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第三章 来訪、襲来、ガルムドゲルン
#32 自信が持てない男
しおりを挟む「ったく、同じ漂流者だってのになんか納得いかねぇよなぁ」
「な、尚斗さんはどど、どうも私たちとは、ちょ、ちょっと違うみみ、みたいです、ね…」
「同じ漂流者でも差があるということか…」
弘史のパーティーと残された俺…いや俺も納得はしてないっていうか、これ絶対に創造神のイタズラとしか思えないんだけど…確実に俺で遊んでますよね?
「…何となくだけど、この世界に来て自分のステータス見た時から、おかしいなぁとは思ってたんだよ……」
「そういや尚斗のステータス、俺の鑑定スキルじゃ見えねーんだけど」
「あー、うん、隠蔽してあるから。ちょっと誰にでも見せられるような感じじゃなくて…」
黒歴史ぎっしり詰まってますので漂流者にはまず見られたくないです…。
「ふーん。ま、そんなチート持ってるくらいだからなぁ。けどぶっちゃけマジ羨ましいんだけど」
「…弘史はハーレム作りたいのか?」
「ハーレムっつーか、ケモミミっ娘ちゃんが欲しい」
「あー、うん、お前はブレないな…。二人はいいの?こんな事言ってるけど」
「わ、私はだだ、大丈夫です、よ。な、何があっても、ひ、弘史さんにつつ、付いていくって、き、決めてます、から」
「私も特には。ハーレムはともかくパーティーメンバーはもう少し欲しいからな」
へぇ…やっぱり二人には慕われてるんじゃないか?それなりに。
確かにパーティーとしてはもう少し人数が欲しいところだと思うけど。
「そっか…。いや、でも何でこんなことに……」
「何でそこで悩むんだよ?いいこと尽くめじゃねーか。ハーレム作って強くなれるなんてよ」
「いや、だから強くなれる前提が俺のハーレムっていうのがそもそもおかしいって話だよ…。知らなかったとはいえ姫達やリオにも悪い事したなって……」
自分達は何もしてないのにレベルだけ上がるとか、完全にパワレベじゃないか、それ……いや、そりゃ皆が強くなってくれるのはもちろん嬉しいけど、今回に限っては本人達の意思完全に無視してたからな…。
これからも一緒にパーティー組んでやってこうと思ってたんだけど、皆がどう思うか……。
「姫ちゃん達だって強くなったんだからいいんじゃねーの?っていうかよ、さっきなりかけって言ってたよな?ホントはまだハーレムじゃなかったんかよ?」
「あー、うん。パーティー組んだ時にな、いちいち周りに説明するのも面倒だから、ハーレムってことにしとこうかって…。姫達はそれでいいって言ってくれたから」
「そういうことか。まぁでもそんなチート付いてるくらいなんだから、もうハーレムになっちまってるよなぁ」
「待てっまだ俺は認めてないっ!」
「あ?よく分かんねーなぁ。何で認めねぇの?あんなカワイイケモミミっ娘ちゃん達とイチャイチャし放題なのによ。あ、尚斗、お前もしかしてホ「違うからっ!何言ってんのお前っ!!」……そうかよ。なら余計いいじゃねーか、認めたくねぇワケでもあんの?」
ったく、何言い出すんだ弘史は…俺は女の娘が大好きですよっ!まぁ、大好きだからこそハーレムとか作っちゃダメだろって思ってるんですけどね…物語の中じゃあるまいし、相手の事ちゃんと考えるとやっぱり複数関係持っちゃうのはやっちゃいけないんじゃないかと…。
仮に、もしそれでもいいって言う相手がいたとしても、俺にはそんな複数の相手と付き合うなんて器用なことは出来ないって…たった一人すらまともに相手出来なかった俺なんだから。
「理由っていうか、実際問題現実的に出来ると思うか?簡単にハーレムって言うけどそんな単純なものじゃないだろ?って俺は思ってるんだけど…」
「かぁーっ!尚斗っ、お前それでも男なのかよっ!ってかウダウダ考え過ぎだってのっ、あんなカワイ娘ちゃん達目の前にして何もしねーとか、同じ男として有り得ねーんだけどっ!」
「いや、何言ってんのお前、そこ一番考えなきゃダメなとこだろう!簡単に手出すとか有り得ないからなっ!」
