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(04) 警報中にかこつけて①
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そもそも神様がわざわざ破談の話をしなければムダに傷付く事もなかったのに。というか、この時の記憶を消すのを何故忘れるのだろう。そっちの方が疑問しかない。
忙し過ぎて忘れたのかな。
もし今度会う時があったら「ちゃんとして」と言ってやらなくては。
魔族出現警報がずっと出っ放しである。最初に出てから一週間を過ぎ二週目に突入した。人々はオフィス街から消え街から消えた。これでまた経済が失速するのだろう。
経済が滞るとぐるっと一周しているうちにケイトの会社にも影響が出る。ぐるぐると回る経済の風車は時には鋭利な刃物の刃でざっくり斬って、あちこちに爪痕を残して行った。倒れて動かなくなるものもあったが、概ね立ち上がり這いつくばっても進んでいく。
この災厄にも経済が塵程にならなく済んでいるのは対魔族見舞金があったからだ。前回の魔王討伐から五百年、ずっと出現しなかったせいで、潤沢にある金はちょっとやそっとでは枯れないくらいにあるらしい。誰がいつ、その仕組みを作ったのかは謎である。
そんなこんなでケイトも自宅待機を命じられていた。
オンライン会議も関係無い彼は暇をもて余す。こんな時は忙しいを言い訳に引き伸ばしていた掃除をやろう!と思っただけで結局やらずに日づけだけが変わってゆく。と、やる気とやりたく無い気がせめぎ合いストレスになりそうな頃にジョルジオから連絡があった。
「今晩は」
ぴんぽーんがちゃり、で今晩は。
背の高いジョルジオを見上げたケイトはひょえええと内心呟いた。
ボロっちくなってる年下の友人を慌てて招き入れる。
ジョルジオがケイトの自宅を訪問するのは初めてではなく、この一週間の境を前に頻度が増えた。近況伺いをしてきたジョルジオにケイトがお返しして、そこから始まったのだ。もうずっと自宅に帰ってません、と言うジョルジオが気の毒になってつい『じゃウチに来る?』とか無意識で言ってしまって、瞳ウルウルの犬の目で見られてしまったら、もう駄目だった。
『あ、でも俺大したもの作れないし』
『問題無いです』
『不味いものを作ってるつもりは無いけど、美味いかっていうと微妙な感じだし』
『問題無いです』
『レパートリーないから、いつも同じのなるし』
『問題無いです』
『味付けの好みが合わないかも知れないし』
『問題無いです』
問題無いです、で押し切られてしまった。
まあでも。間接的に魔族討伐のお手伝いをしていると思えばいいか。
でもこの役目、彼女さんの役目なんじゃないのかな?と思ってケイトはジョルジオにぶつけてみた。後々恨まれるのも嫌だなと単純に思ったから。
対したジョルジオからはあっさりした答えが返る。
「彼女?いませんよ」
いつものニコニコのまま。『彼氏ちゃん』も『彼氏君』もいません、とあっけらかんと暴露した。
「神殿から召集令状を頂いた日からいません」
魔族討伐に並々ならぬ意気込みを感じる。というのはケイトの解釈であって、実際にはどうだか解らないけれど。
「というかですね、そもそも恋人って肩書きを付けて呼び合える人いませんでしたよ」
聞こえによっては酷い事を言ってる風に思える台詞をあっさり言い切った。何と返したら良いか迷っているケイトにお返しとジョルジオが訊き返す。
「ケイトさんはどうなんですか?」
「え?どうなんですかってどうなんですか?」
「恋人がいるか、という話です。俺も失念してましたね、ケイトさんに恋人がいたらその人との時間奪っちゃう事になりますもんね」
「あ、いや俺は…大丈夫ですから」
「大丈夫?」
ケイトが頬を赤らめる。
「いません。ずっといません」
恥ずかしい。自分に話が及ぶはずじゃなかったんだけど。
「嘘でしょう」
「見栄張ろうかなって一瞬思ったんですけど。バレた時がもっと恥ずかしいから止めました」
白状してしまったら顔がもっと赤くなった。うわー見ないで、とケイトが横を向く。
きょとん顔をしていたジョルジオだったが破顔した。
「すみませんケイトさん。実は俺、さっき嘘吐きました。本当は召集令状が来る前から付き合ってる人はいません。虚勢張りました」
「え」
「これは本当です。もうずっと好きな人がいるんで」
好きな人がいるんだ。
ちょっと、まじまじとケイトはジョルジオを見つめてしまった。いや別におかしくない。いても別におかしくない。疑問に思ったのは大きなお世話だけれど、ジョルジオが片思いだらしい、という点だった。ジョルジオは美形の部類だ。澄ましていれば人目を引く。神様の所で見せられた勇者の様な冷たい鋭利なものでなく、何ていうか雰囲気が暖かくて陽なたを連想させる系の雰囲気を持っている。誰にでも優しく穏やかに接するのだろう。彼に交際を申し込まれて断わる人はまずいないんじゃないかな?とケイトは勝手に思うのだが、ずっとというくらいだから告白出来ていないのだろう。
ここまで思って、ケイトが「あ!」と思い至る。そうだ、魔王討伐が終わらないと駄目なのでは、という事を。
「…早く討伐が終われば良いですね」
「本当に。でも」
「?」
じっ。
