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第四章 皇都グラウデリアへ

#07 ギルドに戻って

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 解体場所から元の場所、馬車が停まってる所に戻って来たら…何やら皆で盛り上がってた。
 あ、これあれか、メンバー会議開催してたのか?よく見るとシータが泣きそうな顔してるし…。

「みんなお待たせ…。えっと、シータ……大丈夫か?」

「ナっ、ナオぉーっ!みんなが…みんながぁ~っ!」

 って半泣きで叫びながらダイブしてきた。
 これは…相当こってり絞られたな…シータ以外の皆の顔ときたらもう、ニヤニヤニヨニヨし過ぎてちょっと引くレベルに至ってる…リオだけは相変わらずですが。
 あ、よく見るとちょっと頬が紅く染まってるな。


「いやぁ、有意義な会議だったねーっ」

「あぁ、ホントそれな。しっかしあのシータがまさかなぁ…くくくっ」

「夢のぉ中ぁだけじゃぁなくてぇ~、現実でもぉそうすればぁいいのにぃ~。可愛いぃシーちゃんがぁ見たいなぁ~、うふふっ」

「…いつかは、わたしも……うふ、うふふふっ」

「…………マス、ター……わたし、も……同じ、こと……し、たい…………」

 二人ほどトリップしてたりおかしな事言ってたりしてるのはスルーで。
 
 どうやら軒並み喋らされたみたいだな…当然俺の事も含めてだろうけど。
 まぁ、殆どというか全部俺のせいだからな…ごめんよシータ、って心の中で謝りつつ慰めようと、ダイブしてそのまま抱きついてたシータの頭を撫でてやった。

「あっ…ナオ……。えへへっ」

「ふーん…なるほどねぇー。夢の中でもそんな感じだったんだぁー……にひっ」

「かぁわいぃ~ねぇ~、シーちゃん~。ふふっ」

「おっ、早速現実でも実践しようってか?くはっ」

「あっ!ちゃ、ちゃうっ!み、みんながウチに根掘り葉掘り聞くからやろっ!?」

 そう言って勢い良く俺から離れたシータ。
 まぁ、あの面子に問い詰められたらもうどうしようもないよな…特にリズ、あとラナ辺りも執拗に質問攻めしてたんだろう…。

「もう許してやってって…全部俺のせいなんだから。ほら、もうここでの用は済んだから戻るよ。これからブリュナ様の所に行くんだから」

「はーい、じゃあ続きはまた今度ってことでっ。ところで…ブリュナ様の所ってなにー?」

「あ、そっか、リズとラナには言ってなかったっけ。昨日お誘いを受けたんだよ、領主のゲシュト様に」

「えっ、領主様の所に行くんですかっ?」

「うん、これからお邪魔するんだよ。弘史達も一緒だけどね」

 弘史達も一緒だから、一旦ギルドに戻ってから公爵家に向かった方がいいかな、リズとラナも送っていかないとだし。

「えー、いいなぁ…ワタシも行きたいー」

「わ、わたしも…」

 おっと、そう来たか…。
 二人ともそう言ってチラッとショーとクリス女史の方を見た。
 いや、流石にそれはあからさまじゃないか…?
 堂々とサボり宣言してるようなものじゃ…。

「…ふぅ……。まぁ、いいわよ。今日はいつも程忙しくはないし。フィルには私から言ってあげるわ。ただし、ブリュナ様がいいと仰るなら、だけどね」

「っ!?あの、ブリュナ様…」

 と、今度はブリュナ様の方を見てお伺いを立てる二人。
 クリス女史からオッケーが出るとは思わなかったけど…まぁ確かに今日は冒険者も後片付けに行ってて通常業務はあまりないだろうからな。
 で、多分ブリュナ様ならいいって言ってくれると思うんだよなぁ。

「勿論構いませんよ。大勢の方が楽しいでしょうし」

「やった!ありがとうございます、ブリュナ様ーっ」

「あ、ありがとうございますっ!」

 予想通りオッケーが出ました。
 これで今日はずっとメンバー全員一緒ってことになりました…いや、何も問題は無いというか、逆に嬉しいんですけどね、当然。

「何か増えちゃいましたけど、本当に大丈夫ですか…?」

「ええ、何も問題ありませんよ。それに全員ナオトの彼女なのでしょう?」


「「「「「かっ、彼女っ!?」」」」」


「いやっ!それは違っ……わないというかっ、何というかっ……」

 うぅ…はっきり答えられない、何て説明すればいいんだっ!?

