異世界漂流者ハーレム奇譚 ─望んでるわけでもなく目指してるわけでもないのに増えていくのは仕様です─

虹音 雪娜

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第六章 激震、マーリレンス大陸

#13 海より来たりし凶報

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―・―・―・―・―・―・―・―





──皇都グラウデリアより北西部、港湾都市キャトローシャニア物見台


「ふぅ…もう直ぐ夜明けだな……」

「そろそろ交代の時間か」

「タイミングが良かったか、その交代に来たぞ」

「おっ、噂をすれば、と言うやつか。それじゃ交代……ん?」

「…?どうした?」

「いや、何か海が……すまん、遠望の魔導具を貸してくれ」

「ああ、ほらよっ」

「…………………………っ!?!?」

「…何か見え「衛士長はっ!!」…おいおい、何をそ「早く呼んで来いっ!!」……あ、ああ、分かった、呼「頼む急いでくれっ!!」」


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


「何があ「衛士長っ!とにかくアレをっ!!」………っ!?!?なん、だ…と………」

「衛士長、一体何「全領民に避難…いやっ、退去命令をっ!!この都市を放棄する!!」……は?放棄って、ど「ともかく急げっ!!いいかっ!人命最優先だっ!荷物は最小限の食糧だけにしろっ!私財など放っておけ!!」…しかしそれでは領民が……」

「そんなもの後で皇王陛下がどうとでもしてくれるっ!それより領民達を失うことの方が陛下の逆鱗に触れるだろうがっ!!」

「っ!?りょ、了解しましたっ!すぐ誘導を開始しますっ!」

「いいかっ、衛士隊全員で取り掛かれっ!必ず全領民を脱出させるんだっ!私は領主様に報告しに行くっ!頼んだぞっ!」


「「「「了解っ!!」」」」




「…黒く染まる海、など……そうするしかあるまい……っ」




 
―・―・―・―・―・―・―・―





 修行も順調に進み、最近では訓練場で模擬戦も再開し始めた。
 初めてやった時の頃に比べると、格段に動けるようになった勇者パーティーの面々。
 今ではレベル差はまだあるものの、弘史達雷銃相手だとかなり良い勝負が出来るようになっていた。


 ガキンッ!ガンッ!ガイィィン!


「くっ…にゃろう!ならコレだっ!〔雷閃斬ライジングスラッシュ〕っ!」

「攻瑠美っ下がって!」
「オッケ、任せたっ!」

「〔護勇剣・シェルトヴァリナー〕っ!」

 パキィィンンッ!

「うぉあっ!弾き返すかよっソレをっ!」

 弘史が剣で連撃するも、護璃がそれを危なげ無く剣盾で全て受け止める…痺れを切らしたのか、弘史は間合いをとって剣技─確かダイさんの相手をしてた時に使ってた技─を繰り出し、雷を纏った斬撃を飛ばす。
 攻瑠美は護璃の指示で護璃の後ろにつく様に下がり、その護璃は剣盾のスキルか、剣盾を振り被り、技名を叫びながら振り下ろした…すると目の前にバリアのような透明なシールドが展開し、弘史の放った斬撃を防ぐどころか弘史の方へ跳ね返した。
 弘史はそれを焦りながらも横っ飛びで躱したが、そこへ──


「〔攻盾技・ブレイバンカー〕ぁっ!」

 ガキイィィィンッ!!

「ぐぁっ!!」


 ──護璃が攻撃を防いだ瞬間、護璃の後ろから弘史に向かって飛び出していた攻瑠美が、横っ飛びで態勢を崩していた弘史に対して、こっちもスキルで攻撃を仕掛ける。
 片方の盾をパイルバンカーに変化させ、それにオーラみたいなものを纏わせ弘史目掛けて躊躇い無く撃ち抜く…弘史は態勢を崩しながらも何とか魔力でコーティングした剣の腹で受け止めるが、攻瑠美のパワーが勝っているのか勢い良く後方に吹っ飛ばされた。
 それでも倒れずに上手く着地した弘史。

「おいおいおいぃっ!いくら何でも化け過ぎじゃねーのっ!?」

「へっへーっん、こちとら勇者だからねーっ、負けっぱなしなんてあり得ないからっ!」

「弘兄さん…前と同じだと思ってたら痛い目にあいますよ…?」

「だぁぁあっ!クッソ生意気にぃ、って、うわっ!オイっ知美ぃフラムっ!何やってんだっ!!」

「えー、だってぇブリッズくんがウザいんですよぉー」

「こっちもだ…出番が無かった前が嘘のようだぞっ」

 勇者達に向かってあり得ないと言わんばかりに文句っぽいものを吐き出していた弘史に、攻瑠美達の後方から氷の矢が飛んでくる。
 初めの頃は知美ちゃんのライフルによる狙撃で成す術も無かったブリッズだが、今はその照準を定められないよう左右に走り込みながら矢を放っている…動きながらにも関わらず、狙いはかなり正確だった。

「こっちもやられっ放しは性に合わないんでなっ、とぉ!〔氷精連矢フリージングヴァロー〕っ!」

「………〔雷精光連弾ライトニングバレッツ〕」

「…っ!?くっ……ちょっとアンタ達ぃっ!ボサっとしてないでアレ止「「ちゅっ!」「にやぁぁぁああっ!」」っ!あーっもうっ!何なのよっ、何でもう追い付いてるわけっ!?」

 ブリッズが再度攻瑠美達の援護で氷の矢、しかも複数の矢を放ち、そしてヴォルドもブリッズと同じ様に動きながら…こちらは雷の精霊の力を借りてなのか、瞬時に左右どちらかへ瞬間移動のような動きを見せながらフラムの矢を躱しつつ、チュチュとペルへの援護の為、精霊魔法…ソフトボール程度の大きさの雷球を複数、モリーを狙って撃ち放つ。
 モリーはチュチュとペル二人相手にスピード勝負をしていたが、その雷球を躱しながらだと二人を引き剥がすことが出来ずすぐに追い付かれ、一方的に二人の爪とクナイの攻撃を両手のカタールで防御させられていた。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


───観戦組、黒惹華、シルファ


「うんうん、修行の成果は出てるわね」

「いやぁ、こりゃ見違えたなぁー」

「まぁ勇者だからね、これくらいのポテンシャルはあると思ってたよ」

「せやなぁ、これくらいやあらへんと、勇者なんて名乗れへんかもなぁ」

「これ、もうヒロシさん達じゃキツいんじゃないですか?人数的に」

「なんかぁ~、押されぇ気味ぃだしねぇ~」

「………訓練、だし……。……トモ、ミ…が……本気、出せ…ば………まだ…力、は……上だ、よ…………」

「うん、リオの言う通りだよ。知美ちゃんが対人で本気なんか出したら大変な事になるって」

「カノンちゃんだっけ?アレはもうこの世界じゃ反則級よ、本当に」

「銃ってこの世界には無いんだっけ?」

「無いことは無いわよ。ただこの大陸出身の人で使い手はいないはず…。確か機甲大陸のテパデモアブス辺りでは主流だったような…」

「うわ…ミリオタかメカオタの漂流者でも流れ着いたのか……機甲大陸て」

「…?なに?みりおたとかめかおたって」

「あー、いや、こっちの話。気にしないで」

「なぁ、そろそろ止めた方がいーんじゃねーの?なんかそのトモミがヤバそうなんだけど」

「「え…」」



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


「あぁぁーっ!スッキリしないぃぃーっ!もうバラ撒く?バラ撒いちゃう?バラ撒いちゃっていいよねっ?ねっ?カノンちゃーん!バラ撒くなら何式がいいかなぁー?」

「ニャー…ご主人しゃまの今の気分ニャら……参壱式辺りがオススメかニャー?」

「よぉーっし!じゃあそれでい「ストップストーップ!」「止めっ!終了っ!トモミは両手を頭の上に乗せてっ!」…えーなにー?もぅ…いいところだったのにぃーっ!」

「よくないっ!トモミはカノンちゃん離しなさいっ!」

 こっちで話してる間に知美ちゃんのフラストレーションが溜まってしまったらしく、発散しようとする寸前で俺とシルファが止めに入った…危うくバラ撒かれるところだった…見境無しにバラ撒きそうだから全員蜂の巣になりかねなかったんじゃ……。
 他の雷銃のメンバーも冷や冷やものだったらしく、ストップがかかってホッとしていた。

