異世界漂流者ハーレム奇譚 ─望んでるわけでもなく目指してるわけでもないのに増えていくのは仕様です─

虹音 雪娜

文字の大きさ
32 / 214
第二章 冒険者稼業の始まり

#08 追加クエストと準備

しおりを挟む


「お待たせしましたっ…って、リズ、こんなところで何やってるの?」

「あはは…ちょっとね、ほら、ナオトが気になってたから顔見に来たついでに、雑談を少し…ね」

「へぇ…そうなんだ……てっきりサボりに来たのかと思った」

「そそ、そんなわけないじゃんっ、やだなぁーもうラナってばぁ…」

 めっちゃ動揺してんじゃねーか、それバレバレだろう…リズでもこんなことあるんだな、どっちかっていうと要領良さそうって印象だったけど。

「はいはい、じゃあもう戻ったら?さっきパーティー更新作業してた時、チーフがこの辺をじぃーっと見てたけど?」

「え、うそっ、やばっ!じゃ、じゃあ戻るねっ!あっ、ナオト!」

「ん?何?」

 リズが戻り際、カウンター越しに近づいてきて俺を手招きしてきた、あぁ、これあれか、ラナと同じ耳貸せってか…じゃあ、ほら、貸してやるよ。
 俺が貸した耳に口を近づけて一言、

「もしホントにハーレム作るんだったら…ワタシも入れてねっ」

「ぶっ!?ちょっ、リズ!おまっ…」

 そう言った途端すぐ離れていって、昨日と同じようにウインク飛ばして去っていった……リズ、お前は毎回捨て台詞吐いていかないと気が済まないのかっ、しかもなんつー事を……。
 何で皆そんなハーレムハーレム言うんだよっ、おかしくないか?こっちの世界じゃハーレム推奨なの?王政だし貴族制があるから一夫多妻制もあるとは思うけど、推奨してるわけじゃないよな…?いや、仮に推奨だったとしても俺には無理だっての、たかだか一介の冒険者がハーレムとか、現実的じゃないだろ…?

「また何か変なこと言われたんじゃないですか?ナオトさん…」

「え、あー、いや、単にからかってっただけだよ、はは…」

「のワリにはエラい動揺してねぇか?ナオト」

「そ、そんなことないって。気のせいだよ、気のせい、うん」

 動揺って…いや、モロ動揺か、言われた瞬間考えちまったもんな…皆に囲まれてキャッキャウフフしてるところ。
 あー、俺も本質的には俗っぽいなぁ…男だからしょーがないってレベルじゃ済まない気がする…けど、想像するくらいは許して欲しいかな、実現性皆無な出来事くらいは。

「まぁ、それならいいですけどね。後でリズに聞いてみますから」

「え、いやっ、それは…止めといたほうがいいと思うぞ…ラナ……そ、それより、ほら、もうギルドカードの更新終わったんだろ?」

「…何か気になりますけど、分かりました。はい、皆のギルドカードです」

 4人分のギルドカードがラナから差し出されて、皆それぞれ受け取った。
 見た感じどこも変わってるようには…あぁ、パーティー名とパーティーメンバーの名前が記載されてる、それ以外は特に変更点は見当たらないな。
 皆も同じ感じで、俺の名前が加わったってとこだろう。

「ありがとな、ラナ。そうだ、パーティーの人数って上限あるのか?」

「あ、はい、ありますよ。1パーティー最大8名までです」

「8名か…結構多めなんだな」

「そうですね…でも最大数でのパーティーはあまり居ませんよ。大体6名くらいのパーティーが一般的ですね」

 8名まで組めるけど、6人パーティーが適切だってことか…あー、でも、何となくだよ、フルメンバーのパーティーって、ハーレムパーティーって思っちゃった。
 朝からハーレムハーレム言ってたから毒されてきたな、俺も…早くクエスト行って毒抜きしよう、うん。
 あ、それとついでに姫達のクエストも受けようと思ってたんだった。

