6 / 214
第一章 転生、そして冒険者に
#06 受付嬢と一緒に
しおりを挟む「クエスト、ランクについての説明は以上ですが、何かご質問などありますか?」
「そうですね…クエストの完遂判断はどうなってますか?」
「クエストの内容によって変わりますが、採取系は当ギルドに納品してもらえれば大丈夫です。雑務系や護衛依頼などは依頼者に確認してもらい、依頼書にサインをもらって当ギルド、または護衛先のギルドに提出してください。討伐系は魔石と呼ばれる魔物の核となるもので種別を判断しますので、魔石を納品することで達成出来ます」
魔石か…異世界ものでは定番のあれか、魔導具とかの動力源として使えるっていう…この世界ではどうだか分からんけど。
まぁ、でも、クエスト完了の仕方はだいたい分かったかな、それほど難しくはなさそうだ。
しばらくギルドに通い詰めていろんなクエスト受けてみよ。
「クエストによって違うんですね。討伐系なんですが、その魔石以外の部分はどうなりますか?」
「魔石以外の部位は武器や防具、錬金や魔導具などの素材となるものが多いので、可能な限り持ち帰ってもらえれば報酬外の収入になります。現役冒険者の皆さんも魔法袋のような魔導具や収納スキルなどで持ち帰っています」
うん、魔石以外も素材になるのね、持ち帰りの手段も普通にあるみたいだから、俺が収納スキル持ってても怪しまれることは無さそうだし、出来るだけ持って帰ってこよう。
「ただ、当ギルドでも解体は出来ますが、提携している専門の解体屋がありますのでそちらに持ち込むことをお勧めしています。依頼の中には解体後の素材の納品もありますが、その場合は解体屋からそのまま当ギルドへ納品可能ですので、手間になるということもありません」
専門の解体屋があるのか…ってことは、この後そっちに行った方がいいのかな?お勧めされてるし。
解体スキル創ってもいいんだろうけど、やっぱり専門家にお任せするのがいろんな人と関われそうだしな。
とにかく早く一文無しから脱却しないと。
「解体屋ですね、分かりました。自分もここに来る途中多少魔物らしいものを狩ってきましたので、この後そちらに向かうことにします」
「やっぱりそうでしたか…では、その時わたしも同行しますので、査定も一緒にやっちゃいましょう」
「あー、なんかすみません、面倒かけちゃうみたいで…その、いいんですか?」
「はい、大丈夫ですよ、これも受付業務の内ですし。それにここだけの話ですけど…」
ん?なんだ?小声になって…あぁ、大っぴらには言えないことだから耳を貸せってことか。
耳を寄せると受付嬢さんも近づいてきて…って近い近い。
「…実はここを堂々と外せるので、ちょっとした休憩になるんです。あなたを言い訳に使うみたいになっちゃいますけど」
スッと離れて少しだけ舌を出してニコッといい笑顔をする受付嬢さん。
あ、これテヘペロってやつか…リアルで初めて見たわ。
ヤバいなこれ、みんなが騒ぐわけだ、凄い破壊力だ…。
「あー、その、お役に立てたみたいでよかったです…?」
いい歳したおっさんなはずなのに、なんかめっちゃドキドキするんですが…こんな転生前の娘と大した変わらない年頃の娘相手に。
あー、でもあれか、向こうでJKに話し掛けられても緊張してたくらいだから、何にも変わってないか。
でも緊張の度合いが激しい気が…うーん、若返ったせいか?あ、違うな、これステータスのせいだ…対異性に限り激弱ってこういうことか……。
「?どうかしました?」
「あぁ、いえ、何でもないです、何でも。あははは……」
今度は小首傾げて下から上目遣いで覗き込んできた…こういうのをあざと可愛いっていうんだっけ?俺には素なのか狙ってやってるのかなんて判断つかないから分からんけど、とにかくどっちでも可愛いのは変わらんからドキドキが止まらない…ちょっと勘弁してほしい……。
「では早速解体屋に向かいますか?」
「あ、はい、よろしくお願いします…」
思春期のガキじゃないんだからいい加減治まってほしいんだが。
妻子持ちでも単身赴任長かったし、職場の同僚に女性いなかったから、ここまで対異性の免疫力低下してたのか…童貞でもないのに一気にヘタレになった気分……大丈夫か俺………。
「ちょっと待っててください、上司に伝えてきますので」
そう言って席を立ち奥に向かっていった受付嬢さん。
なんか尻尾がフリフリしててそこもまた可愛いんですが…。
少し離れたからちょっとだけ落ち着いてきた…と思ったら受付内の他の職員からも視線向けられてる気がする。
やっぱり不審に思われたか?気を付けないと捕まりそうな予感。
来て早々犯罪者は勘弁だ……。
奥に行った受付嬢さんが誰かと話してる。
あれが上司だな、多分。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「チーフ、これからあちらの冒険者と一緒に解体屋へ行ってきますので席外しますね。ついでに査定してきます」
「そう、分かったわ。漂流者なのかしら、彼」
「はい、そうです。なんと魔法剣士だそうですよ。すごいですよね!」
「あら、そうなの…期待の新人ってとこかしらね。くれぐれも失礼のないようにね。代わりの受付はリズにお願いしておいてくれる?」
「はい、分かりました。では行ってきますね!」
「ええ、行ってらっしゃい」
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
お、戻ってきた…と思ったら、別の受付嬢へ話しかけに行ったぞ?
