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第四章 皇都グラウデリアへ

#23 予期せぬ再会

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‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


「失礼、そこの麗しいお嬢様方」

「大変お美しい方々がお揃いですな」

「その流れる様な毛並みは…ヴァンフィルド侯爵家縁の方でしょうか」

「あ、いえ、その、ウチは…」

「そちらのお嬢様もまた麗しい…純白のドレスにその漆黒の耳がよく映えておられる」

「ふぇっ!?そ、そんなぁことはぁ……」

「皆様、その辺で。本日の主賓は子供達ですので」

「その通りです。また後程ゆっくりと」

「そうでしたな、いやこれは失礼を。あまりの美しさに声を掛けずにはいられませんでした。失礼次いでにどちらのご令嬢かお伺いしても?」

「私、シャムルファータ・ソル・グリュムセリナと申します。本日は都合により両親に代わりこの場に参加しております」

「私はナーミナリニィ・ルナ・リリエンノルン、同じく両親の代理として参加しております」

「おお、グリュムセリナ侯爵とリリエンノルン伯爵の御息女でしたか。では本日の主役はこちらの…」

「はい、私達の妹になります。もう一人ガルムドゲルン公爵家からも来ております」

「なるほど。いやはやこちらも可愛らしいお嬢様方で。そちらはどちらのお嬢様ですかな?」

「えっ!?ワタシっ!?ワっ、ワタシは、その…っ」


「「「「「(ぷっ、クククっ)」」」」」



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 人だかりの中心でどうやら質問攻めにあってるらしく、皆タジタジになってた。
 リズに至っては今日の主役と勘違いされてて…皆笑いを堪えてるのがバレバレだった、俺もそうだけど。
 弘史なんて今にも大爆笑かましそうな顔してるし。

 いやしかしこれ、人だかりが出来るのも納得だった…皆見事に着飾ってて、ただでさえ美少女だったのが更に輪をかけて美少女度大幅アップしてる。
 あのアーネですらお姫様になっちゃってるし。
 っていうか、皆美少女過ぎて近寄り難くなってる…この場に一番相応しくないのは間違い無く俺じゃなかろうか。

 なんて自信無さげになってたら、ブリュナ様が人だかりの中に突っ込んでいって皆をこっちに引っ張って来た…そのタイミングでホール内がざわつきだし、どうしたんだろうと見回してみたら、その原因がホール正面の壇上だと分かった。

 壇上に現れた数人、恐らくあれが皇族なんだろう、ホールに居るほぼ全員が壇上に向かって会釈してる…俺も慌ててそれに倣ったんだけど、弘史はそんなのお構い無しで直立不動だった…お前なぁ、流石にこの国のトップにはそれなりの礼は尽くさないとダメだろう、と俺は思うんだが…。

 壇上に全員出揃ったところで皆顔を上げたから、俺も同じく顔を上げて壇上を見たら、顔見知りが4人居た。

 なに、あいつ等国賓扱いなの?いくら漂流者でお抱えっていってもその待遇はちょっといき過ぎなんじゃないか?って、まぁ別にあいつ等がいいんならいいんだけどさ。

「アイツ等、あんなトコにいやがって…何様だっての」

 弘史もどうやら俺と同じように感じたらしく、ブツクサ零してた。
 でもちゃんと皇族相手に上手く付き合えてるんなら問題はないか…余計な事してこの国滅茶苦茶にするのだけは勘弁願いたい。


 その4人の他、壇上には皇王とその后二人、今の俺や姫達と同じ位の年頃の男女、側近と思われるナイスミドルなおっさん、そして男の子と女の子がいる。
 その子達も今日の主賓っぽい年頃だな。
 後は端の方に騎士が一人いる、一応護衛だろうか。
 あの4人がいるなら必要なさそうな気もするけど。

 しかし…皇王って意外と若いのね、三十代くらいじゃないか?もっとこう、王様って感じの髭を生やしたご年配の方を想像してたんだけど。
 お后の二人も若く見えるし、美女だし…この世界、ホント美男美女率高くて泣けてくる。
 所詮はイレギュラー、俺なんか居ていい存在じゃないって感じで凹む…。


「おぅオマエ等!よく集まってくれたっ!今日はオマエ等自慢の息子娘の披露会だっ。この機会に大いに自慢しまくって親睦を深めてくれ!勿論俺も含めてなっ!」


 …なんて豪快な挨拶。
 そっかー、この国の主ってこういう人なのか。
 周りの貴族達はこれどう思ってるんだろうか…と、近くに居た貴族達の会話が耳に。


「相変わらずですな、陛下は」

「お若いのですからこれくらいの勢いがなくては」

「前皇王の血も色濃く受け継いでいますしね」


 といった感じで、これはこれで有りらしい。
 まぁ、如何にも王様ですって上から目線じゃなく、変に気取ったりもしてないから、逆に取っ付き易いかも…王様に対してそれはどうかと思わなくもないけど。

 この挨拶で皇王含めお披露目会の開始となった。
 俺はどうすればいいのかとまごついてたら、ひぃとティシャが俺の手を握って何処かへ連れて行こうとしてる…そこはブリュナ様やお姉様なんじゃないのかと。


「ナーくん、みんなのところに行くよーっ」

「ナオトお兄さま、付いてきてもらえますか?」

「えっと…俺なの?ブリュナ様とかお姉様達じゃなくて」

「ふふっ、ナオトさん、妹達の好きにさせてあげてもらえますか?」

「今日は特別ですから。私からもお願いします、ナオトさん」
 

 ひぃとティシャ、更にはシャムさんとナミさんにまでお願いされちゃ、腹を括るしかないか…ま、ひぃ達にお願いされた時点で断るとか出来なかったんですが。
 ただ、何をどうすればいいのかさっぱりなんだけど、それでもいいのかなって…。

「分かりました、俺でよければいくらでも付き合います。けど、何をすればいいのかよく分かってないんですが…」

「ティシャとヒナリィに付いていてもらえればそれで。後は適度に交流するだけですよ」

「そうですね、特別何かをするということはありませんから」

 あ、本当に付き添いなのね…それならまぁ、何とかなる…かな?
 子供達メインだろうし、じゃあ俺も目一杯愛でてこようか。

「了解です、それなら俺でも大丈夫かと」

「では二人の事、よろしくお願いいたしますね」

「ってことは、俺はフラウと一緒か?」

「そうですわ。ヒロシお兄さまもよろしくですわ」

「りょーかい。んじゃ行きましょうか、お嬢様」

 そう言ってフラウに手を差し伸べる弘史、割とフラウのこと気に入ってるんじゃないか?
 フラウはもう弘史のことお気に入り登録済みみたいだし。
 俺も人の事は言えないけどさ。

「ウチらはどないすればええの?」

「そうですね、あまり大人数で動くのも少し大変でしょうから、一人…いえ、二人ほどナオトさんと妹達に付いていってもらえますか」

 皆いっぺんにゾロゾロ歩き回るのも確かに変だしな…シャムさんの言う通り二人くらいなら大丈夫かな。

「二人か…。誰が付いてく?」

「ずっとじゃなくて交代で付いていけばいいんじゃないー?」

「そうだぁねぇ~、それでぇいいんじゃないかぁなぁ~」

「それじゃ、最初は誰?」

「あー、んじゃアタイが行くわ。もう一人は…シータにすっか」

「ウチとアーネ?大丈夫かいな…」

「付いてくだけなんだから大丈夫だろ……多分」

 話し合いの結果、初めはアーネとシータが付いてくることに。
 弘史の方は知美ちゃんが付いてくるみたいだ。

「ひぃ、ティシャ、お待たせ。んじゃ行こうか、とりあえず付いてくからどうぞお好きなように」

「うんっ!じゃあ行ってくるねーっ」

 残った皆に手を振りティシャと一緒に俺の手を引いて歩き出したひぃにされるがまま付いていく俺。
 アーネとシータがそんな俺の後を付いてきて、弘史とフラウも俺と同じようにって思ったら、ちゃんと弘史がエスコートしてるみたいにフラウの隣で腕なんか組んでる。
 お前それちょっとカッコ良すぎじゃないか?ズルいぞっ。
 フラウなんかめちゃくちゃドヤ顔して喜んでるし…。

