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(15)取り敢えず親密度を★2にしたい男⑥ 映画館行きのプレのプレ
あ。
中央に小さめだが最大4人が座れるテーブルとイス、それを取り囲むように四方を本棚に囲まれた空間に連れてこられた。
本棚の後ろの部屋で回転式の隠し扉になっていたらしい。
隠れる風にしてあるって、どういう事?
「どおぞ、お掛けになって下さい~」
ケイトの疑問をよそに店員はウキウキしていた。
「この部屋にお客様がおいでになるのは久し振りでございます~」
「何の部屋ですか」
「出版差し止めの部屋でございます~」
「?」
「ワタシは悪くありません。お客様のご要望にお応えしただけでございます。そうです、お客様からのリクエストなのですから!」
言い訳してるっぽい。
「時にお客様。お客様は何故、先代様をご指名に?」
「……いえ、何となく…」
まさか元許婚と言うか婚約破棄して逃げた男とかは死んでも言えない。まさか未練があるのですか、とか言われたら瞬死する。殺人的ワードは盛り沢山あるのだ。死に死にフラグは絶対回避だ。俺に聖剣貸して欲しいな、叩き折るから。
「先代様をモデルにした読み物は少ないのです。理由はご自身が当時の大陸裁判所に訴えを起こして出版を阻止したからです」
「………大陸裁判所?」
"大陸裁判所"とは言葉の如く大陸中の国々が強制加盟させられる司法機関である。歴史はやはり古く、国同士が揉める問題を仲裁して回った当時の大賢者の一人がブチ切れて『てめぇらが来い!来なければその日の内に寝る場所が無いものと思え!!』と各国に威嚇として広域魔法で攻撃系のものを派手にぶちかました上で宣言し、建物を建設したのが始まりと言われている。ちなみに所在地は知られていないし、行けるのは資格ある者だけである。
「大陸裁判所って…」
いきなり大きな話になった。
「勇者本はこの国だけのものではありません。世界各国に輸出され輸入されているのですから世界的に止めるなら大陸裁判所でしょう~」
「でしょうって簡単に……」
主に国際紛争を裁き、仲裁する場なのだ。そこに個人の問題を…。
「勇者自体が世界天然記念物ですからね」
「例えが分からないです」
「相手どったのは大陸出版連合」
現存している超法規的な出版組織だ。これは良い言い方であって、実は出版ヤクザ連合との黒い噂が何百年とある。
「どんな卑怯技を使ったか存じませんが、裁判に勝訴し、彼は自身がモデルの出版物を全面的に止めました」
「待って卑怯技って何?」
ケイトが叫ぶ。
「報復されると怖いので言えません。いえ、嘘吐きました。想像です。あの方ならやったでしょうという憶測です」
「待って待って、今報復されるって言ったよね!?五百年前の人でしょ、先代ってどんな人だよ!?」
「こちらがその先代をモデルにした非公式の小説で、主に恋物語です~」
明らかに話を逸らした。
「恋物語?いいの、それ」
「非公式と申しました~」
てんてんてん、と数冊積み上がる。
「あらすじはこちらからどうぞ」
ケイトに例のタブレットが手渡された。
「えっと、なになに?」
本のタイトルを指で触ってあらすじを表示させ、目で追い掛ける。一冊また一冊と素早い動きで読んで行く。タブレットを見つめている内に眉間にシワが出来た。何これ…?と呟く。
『勇者が旅先で出逢った男娼に思いを寄せられるも、振ってしまう悲恋』
『勇者が思いを寄せる男娼には忘れられない人がいて、どう頑張っても勝てない悲恋』
『男娼を身請けすべく頑張っていた勇者だったが直前で別の人に攫われてしまう悲恋』
『勇者の愛する男娼が嫉妬されて殺されてしまう悲恋』
『失敗は身請けから~~後で何とかなると安く見積もった男の悲劇の愛』
「悲恋しかないっ!」
「あの方には悲恋が良く似合う~。はっ!いけない、報復される…取り消します~」
「こんなんばっかりだったら誰だって嫌になると思いますよ!」
「顔良し身体良し頭…多分良し地位持ちだったせいでしょう。それらは結婚前に書かれたものです」
