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第四章 皇都グラウデリアへ
#35 お迎えあとに夕食を、みんなで
しおりを挟む3人のお迎えはさっき(って言っても寝ちゃってたからそれなりの時間経ってるけど)屋敷に連れて来た時と同じ、リズ、ファル、ウェナの順で回った。
迎えに行った後それぞれの家に、リズとファルは職員寮で、とりあえずすぐ必要そうなものと大き目な荷物だけ俺の無限収納に突っ込んできた。
残りは後でぼちぼち持ってくるってことにして。
で、ウェナは家族と一緒に住んでるみたいだから、先にリズとファルだけ屋敷に送っていこうとしたら、一緒に付いてくるらしい。
何で?って聞いたら、多分それでスムーズに事が運ぶと思うって。
逆に面倒な事になりそうな気がするんだけど…リズのせいで。
これ絶対また面白がってるだけだよな…多分。
ノルチェシェピアから皆で歩いて数十分、ウェナの実家に着くと、そこは花屋さんだった。
ちょっと意外、料理得意そうだからそっち関係かと思ってたのに。
「ただいまーっ。あれっ?お姉ちゃんだけ?」
「おかえりウェナ。父さんと母さんは自宅の方よ?」
中に入るとウェナのお姉さんだけで、両親はどうやら奥の方の自宅に居るらしい。
ウェナは割と元気っ娘な可愛い系、まぁちょっとおっちょこちょいというか、余分な一言をポロッと溢しちゃう、それも含めて可愛いんだけど、お姉さんはというと綺麗な感じの美人系、ウェナを大人しくして落ち着いた雰囲気にさせたらこうなります、みたいな。
姉妹だし当然顔も似てるからそう見えてしまった。
花束を持ってる姿がとてもよく似合う、花屋さんが天職なんじゃないかと思えるくらい素敵なお姉さんだな…。
「こんばんは…お邪魔します」
「こんばんは。ここがウェナ様のご実家なんですね」
「ジィナ、おひさー」
「あら?リズじゃない。珍しいわね、どうしたの?」
なんだ、リズはウェナのお姉さん、ジィナさんと面識あったのか。
それで一緒に付いてきたってわけね。
「んとね、ウェナ貰ってくからー」
「……はい?」
おいそれいろいろとすっ飛ばし過ぎだろリズっ!
どこがスムーズなんだよっ!
「ちょっとリズっちゃんっ、それじゃ分かんないよーっ」
「そう?ナオトが居るんだからこれで分かるでしょー?」
「いや俺が居たって分からないだろそれっ!」
俺が居たとしてもこんな人数で訪ねてきていきなり貰っちゃうとか言っても何の事だかさっぱりだろう、どう考えてもっ。
「えっとリズ、それってつまり…そういうこと?」
「うん、そゆこと。ジィナ先越されちゃったね、ウェナにー。あ、それとワタシ達も一緒だからっ、にひっ」
「私達も…って、リズも、そこの美人なお姉さんも…?」
「そうそう。まぁ、まだ他にも居るんだけどねー」
あれ?何かこれで分かってるっぽい?
