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第三章 来訪、襲来、ガルムドゲルン
#08 いつもと違うギルド
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ガルムドゲルンの外壁門前まで転移で戻って来た俺達は、そのままギルドに向かおうと門の入り口までやってきた。
今日も門番はエドさんとバドルだった…けど、何かちょっと様子が変わってる感じがする…なんだろ?何かあったのかな?
「エドさん、ただいま」
「おっ!戻って来たか、ナオトっ!ここはすぐ通すから急いでギルドに向かってくれ!」
「…?何かあったんですか?」
「詳しい事はギルドで聞いてくれっ。とりあえず、皇都から『烈華絢蘭』の奴等が来たっ」
烈華絢蘭…って確か……この国のお抱え漂流者パーティーだっけ?そいつ等が来たってだけでそんなに大事になるのか…?
「はぁ…よく分かりませんけど、とりあえずギルドに行けばいいんですね?」
「あぁ、すまんがよろしく頼むっ」
「分かりました。急ぎみたいなんですぐ向かいますね」
証明も何も無いはずのリオがいるのに素通りさせられてしまった俺達は、急ぎっぽいから寄り道も何もせずギルドに直行した。
で、ギルドに着いたら…もうてんやわんやだった。
待合席は冒険者達でごった返しててなんやかんや騒いでるわ、奥のカウンターでは受付嬢があちこち行ったり来たり走り回ってるわ…。
なんだこりゃ?と、みんなで顔を見合わせて不思議がってたら、一際大きい声…聞いたことのある声が耳に届いてきた。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「ハッ!お前等たった4人来たところで何が変わるってんだよっ!もっと人寄越せやっ!何考えてんだっ、この国のお偉いさん方はよぉ!」
「だから僕達が来たんだよ。僕達が来たからにはもう何の心配も無いってことさ」
「そうそうっ!私たちが来たんだからもう解決したも同然よねっ」
「…ですからこんな騒ぎにすることもないんですよ。まったく無駄な事を…」
「…まぁ、この国…いえ、この世界の人達のレベルからすると大事なのでしょうけれど…それにしたってこの騒ぎ様はどうかと思うわ」
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
声の主はヒロシで、誰かと言い合ってるみたいだった…うん、とりあえず無視で。
先にラナへ報告しにいこう、そうしよう。
「何か騒がしいけど、とりあえずラナのとこ行こうか」
「せやな、ラナに聞けばこの騒ぎの原因も教えてくれるやろ」
「だな。とっととラナんとこ行こーぜっ」
「騒がしくてぇごめんねぇ…リーちゃん、大丈夫ぅ…?」
「…………うん……大、丈夫………」
ってことで、人混みを掻き分け受付カウンターまで進んだら…ラナも他の受付嬢同様、カウンター内で駆け回っていた。
というか、ほとんどの受付嬢が右往左往してて、受付カウンター自体ほぼ機能してなかった。
「何か凄い事になってるな…。これ、ラナ呼んでも大丈夫かな?」
「んなもん気にすることねぇっての。おーいっ!ラナーっ!」
アーネが問答無用でラナを呼んだ…なんていうか、相手の都合とかまったく考えてないなぁ。
自分を呼んだアーネの声に気が付いたんだろう、ラナがこっちに振り返った途端、すぐ俺達のところに来てくれた。
「みんなっ!お帰りなさいっ!」
「よっ、今帰ったぜっ!」
「ただいまや、ラナ」
「ラーちゃん~ただいまだよぉ~」
「ちゃんとみんな無事に帰ってきたよ。お土産付きだけどな」
「…お土産って……え、もしかして…その娘……です………か…………?」
「うん、そう。名前はリーオルエレミネア、リオって呼んでる。で、リオ、こっちがラーナミラルティア、みんなラナって呼んでるよ。このギルドの受付嬢だ」
「…………ラナ………よ、ろしく…………」
ぶるんっ
「……………………」
…ん?なんかラナ固まってるんだけど…どうしたんだ?なんか変なところでもあったか…?
