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第四章 皇都グラウデリアへ
#06 ちょっとした約束と予定クリア
しおりを挟む解体が始まって暫く様子を見てたんだけど、壊塵洞の父娘は初っ端から全力だった…。
「「壊塵流解体術奥義!」」
『彩盡撃・壊!!』
『いるみな・おーばー・かてぃくしょんー!!』
あ、これもしかして今日中に終わるんじゃ?なんて思ったけど、そんな奥義連発なんて体力持つわけないかって…ならやっぱり必要だろうな、と。
「さて、それじゃ俺もちょっと準備しますか」
えーっと、これも身に着けられるものがいいよな…ディモルさんに渡すから、こっちもカティちゃんとお揃いの腕輪でいいか、サイズは大き目にしないとな。
無限だとやり過ぎだから、亀よりちょっとだけ多目に収納出来るくらいを想定して…創造、っと。
ポンッ
よし、出来た。
後は性能の確認だけど…まぁ、カティちゃんのも上手くいったし大丈夫だろ、多分。
「…ナオ、今何したん…?急に腕輪が現れよったけど…」
「ん?ああ、これ?今創ったんだよ。収納機能付きの腕輪。後片付け用にディモルさんに渡しとこうと思って。いつまでも俺が収納しとくわけにもいかないし」
「創ったって…ナオト、そんなコトも出来るの?」
「うん、まぁ、一応。何でか知らないけどスキル持ってるから」
「…本当にぃ~何でもぉありだぁねぇ……」
まぁこのスキルに関しちゃそうだよなぁ…だからなるべく使わないようにした方がいいかなって。
便利過ぎるし、楽しちゃいそうな気がするからな…乱用すると絶対堕落する自信あるよ俺。
単身赴任中もぶっちゃけニートだったしな…仕事はしてたけど休日はほぼ家に閉じこもってたし、必要最低限の対人接触と外出しかしてなかったからなぁ…。
こっちの世界に来てまでそんなのはもうご免だから尚更そう思う。
でも皆の為になら使ってもいいかな…喜んでくれるなら俺も嬉しいし。
「あー、後でみんなも何か欲しい道具あったら創ってあげるよ」
「えっ、わたし達にも…?」
「うん、言ってくれれば。あ、そうだ、これでリオの食事用に俺の魔「や……っ!…ダメ…っ……絶、対っ…いら、ない……っ!………」……あ、はい。そう…です、か……」
思いっ切り拒絶された…やっぱりあのやり方じゃないとダメなんですかね…。
いや、まぁ俺としては嬉…じゃない、ご馳走さまって感じだからいいっちゃいいんだけど…またあれをやる前に無心を取得するべきだとは思いますが。
「何でもええなら…みんなでお揃いのアクセサリーとか欲しいな…なんて」
「いいねぇーそれっ、ナイスよシータちゃんっ!」
「素敵ねぇ~それぇ。何がぁいいかなぁ~、ふふっ」
「やっぱり、こういうのは…指輪、じゃないかなぁ、なんて」
「いいなっ指輪!アタイはそれでいいぜっ!」
「………指、輪…………素敵……………」
「ワタシも賛成ー!んじゃナオト、お願いしてもいいっ?」
指輪か…しかも全員お揃いのとか。
まぁ、皆が欲しいって言うならいいんだけど、ちょっと照れくさいな…女性に指輪なんて、プロポーズするみたいだし…。
「あー、うん…。じゃあちょっと考えとくよ……」
「やったっ。ふふっ、ナオトさん、素敵な指輪、期待してますねっ!」
「う…あんまり期待されるとちょっと困る、かも……」
指輪のデザインなんて当然やったこともないし、俺がしてた結婚指輪だってそんなに凝ったデザインじゃなかったし…妻も俺もシンプルなのが好きだったからなぁ。
まぁ結局妻のは壊れて俺のは失くなったんですがね。
交換した時は永遠の愛を誓ったはずなんだよ…現実はやっぱりこんなもんですよね……。
と、また凹みそうだから深くは考えないことにして、俺なりに創ってみるか…時間あるときにでもゆっくりと。