「あの、ブリュナ様からは…そう、見えます、か…?」

「そうですね、先程の楽しそうに会話していた姿を見てそう思いました」

「ブリュナ様だから言っちゃいますけど、ワタシ達みんなナオトのハーレムメンバーなんですよっ、にひっ」

「ちょっ!リズっ!それ言うのはどうなんだよっ!」

 いくらブリュナ様だからって、わざわざ言わなくてもいいだろっ!?確かに事実なんだけどさぁ!それでもあまり広めたくないというか、俺の中ではまだ葛藤中だったりなんだりするんだよっ!

「そうじゃないかとは思っていましたが、やはりそうでしたか。いや、ナオトなら当然でしょうね」

「え、そこで納得しちゃうんですかっ、ブリュナ様っ!?」

「漂流者なのですからこうして惹かれるのも無理はないでしょう。どこも変だとは思いませんよ」

 うっ…やっぱりこっちの世界の価値観というか常識というか、そういう感覚がまだ分からない…。
 そもそもハーレム容認されてるところにすらまだ慣れないし。
 俺の好きなラノベの異世界もの定番だってのは分かってるんだけど、いざこうして目の前にすると困惑しちゃう方が強いんですけど…。
 性格的にラノベみたいな主人公って柄じゃない時点で当てはまらないからか?

 これ、いつか慣れるのかな?っていうか、慣れていいのかな…?

「そ、そうです、か…。いや、俺まだこっちの感覚に慣れてないみたいで……」

「直に慣れますよ、こんな素敵な女性達に囲まれてるのですから」

「…それ、慣れてもいいんですかね…?」

「いいも何もこちらの世界では常識ですからね。私もこう見えて婚約者は二人いますよ?」

「いや、ブリュナ様なら分かりますよ。だって…」

 王子様風イケメンだし。
 日本に居たら周りが絶対に黙ってないレベルのイケメン、間違い無く芸能界入りしてるんじゃないですかね、ホント。

「まぁ、ナオトはまだこちらに来て日が浅いみたいですし、徐々に慣らしていけばいいと思いますよ。その辺の常識も我が家で語り合いましょうか」

「え、いや、その話題はちょっと遠慮したいです…」

「そうですか?でもこれだけの人数ですから必然的にそうなるとは思いますけどね。さて、では行きましょうか。ナオトはどうしますか?」

「ですよね…。あ、俺達は一旦ギルドに戻ります。弘史達と合流してから向かいますので。ショー達もギルドに戻るよな?」

「うん、当然戻るけど」

「じゃあ一緒に戻るか。送るよ」


「「「「「「えぇ~!」」」」」「……ぇぇー………
」」


 …何故そこで残念そうにするかな君達は…。
 目的地同じなんだから送ってっていいでしょ、ブリュナ様に送ってもらうと寄り道になるんだし。

「送ってもらえるのなら助かるけど…彼女達のその反応は気にしなくてもいいのかしら…」

「えーっと…多分、大丈夫かと……」

「じゃあお願いしようかな…よろしく、ナオト君。ではブリュナ様、僕達もここで」

「分かりました。来てもらって助かりました。フィルに宜しくお伝えください。では、ナオト達は後程我が家で」

 ということで、ブリュナ様とゲインダルさんは馬車で帰っていった。
 そういやゲインダルさん、一っ言も話さなかったな…戦場じゃないと話さないのかな?

 ともあれ、俺達もギルドに戻るとしますか。

「よし、じゃあ俺達も…って、おいぃっ!」

 ショーとクリス女史がいるにも関わらず、ここに来る時と同じ状態にしてきたよっこの娘っこ達はっ!