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「リズー、わたしの代わりに受付入ってくれる?チーフからも了解もらってるから」
「あいさー、どっか行くの?」
「うん、さっき登録済ませたばかりの冒険者さんと解体屋までねー」
「え、もしかして漂流者?」
「ふっふーん、そうなの!」
「いいなぁ…あ、でもラナは漂流者担当するの初めてだっけ?」
「そう!みんなの話とか聞いてて、わたしもいつかは…って思ってたけど、ついに念願叶っちゃった!」
「そっかーよかったね!あ、でも浮かれ過ぎないようにね、失礼しちゃダメだよー?」
「うん、分かってる!じゃ、行くから受付よろしくねー!」
「はいよー、いってらっしゃーい」
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
さっきよりニコニコして戻ってきたよ…これから一緒に行くんだけど、やっぱりなんか緊張するな……出来るだけ普通にするよう気を張っていかないと。
「お待たせしましたっ、では行きましょうか。裏口からの方が近いのでカウンターの右手側に来てもらえますか?」
「あ、はい、分かりました」
裏口って…あぁ、あの奥のドアか。
受付カウンターの中通らないと向こう側行けないんだけど。
言われた通り右手側に行こう。
「今カウンター開けますね…よっと」
あー、端はカウンター台を持ち上げて開くようになってるのか。
それで中を通って裏口に行くと。
「どうぞ中へ。そのままあちらのドアまで進んでください」
言われるがままカウンターの中に入って、真っ直ぐ先にあるドアまで歩いてると、受付嬢さんもカウンター台を戻してから追いついてきた。
「正面出口から行くとグルッと遠回りしなくちゃいけないんですよ。これも漂流者の方だけの特権なんですけどね。基本カウンター内は関係者以外入れませんし」
「普通はそうですよね…なんか特別扱いされてるみたいで少し気が引けます……」
「そんなに気にしなくても大丈夫ですよ。漂流者の方の対応としてきちんと認められてますから」
「そうなんですか?まだこの世界に来たばかりで分かってないんですが、その、漂流者の待遇ってどこもこんな感じなんですか?」
こんなに良くしてもらうと恐縮しちまうよな…人によっては逆に対応良すぎて疑っちゃうヤツもいるんじゃないか?これ。
なんて歩きながら話してたから、いつの間にか裏口のドア抜けて路地裏みたいなとこに出てた。
「そうですね、基本的にどこも変わらないと思いますよ。こちらとしても漂流者から受ける恩恵は大きいですから」
「あぁ、その点は何となく分かりますね。多分ですけどこちらの世界に来たみんなは何かしらの特別な能力を持ってると思いますし。自分もそうですけど」
チート持ちがデフォなんだろうなぁこの世界に来る人は。
どんなチート持ってるのか興味はあるけど、まぁ、あえてこっちから突っ込むこともないか、その内会えるだろうし。
「そうなんですよね、漂流者の方々の活躍は至るところから上がってきますし。この街にも数名滞在している方がいますよ?」
「あ、やっぱり自分以外にもいるんですね。なら、その内会うこともありますかね」
「多分お会いできると思いますよ、今朝もギルドに顔を出してましたし。実を言うと漂流者の方は登録時に立ち会った受付担当者が、専属としてその後もフォローするっていう暗黙の了解みたいなものがあるんです。でもその方、何故かいつもわたしのところに来るんですよね……それで受け付けた担当者と一緒になって困ってたり………」
ありゃ、そんな暗黙ルールがあるのか。
その担当者がどんな人かは分からないけど、何となく漂流者のそいつの気持ちは分かる気がする。
んん?待てよ、ということは……??
「えっと、それでいくと、つまり、自分の専属は……」
「はいっ!わたしになりますね!初めて漂流者の方を担当したので、嬉しくて少し舞い上がっちゃってます!」
あーマジか…俺さっきあんなに緊張したのに、この先大丈夫なのか……いや、内心はかなり嬉しいんだけれども。
「そ、そうなんですね…いや、まさかこんな可愛い娘が専属になってくれるなんて……」
「えっ!?そんな、可愛いだなんて……」
うん、ヤバいわこれ。
何がヤバいってもうケモミミがピクピクしてて尻尾がフリフリしててもう、モフモフしたくてしょうがない……獣人の破壊力も半端ないな!
「あっ!そういえばわたしまだ名乗ってませんでしたよね、すみません!えっと、改めまして、冒険者ギルド、ガルムドゲルン支部受付担当、ラーナミラルティアです。親しい人からはラナって呼ばれてます。これからよろしくお願いしますねっ」
え、なに、これフリ?俺にも呼んでほしいって?
「あ、はい、こちらこそ、よろしくお願いします…ラナ……さん?」
いや、なんで呼び捨て出来ないかな、俺…いい歳したおっさんのはずなんだけど……ステータスの激弱ってここまで影響あるのか?
「はい、ナオト…さん」
なにこの可愛い生き物。
そんな照れ顔で名前呼ばれるとか、おっさんでも萌えないわけないじゃないですか…。
こんな可愛い娘が専属になってくれるとか、ここに来てもう運使い果たしてるんじゃないのか?
16
あなたにおすすめの小説
絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~
志位斗 茂家波
ファンタジー
想いというのは中々厄介なものであろう。
それは人の手には余るものであり、人ならざる者にとってはさらに融通の利かないもの。
それでも、突き進むだけの感情は誰にも止めようがなく…
これは、そんな重い想いにいつのまにかつながれていたものの物語である。
―――
感想・指摘など可能な限り受け付けます。
小説家になろう様でも掲載しております。
興味があれば、ぜひどうぞ!!
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。
シトラス=ライス
ファンタジー
万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。
十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。
そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。
おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。
夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。
彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、
「獲物、来ましたね……?」
下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】
アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。
*前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。
また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる