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第五章 姫達の郷帰りと今代の勇者達
#10 抜群の吸引力
しおりを挟む話が纏まったらしく、魅音がカッツに話し掛けてきた。
今度はコソコソしてないから俺や他の皆の耳にも届いてくる。
どうやら相談事らしいからバンド活動についての話か。
「ねぇねぇカッツーっ。ちょっと相談があるんだけどっ」
「うん?なに?ミオン」
「私達ねっ、活動拠点を移したいんだーっ」
「それって…これからは皇都以外で活動したいってこと?」
「うんっ!具体的にはー、ガルムドゲルンでっ!」
「ブハッ!ゲホッゲホッ…」
ヤバいむせた。
何でピンポイントでガルムドゲルンなんだっ。
それってまさかそういうことじゃないよなっ!?
「尚斗君、大丈夫っ?どうしたのっ?」
「みっ、魅音…何でガルムドゲルンなのか聞いてもいいか…?」
「えっ、それは…その、ちょっといろいろと思うところがありましてぇー……」
「あれだよ、私らがやりたいことやるにはガルムドゲルンが何かと都合いいんだよっ」
「そっ、そう!それそれっ!」
「まぁ、バレバレやけどな、ミオン」
「だなぁ。もうアレじゃねーの?この際うち来ればいんじゃね?」
「そういえば、あの家地下室あったよね。練習場所とかに丁度いいんじゃない?」
「それは私達には願ってもない環境だけど…」
「わたし達みんなでなんて、大丈夫なのぉ?」
「そうだぁねぇ~、部屋はぁまだまだぁ余ってるしいぃ~、いいんじゃぁないかぁなぁ~」
「……ミオン、たちの………音楽…まだ、まだ……聞い、て…みたい………」
待ちなさい君達、何勝手に話を進めてるんですかねっ?
そうやってポンポン増やすのは問題あると思うんですけどっ!
「じゃあ、はい、それで決まりー。よろしくねー!」
「ちょっ、本当にっ!?カッツいいのかっ!?」
「あ、はい。お世話になります」
「即決っ!?」
「マニファニのみんながそうしたいなら、そうさせてあげようかと。あ、勿論僕もお世話になりますね」
「やったっ!みんなと、それに尚斗君と一緒だーっ!ありがとっ、カッツ!」
待て待てっ!俺の意思が介在してないんですがっ!
一応あの家俺が家主…あれ?違うか、パーティーの報酬だから皆の家ってことになるのか…?俺がリーダーだから名目上俺の家だって皆思ってるみたいだけど。
だとすると…多数決で終わってるってことかっ!
「なんや?ナオは反対なんか?」
「いや…よくよく考えたら、あの家みんなの家だから、俺だけ反対しても無意味だって今気が付いた……」
「ま、いーじゃねーか。賑やかな方がいいんだろ?ナオトは」
「今でも十分賑やかなんだけどな…これ以上は特に求めてないというか……むしろ俺の決意が危ういんだけど」
「なぁにぃ?決意ってぇ~」
「…メンバー追加はエクリィで最後にするって……」
「ナオトさん…なんて無駄な決意してたんですか……」
「……もう………遅、い…よ……?…………」
「え」
「称号見たら一目瞭然やと思うで?」
いやいや、流石にそれは無いだろ?
魅音は漂流者なんだ、こっちの世界の娘達とは違うだろうし…他の娘達には何もしてないぞ?俺。
けど、まぁ一応見てみるか…アコ、称号だけ見せてくれ。
[対象者:遊佐 尚斗の称号を表示]
【ステータス(隠蔽中)】
《識別》
名前:遊佐 尚斗
《称号》
転生者
厨二病疾患者(再発)
寝取られし者
獣に目覚めし者
幼女を愛でし者
竜に跨がりし者
神に愉悦を齎す者
救いを好意に変えし者
熟練冒険者(似非)
(目指さなくても)ハーレムマスター
メンバー(メイン):
シータフィオラシス(狐のお嫁さん)
アーネルミルヴァ(最高級抱き枕)
マールオリザロレッタ(何もかも柔らか)
リーオルエレミネア(マスター命)
ラーナミラルティア(妄想暴走発情途中)
リーズロルトミニィ(その身体は全て凶器(倫理的に))
ヒーナリナリィ・ルナ・リリエンノルン(もっと大好きっ)
ティシャルフィータ・ソル・グリュムセリナ(お嫁さん修行中)
ファルシェナ(対尚斗用欲望発散最終兵器)
ウェナヴェナルーチェ(気持ちはお姫様♪)
アコ(詳細化してみました。如何でしょう)
エクリィータ(アハハハハッ!さっすがナオトくん!期待を裏切らないっ!)
