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第三章 来訪、襲来、ガルムドゲルン
#04 アコ、暴走
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───洞窟に突入してからかれこれ体感2時間近く…洞窟内にはそれなりの魔物がいたけど、どれも単体での遭遇だった。
スライム型はシータの魔法で、それ以外…昆虫型の大クモや大芋虫、飛行型の大コウモリとかは俺が全部一刀で倒しつつ進んできた。
途中休憩がてら、昼食…こんなところで悠長に調理なんか出来ないから、無限収納に突っ込んでおいた出来合いのもの、パンとか干し肉とかを軽く腹に入れたりもして。
で、俺達は今、地図に翻弄されている、と。
ニル婆に貰った地図通り来ていると疑わないアーネに、間違ってるんじゃないかと指摘するシータ。
マールも再度確かめようと3人で地図を相手ににらめっこ中である。
洞窟に入る際、松明を用意してたんだけど、中に入ってみると意外と明るかった…どうも光源となる鉱石があるらしく、松明無しでも十分視界を確保出来るくらいだったから、早々に松明は無限収納行きになった…なので道具も何も使わず地図は普通に見えてる。
洞窟の壁の至る所にあるその鉱石─アコに見てもらったらこう返ってきた。
[アキュリムライト鉱石:大気中の魔素に触れることにより光源に変換し蓄積する特性を持つ鉱石。蓄積された光源が一定値を超えると鉱石自体が発光状態となる。発光状態になるまでにはおよそ200~300年は掛かるとされる]
試しに触れて魔力を込めてみたんだけど全く反応無し、鉱石自体が魔素ってやつから変換しないとダメみたい。
まぁ、つまり実用性はほぼ皆無、こういった洞窟や古い遺跡?とかにあればラッキーくらいの鉱石なんじゃないかと。
この洞窟もウェラーメ村が出来る前…200年前には既にあったって言ってたから、その頃から蓄積されて今発光してくれてるってことなんだろう。
うん、この鉱石があってラッキーだったってことで。
「うがーっ!やっぱこっちであってるってっ!」
「せやけど目の前は壁やで?崩れて塞がれた感じにも見えへんし…」
…実を言うと俺のマップもニル婆の地図通りになってたりする…けど、どう見ても目の前には壁しかない。
とすると、考えられるのは…トラップってやつか。
ここはアコの出番かな?アコ、目の前の壁見てくれるか?
[幻影壁:罠レベル(2)・周囲と同質の壁を形成して惑わすことを目的とした罠。幻影のため実体が無くすり抜けることは可能だが、多重罠として多用されるため注意が必要。起動装置の解除が有効]
あー…やっぱり罠だったのね……しかも罠重ねとか質悪いな…すり抜けた先に落し穴でもあるのか?
「えっとな、その地図あってるっぽいぞ。目の前の壁、すり抜けられるって。ただ…その先にすぐ別の罠がある場合も多いみたいだ」
「すり抜けられるって…ほなこの壁、偽物ってこと?」
「うん、そう、幻影。どこかにこの壁を作ってる装置があると思うんだけど、それを解除した方が安全だってさ」
「…それもあれか?ナオトのスキルで分かったのか?」
「そうそう、結構優秀なスキルなんだよね」
「ちなみに…それなんて言うスキルなん?」
「えっと、分析解説っていうスキル。長ったらしいからアコって呼んでるけど」
「アコちゃんかぁ~…なんかぁ可愛いぃスキルだねぇ~」
スキルだから性別とかないだろうけど適当に付けた名前だからなぁ…深くは考えてなかった。
確かに女の子っぽい名前になってるけど、まぁ、別に気にしてないしな。
「まぁ、呼びやすい名前付けただけだから…スキルに性別とか関係ないだろうし」
「ふぅ~ん…そっかぁ~。ねぇねぇアコちゃん~、ナオちゃんのぉ~ステータスぅ教えてぇ~?」
おいおいマール、何言って…
「[対象者:遊佐 尚斗のステータスを音声出力]
《識別》
名前:遊佐 尚斗
種族:」
「はぁっ!?ちょっ、アコお前何言ってんのっ!?」
「おいおいスゲぇなっ!会話出来るスキルかよっ!」
「あらぁ~?名前がぁ付いてるぅからぁ~、ちょっとぉ話し掛けてぇみただけぇなぁんだけどねぇ~。うふふっ」
「本人無視して発動するスキルとか、オモロイなぁそれっ!あははっ!」
いやいやいや!何やってんだよアコっ!お前俺のスキルだろっ、なんで他の人で発動してるんだよっ!!
「いやぁ、これいいもん見つけちまったなぁ。おい、シータ、マール、ちょいこっち来て耳貸せ…」
「ん?なんや?」
「なになにぃ~?」
…姫達が少し離れてったぞ……なんかすっげーイヤな予感しかしないんだけど……。
──ボソボソッ
「あのスキル…ナオトが寝てる間に使えるんじゃね?」
「いや、いくら何でも声でバレるやろ…」
「どうかなぁ~…試してぇみてもぉ~いいかもねぇ~…うふふふ」
「だよなっ、今度試してみようぜっ!」
「…あ、ラナ……」
「っ!〔眠りの咆哮〕かっ!?シータ、お前もヤル気満々じゃねーかっ!ぶはっ」
「じゃあじゃあぁ~、今度ぉラーちゃんもぉ呼んでぇ~やってぇみようかぁ~」
「…ただなぁ、ナオトはんにそういうんが効くとは思えへんけどな…闘技場で見た感じ魔法も効かへんみたいやったし……」
「まぁ試してみるだけ試してみようぜっ!ヤベぇ、チョー楽しくなってきたっ!」
「普段からぁ~話し掛けてぇみてもぉ~いいんじゃないぃ~?アコちゃんにぃ~」
「それもありかもしれへんなぁ…ウチはそれでいってみよかな?」
「んじゃいろいろ試してイジってみようぜっ!」
……おいアコ、お前絶対余計な事したぞ…どーしてくれるんだよっ!
