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第二章 冒険者稼業の始まり
#05 始まりの一幕・幕引きと初クエスト
しおりを挟む『『『『『『『『…………え?』』』』』』』』
一瞬、一撃で勝負が付いたように見えただろうな…。
「い…いやぁァァァ!!旦那様ぁぁっ!!」
「「ナ、ナオトォぉっ!!」」
「うそ…ナオトさん……っ!?」
「……っ!?」
叫んで、息を飲んで、俺のヤラれっぷりを見てるみんな…シータ、君はこんな時まで続けられるとか、もうね、お見逸れしました。
「ふはっ!ハッハッハーっ!見たかよっ、この俺の実力をっ!ハッ!一撃とか拍子抜けもいいところだぜっ!おいっクリスさんよぉ!勝者コールはどうしたぁっ!」
「…しょ、勝者ヒロシっ!だっ、誰か急いで回復をっ…!」
お、勝者コール終わったな、んじゃ遠慮なく…サッと何事も無かったように立ち上がって、と。
倒れた時に付いた土と舞ってた土埃をパンパンと払いつつ、みんなの所へ向かう俺。
『『『『『『『『…………は?』』』』』』』』
おー、みんな呆気にとられてるなぁ…ま、そりゃそうか、見た目あんな派手なの喰らってピンピンしてるとか、普通は考えられないよなぁ…でもこの通り、何とも無いんですよ、これが。
なぁ、アコ。
[闇黒魔法・闇護膜(笑):対象の肉体・精神に異常或いは負荷となる影響を及ぼす現象全て、纏った闇に葬り去る。纏っている闇は基本的に不可視]
要するに何も効かないんだけど、これで効果の程は確認出来た。
しかし、厨二病時代の俺、ホントに痛いな…不可視の闇とかどんなんだよ、意味分からんわ。
けど今こうして助かってるっていうね…。
「て…テメェっ!おいちょっと待てやぁ!!」
「ん?何ですか?もう勝者コールも出たし終わりですよ?」
「じゃねぇよ!?何でピンピンしてんだよっ!!」
「何でって…そんなの効いてないからに決まってるじゃないですか」
「っ!?このっ…!」
「あー、でももう勝敗はついてますからこれ以上は出来ませんよ。君の勝ちで終了です、ですよね、クリスさん」
そう、端っから勝とうなんてこれっぽっちも思ってなかった。
だって勝った方が後々面倒くさいだろうし、別に強さを見せびらかすつもりも毛頭ないし、勝って格好つける気も更々なかったし。
負けて弱いと思われても全然気にしないからいいんだけど、あれを見て無傷の時点で弱いと思う人がいるかと言えば、多分いないだろうなぁ…と。
まだ突っ掛かってきそうなヒロシを制しつつクリス女史に話を振ったら…クリス女史もぼーっとしてた。
「……え?あ、えぇ…そうね…。この決闘はもう勝敗が決したのでこれで終了です。これ以上は立ち会いが認められていない決闘になるので、その場合は冒険者資格剥奪措置を取ります」
「と、いうわけです。じゃあ、はい解散しましょう」
よし、終わり終わり、これでクエスト受けられるぞっ、これ以上アイツに時間取られるとかバカバカしいから、すぐラナさんの所に行こうっ。
「…クッ……な、なんなんだよっ、アイツはよっ…!」
ボソッと何か言ってるヒロシは無視してラナさんがいる所へ向かったら…こっちもこっちでみんなまだボケッとしてた。
いや、もう戻ってきててもいいよね?クリス女史だって戻ってきたんだし。
「ラナさん、お待たせしました。早速クエスト受けたいんですが……ラナさん?」
「……はっ!?え、ナオトさん…な、何で無傷なんですか……っ!?」
「…ちょ、え、ナオト、ど、どこも怪我してないのっ…?」
ラナさんがツッコミ、リズが心配してきたけど、うん、見ての通りです、としか言い様がないんだよね。
そうやって応えようかと思ってたら姫達からも声掛かってきたよ。
「…お、おい、ナオト……ホントに無事…なのか…?」
「か、回復ぅ…回復しますかぁ~……?」
「………だ…旦那様ぁ…………グスっ……」
アーネもほら、見ての通りだっての、マールも回復するような傷なんか負っちゃいないってば。
で、シータはどうしたっ!?泣くほどのことかっ、え、俺が泣かせたってことになるのこれっ!?
「えっと、ご覧の通りかすり傷一つ負ってないですから、心配するだけ損ですよ。それよりも、ほら、受付戻りましょう。ここにいるとまた絡まれそうですから」
何かみんなまだハッキリ目が覚めてないっぽい感じだけど、ここで回復待ってたらまたヒロシが来そうだから、とっとと受付の方へ歩いていったら、何とかみんな付いて来たみたいだ。
やれやれ、やっと一段落付いた…何かもう朝から疲れたよ、これまともなクエスト出来ないんじゃないか?俺…。
もうしょうがない、今日は諦めて最低ランクのクエストでも受けようかな…。
闘技場から受付カウンターに戻ってきたら……何とびっくり5つある内の1つしか稼働してなかった。
おいおい、いくらクリス女史も立ち会いでいなくなったからって、業務ほっぽり出しちゃダメだろ、あ、いや、でも他の冒険者達も軒並み闘技場行ってたみたいだから、支障はなかった…のか?いやいやみんな仕事はちゃんとしようよ、そうだよね?俺間違ってないよね?
