


 クーロンは巨大な蕾を優しく撫でてから、優しく笑みを浮かべていた。

 これから起きるのは、“望まれし平穏”を手にするまでリセットを繰り返していく残酷なループな世界の兆しだ。

 それを阻止するために、トネリコ達は覚悟を決めて此処へと向かってくる。

 “アナザー・メメントリ”は静かに鼓動の音をたてながら、この地へと“約束されし地”へとトネリコ達が来るのを待ち続ける。


【欠片、お前が望む世界が作られるカ】

【ボクが望む世界が作られるのカ】

【それは、どちらだろうネェ?】







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