異世界漂流者ハーレム奇譚 ─望んでるわけでもなく目指してるわけでもないのに増えていくのは仕様です─

虹音 雪娜

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第一章 転生、そして冒険者に

#01 異世界は唐突に

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「ん…痛っ!くぅーっ……頭いってぇ…」

 あーこれ今日仕事無理だな、イテテッ…休む連絡入れないと…スマホ、スマホ……あれ?枕元のスマホが…無い?それよりなんかソファーベッドの感触がおかしいな…チクチクするし、青臭い匂いもする。


 ──あぁ、これ、草の感触だ。


 懐かしいな…ガキの頃遊んだ田舎の草原思い出すわ。

 って違うだろ、何で草の上?確か…昨日は酒も飲んでない、いつも通り会社帰りに飯食ってから家に帰って、風呂入った後ネット小説で異世界転生モノ漁ってそのまま寝落ち……それで、目、覚めたら草の上でこの頭痛。

 まぁ、誰かが部屋に忍び込んで薬とかで目覚めないようにして、こんな所まで運んだって考えるのが現実的なんだろうけど…理屈抜きで直感的に何故か違うって分かる。


 どうやら俺は死んだらしい。

 
 ということは…ここは死後の世界か、はたまた異世界か。
 いや、どういう訳か感覚的にここが異世界だって認識出来てるから、転生したってことになるんだろうな。
 どちらにせよ地球での俺の人生が終わったってことに変わりはない、か。

 単身赴任中に死ぬとか、妻とガキ共には悪いことしたな……まぁ、ガキ共はもう成人してるし、妻も多分、恐らく、十中八九、俺以外の誰かとよろしくやってるだろうし、そんなに実害は無い気がするな……あぁ、考えてて悲しくなってきた………。

 思い返してみると、大したことなかったなぁ…俺の人生。
 高校入ってすぐ付き合ってた彼女は、卒業後親友に寝取られて……多分誘ったのは彼女からだと思うけど、あれは精神的にかなりキツかった。
 それでも懲りずに彼女つくって結婚して子供出来たのは俺的に奇跡で、この時期が人生の絶頂期だったんだと思う。
 その後は生活環境や子供が出来た事による妻の変化に気付いてやれず、肉体的、精神的拒絶にまで至り、最終的には結婚しても寝取られてるっていうオチが付くっていう。
 いや、本当に俺自身のせいってのは分かりきってる。
 妻がそうやって変わっていったことにも気付かずに、俺は何も変わらず自分勝手好き勝手にやってきた結果なのは明白だし、こんな歳になっても趣味は変わらずゲームやアニメ、漫画だし。
 厨二病は卒業出来たけど、ピータパン症候群だけは結婚して子供出来ても残ってたしな…こんな俺でも会社勤め出来てたのと相手になってくれた妻がいた事自体、ホント奇跡としか言いようがない。
 ついでに寂しがり屋の甘えたとか質悪い以外の何者でもないって。
 結論、俺にはお似合いの惨めな人生、惨めな結末だったってことだな、ははは。



 はぁ……とりあえず黙って考えてても落ち込むだけだし、仕方ないから現状把握するのに起きるとするか。

 ものの見事に森の中だな…こんなところで寝ててよく無事だったもんだ。
 寝てる内に何か…異世界に来たんだから、恐らくこれも定番でいるであろう魔物ってやつ、はたまた野盗とかに襲われて死んでた方がマシだったかもな、何も持たずに一人で生きていけるとは思えんし…。

 格好は寝てた時のまんまだから、トランクスにTシャツ、トレーナーとスウェット…全身見事に真っ黒だな。
 ポケットの中には何もなし。
 寒かったからソックス履いて寝てたのがせめてもの救いだった…裸足で森の中歩くことになるとか、想像しただけでかなりキツい。

 本当にこれで、どうやってここでまた生きていけというのか。

 …まぁなるようにしかならないか。
 転生しても元の性格は変わってないっぽい…座右の銘は「明日は明日の風が吹く」だったからな。
 今さえよけりゃいいって刹那的な生き方が滲みついてる…どうせ転生したんならその辺も変えてくれよって思わなくもないけど、そうしたら俺じゃなくなるのか。
 でも、ま、せっかくまた貰った人生なんだ、次は心残りが出来ないように生きてみるとしよう、向こうの世界にはもう帰れないだろうし、仮に帰れたとしても惨めな余生が待ってるだけだろうし…な。
 この世界がどんなところか分からないから、そう簡単な話じゃないと思うけど、ここで生きていくしかない、か。
 
 何にせよ、ここにいてもどうにもならんし、一先ずこの森を出るとするか。

 んー、頭痛はいつの間にか治まったし、身体の調子も悪くない……っていうか、腹引っ込んでないか?これ。
 下っ腹はそんなに出てなかったんだけど、胃拡張だったから胃の辺りは膨らんでたはずなんだけど…なんかスリムになってる気がする。
 あれか、異世界ものでは定番の肉体改造とか若返りってやつか。
 いや、そんな都合のいい展開は期待しない方がいいか…気のせいにしとこう。

 定番といえばあれだな、ステータスとかあるんかな?っと……何か目の前に出てきた。


【ステータス】
《識別》
 名前:遊佐 尚斗
 種族:人種(1)
   選択:小鬼族(1)
 属性:―
 性別:男性
 年齢:18(45)
 職種:SE(派遣社員)(3)
   選択:剣士(1)
      盗賊(1)
      闇黒魔刀剣士(笑)
 状態:正常


 なになに、《識別》は、まぁ分かるな。
 種族が人なのは分かるけど、選択って、え、なに種族選べるの?