「そうなんだ、分かった、ありがとう。それとな、クエスト複数受けることって出来るか?」

「はい、クエストの受注は最大3つまで可能ですけど…あ、他に受注されます?」

「出来るんなら受けようかと思ってさ。じゃあ、俺のランク…ハイゴールドか一個下のゴールドランク辺りでお薦めのやつ無いか?」

「えっ!?ナ、ナオトはん…それって……」

 お?クエストの話しだしたらシータがいきなり復活してきたぞ、やっぱり気になったか?ま、パーティー組んだ時点で俺も降格対象に含まれるんだろうし、不安要素はとっとと無くすに限るってな。

「あぁ、早いとこクエスト失敗回数も解消しとこうかなって」

「!?…い、いいのか?ナオト…」

「いいも何も、俺もパーティーメンバーになったんだから、降格対象だろ?だったらさっさと解消しとかないと俺も安心出来ないしな」

「…ナオちゃん~……」

 な、何だよマール…何でそんな頬染めてポーっとした顔するんだよ…クエスト受けるだけだっての。

「で、何かある?ラナ」

「えっと、そうですね…あ、これなんかどうですか?つい最近見つかった『巣窟殲滅(オーク)』、ランクはハイゴールドで複数パーティー推奨になってますね」

 おっと、いきなり複数パーティーのやつ薦めてきたぞ…しかもオークか。
 異世界ものではこれも定番の、クッコロ騎士様の天敵だよな。
 そんなの薦めてくるとか…俺が漂流者だからか?いや、まぁ、多分出来る出来ないで言えば、出来るんだろうけど…。

「殲滅系か…まぁ、いけなくもないような気はするけど、単体討伐系は無い?」

「ちょっと待ってくださいね…っと、うーん…単体系は無いっぽいですね…あっ、ゴールドランクにですけど『上位種討伐(ゴブリン)』がありました」

「それって、上位種だったら何でもいいのか?」

「はい、そうなってますね。だだ、ゴブリンですから上位種でも単体ではなくほぼ集団を組んでると思いますけど…」

 ランクは下がったけど、今度はゴブリンか。
 上位種っていうと、メイジとかアーチャーとかの職種系、後はリーダーとかキングとかの統率系ってところかな?
 確かに単体ではまず居ないだろうな…でも巣に突っ込むよりかはマシっていうか、イケそうかなぁ…。

「んー…まぁ、巣を掃除するよりはまだいけるかな…?数にもよるだろうけど、どうする?みんな。これでいい?」

「上位種って…大丈夫かな?ウチら……」

「そうだねぇ~…ちょっとぉ自信~無いかもぉ~……」

「…ナオトは……アタイらで、イケると思うのか…?」

「そうだな…大丈夫じゃないか?状況にもよるけど、今回は俺が上位種受け持つつもりだし。多分イケるよ」

 なんて、楽観してるけど、内心はちょっとだけドキドキしてたり。
 昨日の夜と今日の朝で動けるのは確認出来たけど、魔物との近接戦闘は初挑戦だからな…さっきの決闘で防御だって問題ないのは確認出来たし、まぁ、何とかなるでしょ。

「ナオトがそう言うなら…分かった、腹括っていってみるわ」

「ウチも…ナオトはんに付いていくわ」

「私もぉ…ちょっとぉ不安だけどぉ~…頑張ってみるよぉ~……」

「了解。んじゃ、ラナ、そのクエストもお願いするよ」
 
「はい、ではゴールドランククエスト『上位種討伐(ゴブリン)』、受諾しますね。みんな気を付けて行ってきてよ、ナオトさんがいるから大丈夫だとは思うけど…」

 パーティー組んだからには仲間に手出しなんてさせないよ?当たり前じゃないか、そんなの。
 とは言っても、俺一人で全部やるつもりは毛頭無いから、皆にも頑張ってもらわないといけないわけだけど、そこはまぁ、やってみないことには…ね。

「出来るだけ、ナオトはんの足引っ張らないよう頑張ってくるわ…」

「アタイもだな…調子乗らねぇようにしねぇと……」

「私もぉ~足手まといにぃだけはぁ~ならないようにぃ~気を付けるよぉ~……」

 なんだ?昨日と逆になった気が…。
 それ、昨日俺が言ってた台詞だよな?

