異世界漂流者ハーレム奇譚 ─望んでるわけでもなく目指してるわけでもないのに増えていくのは仕様です─

虹音 雪娜

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第一章 転生、そして冒険者に

#06 受付嬢と一緒に

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「クエスト、ランクについての説明は以上ですが、何かご質問などありますか?」

「そうですね…クエストの完遂判断はどうなってますか?」

「クエストの内容によって変わりますが、採取系は当ギルドに納品してもらえれば大丈夫です。雑務系や護衛依頼などは依頼者に確認してもらい、依頼書にサインをもらって当ギルド、または護衛先のギルドに提出してください。討伐系は魔石と呼ばれる魔物の核となるもので種別を判断しますので、魔石を納品することで達成出来ます」

 魔石か…異世界ものでは定番のあれか、魔導具とかの動力源として使えるっていう…この世界ではどうだか分からんけど。
 まぁ、でも、クエスト完了の仕方はだいたい分かったかな、それほど難しくはなさそうだ。
 しばらくギルドに通い詰めていろんなクエスト受けてみよ。

「クエストによって違うんですね。討伐系なんですが、その魔石以外の部分はどうなりますか?」

「魔石以外の部位は武器や防具、錬金や魔導具などの素材となるものが多いので、可能な限り持ち帰ってもらえれば報酬外の収入になります。現役冒険者の皆さんも魔法袋のような魔導具や収納スキルなどで持ち帰っています」

 うん、魔石以外も素材になるのね、持ち帰りの手段も普通にあるみたいだから、俺が収納スキル持ってても怪しまれることは無さそうだし、出来るだけ持って帰ってこよう。

「ただ、当ギルドでも解体は出来ますが、提携している専門の解体屋がありますのでそちらに持ち込むことをお勧めしています。依頼の中には解体後の素材の納品もありますが、その場合は解体屋からそのまま当ギルドへ納品可能ですので、手間になるということもありません」

 専門の解体屋があるのか…ってことは、この後そっちに行った方がいいのかな?お勧めされてるし。
 解体スキル創ってもいいんだろうけど、やっぱり専門家にお任せするのがいろんな人と関われそうだしな。
 とにかく早く一文無しから脱却しないと。

「解体屋ですね、分かりました。自分もここに来る途中多少魔物らしいものを狩ってきましたので、この後そちらに向かうことにします」

「やっぱりそうでしたか…では、その時わたしも同行しますので、査定も一緒にやっちゃいましょう」

「あー、なんかすみません、面倒かけちゃうみたいで…その、いいんですか?」

「はい、大丈夫ですよ、これも受付業務の内ですし。それにここだけの話ですけど…」

 ん?なんだ?小声になって…あぁ、大っぴらには言えないことだから耳を貸せってことか。
 耳を寄せると受付嬢さんも近づいてきて…って近い近い。

「…実はここを堂々と外せるので、ちょっとした休憩になるんです。あなたを言い訳に使うみたいになっちゃいますけど」

 スッと離れて少しだけ舌を出してニコッといい笑顔をする受付嬢さん。
 あ、これテヘペロってやつか…リアルで初めて見たわ。
 ヤバいなこれ、みんなが騒ぐわけだ、凄い破壊力だ…。

「あー、その、お役に立てたみたいでよかったです…?」

 いい歳したおっさんなはずなのに、なんかめっちゃドキドキするんですが…こんな転生前の娘と大した変わらない年頃の娘相手に。
 あー、でもあれか、向こうでJKに話し掛けられても緊張してたくらいだから、何にも変わってないか。
 でも緊張の度合いが激しい気が…うーん、若返ったせいか?あ、違うな、これステータスのせいだ…対異性に限り激弱ってこういうことか……。

「?どうかしました?」

「あぁ、いえ、何でもないです、何でも。あははは……」
 
 今度は小首傾げて下から上目遣いで覗き込んできた…こういうのをあざと可愛いっていうんだっけ?俺には素なのか狙ってやってるのかなんて判断つかないから分からんけど、とにかくどっちでも可愛いのは変わらんからドキドキが止まらない…ちょっと勘弁してほしい……。

「では早速解体屋に向かいますか?」

「あ、はい、よろしくお願いします…」

 思春期のガキじゃないんだからいい加減治まってほしいんだが。
 妻子持ちでも単身赴任長かったし、職場の同僚に女性いなかったから、ここまで対異性の免疫力低下してたのか…童貞でもないのに一気にヘタレになった気分……大丈夫か俺………。

「ちょっと待っててください、上司に伝えてきますので」

 そう言って席を立ち奥に向かっていった受付嬢さん。
 なんか尻尾がフリフリしててそこもまた可愛いんですが…。


 少し離れたからちょっとだけ落ち着いてきた…と思ったら受付内の他の職員からも視線向けられてる気がする。
 やっぱり不審に思われたか?気を付けないと捕まりそうな予感。
 来て早々犯罪者は勘弁だ……。

 奥に行った受付嬢さんが誰かと話してる。
 あれが上司だな、多分。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
 

「チーフ、これからあちらの冒険者と一緒に解体屋へ行ってきますので席外しますね。ついでに査定してきます」

「そう、分かったわ。漂流者なのかしら、彼」

「はい、そうです。なんと魔法剣士だそうですよ。すごいですよね!」

「あら、そうなの…期待の新人ってとこかしらね。くれぐれも失礼のないようにね。代わりの受付はリズにお願いしておいてくれる?」

「はい、分かりました。では行ってきますね!」

「ええ、行ってらっしゃい」


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 お、戻ってきた…と思ったら、別の受付嬢へ話しかけに行ったぞ?


