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(13)取り敢えず親密度を★2にしたい男④ 映画館行きのプレのプレ
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「俺は無糖で。ケイトさんは?砂糖倍入り?」
「普通で」
知られているのだが、当たり前の様に言われると羞恥する。ケイトが赤面して訂正した。
「別に恥ずかしい事じゃないでしょう?俺なんかたまに溶け切れない砂糖を投入しますからね。底が砂糖のまんまですよ」
「それは君がそれだけ疲れてて、脳が糖を必要としているからさ」
今代の勇者にパーティはない。戦いに頼れるメンバーがいない、ソロ活動の勇者。ジョルジオはメンバーでないと言う。充分メンバーみたいだが、違うと言う。違いが分からない。何にせよ、どうやらこき使われているのが見える。
店員からコーヒーを受け取り空いた席に座った。
「今は大丈夫ですよ、無糖ですからね」
「疲れ具合をそれで計るとか」
駄目だろ、とケイトがジョルジオを呆れて見遣る。
頼んだコーヒーは美味かった。時々出張でやって来る辺境伯領カフェラテ店王都支店に負けない味を!という意気込みが感じられる。
「知ってますがケイトさん。カフェラテ店はここに来ると王都支店よりも売上があるそうなんてますよ」
何故だか分かりますか?とジョルジオがケイトに訊ねた。
「?ここの方が来店者が多いから、とか」
「間違ってはいないです。今のも答えの1つです。ではほぼ正解のヒント。購買客のほとんどが男性客なんです」
「男性客がカフェラテとかっておかしくないよね?」
「ケイトさん。王都支店は行った事あります?」
「あるけど」
「店の中も並んでいる人も女性客だけだったでしょう」
「あ!」
「そんな中行ったんですか、誰と行ったんですか」
「別に恥ずかしくなかったよ?」
頭上にクエスチョンマークを浮かべるケイトをまじまじとジョルジオが見つめた。
――――――一緒に並んでても違和感なかったんだろうな。可愛い美人だもんな。
誰と行ったんだろう。女の人かな。女子会のノリだろうな。男とだったらカップルに間違えられなかっただろうか、不安だし許せない。
独りふつふつと思うジョルジオはケイトの空になった容器にはっとした。慌てて自分の分を飲み切った。
「じゃあケイトさん、勇者関連本の売り場に行きましょう」
勢い良く立ち上がる。
俺もカフェラテ店に一緒に行く!
妙な決意表明と共に。
「ここです」
てくてく歩いて売り場に着いた。
自分達の代わりに戦う勇者について物語でも知りたいと思う人が多いかと思えば、そうでもない。紙書籍が電子書籍から追い抜かれたせいもあるのかと思い直してみたが、どうも違うっぽい。納得いかない表情のケイトにジョルジオが説明する。
「勇者様については必要以上に関心を持たれないように報道規制が掛かってるので、多分、それの一環でしょう」
確かにあの容姿では魔族よりも世の中を騒がせるに違いない。唯一開示されているのは金髪の青年だと言う事くらいだ。
「勝手なイメージを作られるのも困りますし」
ケイトが本棚に並ぶ本を手に取る。表紙には勇者と思しき少年を中心に彼と共に戦うメンバーを表現したイラストが描いてあった。
「その本の情報がこれです」
ジョルジオがさっとタブレットを差し出した。
小説のあらすじが書いてある。
ふむふむと読むと大体、表紙にあったような内容だった。らしい。
「何代か前の勇者様をイメージを膨らませて想造でエピソードを盛り込んで出来た話だそうで」
お姫様を救った。
とか。
王様になったとか。
とか。
とか。
「今みたいに情報過多なくらいの時代と違って勇者様達はヒーローでアイドルだったんです」
時代背景もあって止むに止まれず容認して来たが。
「今代様はそういうの、容赦しない方ですので」
勝手に娯楽扱いされては甚だ迷惑。
「心が狭いっていうのは簡単ですけど。無責任なのも事実ですしね」
一理はある。
言っても言わなくても変わりがない事もあるのは事実だ。最初、自意識過剰なんじゃ…とケイトは思ったが、そんなのではない事を知る。
「人の事を暴こうとしたり、勝手にどうこう言ってる暇があるなら一般人の魔族に対しての無力さを、国々がどんなに非力かを切々と説いて行動を自粛するように夢に見るくらいに宣伝しろ、と言ったそうです」
あ、なんかそれ覚えてる。
一時期、メディアがこぞって国どころか大陸中の国々を批判している時があった。あれがそれか。
「難しい話題はこれくらいにしてですね、ケイトさん」
「はい」
「欲しい物があればどうぞ」
「欲しい物かー」
一冊一冊を手に取る。
これらの小説は今で言う所のラノベに当たるらしい。
「………………なんか大昔の小説とは思えないんだけど。このクオリティ」
呟くケイトに「ははっ」とジョルジオが笑う。
「作家の勇者愛が伝わりますよね」
「…ざっと見た感じ、勇者候補さんの話がないみたいなんだけど」
ケイトに言われ、ジョルジオがう~むと理由を探す。
「多分ですね…」