[種族選択:当欄に表示されている種族を選択可能・再選択不可]


 うぉ、説明出てきた…選べるけど一度決めたら終わりか。
 小鬼族って、アレだよな、ゴブリンだよな。
 何で選択肢に…って、下の方の欄にある《技能》に関係してるのか?まぁ、よく分からんうちに人間辞めることもないだろうから放置で。
 括弧の数字はレベルっぽいな。
 属性ってのはゲームとかでよくある風火地水みたいなやつだろうと予想。

 年齢が18って、ホントに若返ってたのか…生きてく分には助かるけど。
 後で容姿確認しておこう。

 職種は…こっちでもSEってありなのかと思うけど、派遣とかほっといてくれ。
 レベル3ってことは10年でレベル1換算ってところか。
 職種も種族みたいに選択出来るのか…こっちも一度選択したら変えられないだとちょっとイヤだな…っと、また出てきた。


[職種選択:当欄に表示されている職種を選択可能・再選択可]


 おぉ、職種は入れ替え自由なのか。
 これだけでも十分チートって感じだな、よかった……って、よくねぇよ!何だよ闇黒魔刀剣士って!厨二病時代の遺産じゃねーか!もう何十年前の話だよっ!
 あっ…!これで思い出したっ、そういや俺、実家に置いてあった荷物処分してないんじゃね?マジか、これ向こうの世界で見られたら最悪だぞ……つっても、もう死んじまったしどうしようもないんだけどな…これの他に今読んだら悶えるのは確実であろう詩集とか、書きかけの小説とか……一番最悪なのは単身赴任中の部屋にあると思われるスマホとタブレットの中身だ……パスは掛けてあるけど見ようと思えばいくらでも見られるだろうし………独り身を慰めるためのネタ満載なんだよ、頼むから誰にも気付かれませんようにお願いします切実に…っ!

 ってまぁ、ここに来た時点で諦めるしかないよなぁ…それより今のこれだよな、ステータス。
 この職種の(笑)とか、それレベルなのかよ……ステータスに笑われるとか、何なの俺。
 これもこっちで人に見られたら俺的に終わる気がするな……恥ずかし過ぎて選べるわけないだろ、これは。

 他の選択職種もあれか、種族と同じで下の方の欄にある《技能》に関係してるっぽいな。
 盗賊ってこの世界でどんな位置付けなのかわからんけど、なんとなく犯罪者扱いな気がする……となると剣士一択か…この世界でSEが役に立つとは思えんし、剣士にしておくか。
 えーと、職種を剣士に…っと。


[職種:剣士(1)に変更]


 お、変わった、とりあえずこれでいいか。

 状態は正常か、頭痛も治まってるしな。


《能力値》
 位階:1
 体力:38/38
 魔力:22/22
 筋力:19
 耐久:17
 器用:16
 敏捷:15
 知力:13
 精神:14
 運勢:停滞


《能力値》は…数字だけ見ると平均的だな。
 高いのか低いのかは比較対象がいないと分からんから一旦置いとこう。
 魔力ってのがあるから魔法は使えそうだな。
 運勢が能力値なのか謎だけど。


《技能》
 固有:想像創造(∵)
 物理:剣術(1)
    投擲術(1)
    棍棒術(2)
    魔刀剣術(笑)
 魔法:闇黒魔法(笑)
 補助:分析解説(∵)
 一般:言語翻訳(∵)
    家事(1)


 それから《技能》、スキルってやつか……固有ってのはユニークスキルでいいのか?
 想像創造…字面だけ見るとまんまだな。
 イメージしたもんが創れるのか…?レベル(∵)ってなんだそりゃ?さっぱり分からん、(笑)も分からんが。
 とりあえずチートっぽいのはあったな…よかった。
 これで何とか生きていけそうだし、後で試してみよう。

 物理スキルは…これあれだな、死ぬ前の経験を踏襲してるっぽいな。
 ガキの頃やってた剣道と、リトルから高校までやってた野球だな、多分。
 しかし投げるのが投擲で打つのが棍棒て……無理矢理変換してるんじゃないのか?まぁ、無いよりはマシだろうけど。
 ただなぁ…剣道やってて剣士ってのはともかく、野球やってて盗賊、小鬼族ってのはどうなのよ?よく分からん変換だなぁ。
 スキル増えたら種族や職種も一緒になって増えるかもしれないが、どういう基準で種族か職種になるのかさっぱり予想つかないな。

 魔刀剣術と魔法スキルは……いいよもう、放っておいてくれ……これ、使えたとしても個人的に封印したい気分……。

 補助は…分析解説?あー、このステータスとか説明のことか、異世界もの定番の鑑定とかと同類って思っていいのか。
 思考するだけで分析して解説してくれるのは助かるな。

 一般スキルは生活レベルのスキルか。
 言語翻訳はこの世界で会話出来るってことか?誰かに会って話しないと確認出来ないな、これは。
 家事は…単身赴任で独り暮らししてたけど、たまにしかやってなかったからな…スキル付いてるだけマシと思っておこう。


《称号》
 転生者
 厨二病疾患者
 寝取られし者


 最後の称号………これはあれか、黒歴史やら傷口抉るようなのがデフォで変換されるのか、そうですか、そうなんですか。

 辛い。
 泣きたい。

 こう見えてメンタル弱いので、ロートルに鞭打つのマジ勘弁してください………。


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