何でこれで分かるんだ…俺がくださいとか言うならまだしも。
「…ちょっとウェナ、どういうことなの?」
「ええと…まぁ、いろいろとありまして…。気付いたらそーゆーことになっちゃってましたー…みたいな?」
「…つまり、ウェナがその方に惚れちゃうような出来事があって、お相手の一人として認められた、と」
「うん、そうっ!さっすがお姉ちゃんっ」
ちょっとこのお姉さんスゴいな…ウェナのその説明でそこまで分かっちゃうとか。
やっぱり姉妹だから?それともそういう系のスキル持ってたりするの?もしかして…。
「それでその報告に来ただけなの?」
「ううん、今日からこのお兄さんと、あと他のみんなと一緒に住むことにしたから、荷物を取りに来たんだよー」
「みんなと一緒にって…そんな簡単に言ってるけど、大丈夫なの?」
「大丈夫よジィナ。ワタシ達全員で住んでもまだまだ余裕あるくらいの家だから」
全員で確認して決めたことだし、リズの言う通り人数的に余裕で耐えられる広さなのは事実です。
元貴族邸だから当たり前だけど。
「ってことだからお姉ちゃん、やっと今の部屋一人で使えるようになるよーっ」
「…それ、私がウェナに言わないといけない台詞よね……」
「ジィナ、どんまいっ」
「リズにまで先越されるなんて思わなかったわよ…。小さいくせにちゃっかりしてるんだから…まったく」
「えっと…ジィナ、さん?とリズはどういう関係…」
「ジィナでいいわよ。ええと、ナオトさん、でしたよね」
「あ、うん。俺もナオトでいいよ」
「ワタシとジィナは同級生よ?ミルティシア学園のね」
「あなた本当にあの頃と変わらないんだから…むしろ縮んだ?」
「さすがにそれは無いと思うけど…どうだろ?あ、でも胸は確実に大きくなったよー」
「それは見たら分かるわよ。何よその凶器…まさかそれでナオトのこと「ジィナちょっと待って!」……言わせないってことはそうなのね?」
うっ、墓穴掘ったか…って違う違う!
確かに凶器だと俺も思うけどそれでどうこうされたわけじゃないからっ。
……少しはあったけど…転移の時とか風呂の時とか……。
だからってそれだけでリズを見てるわけじゃないから!
「それがねー、ナオトってばおかしいんだよ?漂流者なのにまだ誰にも手出してこないんだもん」
「そう、漂流者なのね…なら納得だけど、確かにそれは珍しいわね」
「いや、だからその漂流者ってだけでそうするのが当たり前みたいなのって、この世界じゃ常識なのっ?」
「「「うん」」「そうね」「そうですね」」
「………」
おい何やってるんだ先行漂流者。
そんな常識広めるとかもうちょっとやり方ってもんがあるだろう…好き放題やりやがって。
どんだけ欲望全開なんだよ…。
まぁ、同じ男として分からなくもない、というか分かってしまうけどさぁ。
こんな可愛くて美人な娘達で溢れ返ってる世界なんだし、黙ってる方が無茶ってのは痛い程理解出来ますよ。
そうするとやっぱり俺が異端なんだろうか…。
「まぁ、事情は分かったわ。それじゃ荷物持っていきなさい。間違って私の物持っていかないでよ?」
「はぁーい!それじゃお兄さん、ちょっと行ってきますねーっ」
「あ、ウェナ。俺の収納使わなくても平気?」
「収納スキルあるんですか?ってそうですよね、漂流者ですもんねっ。じゃあ手伝ってもらおうかなー」
「…私の部屋でもあるんだけど…まぁしょうがないわね。いいわ、いってらっしゃい」
あ、そういえば年頃の女の娘の部屋なんだっけ…リズとファルの部屋には普通に入っちゃってたな。
二人共特に気にした様子も無かったし…。
「うんっ!じゃあいこっ、お兄さんっ」
そう言って俺の手を引いて奥の自宅の方へ連れてってくれるウェナ。
部屋に向かう途中、ウェナの両親と出くわして挨拶しました…そういうことなんで娘さん大事にしますって。
ここでもやっぱりひぃやティシャの両親と同じく喜んでお願いされたけど。
向こうの世界の常識とホント違って戸惑う…。
ついでにジィナもどう?とか言ってくるし。
いや、ついでって…流石にそれはどうなんですかね?そんなに優良物件とか思われちゃうわけ…?漂流者ってだけで。
まぁそれ以前にこれ以上は増やさないよう俺の中では決めてるから。
ホント今の皆で十分過ぎるくらい幸せなんですよ。
ウェナもウェナでお姉ちゃんに庭の手入れとかしてもらったらいいんじゃない?とか言ってくるし。
庭か…確かに庭師とかも必要なのかな…?