「ちょっとラナっ!こんなところで何突っ立って……んなっ!?」
「おう、リズ、ただいま」
「……………………」
なんかリズまでやって来てラナと同じように固まったんだけど…なんでだ?……って、あー、うん、何か分かった気がする…。
「………軽く…ワタシを、凌駕してる……だと………」
俺と同じ事言ってやがる…やっぱそれか。
まぁ俺も初見で目を奪われましたけどね…同性でもそうなるのか…。
「…………(コテっ……?…?……」
二人に見つめられてるけど、意味が分かってないんだろう、リオが真顔で小首を傾げてる…あ、ちょっと可愛いかも。
「あー、リオ、こっちのちっちゃいのがリーズロルトミニィ、リズだよ」
「………よろ、しく…………リズ………」
「あ、うん、よろしく…じゃなくて!ちょっとナオト!アナタまたハーレムメンバー増やしたのっ!?」
「はぁっ!?何言ってんだよっ!だからハーレムじゃないっての!」
リズだって本当のハーレムじゃないって知ってるだろうがっ、何だよ増やしたって!いや、確かに増えたけどさっ、パーティーメンバーとしてだってのっ。
「………はっ!?あ、す、すみません!ちょっと意識が…えと、ラーナミラルティア、ラナでいいです、よろしくお願いしますっ」
あ、意識飛ばしてたんだラナ…引き戻したっぽいけど。
ドラゴンだって驚かせてやろうと思ってたのに別のことで驚かせちまったみたいだ…まぁとりあえず今その話題は置いといてほしいんだけど、先に片付けたいこともあるし。
「何か結構な騒ぎになってるっぽいんだけどよぉ、クエスト完了報告出来んのか?」
そうそうそれね、騒ぎも気になるけどまずは一つずつ順番に片付けときたいな、と。
「ウェラーメ村の村長、モラットはんからもちゃんとサイン貰てきたで」
「ちゃんとぉ、調査してぇ~解決までぇしてきたんだぁよぉ~」
まぁ、解決した結果、リオをお持ち帰りしてきたわけですが。
リオからも話を聞きたいんだけど、こう騒ぎになってると落ち着いた時間が取れるかも微妙だよなぁ…。
「えっと…どうしよう……リズぅ………」
「はぁぁ~。ラナ…アナタホントこーゆー突発的な対応に弱いよねぇ……ワタシがいなかったらどうするのさ」
「ご、ごめん……」
「まぁいいけどね、それがラナだし。チーフにはワタシから言っておくからこっちを先に済ませていいよ」
「う、うんっ、ありがとうリズっ!」
「はいはい。んじゃナオト達、多分後でまたマスターに呼ばれると思うけどよろしくねー」
そう言い残してクリス女史の方へ向かっていったリズ。
げ、また呼ばれるのか…なに、この騒ぎのせいで?いや、でも俺達は直接関係ないよな…?
「…なんか俺、呼ばれてばっかりなんだけど……」
「別に悪い事して呼ばれてるわけやないし、話するくらいええやんか」
「いや、だってギルドマスターってここで一番上の人でしょ?そんな人にしょっちゅう呼ばれるとか目立ってしょうがないというか…」
「あ?んなもんここじゃ誰も気にしてねぇって。第一あのフィルだぜ?クリスにいっつも怒鳴られてるヤツが一番上とか誰も思ってねーんじゃねぇの?」
フィルさん…不憫な……。
かくいう俺もここの一番上はクリス女史だと思ってたりしてますけど…ごめんなさい。
「それよかはよ完了報告してまうで。ラナ、ほれ、よろしくな。ついでにこれも頼むわ」
呼び出しは置いといてって感じで、シータがサイン済の依頼書と洞窟内で倒した魔物の魔石をラナに渡すためカウンター上に置いた。
仲間が一人増えるっていう予想外のイベントはあったけど、なんて言うか、サイン済の依頼書を見ると達成感があっていいな、クエストクリアしたぜっ!って感じがハッキリ分かって。
「あ、うん、じゃあ完了手続きしちゃうね。ギルドカードも一緒にお願い。ナオトさんもポイントは入りませんけど履歴更新があるので提出してもらえますか」
「そっか、了解。んじゃよろしく…あ、そうだ。次いでで悪いんだけど、リオの登録もお願いしたいんだけど…」
「えっと、それは構いませんけど…でもみんなとパーティー組めませんよ?ランク差で…」
あー、そっか、2ランク差までなんだっけ…これ、あれだな、フィルさんに事情説明して俺らのパーティーにブチ込んでもらえるよう交渉してみるか…ちょっと、いや、かなりズルいっていうか反則っぽいけど。
でも実力的には問題無いはずだし。
なんてったって多分元伝説の勇者パーティーのメンバーなんだろうし…半分魔物だと思うけどそこは何とか誤魔化す方向で。
そう考えると結局フィルさんとは話しないとダメだったから呼ばれるのは好都合だったのか。
「あー、そうだった。んじゃリオの登録は後回しでいいや。クエスト完了だけで」
みんなが出したギルドカードと一緒に俺もギルドカードを出して、それを確認したラナが、
「分かりました、じゃあ完了手続きだけしてきますね」
と、すぐ手続きしに奥へ引っ込んでった。
「しっかしあれだな、こうも騒がしいとやっぱ気になんな…ちょっとボード見てくるわ」
黙ってられないアーネが一人クエストボードを確かめに離れてく…いや、いいんだけど完了報告終わった後ゆっくりラナに話聞けばいいんじゃないのか?せっかちさんだな、アーネは。
「……………人、が………いっぱ、い……………」
「そうだねぇ~。いつもはぁこんなにぃ~いっぱいじゃぁないんだけどぉねぇ……」
「リオは…苦手か?人いっぱいなの」
「……………(フルフルっ……。……懐かし、かった…だけ…………」
…そっか、ずっとあの洞窟にいたんだからな…あそこは多分漂流者しか入れなかったはずだし、それまでずっと一人だったんだよな…。
どうしてあんな所で一人最後を迎えようとしてたのかかなり気になるから、早く話聞いてみたいんだけど…。
「リオは…あないなところで、その、一人で……寂しく…なかったん?」
「………わた、し…は………そんな、事……思う、資格…………無い、か…ら……………」
「「「……………」」」
やっぱりワケアリだよな…あーもー余計気になるっ!早く宿帰ってゆっくりお話しようよっ!
