おいでませ!?DIVERPG世界でセカンドライフの時間だよ!

祁季みのる

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■第2楽章:2つの異なる道標

EPISODE 26:新たな道標へ

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 “最後のダンジョン”へと到着すれば、其処にはオズワルド“ファーストアカウント”が立っていて此方に気付いては歩み寄ってくる。


「トネリコ、レーヴェ」

「ちゃんと、来たみたいだな。オズワルド」

「それは、ちゃんと飲みましたからね。それに、こうやってまたトネリコと逢えた事が何よりも大きな成果だよ」

「オズくん」

「決着つけに、行きましょう。トネリコ、レーヴェ」

「おう」

「うんっ」


 “最後のダンジョン”へと入っていくトネリコ達は、普通の古びた祠のようなダンジョンな事に驚いていたが“まだ、アレが芽吹いていない”からだと納得していた。

 “芽吹く”までには月日などが必要だという事は、前回の事で分かっていた。
 ならば、まだ目覚めていないならば簡単に倒す事は可能でもあるという事だ。


「倒す事で、融合世界とはならないんですよね?」

「うん。基本的な“核”はアチラ側だから、アタシには権利はないの。あくまでも、アタシは“欠片”って言うだけだから本体ではないから決める権利はない」

「そうしたら、いつも通りの“ゲーム”のようてま“ゲーム”ではない世界って感じになるな」

「うん。触れるという事は可能でも、一線を越えるような事態にはならないから……パメラちゃんのような子供は、存在しなくなる。それに、“ゲーム”という壁があるから、奴隷制度とかも作られる事はない」

「そうだな」


 あの5年という月日で起きた事は、自分達以外では覚えているとしたらフィロソフィー達だけだろう。

 それでも、あの残酷な世界は無くせる。
 いつかは、同じ事が起きるかもしれない。

 そうなったとしても、仲間がいるならば再び取り戻すことは可能だ。


 トネリコ達は最奥へとやってくると、其処には青色の水晶に囲われた赤黒い色をした水晶の球体が眠っているかのように存在していた。


「多分、この青色の水晶はフィロソフィーさんが施しているんだと思うよ」

「あのガキが?」

「それ、リーオさんの前で言ったら殺されるよ?レーヴェ。どうやら、眠っているみたいだね……」


 トネリコは短剣を取り出しては、その赤黒い色をした水晶の球体へと振りかざして振り下ろし刺し込むと眩しい光が部屋全体に広がり包んでいく。

 これで、融合は不可能となる。
 あの“融合世界”は、存在する事はなくなったんだ。


「リコっ」

「まぁ、そんな感じはしたかな……」


 トネリコの身体は透けていき少しずつ光の粒子となり消えかけていて、レーヴェはトネリコの手を掴み引き寄せて抱きしめていた。


「ごめんね。レーヴェ、オズくん。2人には、2度も別れを見せる形になっちゃって……」

「っ……」

「いえ、トネリコは悪くないですよ。これも、1つの運命って事だけでしょ?それに、俺的には貴女なら視えなくても俺達の側に居てくれると思っていますから」

「ふふっ、そうだね」

「……リコ、もしも、また、何処かで再会したらっ………」

「うん……」


 レーヴェがトネリコの唇に触れるだけの口付けをすると、トネリコは驚いた表情をしてから一筋の涙を流していた。


「再会出来たら、俺はちゃんとリコに告白する。今度は、ちゃんと、だ!」

「うん、待ってる。その時を、ずっとっ………待ってるから……っ」

「絶対に、見つけ出してみせるからっ!!」

「う、んっ……うんっ!!」


 トネリコは浮遊して光の粒子へと消え去ると同時に、レーヴェへと手を伸ばせばレーヴェはトネリコの手に触れていた。


「リコ……」



 彼らは長い長い旅を経て、やっとの平穏を取り戻した。

 それには、1つの犠牲を出して取り戻した平穏なんだと彼ら2人以外のプレイヤーは知らないだろう。
 平穏を取りと戻した世界は、あの出来事が無かったかのように“いつも通り”へと戻って誰一人としてソレを知らないだろう。


 そして、取り戻してから1年という月日。


 一部のプレイヤーは引退をしたり、新しく入ってきたプレイヤーなどがいる時代の変換期のように変わっていた。

 レーヴェは何となく新しく追加された土地へと足を踏み入れるため、近くの港で目の前に広がる海を眺めていた。


「もう、1年か」

「へぇー、哀愁漂った背中をしているじゃんー?」

「!?、リーオ、それにフィロソフィー?」

「ちゃんと、薬の効果でボクらの事を覚えているみたいやな!それは、丁度良かったってもんやで!」

「は?」

「あんさんに、1つ頼みがあるんや!これは、レーヴェという人への最初で最後の“依頼”やで」

「“依頼”?お前らが??」


 フィロソフィーの言葉にレーヴェは2人を怪しそうに見れば、リーオは呆れた表情をしながらも1つの筒に入れられた依頼書をレーヴェへと投げ渡す。


「丁度、新しい大陸が解放されたんでしょー?その大陸、俺達が住んでいる大陸の1つでもあるんでね。アンタが欲しがりそうな、それこそ大金を出してもらっても良いぐらいの情報が其処に書いてある」