「!?結婚前!?」
「悲恋らしい設定を、と悲恋大好き同好会で書かれた男娼シリーズでしたが、本人に見付かった時に本当に勇者が男娼と結婚してしまったので逆鱗に触れまして差し止めに。補足としてですが、先代は当時の王様が魔王討伐の褒美にお金や爵位や姫や王子をあげると言ったのを要らん!で一喝一蹴して、男娼を望むと言ったのですよ~」
「待って待って待って、理解が追い付かないです」
「男娼の彼は娼館と自由契約だったので断り続けたのですが、王様命令という汚い手を使ってゲットしたのでございます」
「その人、逃げれば良かったのに…」
「すでにお金がオーナーに支払われた後で、まあ、売られたんですね~。あ、お金は一括で勇者がお支払いになったそうですよ~。何でもご自分の資産から出したお金だそうです~。お金返すから無かった事に、としようとしたら違約金に損害賠償と慰謝料とかが付いて、ただでさえ国家予算の…娼館側が値下げ交渉をして隣国で小国の国家予算まで抑えた金額の百倍払えという悪辣非道な言い分に屈しまして……という事がありましたそうです」
「店員さん、詳しいですね、やけに」
「身内が関わった事ですので~。語り草ですよ~」
勇者が結婚していた。
相手は男娼だった。
王命と言って国家権力を平気で使った。
隣国の国家予算の金額を自分の金で躊躇なくポンと支払った。しかも隣国の国家予算とは天井知らずになった身請け金を、調子に乗って釣り上げていた娼館側が逆に値下げ交渉をお願いした額だったらしいという。
「こんなのも有りますよ~」
『無表情がカッコいいとよく言われる貴方のそれでも感情を乗せて伝えたい想いを叶える表情筋の鍛え方』
「意外と好評です~」
その後、どうなったんだろう?
――――――完璧片想いで無理矢理過去に転生し直したのに、断り続けた相手を金で買ったったって、どういう事?
なんか分からなくなってきた。
中央に小さめだが最大4人が座れるテーブルとイス、それを取り囲むように四方を本棚に囲まれた空間に連れてこられた。
本棚の後ろの部屋で回転式の隠し扉になっていたらしい。
隠れる風にしてあるって、どういう事?
「どおぞ、お掛けになって下さい~」
ケイトの疑問をよそに店員はウキウキしていた。
「この部屋にお客様がおいでになるのは久し振りでございます~」
「何の部屋ですか」
「出版差し止めの部屋でございます~」
「?」
「ワタシは悪くありません。お客様のご要望にお応えしただけでございます。そうです、お客様からのリクエストなのですから!」
言い訳してるっぽい。
「時にお客様。お客様は何故、先代様をご指名に?」
「……いえ、何となく…」
まさか元許婚と言うか婚約破棄して逃げた男とかは死んでも言えない。まさか未練があるのですか、とか言われたら瞬死する。殺人的ワードは盛り沢山あるのだ。死に死にフラグは絶対回避だ。俺に聖剣貸して欲しいな、叩き折るから。
「先代様をモデルにした読み物は少ないのです。理由はご自身が当時の大陸裁判所に訴えを起こして出版を阻止したからです」
「………大陸裁判所?」
"大陸裁判所"とは言葉の如く大陸中の国々が強制加盟させられる司法機関である。歴史はやはり古く、国同士が揉める問題を仲裁して回った当時の大賢者の一人がブチ切れて『てめぇらが来い!来なければその日の内に寝る場所が無いものと思え!!』と各国に威嚇として広域魔法で攻撃系のものを派手にぶちかました上で宣言し、建物を建設したのが始まりと言われている。ちなみに所在地は知られていないし、行けるのは資格ある者だけである。
「大陸裁判所って…」
いきなり大きな話になった。
「勇者本はこの国だけのものではありません。世界各国に輸出され輸入されているのですから世界的に止めるなら大陸裁判所でしょう~」
「でしょうって簡単に……」
主に国際紛争を裁き、仲裁する場なのだ。そこに個人の問題を…。
「勇者自体が世界天然記念物ですからね」
「例えが分からないです」
「相手どったのは大陸出版連合」