「…まぁ二人共少し落ち着こうか。話聞いてるとヒロシは欲望に忠実過ぎ、ナオトは逆に慎重、悪く言えば臆病過ぎだと思うんだが」
「な、尚斗さんはたた、多分、も、元の世界でい、いろいろあったんじゃなな、ないんです、か…?」
「…まぁ、この歳だからね…。いろいろって程ではないけど、それなりにはあったというか……」
フラムの言う通り臆病になってるとは自分でも思ってる。
なけなしの勇気を出して何とか妻と一緒にはなれたけど…結局自分のせいで駄目にしちゃったし、また称号みたいな事になるのが怖くて踏み出せないだけなんだよ…次そうなったら確実に女性不信になると思う。
「そうか、元の世界での経験が理由なのか。それなら分からなくもないが。ただ、こちらの世界に住む同じ女性からして見ても、ナオトはかなり好感を持たれていると思うのだが…彼女達に」
「あ、それは…わ、私も思いました…」
「あんなん、傍から見たら同じ女じゃなくても分かるっつーの。おい、まさかそれすら気付いてないとか言わねーよな、尚斗よぉ」
「………」
確かに嫌われてはいないと思ってる、けど…俺の事が好きかどうかなんて、はっきり言われたわけじゃないし…。
ハーレムっていったって、一緒にパーティー組むうえでってだけの話だし、姫達は軽く本当にしてもいいとは言ってたけど、それだって俺が簡単にパーティーから抜けられないようにしたいってだけで、それが本当の好意かなんて分かってないし、そもそもそんな好かれるような自信無いんだってば…。
こんな俺だから、俺が好きなラノベや漫画の主人公みたいなモテモテでイケイケになんてなれるわけがないと思ってるし、それ以前にこんな中身イタいおっさんが主人公とか誰得だって話。
…ただ、せっかく転生したんだから、元の世界では手に入れる事が出来なかった、いや、違うか、手に入れてたはずなのに自分のせいで手放してしまった幸せを、今度は無くさないように…と思ってるだけなんだけど…。
「ともかくナオトはもう少し自信を持ってもいいのでは?嫌ってことではないのだろう?」
「それは…勿論そうだけど……」
「彼女達の好意を無下にするようなこともするつもりはないのだろう?」
「それも……そう、だけど………」
「ったく煮え切らねぇなぁ。向こうの世界で何があったか知んねーけどよっ、もうこっちの世界で生きてんだ、割り切っちまえばいいじゃねーかっ」
「……簡単に言うなよ…。弘史みたいに自信満々って、若い頃だったらまだしも、この歳で持つのはキツいんだって……」
「ハッ!バッカじゃねーのっ!お前今の姿鏡で見たのかよっ!なに中身に引き摺られてんだよっ!」
「ひ、弘史さん…そそ、そこまでい、言わなくても…。な、尚斗さんだってわわ、分かってるとお、思います、よ……」
こういうところも俺が好きなラノベとかだと肉体に引っ張られて精神も若くなったりしてたよな…何で俺はそうじゃないの?
実際身体は若返って動けるようにはなったけど、対人での接し方とか考え方とか、あまり変わってないと思う…。
「まぁ、ここでどうこう言ってても結局は彼女達次第だろう。ナオト、あれこれ考えずもう少し大胆になってみたらどうだ?まぁヒロシのようになるのは問題だが」
「おいフラム、どーいうこったよそれはっ」
「どうって、ヒロシのように欲望全開になるのは問題だろう、当然」
「ひ、弘史さん…そそ、その、それをぶ、ぶつけるのは、私だけにしし、した方がい、いいです、よ……」
「トモミも何を言っているのだ…まだ暴走しているのか?」
「えっ?あ、あれっ?わわ、私何言ってるんだろ……っ」
「…漂流者というのは皆こうなのか?正直過ぎだろう、全く……」
否定出来ません…基本欲望に忠実なのが俺達のいた世界の人間だと思うので…。
弘史も知美ちゃんも、そして俺も、類に漏れずそうらしい。
ただ、何となくだけど、こっちの世界に来てからその辺のタガが外れやすくなってる気がする。
環境が全く変わってしまったのと、チートを持ってるせいだろうか…。
とにかくフラムの言う通り、弘史みたいにならないよう肝に銘じておこう……。
4
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