「えっと…何それ、ナオト君……」

「いや、これは「今から使うスキルはこうしないとあかんのやっ!」「そうそうっ!」……………」

 皆の中ではもうこれ確定させちゃってるのね…来る時も思ったけど傍から見たら絶対変だってこれっ。

「…面白いわね、あなた達。ふふふっ」

「で、僕達はどうすればいいのかな…?」

「…ハァ……。えっと、じゃあマール、ちょっと手だけ前に出させて…」

「むぅ~…仕方ぁないぃですねぇ~……」

 何でそんなに嫌々なんだよ…じゃないとショーとクリス女史が触れるとこ無いじゃないか…。
 マールをしがみつけたまま右手を前に伸ばしてここに掴まってもらうことにした。

「ショー、俺の手に掴まって…。多分それで大丈夫だと思う」

 クリス女史に抱っこされたままだし、直接俺に触れてなくても多分大丈夫じゃないかなぁ…って。

「これでいいの?」

「うん、それ離さないでね」

 クリス女史がショーをだっこしたまま俺に近付いて、俺とショーが握手した形になった。
 いや、ホントこれ変だって!

「はい、じゃあ行くよ…転移!」

 シュンっ!












 ──全員無事ギルド裏口、行きに転移した時の場所に戻って来た。
 間接的でも繋がってれば大丈夫だって確認出来たから、次やる時は皆手繋ぐだけでいいだろっ!

「…え?裏口…?」

「転移スキルですか…初めて体験しました」

「いや、だから感想は離れてから言ってください…」

 何で皆すぐ離れないんだよ、ショーもずっと握手してなくていいんだってば、俺はもう緩めてるのに…。

「んーっ、これやっぱりいいねぇー!」

「だろっ?これ使う時はもうこーじゃねーとダメなんだよっ」

「……うふっ、ナオトさんの背中………うふふふっ」

「………気持、ち…いい…………」

「ほんまこれええなぁ…ん~っ、ナオぉ~っ!」

「ショーちゃん~っ、手ぇ離してぇ~っほらぁ~っ!」

「だからもう着いたんだってばっ!」

 いや俺も気持ちいいんですけどねっ、いろいろとさぁっ!皆から容赦無く柔らかいモノ押し付けられてますからねっ!
 けど余韻に浸るのは程々にお願いしますっ頼むからっ!!

「もーナオトはせっかちだなぁー…じゃあ、はい、みんな離脱ー」

 またリズの一声で皆離れてくれた…やむなく感丸出しで。
 俺的に喜んでいいのかな…これ。
 でもやっぱり変だって、この人数が一人にくっついてるのって。
 これで人前になんか転移した日にゃ、変人集団認定間違い無しだろ…。

「ねぇみんな、やっぱこれ止め「「「「「ない(ぃ~)っ!!」」」」」「や……っ!」………えぇー…………」

「…ナオト君もそこそこ苦労してるんだね……」

「いや、まぁ、苦労ってほどじゃ無いんだけどね…正直全く悪い気しないし。むしろ気持ちいいし」

「ならいーじゃねーかっ!ぜってーヤメねぇかんなっ!」

「そーだそーだっ!やめる理由が無いぞー!」

「「「「うんうん(~)っ」」」「……(コクコクっ………」」

 そこまで力一杯否定する意味がよく分からないんだよ…変人集団と認定される前に止めた方がいいんじゃないかと思うんだけどなぁ…。

「…分かった、分かりましたよ。みんながそれでいいならいいです……。ほら、中入ろう…」

「…やっぱり面白いわね、あなた達。ふふっ」

 クリス女史に笑われながらギルドの中に入った俺達…ほら、やっぱりおかしいんだってっ。



「ああ、皆お帰り。ご苦労様」

 受付カウンターの中にフィルさんが居て俺達を出迎えてくれた。
 カウンター内にギルマスが居るとか、何かあったんだろうか?普段はあの書類の山に埋もれてると思ってたんだけど。