現存している超法規的な出版組織だ。これは良い言い方であって、実は出版ヤクザ連合との黒い噂が何百年とある。
「どんな卑怯技を使ったか存じませんが、裁判に勝訴し、彼は自身がモデルの出版物を全面的に止めました」
「待って卑怯技って何?」
ケイトが叫ぶ。
「報復されると怖いので言えません。いえ、嘘吐きました。想像です。あの方ならやったでしょうという憶測です」
「待って待って、今報復されるって言ったよね!?五百年前の人でしょ、先代ってどんな人だよ!?」
「こちらがその先代をモデルにした非公式の小説で、主に恋物語です~」
明らかに話を逸らした。
「恋物語?いいの、それ」
「非公式と申しました~」
てんてんてん、と数冊積み上がる。
「あらすじはこちらからどうぞ」
ケイトに例のタブレットが手渡された。
「えっと、なになに?」
本のタイトルを指で触ってあらすじを表示させ、目で追い掛ける。一冊また一冊と素早い動きで読んで行く。タブレットを見つめている内に眉間にシワが出来た。何これ…?と呟く。
『勇者が旅先で出逢った男娼に思いを寄せられるも、振ってしまう悲恋』
『勇者が思いを寄せる男娼には忘れられない人がいて、どう頑張っても勝てない悲恋』
『男娼を身請けすべく頑張っていた勇者だったが直前で別の人に攫われてしまう悲恋』
『勇者の愛する男娼が嫉妬されて殺されてしまう悲恋』
『失敗は身請けから~~後で何とかなると安く見積もった男の悲劇の愛』
「悲恋しかないっ!」
「あの方には悲恋が良く似合う~。はっ!いけない、報復される…取り消します~」
「こんなんばっかりだったら誰だって嫌になると思いますよ!」
「顔良し身体良し頭…多分良し地位持ちだったせいでしょう。それらは結婚前に書かれたものです」
「!?結婚前!?」
「悲恋らしい設定を、と悲恋大好き同好会で書かれた男娼シリーズでしたが、本人に見付かった時に本当に勇者が男娼と結婚してしまったので逆鱗に触れまして差し止めに。補足としてですが、先代は当時の王様が魔王討伐の褒美にお金や爵位や姫や王子をあげると言ったのを要らん!で一喝一蹴して、男娼を望むと言ったのですよ~」
「待って待って待って、理解が追い付かないです」
「男娼の彼は娼館と自由契約だったので断り続けたのですが、王様命令という汚い手を使ってゲットしたのでございます」
「その人、逃げれば良かったのに…」
「すでにお金がオーナーに支払われた後で、まあ、売られたんですね~。あ、お金は一括で勇者がお支払いになったそうですよ~。何でもご自分の資産から出したお金だそうです~。お金返すから無かった事に、としようとしたら違約金に損害賠償と慰謝料とかが付いて、ただでさえ国家予算の…娼館側が値下げ交渉をして隣国で小国の国家予算まで抑えた金額の百倍払えという悪辣非道な言い分に屈しまして……という事がありましたそうです」
「店員さん、詳しいですね、やけに」
「身内が関わった事ですので~。語り草ですよ~」
勇者が結婚していた。
相手は男娼だった。
王命と言って国家権力を平気で使った。
隣国の国家予算の金額を自分の金で躊躇なくポンと支払った。しかも隣国の国家予算とは天井知らずになった身請け金を、調子に乗って釣り上げていた娼館側が逆に値下げ交渉をお願いした額だったらしいという。
「こんなのも有りますよ~」
『無表情がカッコいいとよく言われる貴方のそれでも感情を乗せて伝えたい想いを叶える表情筋の鍛え方』
「意外と好評です~」
その後、どうなったんだろう?
――――――完璧片想いで無理矢理過去に転生し直したのに、断り続けた相手を金で買ったったって、どういう事?
なんか分からなくなってきた。
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~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
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