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第三章 来訪、襲来、ガルムドゲルン
#17 リオの装備
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昨晩の宴から明けて翌日、俺達は明日の準備のためギアドルム防具工房に来ていた…リオの防具を揃えようと思って。
宴は大盛況のまま幕を閉じて、みんなの士気もそれなりに上がったんじゃないかと思う。
帰り際にはみんな俺に一言二言声を掛けてくれて、いい感じで帰路に着いていった。
この分なら当日もいい勢いで当たれるだろうと期待出来そうで、柄じゃないのは分かってたけどやってよかったなぁって思ったりもして。
俺達もその日はいろいろあったから、メルさんの所へ戻ってゆっくり休むことに。
まだこっちの世界に来て数日なんだけど、メルさんの宿屋に着くとなんか自分の家に帰ってきたって感じがするのは何故だろうか、とちょっと不思議に思いながらも自分の部屋に戻った。
リオは姫達の部屋で一緒に泊まることになった…元々4人部屋を3人で借りてたから1人増えても大丈夫ってことでそうなったんだけど、そういや寝る時はアーネとだよなぁ、リオはちゃんと寝れるんだろうかって少し心配になった。
でも、朝、顔を合わせたリオからは、なんかごきげんなオーラが出てる感じしかしなかった…相変わらず表情からは読めないんであくまで感じだけど。
多分寝てる時にアーネが乗ってきたのが嬉しかったんじゃないかなぁって。
寝てても乗ってくれるのが嬉しいとか、ホントどんだけ乗られ好きなんだ、リオは。
もし、仮に俺と一緒に寝る事があったとしたら、問答無用で俺乗せられそうな気がする…リオの上で寝るとかどんな天国…いやいや、だからそっち方面にいくのやめようや、俺…。
「ギアのおっちゃーん、いるかー?」
何処に行ってもまず声を掛けるのはアーネなのか。
そういやアーネと言えば昨日あんな事があって帰ってからこっ酷く責められると覚悟してたんだけど、これといって特に何も言ってこなかった。
あの後も終始俯き加減で独り、うー、とか、がー、とか言いながら悶てたんだけどね。
ま、そりゃ恥ずかしくないわけないよな…あんな声人前で出しちゃったら。
そんなアーネに一番絡んでたのはラナだったんだけど、ちょっと二人の話に耳を傾けてみたら、ラナが事詳細にどうだったのかを問い詰めてるみたいだった…。
そんなに興味があったってことは…ラナにもモフモフさせてもらえそう?ってちょっと思ったりもして、今度機会があったら言ってみてようかと密かな期待を持ってるのは内緒で。
ラナは垂れ気味の獣耳もいいんだけど、あのフリフリ揺れてる尻尾がまたいいんだよなぁ…。
酔ってると触っても大丈夫そうだったんだけど…その為だけに酔わせるとか間違っても絶対にやらない、もしそんなことやったら闇護膜切って自分に黒闇齎掛けてやる。
人の道は外さないよう気を付けましょうってことで。
で、そのアーネだけど一晩たったら何事も無かったようにケロッとしてて、いつも通りだった…アーネもあれか、シータと同じで都合の悪いっていうか恥ずかしいこととかそういうのは忘れちまうタイプってことなのかな…後で思い出しては悶えると。
それか、そういうことがあった時は気にするけど、寝たらもう気にしなくなるっていう俺と同じタイプなのかもしれない。
まぁ、俺の場合は寝たら忘れるっていう複合タイプなんだけど。
「おう、なんじゃい、三馬鹿娘とナオトか。…ん?新顔がおるのう」
奥の作業場の方からギアンテのおっちゃんと…もう一人、同じような髭もじゃのずんぐりむっくりしたおっちゃんが出てきた。
「おうおう、お前さんがギアの言っとった漂流者か。ふむふむ…ほう、なるほどのぉ、ギアの言う通り中々様になっとるじゃぁないか」
俺をマジマジと眺めながらもう一人のおっちゃんが褒めてくれた…もう全然悪い気はしない、むしろこの格好が似合う自分で良かったとマジで思ってたり。
「ありがとうございます、えっと…」
「おう、儂ゃドルムガンダっちゅーもんじゃ。ギアと二人でこの店をやっとる。よろしくのぅ」
「ドルムさん…あぁ、だからお店の名前がギアドルムなんですね。自分はナオトと言います、ご存知の通り漂流者です。よろしくお願いします」
「今日はドルムのおっちゃんもいるのな」
「ん?あぁ、ちと里帰りしてての。昨日帰ってきたばかりじゃが…帰ってくるタイミングを間違えたわい。ぶぉっふぉっふぉっ」
うわ、ホントタイミング悪い…あー、でも冒険者達からしたら助かるのか、準備やらメンテとかで忙しくなるだろうし。
「いや、こっちとしては助かると思うんですけど…忙しくないですか?」
「ああ、帰ってきて早々仕事が山積みじゃわい」
「こんな事になるならドルムに誰か助っ人を頼むんじゃったわい。まぁ、何とかするしかないがの。それで今日はなんじゃい、儂らも忙しいんじゃ、あまり時間は取れんぞ」
「えっと、彼女…リオの防具を買いに来たんですけど」
「…………(ペコっ……」
「なるほどの。そこの新顔の竜人か。じゃがのぅ…」
「…ううむ……そこのお嬢ちゃんに見合う防具か………」
髭もじゃおっちゃんズがリオを見てるんだけど…もう視線は一点集中だった。
まぁ、そこですよねぇ…そこをカバー出来る防具とか、そう置いてあるものじゃないか、やっぱり。
規格外とまでは言わないけど、初見で目を奪われるくらいはあるからなぁ…。
「……おぉ、そうじゃ!ギア、あれがあったんじゃないかの?」
「あれ…ああ!あれか!うむ、確かにあれしかないのぉ。よし、ちと待っとれ、今持ってくるわい」
何かあてがあったのか、ギアンテのおっちゃんが奥に引っ込んでった。
店頭には出してないようなものなのかな?