響 魅音(←new!)
メンバー(サブ):
カティリアーナ(優しいお兄ちゃん)
ミルラテラノ(カッコいいお兄さん♡)
シャリータフォーレリカ(一目置ける兄さん)
エマージュノーティス(申し分無い主)
チェルシオルネア(まずは)
キャムナトロニエ(ここから)
コロネロコロン(なのです!)
ジィナシィナリーティ(羨望)
マミーナシャリーナ(頼れるお兄さん)
ニナストリィミア(ちょっと素敵かもぉ)
ファミールレティル(べ、別に私は…)
ニアネスラヴィア(イイねー)
…………俺の決意とは。
それよりアコぉぉおおっ!!
お前ホント余計な事しかしねーなぁぁああっ!!
サブって何だよっ!またお前基準かっ!勝手に組み込むなよっ!!
しかも何だこの人数っ!おかしいだろぉっ!!
[失礼な。称号の仕様を忠実に反映した結果です]
くっそ、この欠陥仕様がぁっ!俺の決意を返せっ!!
ホント、ラナの言う通り無駄だったわっ!
高みの見物してるエクリィがまた更にムカつく!
今度会ったら絶対文句の一つでも言わんと気が済まんぞ、これっ!!
「ぶっ、ナオトのその顔見りゃこっちも一目瞭然だわ。くはっ!」
「ほれみぃ、言った通りやったやろ?」
また顔に出てたみたいだけど、こんなの出るに決まってるだろっ!
これでポーカーフェイス保てるほど俺の精神力は高くないわっ!
「なになにっ?何のことー?」
「ミオンもわたし達と同じってことよ?」
「ようこそぉ~、わたし達のぉハーレムへ~」
『『『『『『えっ?』』』』』』
マールさんや、そこ歓迎するところなのか…?
ほら、周りほとんど呆気にとられてるじゃないですか…。
「ちょっ、待てっ!ハーレムって…お前ら冒険者パーティーってだけじゃなかったのかよっ」
「男がナオ一人な時点で分かっとる思うてたけど、そんなんびっくりするようなことでもないやろ?」
「尚斗君、モテモテだねーっ」
「…モテモテっていうか、気が付いたらこうなってたんだよ……」
というか、全部エクリィのせいなんだけどなっ。
ミスから始まり余計な称号付けてくれたばっかりに、こういうことになっちゃってるんだよ。
…イヤってわけでは決してないんだけど。
それでもさ、何事もこう、限度ってものがさ、あるんじゃないですかね?
けどこの欠陥仕様の称号、そんなものは絶対定義されてないだろう、際限無しの吸引力がこの称号の最大の売りです!って言わんばかりだし。
くっ…エクリィが自ら飛び込んで来る前にどうにかしてさえくれてれば、上限くらいは設定出来たんじゃないのかっ。
まぁ、あのエクリィがそんなことするわけないか、俺で遊んでるくらいだしな…。
「そっかー。ってことは、私もそのハーレムの一人になっちゃったってこと?」
「ま、そういうこったな。ミオンは漂流者だからな…アタイらと一緒じゃイヤか?」
「うーん…元の世界だったらちょっとねー。でもこっちの世界じゃ普通にあるんだよね?」
「そうね、割と普通にあるよ?」
「じゃあ、何も問題無いかなーっ。これで堂々とみんな一緒にいられるんでしょ?」
「そうだぁよぉ~、まだぁ他にもぉいっぱぁ~いいるしぃねぇ~っ」
「そうなのぉ?」
「マジか…ここにいる5人だけじゃねーのかよ…」
「……凄、く………楽し、い…よ………。……みん、な…仲良、し……だ、から…………」
「そうなんだ…」
「いいねー、なんか楽しそうー」
実際賑やかで、楽しいというかなんというか…。
エクリィとアコはまぁ置いといて、魅音が入って11人とか…知らない内に予備軍までいるみたいだし、ホント俺にどうしろっていうんだろ?
皆が言うには俺のやりたいようにやれってことなんだけど、あの中でやりたいようにって…いや、まぁ皆は多分俺が何やっても受け入れてくれそうなんだけど、だからってそれに甘えるわけにはいかないよなぁ、と。
これでも俺的には割と好きにやらせてもらってるんだけどな…まぁ、歯止めの効く範囲でだけど。
マニファニとマリシアラの皆がハーレムのことで盛り上がってるところに、ガズのおっさんが俺にツッコんできた。
「なんだナオト、俺の言ったことは間違ってねぇじゃねぇか、ん?」
「ぐっ…ちっ、違いますっ、俺も今知ったところなんですからっ」
「尚斗さん、凄いですね。ハーレムだったんですか…」
うっ…正典まで割り込んできた…。
すんなり感心しないでもらえるかっ?