「おう、尚斗、ごくろーさんっ」

「どど、どうも、尚斗さん」
 
「お疲れ様」

 と、受付カウンター前から弘史のパーティーの皆が挨拶してきた。
 あぁ、フィルさん弘史達の相手してたのか、なるほどね。

「弘史達ももう来てたのか。待たせたか?」

「いんや、そんなに待ってねぇよ。それにギルマスの相手してたしよ」

「昨日の最後の戦いについて少し話を聞きたくてね」

「それなら良かった。それじゃ全員揃ったし早速行くか」

「チーフ…」

「ええ、分かってるわ。フィル、リズとラナも領主様の所へ行くことになったから。いいわよね?」

「ん?ああ、クリスがいいのなら構わんが…」

「今日は大丈夫でしょう。窓口もこの有様だし」

 クリス女史の言う通り、弘史達以外窓口には誰も居なかった。
 カウンター内の他の受付嬢も暇を持て余してる感じだし。

「そうだな、分かった。では二人とも、失礼の無い様にな」


「「はいっ!」」


 フィルさんからも許可貰えて、これで堂々とサボ…あ、いや、領主様の所へ行ける、と。
 二人とも嬉しそうだしこれでいいのか、俺も正直なところ嬉しいし…。


「リズはともかくラナちゃんも行くのかぁ。そりゃいいなっ!」

「ちょっとヒロシっ、ワタシはともかくって何よっ!」

「お子様はいい子にしてお留守番してた方がいいんじゃね?」

「相っ変わらずワタシの扱いヒドいのねっアナタはっ!まぁ、でもいいよ、もうヒロシとは終わりだからねっ!」

「あー、尚斗の専属になるんだっけか。尚斗もいいのかよ?こんなお子様が専属で」

「文句の付けようが無いけど?」

「ナオト…あーもぉーっ!」

 皆が居るのも気にせず俺に飛び込んできたリズ、ちっちゃいから余裕で受け止められるからいいんだけどさ。
 めっちゃ嬉しそうな顔してるし…。

「ホントもうそうやって喜ばせてくれるんだから…っ」

「ちょっとリズっ!こんな所で何してるのよっ!」

「そっ、そうやっ!嬉しいんはよう分かるけどっ!」

「リズっ!お前が一番そういことやっちゃダメなんだっつーのっ!」

「…なに、お前やっぱロ「違うからなっ!」…どこが違うんだよっ」

「ちっちゃい娘は愛でたくなるだけだ」

「それのどこが違うってんだよっ!」

 無意識にちゃんとリズを抱き上げてお互いに頬ずりし合ってました。
 やっぱりちっちゃい娘は可愛いなぁ…って、違う俺何やっちゃってんのっ!?無意識コワいっ!?

「ぜ、全然違うだろっ!こっ、これは可愛がってるだけだよっ!」

 こ、これはその、ちっちゃい娘を愛でたくなる俺なりの愛情表現であって、そういう目で幼女を見たことは一度も無いんだからなっ!娘が生まれてからは特にっ!俺なりに愛情注いでたんだよっ。

 …結局上手く出来なかったけどな……いや、でも家族の中では一番娘が俺に優しかったから、少しは伝えられたんじゃないかと思いたい…。


「…いくら人が少ないからって、ここで騒ぐのはどうなのかしらね…?あなた達」


『『『『『『っ!?』』』』』』


 周りの温度が急激に下がった…。
 あ、これ、知ってるぞ…初めてフィルさん達に呼ばれた時、こんな感じになった…よな……。

「クク、クリス、お、落ち着きたまえ、これくらいなら今日はまだ大丈夫だろう…」

「…フィル、こ・こ・は、どこなのかしら?」

「う、受付、カウンター…内……だな………」

「そうよね。それで?ここは騒いでいい場所なのかしら?」

「いや、まぁ、それは、だな……」

 ヤバいやっぱり皆コワいらしい…ガタガタ震えだしてる人もいる…特にフィルさんだけど。
 あーもー弘史が余計なコト言うからこんなことにっ!

「クリス、今日くらいいいじゃないか。こんなの騒いでる内に入らないよ。それに、僕だっているんだけど?」

「え、あ…。ショ、ショーちゃんがそう言うのなら…そうね、これくらいなら何でもないわよねっ」


 ……え、あれ?それで治まっちゃうんですかクリス女史っ!?
 まさかここのギルドで一番上なのはショーだったとか…え、この世界、ちっちゃい子の方が優位なの?
 
「というわけだから、みんな行っておいでよ。フィルも言ってたけど、くれぐれも迷惑掛けないようにね」

「あ、うん、分かった…行ってくるよ……」

 まさにこの場を丸く収めた神の一声、俺の中でこのギルドのトップが入れ替わった瞬間だった…。


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