「そこの嬢ちゃんに合いそうなものとなると、そう簡単には見つからないじゃろ…竜人とくれば尚更じゃな」
「でもぉ、何かぁあるんですよぉねぇ~?」
「ああ。ちと特殊でな、店には出しとらんがの。その分多少値は張るんじゃが…」
やっぱりそうだった…それに値打ち物らしい。
でもそれなら期待出来そうじゃないかな?防具として。
「幾らくらいなん?ウチらでも手出せそう?」
「ああ、シータ、俺が出すからいいよ。まだ手持ちに余裕あるし、昨日手に入れた分で」
「え、せやけど…」
「リオの責任は俺が持つってことになってるし、その辺はちゃんとやるつもりだよ」
世話ってわけじゃないけど、ちゃんと仲間として見てあげるって自分の中で決めてるし、責任持って。
「…ほんならお言葉に甘えるけど…ウチらももう仲間なんやから、ちゃんと責任持つつもりやで?」
「そっか、そうだよな。うん、ありがとう」
「私もぉだからねぇ~。ふふっ」
「アタイだってそうだっつーの」
「………みん、な……あ、り…がと……。……みんな、に……会、えて……よかっ…た…………」
「ふふっ、私もぉだよぉ~、リーちゃん~。うふふっ」
って、またリオを抱きしめてよしよしってしてるし…マールもどんだけリオの事甘やかすんだよ。
…まぁ、正直大変良い目の保養になっているのですが。
「よっこらせっ…とぉ。ほれ、持ってきたぞい。型はちと古いが性能は悪くないはずじゃ。装備するのもこれなら問題ないじゃろ」
奥の部屋から箱に入った防具を持って戻ってきたギアンテのおっちゃん。
箱の中を覗いてみると、見た目はこれといって特に何の変哲もなさそうなベージュのレザーアーマーっぽかった。
ドルムのおっちゃんが箱から出して俺達に見せてくれたけど…どう見てもそれ、リオが装備出来そうにないんだけど。
うん、男性用にしか見えないね…。
「まぁ、これを見ただけでは、そんな顔になるじゃろうなぁ」
多分俺達全員、いや、リオを除いて不思議そうな顔してたんだろうな…。
「言いたい事は分かっとる。が、とにかくこいつを装備してみろ、お嬢ちゃん」
そう言ってレザーアーマーをリオに渡すドルムのおっちゃん。
それを黙ってリオが受け取ったんだけど、うん、最初は一人じゃ装備出来ないんじゃない?って思って手伝おうとしたら…装備の仕方が分かってるみたいに一人でチャカチャカと付け始めた。
案の定、前側を付ける時にその大きな胸を潰すように押さえ付けながら装備してたら…何故かちゃんと装備出来た…ん?あれ?目の錯覚かな…?
