彼女のために最強を目指す

しらす

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2話 森に住む

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2話 森に住む


俺が転生して8年。俺の家シュトライド家でできる魔法は大抵覚えた。どうやらこの世界には適正魔力というものがあるらしく、6つの魔力元素、火、水、風、地、光、闇という元素に分かれている。しかし適正と言っても別にその魔力元素のみしか使えないわけではなく、ある程度差が生まれるだけだそうだ。
ただ、どの元素にも属さない移転魔法や物理浮遊魔法は勉強すれば誰でも覚えられると記されていた。
俺は自分の適性魔力を調べるべく2歳の時に父アランの書物を漁って分かる方法を見つけた。どうやら魔水晶という魔力が流れやすい水晶に魔力を注ぎ込むと色が現れるらしい。適正魔力はひとつだけではなく3つ在るものもいれば1つしかないというものもいるらしいので俺はいくつ適正を持っているのか確かめた。
いざ、魔力を注ぐと、いくつかの色が現れた。魔導書を見ながら確認すると、赤が火、青が水、緑が風、黄が地、白が光、紫が闇と記されていた。


俺はその6色すべてが適正だそうだ。
少しあせって6つの適正を持った有名人を探したが見つかったのはただ1人。3000年前に邪神を倒した英雄ギルフォード・レイという人物だけだった。
神がいっていたのはこの力のことか。
そう思って俺は6年間特訓を積んだ。



ある人物2人と一緒に





そして8歳の俺。
今日は両親にお願いをするために今応接の間で両親と対面している。
「それで、お願いとは何だ?」
アランがニコニコしながら俺に聞く。ちなみにアランのことは親父とは呼ばずに父さん。と3歳の誕生日のときに決めた。
そして隣で少し戸惑いながら母のリア。
「なにか悪いことでもあったの?」
なにやら俺のことを心配してくれているようだ。それもそうだ。俺は8年間ずっと甘えることをしてきていない。自分でできることは自分でやることにしている。それのせいかメイドや両親は歳相応の態度とは思えない。とひそひそと話していたのを覚えている。
俺は一回大きく深呼吸のする。
「うちの領土には暗闇の森というものがあったよね?」
暗黒の森、下級から災害級までの魔物が生息している領土でももっとも危険な場所。そこを領土にしているのは食料や薬草、自然の恵みを圧倒的に有しているからだ。
「ああ、そこがどうかしたのか?」
「あそこで俺が12歳になるまで生活させてほしい。」
両親の顔が凍りついた。どうやら暗黒の森のことを聞いても説明だけで済むと思っていたのだろう。
「…理由を聞いてもいいかい?」
アランは冷静さを保つように静かに聞く。隣でリアは青ざめていた。
「俺、3年前に神様からお告げがあったんだ。」
「お告げだって!?すごいじゃないかカズト!お告げを聞けるのは選ばれた人間だけなんだよ!」
だがこれは俺の嘘だ。
こうでも言わない限りたぶん2人は許してくれないだろう。
「まあ…それで神様からはなんて?」
少し顔の色が良くなったリアが聞く。
「暗黒の森で8歳になったら師匠を連れて12歳まで生活するようにって。そこで汝は力を得るだろうって。」
簡潔に言う。しかし今度は2人とも安心した顔をしていた。
「そうか、カズト…お前はあの2人と暗黒の森で暮らすのか…」
「あの2人なら安心できるわ。いいわカズト。いってきなさい!あなたの未来のために!」
アランとリアは快く承諾してくれた。
「父さん、母さん、ありがとう。」
頭を下げて礼をする。







次の日俺と師匠の2人は暗黒の森に向かった。
ここで師匠と呼んでいる2人を紹介しよう。
俺の魔術の師匠、ルジェイル・ロールハート。この国の生ける英雄と呼ばれている。顔はまさに美形。男性なら誰もが振り向く女性だ。彼女が16歳のときこの国に侵入してきた悪魔がいた。その悪魔は国の警務部隊、親衛隊が束になっても傷つけることすらできなかった悪魔を1時間足らずで絶命させたそうだ。それが約5年前。
方や剣術の師匠、アーランド・ロールハート。悪魔をルイジェルと一緒に絶命させたもう一人の英雄。顔立ちもルジェイル動揺美形。彼はルイジェルと共に戦ったときにルイジェルが少しピンチになったところを助けてもらい、二人の弱点を補いながら戦ったためか、ルイジェルはその場でアーランドに惚れ、二人が20のときに結婚をした。


そしてこの二人は俺の真実を知っている。
真実を話したとき、あっさりと信用してくれた。
何でかって?
「「こんなに大人びた子供を見たのとがない」」
だった。
まあ信じてくれるだけでもありがたいんだけど。



ルイジェル=ルイ

アーランド=エド

「ルイ、暗黒の森での修行カリキュラムってあるの?」
俺は暗黒の森の前で聞いた。
「ええあるわよ。午前5時に起きて7時から12時まで私の魔術の修行、13時からは社会常識の勉強。15時から18時まではエドの剣術の修行よ。これを1年間やるわ。」
「…なんかハードだね…」
俺が落ち込むとエドが頭をなでてくる。
「心配すんな。カズトなら1週間で慣れるさ。お前前世では18歳だったんだろう?がんばれよ!」
エドはなにやら兄貴のような存在だ。こんな兄貴だったらどんなに嬉しいことか...
「そうね、がんばりなさい。私たちがしっかり教えてあげるから。」
「そうそう!12の時にはお前を国最強に鍛えるからな!」
「なんかプレッシャーが…?」
そういって益々落ち込む俺。
「そんなこと言うなよな。お前は前世の彼女のために最強になるんだろう?こんなことでへばってどうする!守りたいんだろう?」
エドの言葉に俺は頭を殴られた感覚を覚える。




そうだ



俺は



夏奈のために





最強になって





守るんだ







夏奈は首を切られた光景、2歳くらいのときまで俺が瞼を閉じるとその光景が繰り返される。
いつからかそんな悪夢は見なくなっていった。
それのせいで大事なものを見落とすところだった。
夏奈、もうこの世界に誕生しているはずだ。




「まっててな、すぐ君を見つけてみせるから」




俺は深い青に染まる空を見上げて挙げていたつかめそうにない何かをぎゅっと握り閉めた、






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