69 / 214
第三章 来訪、襲来、ガルムドゲルン
#16 モフモフチャレンジ
しおりを挟む※※※※※
漂流者三人での話が終わったから、みんなのところに戻ったんだけど…やってることがみんなバラバラだった。
てっきり全員でワイワイやってるもんだと思ってたんだけど…。
アーネはなんか仏頂面して酒煽ってるし、シータは神妙な顔して弘史のパーティーメンバーのフラムって娘と話してる。
マールとリオはさっきとあまり変わらず百合百合…じゃない、お姉ちゃんが甘やかしてる感じになってるし、ラナとリズは黙々と料理を食べてる。
そんなに長い時間離れてたつもりはなかったんだけど、ちょっと待たせちゃったかな?
「ごめん、みんな。話終わったから」
「おふぁひぇひー」
「ちゃんと飲み込んでから言えよ、リズ…。アーネ…は、まだ機嫌悪い…のか?」
「…別に悪くねぇよ」
「じゃあなんでそんな顔してんだよ…。ちゃんと言ってきたからさ、もう水に流してくれって」
「……そうかよ」
こりゃ完全にへそ曲げてるな…でもまぁいいか、どうせ無茶苦茶になるんだ、無視しちまえ。
アーネの側まで寄って一言、
「アーネ、ちょっとモフモフさせてくれないか?」
って空気も読まず何の脈絡も無く言ってみた。
「「「「「………は?」」」」」
姫達とラナ、あと何故かリズが素っ頓狂な声上げた。
まぁ、そうなりますよね、当然。
「だからモフモフさせてくれって」
「……あ?あー、なるほどな…。そーゆーことならしゃーねぇなぁ…ったく、いいぜっ、ほらっ」
怪訝な顔してチラッと視線をヒロシに向けた後、俺がいきなりこんなこと言い出した理由に気が付いたみたいで、しょうがないと言いつつも頭を俺に差し出してくれた…仏頂面から怪訝な顔になった後だからか、そこへ更にニヤけようとして失敗したっていう感じの複雑な表情してたけど…ちょっと面白かった。
そもそもの言い出しっぺはアーネだったからちゃんと分かってるみたいでよかった…。
「じゃあ、ちょっと失礼して…」
「「「あっ…」」」
他の姫達3人が何か言いたそうにしてたのを余所に、アーネの頭の上に手を置いて獣耳を触ってみた。
アーネの獣耳はアーネが俺に抱きついてきた時触ったけど、今みたいにじっくり触ったわけじゃないからな…獣耳含めて撫でてただけだし。
虎の耳だけど、結構モフモフしてる…毛の感触がやっぱりいい。
時々ピクッピクッ、って動くのがまた触り心地を良くしてくれてる感じ。
あと、アーネに触れるとどうしても実家の猫を思い出してしまう。
こうやってよく撫でてたもんなぁ…。
「……んっ………はぁァァ……………」
「っ!?」
光の速さで手を離した。
おまっ!なっ…なんて声出してんだよっ!?
「……はぅっ!?やっ、ちょっ!いい、今のは無しっ無しっ!!ち、違……っ!?」
咄嗟に口元を両手で塞ぐも、時すでに遅し、かなり必死こいて言い訳し始めた…。
「「「「「「「………」」」」」」」
「ちちっ、違うからっ!きき、気持ち良いとかそういうんじゃねーからっ!!」
「いや、何言うとんのや…それしかないやろ今の声……(ゴクッ……」
「アーちゃんのぉ…あんなぁ声ぇ……初めてぇ聞いたよぉ……(ゴクッ……」
「……アーネ…そ、そんなに良かったんだ……(ゴクッ……」
えーっと…君等も何で喉鳴らしてるの?
え、まさかとは思うけどやってほしいとかってわけじゃないよね…。
「いやだから違うんだって!頼むから聞かなかったことにしてくれぇぇ!!」
…そりゃ無理だ。
まさかアーネからあんな艶っぽい声が出てくるとは思ってもみなかった……すげぇ焦ったわっ!
駄目だこれ、人前でおいそれとやっていいことじゃなかった…っ。
「っていうかナオト、何がしたかったのよ?」
「そ、それはだな…」
「俺がモフモフし放題なんだろって言っただけなんだけどよ…」
「……あぁー、そーゆーことね。なら別に変じゃないけど…アーネちゃんの予想外の反応に焦っちゃったわけだ、にししっ」
あれは誰でも焦るだろうっ、俺は超焦ったわ!
心臓ドキドキして変な気分になりそうだった…そっち方面の焦りが強かったってのっ。
「……弘史………これ、ちょっとあれだ……人前でやっていいようなことじゃなかったわ……」
「あー、なんか悪かったな……。けどよ、やっぱ俺もますますモフりたいって思ったわ……」
気持ちはとてもよく分かるが、時と場所を考えないと危険だってことが判明したよ…そういう意味だと今やっといて良かったのか……周りがこんだけ騒がしくて、この辺りだけでしか聞こえなかっただろうから。
「えっと…あ、ありがとな、アーネ。とても良いものでした…」
「………」
あー、うん、俯いてプルプル震えてるよ…まぁ、そうなりますよね。
ごめん、これは全面的に俺が悪いから、後で気が済むまでいくらでも責めてくれていいです…。
と、今まで相変わらずの無表情でやり取りを見てたリオが俺の近くにやってきて、また袖をクイっと引っ張ってきた。
なんだろ?と思ってリオの方に向いたら…
「……………ん………………」
って、黙って頭を俺に差し出してきた…。
え、なに、リオもしてほしいって?いや、リオはモフモフするところ無いし…。
「………角……触って………い、い……よ…………」
あー、モフモフとかじゃなくて、アーネみたいに触ってほしかっただけなのか。
いや、この流れで触るのは、何となくまた予期せぬ事態になりそうな気がするんだけど…。
「えーっと…触って…欲しいの?リオ…」
「………(コクっ……。……触っ、て……?………」
触らないと収まらないのか、これ。
まぁ、本人から触ってくれって言ってきたんだから、アーネの時とは違うけど…それ以前に主旨が違ってます、リオさん……モフモフするのが目的だったので…。
とは言っても、本人の希望ならしょうがないよな、と自分を納得させて触ってあげることにした。
側頭部から生えている二本の角の内、俺から見て右側、リオの左側の角をゆっくりなぞる様に触ってみた。
気持ち薄紅色掛かった角は一見すると硬そうに見えたんだけど、実際こうして触ってみると、やっぱり見て思った通り硬かった。
けど、触り心地は意外と悪くない…もっとこう、ゴツゴツザラザラしているかと思ってたんだけど、表面は滑らかで、なんて言ったらいいんだろ、鉄パイプの表面が蛇の鱗状になってる感じのもの?が一番近いような気がする。
「……………んっ………ふぁぁ………………」
また俺の手が光速で動いた。
予想通りだよっ、リオまでそんな声出すんじゃありませんっ!