「こいつはな、装備者の体型に合わせて自動調整出来るんじゃ。魔法が付与された防具、所謂魔防具っちゅうやつじゃな」
そういうことか、防具の方が合わせてくれてたのか、それなら納得…なんだけど……。
「ううむ…それでも流石に調整幅は限界じゃったか……」
うん、納まりきってないね。
胸の部分だけボンデージみたいになってるよ…ますます強調されてる感じでちょっと目のやり場に困る…。
「リーちゃん…ますますぅ色っぽくぅなったねぇ~…」
「あぁ…すげぇな、これ……。まぁ、アタイは昨日一緒に寝た時から分かってたんだけどな…」
え、何それ、何が分かったんですかアーネさん、そこ詳しく。
「これは…防具として大丈夫なん…?」
「………これ、で…………いい……………」
あ、いいんですかリオさん。
何か今よりもっと目を引きそうな気がするんですけど。
「リオがいいなら、それでいいけど…ホントにいいの?それ…きつかったりしない?」
「………(コクっ……大丈、夫…………」
「そ、そう…。じゃあ、それにする?」
「……(コクっ………」
「あ、はい。じゃあ、これください…」
「う、うむ、分かったわい。そうじゃな…流石に少し気が引けるからのぉ…10000セタルだったんじゃが、8000セタルにしておくわい」
ありゃ、オマケしてくれたよ。
いくら自動調整出来るといっても明らかに見た目がこれだからなぁ…でも本人いいって言ってるし、素直にオマケされておこう。
「何かすみません…はい、これ」
大銀貨8枚をギアンテのおっちゃんに手渡して購入完了。
後は武器だけど…そういやリオって武器何使うんだろ?ステータス見た時それっぽいスキルは無かったような…。
「うむ、確かに。何か不具合がありそうならまた来るといい。あまり手は入れられんが微調整くらいは出来るじゃろ」
「分かりました、その時はお願いします。じゃあ俺達はこれで。忙しいところお邪魔しました」
リオは装備したままで全員店を後にした。
次は武器だな、リオに何使うか聞かないと。
「次は武器かな?リオは何使うの?」
「………武器…………使わ、ない……………」
「え、そうなん?リオ」
「………(コクっ……」
「そっか、使わないんだ。あれ?そういえば…リオの勇者騎竜って、持ってるスキル全部使えたりするの?それ専用の職種じゃないけど…」
「………(コクっ……使え、る……よ………」
使えるのか…元々持ってるスキル継承出来る職種とか、そんな感じ?いや、でも邪霊魔法は多分魔人種になってから使えるようになったんじゃないかなぁ…職種もそうだけど種族も特殊っぽいからなんだろうか。
うわ、だったらマールより聖邪混濁してるじゃないか…神聖魔法と邪霊魔法両方同時に使えるとか、これも大っぴらにしない方がいいよな…後でリオに言っとこ。
「じゃあ、武器要らない?」
「………(コクっ……要らな、い…………」
「了解。んじゃとりあえず武器はいいか。後は何か準備しとくものある?」
「そうやなぁ…ポーション類は多分ギルドで用意されるか支給されるやろうし、手持ち分も補充したばかりやから問題なさそうやし」
「今頃街中の道具屋からいろいろ掻き集めてるんじゃねーか?ギルドの奴らが」
それもそうか、冒険者達が一斉に動き出したらそれこそ大混雑だもんな。
そっちは任せても大丈夫か。
なら、後は来るのを待つだけか…まだ時間はあるし、丁度いいかな。
「そうだな。それじゃ、来るのを待つとして…リオ、話聞かせてもらってもいい…?」
「……………(コクっ………いい、よ……………」
「ありがとな。それじゃどっかゆっくり話出来るとこに行こうか。何処かいいとこある?」
「ウチらの部屋でよくない?人がいるようなとこで話すことやないやろうし」
「うん~、それがぁいいとぉ思うぅ~」
「みんながそれでいいなら…そうしようか」
「いいぜ。んじゃ、宿戻るか」
ってことで、皆で宿へ戻ることに。
どんな話が聞けるんだろうか…リオにとっては辛い話なんだろうなってことは何となく予想はつくんだけど…無理させてまで話してもらおうとは思ってないから、様子見ながら聞いてみよう。
あまりに辛そうならそこで終わりにしてもいいや。
宿屋に着いてから、真っ直ぐ三階にある姫達の部屋に向かった。
初めて入ったけど、やっぱり四人部屋だけあって当然俺の部屋より広くてゆったりした感じがする。
部屋の右側にダブルベッドが2つ、そして俺の部屋にもあった同じテーブルと二人がけのソファーがこっちの部屋には2つあった。
「みんな適当に座ってや。飲み物用意するわ」
部屋に入ってすぐローブを脱ぎベッドの上に置いた後、部屋奥の台に置いてあるティーセットで飲み物、多分紅茶っぽいものだろう、それを用意し始めたシータ。
俺達もシータに言われた通り適当に座ることにした。
マールとリオは同じソファーに、そうすると必然的に俺とアーネが別のソファーになるんだろうけど、それだとシータが座れなくなると思って、俺は一人でベッドの端に腰掛けることにした…まぁ、立っててもいいんだけど一人だけ立ってるのもどうかと思って。
シータは飲み物をテーブルに、俺には手渡ししてくれた後、アーネと一緒のソファーに座ってこれで全員話が聞ける体制になった。
「それじゃリオ…話聞かせてくれる?」
「……………(コクっ……。……わたし、が……ケン、ゴと…コウキ、に………会った……の、は───」
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