[スキル設定・アコ:スキルホルダーに対する親密度により任意発動を追加]
って、おい!なに勝手に発動条件追加してるんだよっ!!何だよ親密度って!お前そんな隠しパラメーターみたいなのまで分かんのかよっ!!
[対象者:遊佐 尚斗に対する親密度を一覧表示しますか?(YES/NO)]
え、あ、やっ!ちょっ、待ってゴメンやめてっ!NO!NO!そんなの見せんなやっ!!なに暴走してんだよっ!ってか、なんでマールで発動したんだよっ!その親密度ってやつ、どういう基準なんだっ!!
[アコ基準です]
はぁっ!?おま、何勝手に基準つけてんだよっ!そーゆーのはちゃんと俺を通せっての!いや、そーじゃねぇっ、勝手に反応して発動するのをヤメロって話だよっ!!
[アコ基準です]
だから勝手に基準を定めるなってよぉ!それでいくとお前、マールの親密度が基準満たしてるってことじゃねーかっ!!
[対象者:遊佐 尚斗に対する親密度を一覧表示しますか?(YES/NO)]
基準値を知りたいわけじゃねぇっつーのっ!!ヤメロっ!絶対それ見せんなよっ!!あーもーここにきて何でこんな事になってんだよっ!俺お前に何かしたかっ!?
「…おいナオト……なに百面相してるんだよ。って、あー、あれか?アコってやつと話してんのか?」
「えっ!?あ、俺顔に出してた…っ!?」
「うん~。コロコロぉ~表情変わってぇ~面白かったぁよぉ~。ふふふっ」
うわっ!めっちゃ恥ずいぃぃっ!!いやっ、それもこれも全部アコ!お前のせいだからなっ!ホントもう止めてくれよっ!!
「そや。アコはん、この罠の装置は何処にあるん?」
「[起動装置・幻影壁:右前方壁面]」
「あはっ、ありがとな、アコはんっ。あははっ!」
「…ウソ…だろ……もう、これ、俺のスキルじゃねぇよ………」
…その場で膝から崩れ落ち、手を着き頭を垂れて愕然とする俺……マールに続きシータにまで……。
思えばこの世界に来て最初っから俺をおちょくってたよな、お前………。
一体何をどうしたいんだよお前は……他人に使われるスキルとか聞いたことないわ…。
[アコ判断です]
………もういいわ、好きにしてくれ………。
「お、あった。これやないか?アーネ、解除出来る?」
「おー、ちっと待ってな…どれどれ……んーっと、これは…ここを、こうして……これで…どうだっ」
ブゥゥゥン……
「やったねぇ~、壁ぇ消えたよぉ~」
「っしゃ!ま、アタイにかかればこんなもんだってのっ」
「ナオトはん、ほれ、罠解除したで?先進もうや」
…まだ立ち直れてない俺に対して、普通に何事も無かったかのように声を掛けるシータ……これ、発動条件の事言ったらもう止めてくれないかな…?君らの俺に対する親密度バレバレですよって……いや、当然ね?親しまれてるってところは嬉しいですよ?そりゃ嫌がられてるよりかは全然マシだしね。
ぶっちゃけ好感度とかじゃなくて良かったって……それ、なんてギャルゲー?ってなるとこだったし…。
[対象者:遊佐 尚斗に対する好感度
だぁぁぁああああ!!!お前ホント何でもありだなっ!?それこそ絶対俺に見せんなよっ!!!そもそもそんなもん数値化するんじゃねぇよっ!!!くっそ、もうこの際お前をオフりたい!いくら便利だとしてもだっ!!何でお前は出来ないんだよっ!!!
[仕様です]
仕様ってお前それ要件定義からやり直せよっ!誰だよこんな要件出してきた奴っ!元SEの俺がやってりゃ、こんなん最初っから仕様指摘して突っ返してるわっ!!
「ナオちゃん~、ほらぁ~行きますよぉ~」
「いつまでそーしてんだよ、ほれ、とっとと先行こうぜっ。見た感じ追加の罠も無さそうだからよ」
……はぁ………すっげぇドッと疲れが出た…主に精神的に。
とはいえアコに頼らずこの先行けるかと言えば…無理とは言わないまでもある程度覚悟が必要になるだろうしな……。
もう仕様確定して出来上がってるしどうしようもないから諦めるしかないのか…。
[賢明な判断です]
くっ…どこが賢明なんだよ……もういいわ、まともに相手すると余計疲れるからなっ、勝手にしろっ!
[賢明な
2回も言わなくていいわっ!!あぁっ、勝手にツッコんじまう自分がツラい……。
…いい加減立ち上がってトボトボみんなに付いていく俺…なんかもう帰ってふて寝したい気分……。
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