「…………もっ、と………………」
「いやいやいやっ、ダメだって!」
「………ど、うし…て……………?………」
「と、とにかくダメなのっ!」
俺の理性突破してくるようなことだからですっ!
リオは何かその辺の感覚ズレてないかっ!?
あ、いや、もしかして…ずっと洞窟に一人だったから、人肌恋しいのか…?
やけに乗せたがるし、マールにも引っ付いて甘えてたし…。
でも、もしそうだとしてもそういう色っぽい声出すならダメっ!二人っきりならともかく、こんな大勢の前ではよろしくありませんっ!!
二人っきりの時は確実に俺の理性防壁貫通してくると思うけどっ!
「……リーちゃん~、ここはねぇ~人がぁいっぱいぃ~いるからぁねぇ~…」
「………人……いっ、ぱい………いな、けれ…ば…………いい……?………」
「あー、うーん…それは……まぁ、ええんちゃう…か…?」
いや、全然良くないですシータさん。
俺にあんな声聞かせようとする時点でアウトです、何言ってるんですかあなたはっ!
「かぁー!ったくよぉ、やっぱうらやましいぜっ、ちくしょー!」
リオはモフモフでも何でも無いんだけどな…。
あの触られたがりは今後要注意だ、不用意に触れないよう気にしとかないと…。
「ひ、弘史さん……ああ、あの、えと………」
知美ちゃんがおずおずと弘史に寄ってった…あ、何?君等もやっぱりそういう関係だったの?
「…フッ、そうだな……」
と、ボソッと溢してフラムもヒロシの方に近寄って行った。
ん?これはもしかして…。
「…ええ、えと、そそその、どど、どうぞ……」
「ん。ほら」
そう言って頭をヒロシに差し出した二人。
「…は?なっ、何だよ二人とも……」
「何って、私達もヒロシのハーレムメンバーなんだろう?一応。それとも何か?私達では不服なのか…?」
「……(コクコクっ…」
「…え、あ、いや、んなわきゃねーけど……」
「だったら何も気にすることは無いだろう。ほら」
「……お、お前ら……」
二人がヒロシを気遣ったんだろう、少し気後れしながらも二人の頭に片方ずつ手を置いて撫で始めたヒロシ…なんだよ、何だかんだ言って上手くやってるんじゃないか…ぶっちゃけ俺よりいい感じだろ、それ…。
「……ふぁっ………えへへ…………」
「……んっ……これは…中々………」
撫でられてる二人、めっちゃ嬉しそうなんですけど…。
それ、どっからどう見ても確実にハーレムじゃねぇの?俺の方が羨ましいわっ!
「「「……いいなぁ…(ボソッ……」」」
何かボソッっと聞こえたから振り向いてみたら…シータ、マール、ラナ、3人ともバラバラにあさっての方向へサッと顔を反らした…俺が振り向いた瞬間、とても羨ましそうな顔をしてたのは気のせいだと思いたい。
まぁ、俺もですがねっ!やっぱりイケメンは何処まで行ってもイケメンだったわ…。
「あー、うん、弘史くん。君、俺よりしっかりハーレムしてるじゃないか…」
「……いや、こいつらが優しいだけだっての……」
そういう弘史くんの目も、とても優しい目をしてますがね。
無意識かっ、それがモテる秘訣なのかっ?
俺もいつかはそんな風になれるといいなぁ…なんて夢見るのはダメかな…。
いつの日か俺から「モフモフさせて?」って言っちゃっても大丈夫な日がくるんですかね…?
今は弘史の手前、アーネがやらせてくれたんだろうけど、何でもない時に言って拒否られた日にはもう、俺ショックで逃げ出すしかないです…。
って、こんな時にこんな感じになっちゃったけど、まぁこれが俺達なりの士気の上げ方ってことで、この後も弘史達含めてワイワイやりました。
明日は…いろいろ準備して、余裕があったらリオの話聞ければいいかな…。
4
あなたにおすすめの小説
絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~
志位斗 茂家波
ファンタジー
想いというのは中々厄介なものであろう。
それは人の手には余るものであり、人ならざる者にとってはさらに融通の利かないもの。
それでも、突き進むだけの感情は誰にも止めようがなく…
これは、そんな重い想いにいつのまにかつながれていたものの物語である。
―――
感想・指摘など可能な限り受け付けます。
小説家になろう様でも掲載しております。
興味があれば、ぜひどうぞ!!
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。
シトラス=ライス
ファンタジー
万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。
十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。
そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。
おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。
夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。
彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、
「獲物、来ましたね……?」
下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】
アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。
*前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。
また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる