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第三章 来訪、襲来、ガルムドゲルン
#05 覚悟を決めて
しおりを挟むニル婆の地図通り、アーネの先導でまた歩き始めた俺達…俺だけ足取り重いけど。
途中、また地図通りじゃない箇所に何回かブチ当たったけど、タネはもう分かってるからシータとマールで起動装置を探して、アーネがそれを解除していった。
壁の先にすぐ罠がある所もあったけど、それもアーネが看破して解除していった…何気に優秀なアーネにちょっと驚き…いや、こんなこと言ったらアーネにぶっ飛ばされそうだから口には出さないけど。
大分奥まで進んで来たような気がするんだけど、何故か奥に進むほど魔物の遭遇率が低くなってきて…アーネの持ってる地図上に付いているチェックマーク近くまで来たら、全く魔物が居なくなってしまった…これじゃ呻き声の原因なんてさっぱり分かんないぞ……。
「そこの分かれ道、右に行けばこの印の場所に着くと思うんだけどよぉ…呻き声ってなんだ?そんなもん出すようなやつ全然いねーじゃねぇか……」
アーネが右側へ行く道を指差しながら俺が思ってたのと同じ事を言ってきた…そりゃ何も居ないんだからそう思うよなぁ…。
「あれやないか、もうその印のとこが呻き声の原因ってことなんちゃうか…?」
「それしかぁ~思い付かないぃよねぇ……」
だろうなぁ…やっぱそこに呻き声を出す何かが居るってことなんだろうなぁ…こんな奥から村まで聞こえてくるってことは…相当デカい何かってことじゃないか?
「誰だよ、お宝なんて言ってたやつはよ…」
「せやかてそんな古臭い地図見たら誰だってそう思うやろっ?ちゃう?」
「…俺は最初から違うだろうなって思ってたけどな…」
「…いやっ、まだ分からへんやろっ!とにかく行って確かめんとっ!」
「う~ん…ここまでぇ来ちゃったらぁ~、期待ぃ出来そうにぃないよぉねぇ……」
「だよなぁ…。ま、なんにせよ行くしかねぇか」
まだお宝の可能性を捨て切れてないシータ…そんなにお宝が欲しかったのか?まぁ、こんな地図見ちゃったらお宝だって思いたくなるのも分からなくはないけどさ。
全員で右側の道に入って進むこと数十分…地図上の目的地に到着して待っていたのは………壁だった。
「…なぁ、アーネ。行き止まりなんやけど……」
「見りゃ分かるって。けどこの地図だとここが印の場所だぜ?また罠ってことか?」
俺のマップだと、この壁の先がでっかい空洞になってるっぽいんだけど…ただ特にマーカーは見えないから何かいるってわけでも無さそうなんだよなぁ……これ罠って感じじゃなくて、ホントに壁で塞がれてるっぽい…。
なに、壊して進めってこと?いや、そんなことしたら洞窟自体崩れちまうよなぁ…。
「…あぁ~、ねぇ~、ここにぃ何かぁ~書いてぇあるよぉ~」
罠だと思ってさっきと同じように周りを調べてたんだろう、マールが何か見つけたらしい。
みんなでそこに寄ってそれを見てみた。
「…なんだこりゃ?確かになんか書いてあるっぽいけど…見たことねぇ字だな。全然読めねぇよ」
「ホンマやな…ウチも見たことあらへんわ」
「私もぉ~分からないよぉ…これぇ~、文字ぃなのかなぁ~?」
3人とも見たことがない文字?らしい…俺も3人の後ろから覗き込んで見てみたら……普通に読めた。
いや、だって漢字とひらがなだし、普通に読めますが何か?つまり…漂流者絡みってことじゃねーかっ。
「ナオトはんは…って、その顔、これ読めるんやな…」
「あ?ってことは…ナオトの世界の字ってことかっ」
「…なぁ、みんな。もう帰らないか?クエスト失敗でもいいから……」
「えぇ~!?どうしてぇ~?」
「いや、だって明らかに漂流者絡みだし…文面からして嫌な予感」
グオオオオォォォォオオオオ……
「「「「っ!?」」」」
いきなり響いてきた大音量に全員が耳を塞いだ。
俺は闇護膜のおかげで身体にダメージを受ける手前くらいまで音量が抑えられたっぽいけど、姫達は全員屈み込んで獣耳を手でペタンと思いっ切り押さえつけてる…こんな時に不謹慎で失礼だとは分かってるんだけど、ごめんそれ可愛いと思ってしまった……。
モラットさんが言ってた通り1、2分くらいでその音は止んだ。
これが例の呻き声ってやつか…近くで聞くと呻き声どころじゃないな、これ…。
「みんな大丈夫か…?」
「…あー……よく聞こえねぇ………」
「……びっくりしたわ………」
「…耳がぁ~……キーンってぇ………」
マールが一番ダメージ大きそうだ…聴覚強化とか付いてたもんな、確か…。
少し回復するまでその場で全員静かにしながら待つことにした…マールはもう回復かけた方がいいんじゃないか?って思ったけど、そこまでしなくても何とか復活したみたいだった。
「…原因が分かったから帰ろうか」
「いや、分かってねぇからな?」
「……発生場所が分かったんだからもういいだろ…」
「発生源は分かっとらんやないか」
「………正直これ以上首突っ込みたくないんだけど……」
「ここまでぇ来てぇ~それはぁどうなのぉ~?」
ですよね…でもさぁ……これ読むとさぁ、誰でも避けたいと思うんですよ……。
『これより先に進む覚悟がある人は、この下の文章を声に出して読んでね』
で、下の文章はというと…
『開けたからには全責任を持ちます』
もうさ、地雷確定ですよね、これ。
あーっ開けたくねぇぇぇええ!!