って、いや、それくらいは俺がやるべきだろう、うん。
何でもかんでも人任せにするとか、それじゃ本当に貴族様と変わらなくなっちまう。
俺は冒険者なんだから、それに自分でやれそうな事はちゃんとやるようにするって、これも決めてたことだし。
とにかくその話は適当に回避して、ウェナの部屋に行って荷物を全部収納へ、ウェナはリズやファルと違って全部持っていくことにしたみたいで、綺麗に残さず収納へ突っ込んでいってた。
これで迎えに来た全員分完了したから、ウェナの両親とジィナに挨拶して転移で屋敷へ。
ジィナの目の前で3人に引っ付かれて、呆れたような羨ましそうな、そんな複雑な表情を浮かべてた気がしたのは俺の勘違いで済ます。
屋敷に戻って来たら、タイミング良く夕食の準備が終わるところだったみたいで、着いてすぐ全員揃っていただくことが出来た。
人数が人数だから結構な量が食卓に並んでて、ゲシュト様の所でご馳走になった食事と殆ど遜色無い。
屋敷に居なかったのは食材の買い出しに行ってたらしく、散策じゃなかったっぽい。
荷物持ちくらい俺に任せてほしかった…今のところそれくらいしか役に立たないし、俺。
シータがメインになって作った料理はやっぱり美味しくて、この家に居る時はこの料理がいつでも食べられるのか、と思うととてつもなく幸福なんだな俺、って泣きそうになった…嬉し過ぎて。
誰かの手料理自体こっちの世界に来る前、最後に食べたのはいつだったか、思い出すのも一苦労だ…。
「ナオ?どないしたん?もしかして…口に合わんかった?」
どうも泣きそうになってたのが顔に出てたらしい俺に、シータが不安になったのか声を掛けてきた。
口に合わないって…無い無い、そんなことあるわけ無い。
「違う違う、美味し過ぎて…あとこうやってみんなで食べるのが嬉しくて、さ…」
「わたしもうれしいよーっ。ナーくんと、お姉ちゃんたちいっぱいで楽しいー!」
「そうだねーっ、ヒナちゃんと同じでわたしも嬉しいし楽しいよっ!」
「賑やかなのはやっぱりいいよねっ、ふふっ」
「なら良かったけど…またなんや我慢とかしとらん?」
「あー、うん、してないよ。うん、大丈夫」
「ま、してたらアタイにあんなことしねーだろーしなっ」
あ、はい、そうですね…あれはだってホント気持ち良かったんだよ……。
寝起きにあんなの我慢のしようがないって。
「あんなことって何?アーネちゃん」
「リズたち迎えに行く前な、ナオト一人であのデケぇベッドで寝てたんだよ。んでしょーがねーからちょっと添い寝でもしてやろーと思って隣に寝転がったら、抱き枕にされたわ」
「アーちゃんはぁ~丁度いいぃ大きさぁだよねぇ~」
はい、その通りでした。
あのスポッと収まる感じが何とも言えない心地良さでしたよ、本当に。
「へぇー…。なに、ナオト、やっと吹っ切れたの?」
「いや、あれは寝惚けてたんだよ…まぁ、めっちゃ抱き心地良かったけど」
「ふぅーん…。あ、じゃあみんなでナオトに抱き比べしてもらおっかー」
「抱き比べって…別に比べる必要ないやん。まぁナオがしたいんならそれでもええけど」
「皆様が抱き締めてもらえれば、必然的に比べられますよね?」
いやいや、比べるためだけにそうするのはどうなのよ。
そういうのはしたくなってするものじゃないんですかね?違います?
「………わた、し……大きい…から………良くな、い……かな…………」
「リオお姉さまは、その、おむねがあるので…」
「そうよね…リオはもうそれで十分じゃない……」
「やっぱりお兄さんは大きい方がいいんですか?」
「そこを俺に振らないでくれ、ウェナ……」
って、食事の場に相応しく無い話題になりながらも、こうして皆で会話しながら食べる夕食は、本当に美味しくて…少しだけ、ほんの少しだけ、ミスってこの世界に俺を寄越してくれたエクリィに感謝したり。
…口には絶対に出さないけどなっ。
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