「!?、ま、まさか…っ!」


 レーヴェは慌てて筒の蓋を開けては中身の書類を見れば、その書類を掴んでいる手は震えていた。


「リコは、其処にいるのかっ!?」

「視えるボクからすれば、確実にトネリコちゃんの“生まれ変わり”だと思うで?ただ、あの大陸は今別の事で頭を悩まされておるんや」

「それが、“依頼”か?」

「うん!レーヴェさんには、大陸の調査隊のリーダーとして“憩の工房(IKOIworks(いこいわーくす))”と共に“原因調査”をして欲しいんよ」


 レーヴェにとって、この1年間ずっとトネリコの痕跡を探していた。

 そんな中で、新たな大陸の話とトネリコの生まれ変わりがいるという話。
 普通ならば、新たな大陸に行くには“依頼”が発生しなければ向かう事は出来なかった。

 だが、“依頼”という形で今目の前に“チャンス”が来ている。


「わかった。その“依頼”、俺が引き受けた」

「ふふっ、そう言うと思ったで!!ほれ、これがチケットや!!もう、“憩の工房(IKOIworks(いこいわーくす))”には託してあるで!!あとは、あんさんだけや!レーヴェさん!」

「おう!」

「ちゃんと、迎えに行ってちゃんと伝えて来るんやで?」

「当たり前だ」


 レーヴェはフィロソフィーとリーオに見送られながらも、大きな船に乗り出して新たな大陸へと出航した。

 新たな大陸では此方のような平穏は無いというのは、“依頼”書には書かれていた。
 それは、何処となく“融合世界”のような感じでもあり“それ以上”とも書かれていた。

 だからこそ、急いで向かわないといけない。

 あの情報通りならば、今はフィロソフィー達の町に居るならば身の安全は保障されているだろう。


「(違う町だったら、……って考えたくもないな)」

「やっと、来ましたか?レーヴェ」

「オズワルド」


 オズワルドはレーヴェの横へと来て何処となく嬉しそうに笑みを浮かべていて、レーヴェも軽く笑みを浮かべていた。


「こんなに、早くにチャンスが来るなんて思いのほかって感じですね」

「そうだな。まだ、時間かかると思っていたな……」

「彼女達には、感謝しかないですね。もしも、彼女達に何かあれば手助けはしたい」

「あぁ、こんな大きな借りをつくったしな」

「普通なら、まだ渡航なんて出来ませんからね……。“現住民”からの“依頼”だからこそ、堂々と渡航ご出来るってもんですよ」

「あぁ、このチャンスを無駄にはしない」


 2日をかけて新たな大陸へと辿り着き、依頼書と共にあった手紙には地図が一緒に入っていたおかげで行き方も把握するのが早かった。


「フィロソフィー達の町は、この港町から北の方にあるみたいだな」

「ですね。そうなると、馬車になりそうですけど……そこは、抜かりはないですよ?」

「まさか……」

「さっきの船には俺しか乗っていなかったのは、他のメンバーは魔導空挺で向かっていたからです」


 オズワルドが上空へと指を向ければ、其処にはあの魔導空挺が少し小さくなった状態で空に浮かんでいた。


「直ぐに用意出来る“竜核”で作ったので、以前の大きさはありませんけど。まぁ、戦い向きで作ったわけではないので」

「なるほど、な」

「いずれは、大きなのを造りたいとロイドは言いましたけどね」


 魔導空挺は港町の少し離れた所へと降り立ったようで、オズワルドとレーヴェは港町で少し買い出しをしてから魔導空挺へと向かった。


「やぁ、レーヴェくんだっけ?オズワルドからは、色々と聞いているよ」

「色々と??」

「まぁ、色々と話はしましたよ?例えば、1人の大切な女の子を未練的に探しているって」

「おい」

「これから、その町に向かうんだろう?馬車だと、4日はかかるぞ!だけど、ロイドが造った魔導空挺ならば1日で着く!どうだい、一緒に向かわないか?」

「……あぁ、頼む」

「よしっ!乗り込んでくれ!すぐに、出航するぞ!!」


 魔導空挺に乗り込んだレーヴェとオズワルドは、新たな大陸を上空から眺めていたのだが西側にはノイズのようなモノがあり空と海の間には亀裂があるのが見えた。


「異変というのは、アレかもしれないな」

「そうかも」

「それについて、オズワルドの師匠は?」

「もしかしたら、何かしらの歪が出来たのか。それとも、意図的に、アレは作られた可能性もあるって」

「なるほど、な。だから、それなりに動ける俺らで調査を頼んだって訳だな」

「そうですね」


 あの亀裂が何を示すのかは分からないが、今は何よりも約束を果たさないといけない。
 トネリコと最後の時にした約束、それは必ず果たさないといけない。

 大切な人だからこそ。
 どんなに困難な事があろうとも、それは果たさないといけない。


「やっと、此処まで来れたんだ。平穏を取り返して、あとはお前だけだ。リコ……」


 いつか、あの時のような旅が一緒に出来るならば何処だろうとも迎えにいく。

 互いに笑い、互いに泣いて。

 そんな日常が再び過ごせるというならば、今での辛い道筋なんて関係などない。

 これから待つのは、皆でワイワイと出来る楽しい日々なんだ。


「待っていてくれ、リコ。もう少しで、迎えに行くからな」






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