 少し、いやかなり悔しい思いをしながら、ひぃとティシャに付いていったら、そこには5,6人で固まってる子供達がいた。
 ひぃがなんの躊躇いもなくその集団に突っ込んでいって、気さくに声を掛ける…うん、まぁ、ひぃらしいっちゃらしいか。

「ごきげんようっ。わたしたちもまぜてもらえるー?」

「ヒナリィ、初めてお会いするのにそれはないでしょう…。まずは名のらないと」

「あっ、そうだねー、へへっ。わたしはヒーナリナリィ・ルナ・リリエンノルン、ヒナリィって呼んでねっ」

「わたくしはティシャルフィータ・ソル・グリュムセリナともうします。ティシャ、とお呼びください」

「わたくしはフラウシャッハ・テラ・ガルムドゲルンですわ。フラウ、とお呼びくださいな」
 
「わたしたちはガルムドゲルンから来たんだー。あなたたちは?」


 そんな感じで子供達同士の交流が始まった。
 俺はといえば楽しそうに会話する子供達を、うんうんやっぱり子供達は可愛いなぁ、なんて思いながら、多分ニコニコして眺めてるように見えてただろうな、と。
 決してニヤニヤではない…はず。

 と、交流していた子供達の中の一人が俺達の方を見て疑問を投げ掛けてきた。

「ヒナリィとティシャは耳としっぽがないんだね」


 …はい?


「お母さんはふさふさしてるのにね」


「「え?」「は?」」


 ぶっ、そういうことかっ。
 シータもアーネもびっくりしてる。
 いやいや違うからね、君の勘違い…。

「あー、うんっ、わたしたちはねー、パパににたんだよーっ。ねっ、アーネママっ!」

「ふふっ、そうですね。わたしもほしかったんですけど…ね、シータお母さま」


「「マ、ママっ!?」「お、お母さまっ!?」」
 

 こらこら、二人共悪ノリし過ぎだって。
 アーネとシータもあたふたし過ぎで折角のお姫様っぷりも台無しだよ…まぁそれでも可愛いのは変わらないんですが。


「二人ともあんまりからかっちゃダメだって。こういうのは慣れてないんだから、俺達は」

「えへへっ、ごめんなさーいっ」

「少しおふざけがすぎました…ごめんなさい、ふふっ」

 そう言って本当の事を他の子達に説明して納得してもらったら、今度は漂流者ってことで俺と弘史が標的に。
 皆に興味津々の眼差しを向けられて、ちょっとだけタジタジになるも、ひぃとティシャ、それにフラウは自慢出来て少しドヤってる感じだったから甘んじて相手をした…けど、やっぱりこうやって子供達と接するのは悪くないというか、寧ろ楽しいし嬉しくなってしまう。
 貴族様の子供達だからか、はしゃぎ方がお上品というか、元の世界の子供達とはまた違った感じでいいものです。
 すぐ手出してくる悪ガキ相手にするのも嫌いじゃないんだけどね。

 それからお嬢様達の赴くままあちこち場所を移動して交流していった。
 途中でアーネ、シータはラナ、リズと交代したんだけど、やっぱりというか必然というかリズは子供達の交流の輪の中に入れられた。

 この時にはもう弘史は大爆笑してたね、俺とラナは何とか頑張ったけど無理でした、大爆笑ってほどじゃないけど普通に笑っちゃったよ。
 リズ本人は相手が子供達だったからか全然気にしないで自然にその輪の中に溶け込んでたけど。
 それはそれでスゴいとは思うんだけど、いいのかそれで?って思ったりもして。

 その後、ラナ、リズがマール、リオと交代した時に…それは起こった。


 ひぃ達にまた連れられて移動してた時、ふとすれ違った家族がいた。
 頭に角を生やしてたから、人種じゃないのは一目で分かったんだけど、リオみたいな竜人の角じゃなくて、もっとこう、悪魔っぽい巻角だったから竜人ではないんだろうなって。
 そんな風に思ってたら、相手の方から話し掛けてきた…俺じゃなくて、リオを見て。


「…おや?ユーは確か……あぁ、リーオルと呼ばれていたね」

「っ!?…………どう、して…………こん、な…ところ、に…………」


 ん?相手はどうやらリオの事を知ってるみたいだけど…なんかリオの様子が少し変だ。



「…………烈魔、王………………」



 ………………え?



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