68 / 214
第三章 来訪、襲来、ガルムドゲルン
#15 漂流者同士で
しおりを挟む※※※※※
「ふぅ…何かごめんな、俺が沈んじゃったせいで…。そうだ、ちゃんと自己紹介してなかったから改めて。フルネームは遊佐尚斗、今はこの姿で18歳なんだけど、元の世界では45歳だったよ。多分向こうでは死んだことになってると思うから転生者ってことになるかな」
「あ、けけ、結構なご、ご年配の方だったんですね…。わ、私は、大河知美って、いい、言います。も、元の世界では、こ、高校2年でした。どど、吃り癖があって…す、すみません……」
「気にしなくても大丈夫だよ。そんなに緊張しなくてもいいし、ゆっくり落ち着いて話してくれれば。よろしくね」
「…あ、ありがとう…ございます……こ、こちらこそ、よよ、よろしくお願いします…」
「で、ヒロシは?」
「……柳田弘史、21で向こうじゃ大学生だった」
高校生の大河知美ちゃんに大学生の柳田弘史ね。
パッと見だとどういう関係か分かんないな。
「そっか。接点無さそうだけど、二人はどうやってここに?」
「……そ、それは………」
「知美が車に轢かれそうだったところへ俺が突っ込んだんだよ…だから多分俺らも死んだことになってんじゃねーかな」
「…ごご、ごめんなさい……ひ、弘史さん………」
「だから知美が謝ることなんかねーんだよ。俺が勝手に突っ込んで、それで結局助けられなかったんだからな……」
…何だよ、弘史いいやつじゃん。
結果は残念だったけど、助けようとしたって事実は今ここにいる時点で証明されてるし。
「交通事故か…。暴走車だったとか?」
「いや、俺が見た時はもう知美が道路の真ん中にいてよ…知美も知美で猫助けようとしてたんだってよ」
「そうだったんだ…あ、じゃあもしかしてその猫もこっちの世界に来てたり?」
「あ、はい。わ、私のつつ、使い魔みたいに、な、なってます。い、今は出してません、けど…」
使い魔か、そんなのもあるんだな。
知美ちゃんも良い娘そうじゃないか、猫助けようとしてたとか…まぁ、こっちも結局残念な結果だったけど…。
「じゃあ、二人と一匹が転生者ってことか。ここに来てどれくらい経つ?」
「…どれくらいだっけ?知美」
「ええ、えっと…に、二ヶ月くく、くらいだと、お、思います」
「二ヶ月か…その間冒険者としてやってきたのか。そういえばもう一人、エルフの娘がいたけど…」
「ああ、ここに来てすぐ俺がナンパした」
一応こっちでも成功してたんだ…獣人以外はいけるってこと?
「こっちでも成功してたのか…ちょっとびっくり」
「あ…せ、成功したわけじゃなな、なくて、フ、フラムにおお、お願いして、パーティーをく、組んでもらってます」
「おい知美余計なコト言うなよっ!」
「すすす、すみませんっ!」
うん、やっぱり弘史だった…ダメだったんならやり方変えればいいのに同じ感じで姫達にもアタックしてたのか…。
「名前はフラムでいいの?」
「フルネームはフラムネシェラータ。精霊魔法のマジックユーザーだぜ」
「ゆ、弓のうう、腕前もす、凄いですよ」
「へぇ、精霊魔法のマジックユーザーで弓使い…流石エルフだな」
「ま、融通利かねぇ真面目ちゃんだけどな」
それは弘史のパーティーには欠かせないんじゃないか?でもストッパーにはなってないか…弘史が周りに迷惑掛けないようにするなら、やっぱり獣人を一人でもパーティーに入れた方がいいよな…。
弘史でもいいっていう獣人がいてくれればなぁ。
「とりあえず二人共俺と同じ漂流者だし、ここで会ったのも何かの縁だと思うし、これからよろしく。弘史はまぁ、最初あんなんだったけど…」
「…あんたの能力が反則級だってのは分かったよ。あれ、結構俺の全力だったんだぜ…それが無傷とか、あり得ねーだろ」
「あー、うん、俺のはね…ちょっと特殊だからな。まぁ勝ちは譲ったし、あれはあれで流してもらえると」
「…わーったよ、流してやるさ。別に俺が恥かいたわけでもねーしよ。んで、何か話あんだろ?」
良かった、こうしてちゃんと話すと全然まともじゃないか。
最初はやっぱり俺がこんな格好してるから見下されるっていうか、馬鹿にされるってことなのかな…だったら烈華絢蘭のみんなもこうやって話出来れば案外通じるのかも?