「ナオがくれるもんならウチはどんな物でも構へんよ?せやからそんな気張らんと気楽に考えてな」
「そうだよね、どんな物でもナオトさんから貰えるんなら…うふっ」
「…ラナ、アナタねぇ…だったら最初から期待してるとか言わないの」
「あ、うん…ご、ごめんなさい……」
「いや、別に謝ることじゃないから…。出来るだけ期待に応えられるよう頑張ってみる…けど、期待外れだったらごめん」
「それこそ謝るこっちゃねーよ。ナオトからってのが一番重要なとこなんだからよっ」
そんなんだから適当になんか出来ないんだって…ちゃんと、気持ち込めて創んないと、な……。
今はまだいろいろごちゃごちゃしちゃってるけど、皆の事ちゃんと考えていくつもりだから、もう少しだけ待ってもらえると…。
「まだまだぁ~私たちはぁ始まったぁばかりなんだしぃ~、ナオちゃんのぉペースでぇいいんだからぁねぇ~」
「そーだねー、これからまだまだいろんな事あるだろうし、ねっ」
「わたしはもう何があってもナオトさんに付いていくって決めてますからねっ」
「………(コクっ……。……マスター…から、は……離れ、ない……よ…………」
「ウチだってそうや。これから先楽しみでしゃーないんやからなっ」
「アタイだってそーだってのっ。ナオトといると退屈しないで済みそうだしなっ!」
「みんな……」
ヤバい嬉しくて泣きそう…どうしてこんなに俺の事を、ってところは未だに不思議でしょうがないんだけど、それでもここまで言ってくれるとか嬉しい以外思えない…中身おっさんの俺にはあり得なかった光景が目の前にあるとか、幸せ過ぎて逆にちょっとコワいと感じるところもあったりするんだけど…。
向こうの世界だとこの状況で素直に喜べるわけがないんだよな…絶対からかわれてるか騙されてるかって勘繰るだろうから、美人局とかね。
JKがおっさんに惚れるとか、幻想でしかないと思ってたし…まぁ、実際にそういう人も居るんだろうってのは分かってるけど、俺には一生縁のない創作の世界の話だったしな…。
まぁ、そんなのは当然だってのも分かってるんですけどね、引き篭もり体質な時点で。
自分から動こうとしない奴にそんな幸運が降って湧いてくるとか、都合の良い話は空想でしかあり得ないって思ってますし。
そう考えると…こっちの世界に来てやり直そうと思って動いたからこその今の状況なのかな…。
いや、それでもこれは出来過ぎだよな、どう考えても。
やっぱりちょっとまだ信じられないよなぁ…上手くいき過ぎだって、こんなに可愛い娘っ子達に囲まれてるとか。
「…?どないしたん?ナオ」
「え、あ、いや…ちょっと、ね。みんながそう言ってくれて嬉しいなって…さ」
「そっか、ナオトもちゃんと嬉しいって思ってくれてるんだー。うん、よかったっ」
「んだよ、嬉しいんならもっと嬉しそうにしろって。誰かに抱きついたっていいんだぜ?もちろんアタイでもいーんだけどよっ」
「ドサクサに紛れて何言ってるのよアーネったらっ。ナオトさんに抱きつかれるとか、抱きつかれる…とか………うふふっ」
「ラーちゃん~……それはぁちょっとぉ…引いちゃうぅよぉ~……」
「うん、キモチワルイよ、ラナ」
「ちょっと気持ち悪いって何よリズっ!少しだけ、その、想像しちゃっただけじゃないっ!」
「ラナのは想像じゃなくて妄想だろーが。だから気持ち悪ぃんだよ」
「みんな酷くないっ!?」
「あははっ、冗談やって。ラナが乙女してるから、からかってるだけや」
「わ、わたしで遊ばないでっ!」
みんな笑ってる…やっぱりいいな、こういうの…。
一人でいると声出して笑うなんてこと無かったもんな…これからこんな感じでみんなと一緒に居てもいいんだって思うと、気楽で心地良くて皆の事離したくなくなりそうだ…。
「楽しそうですね、ナオト」
と、皆で和気藹々としてたらブリュナ様が声を掛けてきた…ちょっとはしゃぎ過ぎたかな?
「あ、すみません、こんな所ではしゃいじゃって…」
「何も悪い事などありませんよ。素敵な仲間ではないですか」
「ええ、本当に…。俺には勿体無いくらいです」
「良い出会いをしましたね。少しだけ…羨ましいです」
最後の方がよく聞き取れなかった…ボソっと独り言のように呟いた感じで。
「ブリュナ様…?」
「ああ、いえ、何でもありません。さて、後は領民達に任せるとして、我が家へ向かいましょうか」
「あ、はい、分かりました。と、その前に代表者へ一言伝えてきますので、ちょっと待っててもらえますか?」
「代表者ですか。それなら私も一緒に行きましょう。一声掛けておかなければ」
「了解です、では一緒に行きましょうか」
「ええ、行きましょう」
皆にディモルさんの所へ行ってくることを伝えてブリュナ様、ゲインダルさんと一緒に移動しようとしたら、何故かショーとクリス女史も一緒に付いて来た。
ショーは問答無用なんですけどね…いい加減下ろしてあげたらどうですかね、クリス女史。
流石にいたたまれなくなってきたよ…。
とは思うんだけど、クリス女史には逆らわない方がいいとどこかから声がするのでそのままディモルさんの元へ。
丁度休憩中だったみたいで話し掛けやすかった…多分奥義の使い過ぎなんじゃないかと。
「ディモルさん、お疲れ様です」
「ん?おぉ、ナオト…とブリュナ様っ、ど、どうされました…?」
「いえ、代表者の方に挨拶をと思いまして」
「そりゃご丁寧に…。いつの間にか代表にされてたディモルって言います」
「ディモルですね、分かりました。すみませんが解体作業の取り纏め、よろしくお願いします」
「あ、はいっ。きっちりこなしてみせますよ」
「頼もしいですね、大変かと思いますが領民達と上手く連携してやってください」
「その辺はご心配無く。お任せください」
周りを見た感じ皆それぞれ持ち場を決めて解体作業してるっぽいから、ディモルさんに任せておけば大丈夫だろうな。
「それと私からもいいかしら。解体作業と並行して素材の査定も行った方がいいと思うわ」
「あー、まぁ確かにそうだな…。分かった、そっちの連中にも俺から声掛けといてやる。それはいいんだがな、クリス…お前よぉ、いい加減ショーをぬいぐるみ扱いするのヤメてやれって言っただろうが…しかもブリュナ様の前だぞ?」
「失礼ね、ぬいぐるみ扱いなんてしてないわよ。それにこれはブリュナ様公認よ、何も問題無いわ」
クリス女史とディモルのおっさんは顔見知りか…まぁ、そりゃ当然か、ギルド提携の解体屋だもんな。
しかしディモルのおっさんも知ってたのか、ショーの扱い…ぬいぐるみってのはどうかと思うけど。
あとブリュナ様公認て…やっぱり馬車の中で何かあったな、これ…。
「ったく、ショーもいいのか?それで」
「あー、うん…もう諦めたよ……。あと僕から、もしかしたら魔石が複数あるかもしれないから、その辺も気を付けて解体してもらえる?」
「諦めたって…まぁ、お前がいいんなら何も言わねぇが。魔石の件も分かってる、そんなヘマはしねぇよ」
「うふふっ、これでますます堂々と出来るわっ。ブリュナ様、ありがとうございます」
「いや、うん、まぁ、仲が良いのは良い事ですしね…ははっ」
若干引き気味なブリュナ様…ショーもショーで諦めたって…ホント馬車の中でどんなやり取りがあったのか気になるわ。
とりあえず査定の件も魔石の件も伝えたし…査定についてはこの間俺のやつを査定してもらった素材屋の人達にでも頼むんだろうな…何かディモルのおっさんが代表に選ばれたのも分かった気がする。
顔が広いんだな…身体が大きいだけに?なんて…やべ、自分で言って寒くなった。
じゃ、じゃあ全部引っ括めてお任せするとして、あとはこれをディモルさんに渡せばオッケーかな。
「ディモルさん、はいこれ」
「ん?何だこれ」
「後片付けに必要な道具ですよ。収納機能付きの腕輪です。ここに放置しておくわけにはいかないでしょ?」
「っ!?このデカブツを収納出来るってのか!?」
「ええ、そのつもりで創ったから多分大丈夫かと。コイツ以上のやつは無理だと思いますけど」
「それで十分過ぎるんだがな…。けどいいのか?さっきもカティが貰っちまったばっかりだぞ…?」
「必要なものなんですから気にしないでください。あ、肉とかも腐らせずに保存可能ですから」
「そ、そうか…んじゃありがたく使わせてもらう。ありがとな、ナオト」
「これくらいどうってことありませんって」
腕輪をディモルさんに渡して引き継ぎ完了、これで全部お任せってことで。
別に面倒ってわけじゃないけど、俺が収納してると身動き取れなくなるからなぁ…日帰りクエストしか出来なくなるっていう。
「それじゃ後はよろしくお願いします、ディモルさん」
「おう、任せとけっ」
「では私達はこれで。行きましょうか、ナオト」
「はい」
よし、これで今日の予定は一つクリア、と。
次は領主宅への訪問か…ちょっと緊張するけど、それでもティシャやひぃに会えるならって、そっちの方が気持ち的に強いから大丈夫だろ…うん、楽しみだ。
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