「いや待て正典、別に望んでたわけでもないし、進んでハーレムにした覚えは全く無いんだよっ」
「何言ってやがる、姫達とパーティー組んだ時にゃ、満更でもなさそうな顔してやがっただろうが」
いや、そりゃ誰だってそうなるでしょうよっ、姫達と組めるんならっ。
だってこんなに可愛いケモミミっ娘達なんだから!
あとパーティー組んだだけでハーレムになるなんて、その時は思いもしなかったってっ。
「でも分かります、それ。シータさん達本当に可愛いですもんね…人以外ってところがまた更に輪をかけてますし……」
「…やっぱり正典もそう思うよなぁ…。俺達漂流者からは特に。なんせ元の世界では架空の存在だったんだからな。そんな彼女達に泣きそうな顔して頼まれてみろって、断れると思うか?」
「…無理ですね、それは」
「だろう?」
「泣きそうな顔して頼まれてる時点で気付かないお前もお前だ。だからこうなったのは当然の結果だな」
いやいや、それは分かりませんって。
ガズのおっさんは前から姫達のこと知ってるからそう言えるんだろうけど、俺は会ったばっかりだったんだから、そんなの分かるわけないでしょうがっ。
「無茶言わないでくださいよ…来たばっかりの俺が分かるわけないじゃないですか。まぁ、でも今はもうこうなっちゃってますし、今更なんですけどね…」
「だったら素直に喜べ。堂々としてりゃいいんだよ、俺が何言ったってな」
「その領域に辿り着くには圧倒的に俺の自信が足りませんね…」
「どうしてですか?尚斗さんってあんなに凄いスキルとか持ってて強そうなのに」
「…強さとかそういう問題じゃなくて、俺がこの状況についていけてないんだよ。正典なら分かるだろ?いきなりこんな可愛い娘達に囲まれて、みんな俺の女だー、なんて言えるか?」
「それはそうかもですけど…でももう認めちゃってるんですよね?だったら何も問題無いと思うんですけど…」
正典もすんなり受け入れられるタイプ…というか、若さだな、これは。
凝り固まってないやつは皆こうなんだろうな…。
まぁこれでも大分砕けてきたと自分では思ってるんだって、心の中では皆俺の嫁って思ってるし。
表立って俺の女達だ!とはまだ言えませんが…。
「まぁ、俺の事はいいんだよ。俺には俺のペースってものがあるから。みんなもそれでいいって言ってくれてるし。あ、そういえば…ガズさん」
「ん?何だ?」
「ハーレムで思い出しましたけど、ラナの両親には会ったんですか?」
「あぁ、この依頼受ける直前に会ったぞ。ナオトの事伝えたら急いで帰っていったがな」
「え?何で急ぐ必要が?」
「そりゃ、娘が相手連れてくるんだ、それなりの準備ってもんがあるんじゃないのか?」
「あー、じゃあもう向こうには完全に伝わってるってことですね…ラナの両親だけじゃなくて」
ロゼさんだっけ?ラナの母親から他の皆の両親にも話伝わってるんだろうな、きっと…。
「間違い無く、な。ロゼから確実に伝わってるだろうさ。そういうことだから、早く行ってやれ。そんでまた土産話聞かせてもらおうか、くっくっくっ」
「土産話っていうより、どうせまた増えるのを期待してるんでしょう、ガズさんの場合は…」
このおっさんといいエクリィといい、そんなことを楽しみの一つにしないでほしい。
けど、俺の決意は無駄なことだってさっき分かったしな…もう本当にどうにもならないのか、これ…。
「ま、ラナ達の相手がいるってことくらいしかナオトの事伝えてないからな。後は向こうでお前が上手くやれ」
「そうですか…分かりました。じゃあ魅音達の事が片付いたら向かうことにします」
家に魅音達を連れ帰って…あ、明日ライブ本番だから今日は無理か。
明日ライブが終わったら、マニファニの皆も一緒にガルムドゲルンへ連れて帰って、それからだな。
やっぱり俺が何かすると増える仕様なのか、この称号…。
郷帰りでも増えるのは不可避な気がしてきた。
けど段々と受け止め易くなってきてるよな、俺…。
正直また可愛い娘達が増えて嬉しいって気持ちが強くなってるし。
そうなったらそうなったで、またその時考えることにしよう。
エクリィの思う壺で癪に障るけどなっ。
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