何故かマップ上マーカーは無いんだけどさっきの呻き声?出した奴がいるのは確定してるから、ソイツに対して全責任を持てってことだよなっ!こんな所に閉じ込められてる時点でロクなもんじゃねぇって分かりきってるんだから、余計に開けたくないわっ!!
どうにかして回避出来ないか、これ…あ、そうか!これみんな読めないんだから適当に誤魔化して説明すれば……
「なぁ、アコ。これなんて書いてあんだ?」
「[文字解読:これより先に進む覚悟がある人は、この下の文章を声に出して読んでね]」
「あーなるほどね、あんがとな、アコ。くははっ」
………説明……なんでお前がするんだよ……もう回避不可能じゃねぇか…………しかもこれで姫達3人共お前が勝手に決めた親密度基準値超えてるってことじゃねぇか………。
[対象者:遊佐 尚斗に対する好感度を一覧
がぁぁぁあああ!!だから見せんなって言って……あ?今、好感度って………
[スキル設定・アコ:スキルホルダーに対する好感度により任意発動へ変更済]
ちょっと待てやぁぁっ!お前なにしてくれちゃってんのっ!?お前ホントなにしてくれちゃってんだよっっ!!変更済ってお前自由過ぎだろーがぁっ!!ヤメロっつってもどうせ聞きゃしないんだろっ、せめて親密度に戻してくれっ!頼むからぁぁ!!
[…………スキル設定・アコ:スキルホルダーに対する親密度により任意発動へ渋々変更]
この際渋々でもいいっ、それでいいからもうさっきのはホント止めてくださいっ!リアルでギャルゲーとか求めてないのでっ!!今のままでも十分ギャルゲーっぽいけどっ!!
っていうかもう手遅れだけどなっ!!勝手に変更してた好感度でもお前の基準値超えてるってバレバレじゃねぇかっ!!
けど俺は信用しないぞっ、お前のその好感度ってやつはなぁっ!!たかだか数日かそこらで好きになるなんてそんな都合の良い話は絶っっ対に信じねぇからなぁっ!!!
「覚悟…ねぇ…。どないする?さっきの呻き声?聞いた後やからそれなりの覚悟は必要やと思うけど…」
「ん~…でもぉ~、村のぉ人達はぁ~困ってるぅみたいだからぁ~…何とかぁしてぇあげたいよぉねぇ……」
…ふぅぅぅ……俺が一人脳内でアコ相手に叫んでたのはどうやらバレなかったらしい……とりあえずその件については後でアコとじっくり話すとして、今はこっちだな…。
そりゃまぁ、俺だって何とかしてあげたいとは思ってるよ…思ってはいるんだけどさ……訳も分からず全責任を持てって言われて、よっしゃ!持ってやるよ!なんて思う人がどれだけいるんだよ…あれだよね、絶対的に自信のある俺様系主人公くらいじゃないですかね…?
