23 / 27
■第2楽章:2つの異なる道標
EPISODE 23:2つの道の違い
しおりを挟む会議室の大きなテーブルに大きな地図を広げて、トネリコはジャックに何処に“アイツ”の根城があるのかを確認してもらっていた。
「リーオが手にした情報としては、この地にあるというのは分かっている。話によれば、一目で“異質”なのは分かるという事だ」
「“旧ホノルル”、ね」
ジャックが指を向けた場所は“旧ホノルル”であり、トネリコ達は其処へと出向いた事が一度だけあったが其処は何も無かった。
という事は、この数日の間に何かしらの変化が起きて周りの環境を喰らい何かが育ったという事だろう。
「アイツなら、確かに人が立ち入らない場所を選んでは周りを書き換えて喰らい何かを作るのは確かなのかも」
「リコ、この地なら魔導空挺は行けそうだな」
「運転は相変わらず、ロイドさんに頼むとして……。どういうPTで行くべき7日……」
「アタシは、多分途中で離脱になる可能性は高いと思う。それを踏まえて考えないといけないから」
トネリコは出来る限りの人数で挑みたいが、それが正しいのかは分からない。
確実に、クーロンと戦うのは確実だろう。
そしてクーロンは、“アイツ”の恩恵を受けているのは確かだからクーロンの相手はジャックがする事になる。
「ジャックさんには、クーロンの相手を確実に頼むと思います」
「ん、分かった」
「クーロンに?」
「高確率でクーロンは、“アイツ”の恩恵が強く受けていると思うの。そうなれば、レーヴェやオズくんに戦わせるのは後の“アイツ”との戦いに備えさせる事が出来ない。そうなれば、確実に負けると思うから」
「なるほど……。全力で戦わなければいけない相手画いるならば、その手前に相手となる人物との戦闘は避けるべきですね」
「そういう事か」
“アイツ”との戦闘は、万全な状態が何よりもいいのは確かだ。
それならば、その前の“強敵”となる可能性が高いクーロンに対してはジャックが適任だろう。
「そいつが立ち塞がる存在なら、俺が全力で相手をしよう」
「頼みました、ジャックさん」
「おう」
「じゃあ、レーヴェとオズくんとヴェイグさんは同行お願いします。もしもの時には、お願いします」
「……」
「レーヴェ」
「頭では、わかっているんだよ。リコが取り込まれた場合、あの時のように敵対化する可能性が高いってぐらいっ……。それでも、オレにはっ」
「もしもレーヴェの旦那が出来ないなら、それは俺がやるさ」
「ヴェイグっ」
「愛する人を手にかけるってのは、確かに躊躇する事案だけどよ?だがな、愛する人だからこそ終わらせるのも1つの愛でもあると思ってんだよ。躊躇してリコちゃんが、内側から見ているならば悲しませてしまうだろ?だったら、そうならないようにやるしかないなら俺はやるさ」
ヴェイグは煙草を吸いながらもトネリコの頭を優しく撫でていて、その手をオズワルドが払い除けてはジト目でヴェイグを見上げて見ていた。
「オレも、出来ますよ。それで、トネリコが辛い思いをせずに事が成せるならばオレはやります。トネリコが、それで解放されるなら」
「オズくん」
「覚悟を決めるのは、もうアンタだけだ」
「っ………」
オズワルドは軽く睨むような目でレーヴェを見れば、レーヴェはオズワルドの目線から逃れるように目線を外して目を閉じる。
「まだ、向かうまで少し時間はあるから。レーヴェ?ゆっくりと、考えて答えを出してくれるの待ってるから」
「っ………」
トネリコは優しく笑みを浮かべてはレーヴェの頬を優しく撫でると、レーヴェは俯いたまま会議室を出ていく。
「いいのか?」
「ジャックさんも考えたら、わかるんしゃないかな?もしも、同じようにフィロソフィーさんがなったならば」
「そうだな。ボクならば、ヴェイグやオズワルドのような事を選ぶだろう。リーオならば、それを選ばないが」
「師匠なら、共倒れを選ぶんじゃないか?」
「いや、リーオはボク達の中でも1番フィロソフィーを愛している。それも、狂っているぐらいに。アイツなら、フィロソフィーを選ぶ。世界よりも、フィロソフィーと共に居る事を選ぶだろう」
ジャックが目を閉じながらも壁に寄りかかり、そう告げるとヴェイグとオズワルドは何とも言えない表情をしていた。
「まだ、あの男は道を選ぶ事に迷いを見せている時点でリーオのような事は選んだりはしない」
「それは、どうして?」
「迷いがあるという事は、最悪な道は選ばないという事だ。言い方をかえるならば、ちゃんとそういう理性が働いているというのが分かりやすいだろうな」
「そう、ですか……」
「リーオの場合、何に対してもフィロソフィーが1番でいる。フィロソフィーが望むならば、世界さえも敵に回して世界を壊す事を容易く成そうとする。まぁ、そうなったらボクらは止められるのかって言われるとゼロに等しい」
「ゼロに等しい?でも、リーオ師匠はジャックさんのが強いって」
「ボクの弱点を分かっているリーオに、ボクは勝てる勝率が見えないんだ」
「!?、なるほど」
レーヴェは会議室を出て裏手の森林を散歩しながらも、近くにあった泉を見つけては見下ろして自分の姿を見つめていた。
“もしも”その時が来た時に、自分はトネリコを殺せるのだろうか?