「ったく、おっせーよっ止めんのがっ!」

「いや、お前が知美ちゃん止めろよ…」

「見てたんなら分かるだろーがっ!それどころじゃねぇってよぉ!」

「んんー?それはぁー、ボクたちに手こずってたってことかなぁー?弘にぃ?」

「バッ!ちっげーよっ!バッカ!んなわけ無ぇだろっ!」

「弘兄さん…ちゃんと認めるところは認めてください」

「ウッセ!お前らなんか俺が本気出しゃ、まだまだだってのっ!」

 弘史…お前本気出すとか言って恥ずかしくないのか…?いくら勇者って言っても歳下の女の娘達相手にさぁ…。
 まぁ、それだけ余裕無かったんだろうけどな、本当に攻瑠美と護璃は強くなったわ、こうして弘史を追い詰められるようになるとはね。
 この調子でいけば、勇者パーティーだけで魔統王討伐に行ける日もそう遠くはないんじゃないかなぁ…なんて考えていた時だった…。


「「(ナオトっ!!)」「(ナオト様っ!!)」」


「「「「「「っ!?」」」」」」


 念話でリズとファルから叫ぶ様な声で呼ばれた。
 ファルはもう冒険者ギルドの受付嬢に転職済みだから、二人一遍に念話が来てもおかしい事は無い。
 それと、どうも俺だけじゃなくて姫達やリオにも繋いでいるらしい、全員驚いた顔をしている…俺も含めて。

「(どうしたっ、二人ともっ)」

「(皇都の北西にあるキャトローシャニアっていう港湾都市が魔物に襲われたらしいのっ!)」

「(っ!?そんなまさかっ!オーガのやつ何やってんだっ!!)」

 この大陸の魔物なら、アイツの支配下に置けばそんなことにはならないはず…まさかまたガルムドゲルン襲撃の時みたいなことしてるのかっ!?

「(それが分からないのよっ!今はとにかく戦力を集めてるらしくって、ゲシュト様からナオト達に連絡取ってくれって頼まれたのっ)」

「(分かった!とにかくその襲われたっていう都市にすぐ行ってみるっ!一旦ガルムドゲルンに戻ってからの方がいいかっ!?)」

「(ナオト様達は今精霊王国なのですよね…では、ウノッシュバッハという街はご存知ですかっ?)」

「(ああっ、行きに寄った!)」

「(それではそのウノッシュバッハから少し東寄りに北へ向かわれた方が近いかとっ)」

「(了解!それじゃそこから向かってみる!何か分かったらまた連絡してくれっ!)」

「(分かったっ!そっちはお願いねっ!)」

「(ナオト様、くれぐれもお気を付けてっ)」

 何で急にこんな事に…って考えてる場合じゃないよなっ、すぐそっちに向かわないと…っ!

「弘史っ!」

「んぁ?何だよ」

「今リズ達から念話が来てキャトローシャニアっていう都市が魔物に襲われたらしいっ」


『『『『っ!?』』』』


「はぁっ!?んだよっまたオーガのヤツなんかやってんのかよっ!」

「いや、何も分からないんだって!とにかくその都市に急いで行くっ!」

「ナオトっ!私も行くわっ」

「ボクたちも行くよっ、もちろんっ!だよねっ護璃!」

「当然よっ、ここで行かないで何が勇者よっ!」

「ったくお嬢は…。まぁ俺らも黙ってるわけにゃいかねーよなぁ?アベル」

「分かり切った事を聞くなカイン。よし、ナオト!」

 話を聞いてた全員が来てくれることに…人数多い方がいいに越したことはないから助かるっ!

「分かった、ここにいる全員で行くっ!転移で直接行けないから一先ずウノッシュバッハまで飛んで、そこからリオに乗っていく!頼むリオっ」

「…(コクっ……。…了解、マスター……っ………」


 そして俺達はウノッシュバッハまで俺の転移で移動し、そこからリオに乗って北へ…港湾都市キャトローシャニアに向かった……。




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