「うん、二人共今の状況は分かってると思うけど…」
「魔物の大群が来るってやつだろ?」
「そう、それ。で、さっき皇都から来たっていう漂流者パーティーと話したんだけど、これがまたクセのある連中でさ」
「あー、俺も少し話したぜ。あいつらどんだけやれるのか分かんねーけどよ、大した自信だったぜ、たった4人のくせに」
弘史と話しててもそうだったんだ。
やっぱり烈華絢蘭は単独で動いてもらった方が良さそうだな。
「ギルマスに漂流者同士協力してやってくれって頼まれたんだけど、多分あのパーティーとは無理だと思う」
「俺も無理だな、多分。あんな奴らと組むんならあんたの方がマシだぜ」
「…実を言うと俺もそう思ったりしてさ。向こうは向こうで頑張ってもらうとして、こっちも協力してやれないかって」
「わわ、私は、さ、賛成です。ひひ、弘史さんもそ、その方が、ふふ、負担もす、少なくなるとおお、思いますし…」
「負担って、知美とフラムのことかよ。バカ言うな、んなこと思った事もねーよっ。特に知美、お前にはな」
「…そ、そう…です、か…?……」
弘史がこう言うくらいだから、知美ちゃんもこれで結構強いってことか?だったらちょっと期待させてもらおうかな。
「向こうは4人、こっちは3人だけど、協力出来れば俺の目標も達成出来そうなんだけど…どうかな?」
「…なんだよ、その目標ってのは」
「あー、あんまり大きな声では言えないから…二人共ちょっと耳貸して」
「…は、はい……」
三人で顔を寄せて内緒話する形になった。
まぁ、周りが騒がしいからそこまで気にするほどでもないかもしれないけど、気持ちこっそりと、ね。
「あのな、この戦いで───(ボソボソっ」
「「っ!?」」
「おいおいマジか…それ、本気で言ってんのかよっ。相手が魔物ってだけで戦争だろ、これ…」
「でで、でもっ、もも、もしそ、それが出来たなら……」
「まぁ、俺なりに頑張ってみようかなって。俺一人でやればいいんだろうけど、そんな英雄みたいな真似はちょっとやりたくなくて…基本あまり目立ちたくないんだよ」
「ハッ!あんだけかわい娘ちゃん達囲っておいて目立ちたくないもクソもねーと思うけどなっ」
言いたい事は分かります…いや、でもホント目立とうと思ってこうなってるわけじゃないから、そこだけは誤解しないでほしいです…。
「そこについてはさっきも言ったけど、もう奇跡としか言いようがないんだよ…。あー、でもあれだぞ?弘史みたいに俺からナンパしたとかそんな事実はないからな?」
「チッ、そうかよ…ったく、ホントどーなってんだよ、この世界。いや、まぁでも、ケモミミっ娘達がいっぱいいるって時点で文句はねーんだけどよ…」
「お前ホント獣人好きなのな。でもそれで暴走するのはやめた方がいいぞ?姫達みたいに敬遠されるのがオチだって」
「…なんか納得いかねーけど、そうみたいだな…。そこはしゃーねぇとして、抑えられるかは分かんねぇな」
「す、少し、おお、落ち着くだけで、ち、違うとおお、思いますよ、ひ、弘史さん…」
「んーあんま自信ねぇなー。あんただって目の前にあんなケモミミっ娘ちゃん達いたらモフモフしたくなるだろ?」
…心当たりが多過ぎるくらいあるな。
じっくりってわけじゃないけど、少し触ったことはあるからな…あれは本当にいいものです。
こんなこと弘史に言ったらそれこそキレ気味に突っかかってくるな、間違いなく。
「……その気持ちはよぉく分かる。分かるんだけどそれを前面に出し過ぎなんだって、弘史は。向こうのノリじゃ通用しないってさっき分かっただろ?」
「…じゃあ、どーすりゃケモミミっ娘達をモフモフ出来るようになんだよ」
「それを俺に聞くのか…。逆に俺が聞きたいぞ、それ」
「あん?なんでだよ、あんたもうモフモフし放題じゃねーか」
ぶっ!はぁ?何でそうなるっ!そりゃ確かに周りから見たらもふもふパラダイスなのかもしれないけど、そんな気安く「モフモフさせてくれ」なんて言えるわけないだろっ!俺だってそう出来るならしたいわっ!って、いや違う違うっ!そうじゃないってのっ!
「何言ってんだよっ!そう簡単な話じゃないだろっ!」
「は?そっちこそ何言ってんだよ?アーネちゃんもシータちゃんもマールちゃんも、それにラナちゃんも、あんたの女なんじゃねーの?」
あ、盛大な勘違い…いや、そっか、弘史にはまだハーレムだって思われてるんだっけ……。
今更改めて説明するのもなぁ…あ、じゃあみんなのとこ戻ってちょっと試してみようか。
これでみんなに抵抗されるようだったら、もうハーレムじゃありませんって説明しよう…面倒だけど。
「あー、うん、そうだったそうだった。じゃあとりあえずみんなのとこ戻るか。さっきの話、そのつもりで二人もよろしくね」
「はは、はいっ!わ、私なりにがが、頑張ってみますっ!」
「俺もそのつもりで動いてみるわ。なんだかんだいってここの連中には世話んなってるしな」
「オッケー、んじゃ戻ろう」
二人共俺の話に乗ってくれたみたいで、うん、話して良かった。
後は俺が頑張るだけかな。
4
あなたにおすすめの小説
絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~
志位斗 茂家波
ファンタジー
想いというのは中々厄介なものであろう。
それは人の手には余るものであり、人ならざる者にとってはさらに融通の利かないもの。
それでも、突き進むだけの感情は誰にも止めようがなく…
これは、そんな重い想いにいつのまにかつながれていたものの物語である。
―――
感想・指摘など可能な限り受け付けます。
小説家になろう様でも掲載しております。
興味があれば、ぜひどうぞ!!
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。
シトラス=ライス
ファンタジー
万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。
十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。
そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。
おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。
夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。
彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、
「獲物、来ましたね……?」
下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】
アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。
*前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。
また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる