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第12話 昔の話、今日の話
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俺たちは温泉に入ろうという話になり大浴場に向かった。上総と入れないのは…いや、なんでもない。とにかく、久しぶりに男同士と女同士で少しの間休憩と言ったところだ。
「それで、実際どうなの?ヘタレさん?」
「うるせえな…どうって?」
「どこまでいったかって話。だってお前ら、だいぶ長い間片想いだと思ってたわけだし、なんか、勢いでとか無かったわけ?」
「そ、そんなに進んでねぇよ。ちょっと前にキスしたくらい…」
俺を顔を真っ赤にして大貴は大きなため息をついた。
「お前らさ、仮にも思春期の男女が恋人同士で四六時中イチャイチャしてて、1回もそういう雰囲気にならなかったわけ?」
「なったことは…あったけど…なんか、怖いっつか…」
「はぁ~。やっぱヘタレな。いいか?お前ら何年好きだった?今更1回や2回なんかしたところで別段思いが変わったりもしねぇだろ。ただでさえ色々抱えてんだから、気をつけねぇといつの間にか終わってたとかなくはないんだぞ?」
「それはまぁ、わかってるけど…」
だけど俺は、まだあの時のことも思い出せていないし。だけど、そんなことを大貴は見透かしていたような表情だった。
「お前が気にしてることがあんのは分かってるけど、それは自分のエゴだろ?あいつはずっと一人で抱え込んできて、お前と付き合い始めて少しでも先に進もうとしてんだ。お前がいつまでも立ち止まってちゃいけねぇんじゃねぇの?」
「大貴…」
「なぁ、これから話すことは…明日には忘れていてくれないか?」
大貴は急に遠くを見たような、何かを思い返しているような、そんな表情で語り始めた。
「俺はさ、お前のことがずっと羨ましかった。あいつがお前のことを好きになり始めた時から俺はあいつの気持ちに気がついてたからな。そんでお前もあいつのことが好きで、お互い全然近づこうとしねぇし。だったら俺が先にあいつのことがとっちまおうかって何度も考えた。」
そこまで言われて初めて気がついた。大貴が上総のことを好きだったということに。
「だけど、お前のこと考えてるあいつがすげぇ幸せそうで。俺には代わりなんてできねぇって気づいたんだよ。」
俺は大貴に強い罪悪感を覚えた。
「ごめん。俺、大貴が好きだったこと全然知らなくて、無神経なことばっか言ってた。自分勝手なことばっかり…」
すると大貴はこっちをじっと見つめて、だけどそれはいつもみたいな冷たい視線じゃなくて、どこか子どもを見るような温かい瞳で、それでいてライバルを見る挑戦的な視線を含んでいた。
「いいんだ、それは俺も一緒だから。前に、あいつがなにを考えているかは分からないって言ったことあったろ。」
「だからこそ、知ろうとしなきゃってことでしょ?」
「あぁ、俺はお前らが付き合い始めて、悔しいけどお似合いだと思った。あいつのこと1番理解しようとしているのはお前だし、あいつが1番心を開いてるのもお前だ。だからこそ、お前がしっかり支えてやれ。あいつが抱えてたもんを、少しでも軽くしてやれ。思い出すのはその後でもいい。それが、お前なりの責任の取り方なんじゃねぇの?」
「大貴…ありがとう。俺頑張るよ。俺がなにをしたのかは分からないけど、過去の俺の分まで、あいつを幸せにしたい。」
「当たり前だ。そうじゃなきゃ俺が許さねぇ。」
「だから…無神経なのは分かってるけど…これからも、話とか聞いてくれ。頼む。」
俺は頭を下げた。違う。大貴の顔を見ることができなかった。
大貴は少し驚いたような、それも見透かしていたような顔をした後、少し瞳にまつげの影を落として
「なに言ってんだ。そんなもん、今更言われなくたって聞いてやるよ。」
顔を上げた俺の前には、もういつも通りの大貴がいて、あのからかうような、冷たい、そしてどこか温かい瞳が浮いていた。
「そろそろ出ようぜ。のぼせるぞ。」
「そうだな。」
そう、僕は明日の朝にはこの話は忘れる深い記憶の底にしまいこむ。それが、約束だから。
「それで、実際どうなの?ヘタレさん?」
「うるせえな…どうって?」
「どこまでいったかって話。だってお前ら、だいぶ長い間片想いだと思ってたわけだし、なんか、勢いでとか無かったわけ?」
「そ、そんなに進んでねぇよ。ちょっと前にキスしたくらい…」
俺を顔を真っ赤にして大貴は大きなため息をついた。
「お前らさ、仮にも思春期の男女が恋人同士で四六時中イチャイチャしてて、1回もそういう雰囲気にならなかったわけ?」
「なったことは…あったけど…なんか、怖いっつか…」
「はぁ~。やっぱヘタレな。いいか?お前ら何年好きだった?今更1回や2回なんかしたところで別段思いが変わったりもしねぇだろ。ただでさえ色々抱えてんだから、気をつけねぇといつの間にか終わってたとかなくはないんだぞ?」
「それはまぁ、わかってるけど…」
だけど俺は、まだあの時のことも思い出せていないし。だけど、そんなことを大貴は見透かしていたような表情だった。
「お前が気にしてることがあんのは分かってるけど、それは自分のエゴだろ?あいつはずっと一人で抱え込んできて、お前と付き合い始めて少しでも先に進もうとしてんだ。お前がいつまでも立ち止まってちゃいけねぇんじゃねぇの?」
「大貴…」
「なぁ、これから話すことは…明日には忘れていてくれないか?」
大貴は急に遠くを見たような、何かを思い返しているような、そんな表情で語り始めた。
「俺はさ、お前のことがずっと羨ましかった。あいつがお前のことを好きになり始めた時から俺はあいつの気持ちに気がついてたからな。そんでお前もあいつのことが好きで、お互い全然近づこうとしねぇし。だったら俺が先にあいつのことがとっちまおうかって何度も考えた。」
そこまで言われて初めて気がついた。大貴が上総のことを好きだったということに。
「だけど、お前のこと考えてるあいつがすげぇ幸せそうで。俺には代わりなんてできねぇって気づいたんだよ。」
俺は大貴に強い罪悪感を覚えた。
「ごめん。俺、大貴が好きだったこと全然知らなくて、無神経なことばっか言ってた。自分勝手なことばっかり…」
すると大貴はこっちをじっと見つめて、だけどそれはいつもみたいな冷たい視線じゃなくて、どこか子どもを見るような温かい瞳で、それでいてライバルを見る挑戦的な視線を含んでいた。
「いいんだ、それは俺も一緒だから。前に、あいつがなにを考えているかは分からないって言ったことあったろ。」
「だからこそ、知ろうとしなきゃってことでしょ?」
「あぁ、俺はお前らが付き合い始めて、悔しいけどお似合いだと思った。あいつのこと1番理解しようとしているのはお前だし、あいつが1番心を開いてるのもお前だ。だからこそ、お前がしっかり支えてやれ。あいつが抱えてたもんを、少しでも軽くしてやれ。思い出すのはその後でもいい。それが、お前なりの責任の取り方なんじゃねぇの?」
「大貴…ありがとう。俺頑張るよ。俺がなにをしたのかは分からないけど、過去の俺の分まで、あいつを幸せにしたい。」
「当たり前だ。そうじゃなきゃ俺が許さねぇ。」
「だから…無神経なのは分かってるけど…これからも、話とか聞いてくれ。頼む。」
俺は頭を下げた。違う。大貴の顔を見ることができなかった。
大貴は少し驚いたような、それも見透かしていたような顔をした後、少し瞳にまつげの影を落として
「なに言ってんだ。そんなもん、今更言われなくたって聞いてやるよ。」
顔を上げた俺の前には、もういつも通りの大貴がいて、あのからかうような、冷たい、そしてどこか温かい瞳が浮いていた。
「そろそろ出ようぜ。のぼせるぞ。」
「そうだな。」
そう、僕は明日の朝にはこの話は忘れる深い記憶の底にしまいこむ。それが、約束だから。
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