ジョルジオの視線を受けてケイトが見返す。無邪気に返されてジョルジオがそっと視線を逸らした。
「今日は何をご馳走してくれるんですか?」
逸らした視線を元に戻したジョルジオはいつも通りだった。
忙し過ぎて忘れたのかな。
もし今度会う時があったら「ちゃんとして」と言ってやらなくては。
魔族出現警報がずっと出っ放しである。最初に出てから一週間を過ぎ二週目に突入した。人々はオフィス街から消え街から消えた。これでまた経済が失速するのだろう。
経済が滞るとぐるっと一周しているうちにケイトの会社にも影響が出る。ぐるぐると回る経済の風車は時には鋭利な刃物の刃でざっくり斬って、あちこちに爪痕を残して行った。倒れて動かなくなるものもあったが、概ね立ち上がり這いつくばっても進んでいく。
この災厄にも経済が塵程にならなく済んでいるのは対魔族見舞金があったからだ。前回の魔王討伐から五百年、ずっと出現しなかったせいで、潤沢にある金はちょっとやそっとでは枯れないくらいにあるらしい。誰がいつ、その仕組みを作ったのかは謎である。
そんなこんなでケイトも自宅待機を命じられていた。
オンライン会議も関係無い彼は暇をもて余す。こんな時は忙しいを言い訳に引き伸ばしていた掃除をやろう!と思っただけで結局やらずに日づけだけが変わってゆく。と、やる気とやりたく無い気がせめぎ合いストレスになりそうな頃にジョルジオから連絡があった。
「今晩は」
ぴんぽーんがちゃり、で今晩は。
背の高いジョルジオを見上げたケイトはひょえええと内心呟いた。
ボロっちくなってる年下の友人を慌てて招き入れる。
ジョルジオがケイトの自宅を訪問するのは初めてではなく、この一週間の境を前に頻度が増えた。近況伺いをしてきたジョルジオにケイトがお返しして、そこから始まったのだ。もうずっと自宅に帰ってません、と言うジョルジオが気の毒になってつい『じゃウチに来る?』とか無意識で言ってしまって、瞳ウルウルの犬の目で見られてしまったら、もう駄目だった。
『あ、でも俺大したもの作れないし』
『問題無いです』
『不味いものを作ってるつもりは無いけど、美味いかっていうと微妙な感じだし』
『問題無いです』
『レパートリーないから、いつも同じのなるし』
『問題無いです』
『味付けの好みが合わないかも知れないし』
『問題無いです』
問題無いです、で押し切られてしまった。
まあでも。間接的に魔族討伐のお手伝いをしていると思えばいいか。
でもこの役目、彼女さんの役目なんじゃないのかな?と思ってケイトはジョルジオにぶつけてみた。後々恨まれるのも嫌だなと単純に思ったから。
対したジョルジオからはあっさりした答えが返る。
「彼女?いませんよ」
いつものニコニコのまま。『彼氏ちゃん』も『彼氏君』もいません、とあっけらかんと暴露した。
「神殿から召集令状を頂いた日からいません」
魔族討伐に並々ならぬ意気込みを感じる。というのはケイトの解釈であって、実際にはどうだか解らないけれど。
「というかですね、そもそも恋人って肩書きを付けて呼び合える人いませんでしたよ」
聞こえによっては酷い事を言ってる風に思える台詞をあっさり言い切った。何と返したら良いか迷っているケイトにお返しとジョルジオが訊き返す。
「ケイトさんはどうなんですか?」
「え?どうなんですかってどうなんですか?」
「恋人がいるか、という話です。俺も失念してましたね、ケイトさんに恋人がいたらその人との時間奪っちゃう事になりますもんね」
「あ、いや俺は…大丈夫ですから」
「大丈夫?」
ケイトが頬を赤らめる。
「いません。ずっといません」
恥ずかしい。自分に話が及ぶはずじゃなかったんだけど。
「嘘でしょう」
「見栄張ろうかなって一瞬思ったんですけど。バレた時がもっと恥ずかしいから止めました」
白状してしまったら顔がもっと赤くなった。うわー見ないで、とケイトが横を向く。
きょとん顔をしていたジョルジオだったが破顔した。
「すみませんケイトさん。実は俺、さっき嘘吐きました。本当は召集令状が来る前から付き合ってる人はいません。虚勢張りました」
「え」
「これは本当です。もうずっと好きな人がいるんで」
好きな人がいるんだ。
ちょっと、まじまじとケイトはジョルジオを見つめてしまった。いや別におかしくない。いても別におかしくない。疑問に思ったのは大きなお世話だけれど、ジョルジオが片思いだらしい、という点だった。ジョルジオは美形の部類だ。澄ましていれば人目を引く。神様の所で見せられた勇者の様な冷たい鋭利なものでなく、何ていうか雰囲気が暖かくて陽なたを連想させる系の雰囲気を持っている。誰にでも優しく穏やかに接するのだろう。彼に交際を申し込まれて断わる人はまずいないんじゃないかな?とケイトは勝手に思うのだが、ずっとというくらいだから告白出来ていないのだろう。
ここまで思って、ケイトが「あ!」と思い至る。そうだ、魔王討伐が終わらないと駄目なのでは、という事を。
「…早く討伐が終われば良いですね」
「本当に。でも」
「?」
じっ。
ジョルジオの視線を受けてケイトが見返す。無邪気に返されてジョルジオがそっと視線を逸らした。
「今日は何をご馳走してくれるんですか?」
逸らした視線を元に戻したジョルジオはいつも通りだった。
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