“あの時”のように躊躇し、殺すことも出来ないという結末を迎えるんじゃないか?
そんな思いが、レーヴェの心の中でザワついていた。
「……俺は、っ」
トネリコと過ごした日々が本当に楽しく感じていたレーヴェにとって、この選択は何とも残酷事だろうか。
長年の付き合い、その中でトネリコへの愛情は芽生えてしまっている。
愛する人を手にかける事が、本当に選ぶべき道なのかレーヴェは理解する事が出来なかった。
「俺は、出来るのか?」
「アンタは、出来るわけがないでしょ」
「!?、リーオ」
リーオはいつの間にか大きな岩の上に座り、その上から見下ろすようにレーヴェを見ては軽く笑っていた。
「オレなら、あの2人とは違う道を選ぶ。フィロを喪うぐらいなら、こんな世界に何の意味があるってんの?まぁ、オレは世界そのものが“どうでもいい”と思っているからなんだろうけど。アンタの場合、トネリコちゃんが居るという世界も好きでもあるけどトネリコちゃんが選んだ道だからってのがあるんでしょ?」
「……」
「トネリコちゃんが、この世界にいるアンタらを助けたいと願っている。それなら、それを護りたいってのもあるんでしょ?だから、差し出された2つの道に悩んでいる」
「っ………」
リーオに指摘されたレーヴェは、俯いてしまい唇を噛んでいた。
自分でも、何となくわかっていた事だ。
それを知り合ったばかりの人物であるリーオに、それを見事なぐらいに指摘された事に悔しさを感じていた。
「そんなに、悩むならさー」
「?」
「俺が、殺してあげようか?トネリコちゃん」
「!?」
レーヴェはリーオの首へと黒い大鎌を放つが、リーオは不敵な笑みを浮かべては刀で軽々と防いでいた。
「あはっ、そんなに怒りを見せるなら自分で手をくだしなよ。他人に、しかも知り合ったばかりの人物に殺させるのが癪ならば自分ですべきだ。俺なら、そうする」
「っ……」
「それが、“愛”だと思うけど?それに、1つだけアンタに教えてあげる」
「何を………?」
「トネリコちゃんを犠牲にしないで救うための手段」
「!?」
其々が悩む中で次の日とかり、“旧ホノルル”へと向かうために魔導空挺の前に全員が集まっていた。
「運転、お願いしますね。ロイドさん」
「おー、任せておけ!」
「もしも魔導空挺へと魔物が来た場合、フェイトくんとクロムさんお願いします」
「うん、任せて!」
「おう!」
オズワルドとヴェイグそれにジャックは、先に魔導空挺へと乗り込んで中で準備を始めている中でトネリコは大きめなフラスコに触れる。
「行こう、レーヴェ。全部、終わらせないといけない」
大きめのフラスコの中で黒い何かは軽く蠢いて、何処となく何かを考えている感じがしてトネリコは苦笑いを浮かべていた。
トネリコ達が魔導空挺に乗り込んで、ロイドが魔導空挺を起動させて“旧ホノルル”へと発進させる。
「……」
トネリコは魔導空挺の窓から外を見つめては、今までの旅の事を思い返していた。
レーヴェと出逢う前、自分は何もない森林の中で彷徨って歩いて何も分からなかった。
そんな時に、レーヴェと出逢ってはレーヴェから様々な事を教わりレーヴェと共に旅をして楽しさを覚えた。
そんな日々が、本来なら“あってはいけない事”なんだと気付かされたのは“あの時”だった。
「本当なら、出逢うべきではなかったんだよね。それでも、アタシは凄く楽しかったんだよ。レーヴェと出逢って、オズくん達と出逢って、フィロソフィーさんと出逢い“友達”にもなれた事に……アタシは、凄く嬉しかった」
だからこそ、彼らを喪いたくはない。
そのためにも、“アイツ”と向き合い“アイツ”と共に何もかもやり直しをして自分を殺してもらうのが1番良いんだと。
“アイツ”と融合して、彼らが殺すことが出来なかった場合についてはジャックさんには伝えてある。
「特異点と共に生きている人ならば、特異点の影響を受けている可能性があるから。もしも、引き継がれているなら……。何も知らないアタシを殺してもらえる」
何も知らないままならば、何事もなく“ゲーム”のままであり“異世界”との融合も無かった事になる。
“リセット”になれば、全てが戻って来る。
この辛い世界ではなく、“ただのゲームという世界”へと戻れる。
それが、1番良いんだと。
「本当は、生きたい。皆と沢山の所へと旅をして、ダンジョン攻略して、街づくりをしたりとかもしたいっ……」
それは、“あの時”が来るまで想っていた事。
クランの皆とダンジョン攻略して楽しんだ日々、そこで手に入れた品物をバザーで売った日々も覚えている。
だから、本当は生きていたい。
それが、叶わないのはわかってはいる。
「それでも、心の何処かでは想ってしまう……。そうなれたなら、どんなに輝かしい日々が来るのかなって……」
でも、それを望んだらいけない。
「だから、想うだけはタダだよね……っ?」
NeXT
0
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