「なんだよ、昨日みんな言ってただろ?そんな気張らなくてもいい、一緒に頑張ろうってさ。あれは何だったんだよ?」

「いや、そうなんだけどよ…いざ本番ってなったら、こう、ちょっと…緊張してきたって言うかよ……」

「格上の魔物相手とか、やったことあらへんし……」

「それにぃ…失敗したらってぇ~思うとぉ~……」

 あーうん、まぁいきなり感はあったしなぁ…パーティー組むのもクエスト受けるのも、突発で決めちゃったようなもんだし。
 でも、何とかなるっていうか、そんなに緊張心配不安なんてしなくても大丈夫なはず…俺のチートなら、多分…ね。

「行く前からそんなんじゃ、上手くいくもんも上手くいかなくなっちまうって。適度に気張ってればいいんだよっ。ほら、行くぞ。じゃあ、ラナ、行ってくるよ。終わったらまた来るから」

「はい、ナオトさんも…みんなの事、よろしくお願いしますね」

「了解、任された。ま、いい結果期待して待っててくれよ」

「はいっ、じゃあお気を付けて、いってらっしゃいっ」

 なんて、ちょっと格好つけつつギルド出口へ。
 3人もラナに行ってくることを伝えて俺の後を付いてきた…けど、昨日と打って変わってちょっとしおらしい、何かこっちがちょっと調子狂いそうだ……朝っぱらの元気はどうしたんだよ、全く…。

 そのままギルドを出て、早速街を出ようと思ったんだけど、そういや何も準備してなかった。
 いや、クエスト受けてからにしようと思ってたんだからこれから準備する、でいいんだって、決して忘れてたわけじゃない、うん。

「さて、クエスト行くのに準備しようと思うんだけど…食料以外に必要なものって、何かある?」

「えっと…そうやな、とりあえず、マールがいるから回復は大丈夫なんやけど、念のため多少は持ってくようにしとる。状態異常系の回復薬とかな」

「後はぁ~、野営用のものとかぁ~…」

「まぁ、アタイらの魔法袋はそもそも容量少ねぇからな…最低限必要なものしか持っていかねぇようにしてたぜ」

「そっか、んじゃ、今日はそんなに遅くなるつもりもないし、野営用のものはいいか。回復薬と食料だけ買い込んでいくかな」

 容量は俺の無限収納があるから気にしなくてもいいんだけど、取り敢えず今日のクエストで必要そうなものだけ揃える感じでいいか。
 他の物はまた別の機会にボチボチ揃えていこう。

「ほな、まずは道具屋かな。あっちやで」

 シータが案内してくれるらしい、まぁ、ギルドのすぐ近くにあるってのは昨日の内に確かめたから、俺も分かってるんだけどな。
 ギルドの通り沿いだから、すぐに着いた、昨日は外から覗いただけだったし、どんな品揃えかまでは知らないけど、みんなはよく利用してるみたいだから黙って付いて行くとしよう。


しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波
ファンタジー
想いというのは中々厄介なものであろう。 それは人の手には余るものであり、人ならざる者にとってはさらに融通の利かないもの。 それでも、突き進むだけの感情は誰にも止めようがなく… これは、そんな重い想いにいつのまにかつながれていたものの物語である。 ――― 感想・指摘など可能な限り受け付けます。 小説家になろう様でも掲載しております。 興味があれば、ぜひどうぞ!!

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

処理中です...