闘技場からみんなぞろぞろやって来て、所定の位置に戻ったみたいだ、受付嬢は受付カウンター内へ、冒険者達は受付カウンターまたはクエストボード前へ…と思いきや酒場とか待合所へ直行して話し込んでるやつが大半だった…さっき闘技場であったことでも話題にしてるんだろうか…。
「さて、やっとクエスト受けられますよ、ラナさん」
「あ、はい、そう…ですね……」
所定の窓口に戻ったラナさんに話しかけたんだけど…まだなんか上の空っぽい感じ?ほら、せっかくナンパからも解放されたんだし、もう終わったことは忘れて仕事しましょう、仕事っ。
「えーっと、ラナさん?大丈夫ですか?」
「…え、それわたしの台詞ですよね?本当に大丈夫なんですか?ナオトさん…」
「さっきも言いましたけど、見ての通りピンピンしてますって。だからこうしてクエスト受けに来てるんじゃないですか。ほら、さっきのことは忘れてお仕事お願いしますよ」
「そ、そうですか…分かりました。では、ナオトさんの専属としてお仕事頑張りますね」
「はい、よろしくお願いします。早速なんですけど、採取系か雑務系で初心者が受けられるお薦めのクエストって何かありますか?」
「えっと、初心者用のお薦めですか?そうですね…採取系なら常設クエストのものがありますね」
お、いつでもオッケーなクエストか、いいねっ、何だろ?定番の薬草採取とかかな?
「いいですね、ではそれを受けようかと思います」
「え?いいんですか?内容を聞いてからの方がいいかと思いますけど…」
「いえ、初クエストですからどんなものでもやりますよ」
「そうですか…分かりました。では常設クエストの『昆虫採取(G)』で「ちょっと待ったっ!!」…え?」
今、Gとか聞こえた気がするんだけど…しかも昆虫の採取?薬草とかじゃなくて?
「えーっと…今、昆虫の採取って聞こえたんですけど…しかもGって」
「あ、はい、その昆虫採取が常設クエストになってますけど…」
「そ、そうですか…ちなみに、そのGっていうのは、どんな昆虫なんでしょうか…?」
「Gですか?そうですね…特徴は黒「あ!もういいですっ!!」くて…はい?いいんですか?」
これもうあの黒き悪魔しか浮かんでこないんだがっ!?何でそんなヤツの採取が常設なんだ…初心者になんてものやらせてるんだよ、まったく……あれか?最初の試練とか行って無理矢理やらせてる系なのか…?
「その、他の常設クエストは無いんですか?」
「他ですか?えーっと…あ、それならこちらなんてどうですか?『お花摘み』なんですけど」
「お花摘み…花を摘んでくるんですか?薬草とかじゃなくて?」
「はい、そうです、いろいろな花を摘んできてもらえれば大丈夫です」
はぁ、花ですか…まぁ、虫よりはマシかもしれないけど…花かぁ……薬草じゃないみたいだし、何に使うんだろ?
「その、摘んできた花はどうするんですか?何かの素材として使われたり?」
「いえ、このギルドに飾るだけですけど」
「はい?飾るための花を摘んでくるってことですか…?」
「えぇ、そうですね。周りを見てもらえれば分かると思いますけど、このギルド、結構お花飾ってありますよね?」
言われて周りを見回してみたら…あ、ホントに結構な数飾ってある、でも何だろ、味気ないというかなんというか…花なのに華やかさが全くと言っていほど無いのは、多分1種類の花、しかも白1色だけしか飾られていないからだろう。
「本当ですね…いや、言われるまで気付きませんでした。というか、飾ってある花、全部同じ色の同じ花しかないですよね?」
「はい、そうなんですよ…本当はもっといろんな花が欲しいので常設クエストにしているのですが…何故か皆さん同じ花しか持ってこなくて……」
「なるほど、そういうことでしたか…もしかしてこの辺りに咲いている花って、今飾ってある花しか無いんですかね?」
「いえ、そんなことは無いはずなんですが…あ、ただ近場だと今飾ってある花が一番多いと思います」
あー、そういうことか、花摘んでくるだけだから、みんな近場で済ませてるってことか。
だから同じ色の同じ花しか集まらないのか…うん、それなら俺がいろんな花集めてくればここも少しは華やかになるかな?
「そういうことなら、分かりました。ではそのお花摘みでお願いします」
「いいんですか?常設クエストですから報酬もそれほど高くはありませんけど…」
「はい、大丈夫です。報酬よりまずいろいろ慣れることを優先したいので」
「そうですか、分かりました。では、常設クエスト『お花摘み』で受諾しておきますね。よろしくお願いしますっ」
「はい、よろしくお願いします。では早速行ってきますね」
「はいっ、頑張ってください!」
よし、じゃあ初クエストといきますかっ!いろんな花摘んできてラナさん驚かせてやる!なんて息巻いて受付カウンターを後に。
応援ありがとうございます!
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