「何かお探しでしょうか?お手伝い致しましょうか?」
急に、何処からともなく人が現れてケイトは目茶苦茶驚いた。
「普通で」
知られているのだが、当たり前の様に言われると羞恥する。ケイトが赤面して訂正した。
「別に恥ずかしい事じゃないでしょう?俺なんかたまに溶け切れない砂糖を投入しますからね。底が砂糖のまんまですよ」
「それは君がそれだけ疲れてて、脳が糖を必要としているからさ」
今代の勇者にパーティはない。戦いに頼れるメンバーがいない、ソロ活動の勇者。ジョルジオはメンバーでないと言う。充分メンバーみたいだが、違うと言う。違いが分からない。何にせよ、どうやらこき使われているのが見える。
店員からコーヒーを受け取り空いた席に座った。
「今は大丈夫ですよ、無糖ですからね」
「疲れ具合をそれで計るとか」
駄目だろ、とケイトがジョルジオを呆れて見遣る。
頼んだコーヒーは美味かった。時々出張でやって来る辺境伯領カフェラテ店王都支店に負けない味を!という意気込みが感じられる。
「知ってますがケイトさん。カフェラテ店はここに来ると王都支店よりも売上があるそうなんてますよ」
何故だか分かりますか?とジョルジオがケイトに訊ねた。
「?ここの方が来店者が多いから、とか」
「間違ってはいないです。今のも答えの1つです。ではほぼ正解のヒント。購買客のほとんどが男性客なんです」
「男性客がカフェラテとかっておかしくないよね?」
「ケイトさん。王都支店は行った事あります?」
「あるけど」
「店の中も並んでいる人も女性客だけだったでしょう」
「あ!」
「そんな中行ったんですか、誰と行ったんですか」
「別に恥ずかしくなかったよ?」
頭上にクエスチョンマークを浮かべるケイトをまじまじとジョルジオが見つめた。
――――――一緒に並んでても違和感なかったんだろうな。可愛い美人だもんな。
誰と行ったんだろう。女の人かな。女子会のノリだろうな。男とだったらカップルに間違えられなかっただろうか、不安だし許せない。
独りふつふつと思うジョルジオはケイトの空になった容器にはっとした。慌てて自分の分を飲み切った。
「じゃあケイトさん、勇者関連本の売り場に行きましょう」
勢い良く立ち上がる。
俺もカフェラテ店に一緒に行く!
妙な決意表明と共に。
「ここです」
てくてく歩いて売り場に着いた。
自分達の代わりに戦う勇者について物語でも知りたいと思う人が多いかと思えば、そうでもない。紙書籍が電子書籍から追い抜かれたせいもあるのかと思い直してみたが、どうも違うっぽい。納得いかない表情のケイトにジョルジオが説明する。
「勇者様については必要以上に関心を持たれないように報道規制が掛かってるので、多分、それの一環でしょう」
確かにあの容姿では魔族よりも世の中を騒がせるに違いない。唯一開示されているのは金髪の青年だと言う事くらいだ。
「勝手なイメージを作られるのも困りますし」
ケイトが本棚に並ぶ本を手に取る。表紙には勇者と思しき少年を中心に彼と共に戦うメンバーを表現したイラストが描いてあった。
「その本の情報がこれです」
ジョルジオがさっとタブレットを差し出した。
小説のあらすじが書いてある。
ふむふむと読むと大体、表紙にあったような内容だった。らしい。
「何代か前の勇者様をイメージを膨らませて想造でエピソードを盛り込んで出来た話だそうで」
お姫様を救った。
とか。
王様になったとか。
とか。
とか。
「今みたいに情報過多なくらいの時代と違って勇者様達はヒーローでアイドルだったんです」
時代背景もあって止むに止まれず容認して来たが。
「今代様はそういうの、容赦しない方ですので」
勝手に娯楽扱いされては甚だ迷惑。
「心が狭いっていうのは簡単ですけど。無責任なのも事実ですしね」
一理はある。
言っても言わなくても変わりがない事もあるのは事実だ。最初、自意識過剰なんじゃ…とケイトは思ったが、そんなのではない事を知る。
「人の事を暴こうとしたり、勝手にどうこう言ってる暇があるなら一般人の魔族に対しての無力さを、国々がどんなに非力かを切々と説いて行動を自粛するように夢に見るくらいに宣伝しろ、と言ったそうです」
あ、なんかそれ覚えてる。
一時期、メディアがこぞって国どころか大陸中の国々を批判している時があった。あれがそれか。
「難しい話題はこれくらいにしてですね、ケイトさん」
「はい」
「欲しい物があればどうぞ」
「欲しい物かー」
一冊一冊を手に取る。
これらの小説は今で言う所のラノベに当たるらしい。
「………………なんか大昔の小説とは思えないんだけど。このクオリティ」
呟くケイトに「ははっ」とジョルジオが笑う。
「作家の勇者愛が伝わりますよね」
「…ざっと見た感じ、勇者候補さんの話がないみたいなんだけど」
ケイトに言われ、ジョルジオがう~むと理由を探す。
「多分ですね…」
「何かお探しでしょうか?お手伝い致しましょうか?」
急に、何処からともなく人が現れてケイトは目茶苦茶驚いた。
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