って早く帰りたくなってきたところに、クエストボードを見に行ってたアーネが戻ってきた…何気に真剣な目をして。
「おいっ、この騒ぎの原因分かったぜっ。緊急依頼が出てやがる、しかもガルムドゲルンの全冒険者強制だとよっ」
「緊急依頼って…内容は?」
「詳しくは書いてねぇけど、突然現れた魔物の集団がガルムドゲルンに向かってきてるらしいってよ…要するにガルムドゲルンの防衛ってことじゃねぇか?」
「集団…規模はどれくらいなん?」
「分かんねぇ…けど、全冒険者強制なら相当な数じゃねぇか?」
「けど、何でガルムドゲルンに…現れた場所にもよるだろうけど、ここ以外にも街はあるんだし、近い街の方がどう考えてもヤバいだろう」
「いや、それが隣街のゲリッツバルムからの情報みてぇだ。自分達の街には見向きもしないでこっち方面に進んでいったからってよ」
なんだそりゃ?魔物って無差別に襲うもんじゃなかったんだっけ…?そんな軍隊みたいな動き出来るのか?
「………………魔、王……の………軍…勢……………」
「……え?リオ、今なんて………」
「…………この、大陸……の…………魔王、の…従魔……達…………か、も…………」
「「「まっ、魔王(ぅ~)っ!?」」」
「魔王って……え、やっぱり魔王っているのっ!?」
「……………(コクっ……。…多、分………………」
うわ、マジか…やっぱりいるんだ。
でもリオと一緒に戦った勇者達が倒したんなら、もう居ないんじゃないのか…?
「………魔統、皇……は………ケンゴ…とコウ、キ………が…倒し、て……くれた………けど……………」
「……ダメだ、これリオの話聞く方が先のような気がしてきた………」
「でもぉ…リーちゃんにはぁ、辛いぃ話かもぉしれないんだよぉねぇ……」
あー…よくよく考えたらそうだよ、な……。
一人で逝かなきゃならなかったワケがあるくらいだ、辛い話に決まってる…。
いろいろ聞きたいことはあるんだけど、辛い思いさせてまで話をさせるなんて確かに酷だし、何より…折角俺達に付いてきてくれたリオが傷付くようなことをさせたくはない…よな。
「…うん、今のは無しで。とりあえず今分かってる情報だけでも集めて……ん?どうした?リオ…」
俺の袖をクイッと引っ張ってきたリオ、どうしたんだろ?あぁ、無理に話してもらうようなことはしないから大丈夫だって。
「………マール、と………ナオ、ト…が……いて…くれる、なら………話、出来る……か、ら……………」
「…リーちゃん………」
「リオ……それは嬉しいけど…リオに辛い思いはさせたくないし……」
「……(フルフルっ……。………みん、なが……いて…くれ、る……なら………大、丈夫…………」
「リオ……無理、してねぇ…か……?」
「………(コクっ……。…わた、しを……見つ…けて……くれ、た………みんな…だか、ら………」
「そうや、リオはもう、ウチらの仲間…や。せやからこれからは、何があってもウチらが付いとるから、な」
「………そう、言って……くれ、る……みんな……だ、から………大丈、夫………………」
「……リーちゃん…………んっ」
リオを抱きしめてよしよしって頭を撫でるマール…そんなマールへ甘えるように身体を預けているリオ……どう考えてもリオの方が歳上だし、身長的にもリオの方が高いんだけど、こうしてるとマールの方がお姉ちゃんっぽく見えるな。
元々優しい性格の娘なんだろう…半分魔物になってたとしても、その辺は変わってないみたいだ。
その辺…魔人種ってのになったのも何か理由があるんだろうけど、どんな理由であれリオはもう俺達の仲間になったんだから、今更竜人だろうが魔人だろうが関係ない。
あの場所に一人でいた寂しさを、辛さを、みんなと一緒に埋めていってあげよう…出逢えてよかったと思えるように。
応援ありがとうございます!
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