俺?ははっ、こんなやつどこからどう見ても主人公なわけないじゃないですかーやだなぁ。
今はまぁ相当運良く獣人ハーレム状態ですけど…俺様系になれる素質はこれっぽっちもないっていう自覚はありますよ、はい。
これはもう正直にみんなへ伝えてどうするか考えてみるしかないかな…。
「あのさ…その、多分ここを開くための鍵が下の文章なんだろうけどさ……そこにね、開けた人が全責任持つようにって書いてあるんだよ…」
「ってことは、ナオトしか読めねぇんだから必然的にナオトが全責任持つってことになんのか」
「まぁ、アコはんも読めるけどナオトはんのスキルやからどっちも変わらんしなぁ」
「そっかぁ…それはぁ~躊躇しちゃうぅよねぇ……」
「そうだよなぁ…ナオト一人に押し付けるっつーのも後味悪ぃしなぁ……」
「ええやんか、開けるんはナオトはんでもウチらが立ち会ってるんや、ウチらみんなで責任持てばええんちゃうか?」
いや、それは…責任持てるようなものならいいんだけど、あんな声出すものって以外全く分からないし、むしろこんな所に封印紛いなことされてるものなんだから危険な可能性が高い……って、まぁ、文章的には全く以て緊張感が無いから危険性は低いんじゃないかなぁ、と思ったりもしてるんだけど、でも責任持てって言ってるくらいだから厄介なものだってのだけは何となく想像出来るよ…。
「でも、あれだよ、十中八九面倒なものだと思うよ…。どんな責任持たされるかもさっぱり分からないし……」
「んー…まぁ、何とかなんじゃねーの?漂流者の仕業なんだし、こっちにも漂流者いるんだしよ」
それはちょっと安直すぎやしませんかね、アーネさんや…。
「ナオちゃんしかぁ~開けられないんだからぁ~、私はぁナオちゃんにぃ~従うよぉ~」
え、ちょっとなんでそんな従うとか…マールが従順するとか想像しただけで怖…あ、いや、そうじゃなくてパーティーの仲間なんだから上下とか関係ないでしょう?
「うん、せやな。ウチもナオトはんに従うで」
「アタイもそれで構わねぇぞ?」
は?ちょっ、みんな何言ってんの?シータなんかこのパーティーのリーダーでしょうがっ。
「いや、ちょっと、それはおかしいって。確かに開けられるのは俺だけかもしれないけど、従うってのはどうなの?このパーティーのリーダーはシータなんだし」
「いや、マールの言う通り開けられるんがナオトはんしかいないんやから、ナオトはんの方針に従うっちゅうだけなんやけど…」
「それ、俺に丸投げしてますよね、シータさん…」
「…そ、そんなこと……あらへん…よ……?」
あさっての方向向いて言ってる時点でアウトぉっ!
「いや、だからさ、もうちょっとみんなで考えてさ…」
「考えるもぉ何もぉ~、開けるかぁ開けないかぁのぉ~二択でぇ、その権限を~持ってるのがぁこの場にはぁ~ナオちゃんしかぁいないよぉねぇ~?」
「だな。だからアタイらはナオトに従うしかねぇってことだよ」
「そ、そうやっ、だからウチもそう言っとるやんかっ」
言ってることは確かにそうなんだけど、少しはみんなの意見を聞きたかったんだよ…。
「…要するに、みんな俺に丸投げってことね……」
「ま、必然的にそうなってるってだけだっつーのっ。で、どーすんだ?開けんのか?開けねぇのか?」
ぐっ…いや、ホント開けたくないんだけど……でもそうすると村のみんなが……クエストが……あーもー!分かった!分かりましたよっ!
「…俺が全責任持てばいいんだろっ!開けるよっ!」
「うん、ナオトはんならそう言うと思っとったわ…」
「なんだぁかんだぁ言ってぇ~、みんなを~放ってぇおけないぃんだよぉねぇ~…ナオちゃんはぁ~」
「心配すんなって、アタイらもちゃんと責任持ってやるからよっ!」
「「うんうん(~)」」
うん、その気持ちは嬉しいんだけど、それよりやっぱりみんなを危険に晒すわけにはいかないからな…。
「…それは嬉しいんだけど、何が出てくるか分からないから一旦全部俺が受け持つよ。俺の手に余るようだったらみんなにも頼むかも……」
「ナオトはんの手に余るもんがウチらでどうこう出来るとは思えへんけど…な」
「案外ぃ~どうにかぁ~出来ちゃうかもぉよぉ~?」
「マールの言う通りかもな。ま、とにかく開けるって決めたんだ、頼むぜっナオト!」
結構みんな楽観視してるんだな…なんでだろ?未知のものに対する恐怖心とか薄いのか…?それとも、漂流者の俺がいるから…?いや、それはないか、そこまで全幅の信頼おける程まだ付き合い長くないし。
まぁ、とにかく覚悟は決めたんだ、開けてみるしかないっ!
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