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


「リズー、わたしの代わりに受付入ってくれる?チーフからも了解もらってるから」

「あいさー、どっか行くの?」

「うん、さっき登録済ませたばかりの冒険者さんと解体屋までねー」

「え、もしかして漂流者?」

「ふっふーん、そうなの!」

「いいなぁ…あ、でもラナは漂流者担当するの初めてだっけ?」

「そう!みんなの話とか聞いてて、わたしもいつかは…って思ってたけど、ついに念願叶っちゃった!」

「そっかーよかったね!あ、でも浮かれ過ぎないようにね、失礼しちゃダメだよー?」

「うん、分かってる!じゃ、行くから受付よろしくねー!」

「はいよー、いってらっしゃーい」


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 さっきよりニコニコして戻ってきたよ…これから一緒に行くんだけど、やっぱりなんか緊張するな……出来るだけ普通にするよう気を張っていかないと。

「お待たせしましたっ、では行きましょうか。裏口からの方が近いのでカウンターの右手側に来てもらえますか?」

「あ、はい、分かりました」

 裏口って…あぁ、あの奥のドアか。
 受付カウンターの中通らないと向こう側行けないんだけど。
 言われた通り右手側に行こう。

「今カウンター開けますね…よっと」

 あー、端はカウンター台を持ち上げて開くようになってるのか。
 それで中を通って裏口に行くと。

「どうぞ中へ。そのままあちらのドアまで進んでください」

 言われるがままカウンターの中に入って、真っ直ぐ先にあるドアまで歩いてると、受付嬢さんもカウンター台を戻してから追いついてきた。

「正面出口から行くとグルッと遠回りしなくちゃいけないんですよ。これも漂流者の方だけの特権なんですけどね。基本カウンター内は関係者以外入れませんし」

「普通はそうですよね…なんか特別扱いされてるみたいで少し気が引けます……」

「そんなに気にしなくても大丈夫ですよ。漂流者の方の対応としてきちんと認められてますから」

「そうなんですか?まだこの世界に来たばかりで分かってないんですが、その、漂流者の待遇ってどこもこんな感じなんですか?」

 こんなに良くしてもらうと恐縮しちまうよな…人によっては逆に対応良すぎて疑っちゃうヤツもいるんじゃないか?これ。
 なんて歩きながら話してたから、いつの間にか裏口のドア抜けて路地裏みたいなとこに出てた。

「そうですね、基本的にどこも変わらないと思いますよ。こちらとしても漂流者から受ける恩恵は大きいですから」

「あぁ、その点は何となく分かりますね。多分ですけどこちらの世界に来たみんなは何かしらの特別な能力を持ってると思いますし。自分もそうですけど」

 チート持ちがデフォなんだろうなぁこの世界に来る人は。
 どんなチート持ってるのか興味はあるけど、まぁ、あえてこっちから突っ込むこともないか、その内会えるだろうし。

「そうなんですよね、漂流者の方々の活躍は至るところから上がってきますし。この街にも数名滞在している方がいますよ?」

「あ、やっぱり自分以外にもいるんですね。なら、その内会うこともありますかね」

「多分お会いできると思いますよ、今朝もギルドに顔を出してましたし。実を言うと漂流者の方は登録時に立ち会った受付担当者が、専属としてその後もフォローするっていう暗黙の了解みたいなものがあるんです。でもその方、何故かいつもわたしのところに来るんですよね……それで受け付けた担当者と一緒になって困ってたり………」

 ありゃ、そんな暗黙ルールがあるのか。
 その担当者がどんな人かは分からないけど、何となく漂流者のそいつの気持ちは分かる気がする。
 んん?待てよ、ということは……??

「えっと、それでいくと、つまり、自分の専属は……」

「はいっ!わたしになりますね!初めて漂流者の方を担当したので、嬉しくて少し舞い上がっちゃってます!」

 あーマジか…俺さっきあんなに緊張したのに、この先大丈夫なのか……いや、内心はかなり嬉しいんだけれども。

「そ、そうなんですね…いや、まさかこんな可愛い娘が専属になってくれるなんて……」

「えっ!?そんな、可愛いだなんて……」

 うん、ヤバいわこれ。
 何がヤバいってもうケモミミがピクピクしてて尻尾がフリフリしててもう、モフモフしたくてしょうがない……獣人の破壊力も半端ないな!

「あっ!そういえばわたしまだ名乗ってませんでしたよね、すみません!えっと、改めまして、冒険者ギルド、ガルムドゲルン支部受付担当、ラーナミラルティアです。親しい人からはラナって呼ばれてます。これからよろしくお願いしますねっ」

 え、なに、これフリ?俺にも呼んでほしいって?

「あ、はい、こちらこそ、よろしくお願いします…ラナ……さん?」

 いや、なんで呼び捨て出来ないかな、俺…いい歳したおっさんのはずなんだけど……ステータスの激弱ってここまで影響あるのか?

「はい、ナオト…さん」

 なにこの可愛い生き物。
 そんな照れ顔で名前呼ばれるとか、おっさんでも萌えないわけないじゃないですか…。
 こんな可愛い娘が専属になってくれるとか、ここに来てもう運使い果たしてるんじゃないのか?


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