異世界漂流者ハーレム奇譚 ─望んでるわけでもなく目指してるわけでもないのに増えていくのは仕様です─

虹音 雪娜

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第六章 激震、マーリレンス大陸

#23 謁見…らしき何か

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「おうっ!オマエ等全員ご苦労だったなっ!」

 ──連れて来られたのはグラウデリア城の謁見の間らしき所で、開口一番玉座に居る皇王陛下が労いの言葉を掛けてきたんだけど…ここってもっとこう、形式を重んじて会見するような所じゃないんだっけ…?入って来て早々跪くとか姿勢を正す前に声掛けてくるんだもんなぁ…。
 一国の主がこれで本当にいいんだろうか。

 この場に来ているのは、黒惹華+αと雷銃、勇者パーティーとシルファ達、オーガ達魔王と烈華絢蘭、そして騎士団の団長格っぽい人達。
 30人ちょっとでも余裕の広さ…この人数で横一列に並べるくらいの広さはあるんじゃないかと。
 玉座には皇王陛下の他、皇后様二人、それと側近のおっさんが居る。
 以前ひぃ達のお披露目で来た時に見た面々で、あの時は確か他にも皇子やら皇女も居たか…あと烈華絢蘭の四人もだな、それともう一人騎士っぽい人が居たけど、それってエルムさんだったのではないかと…総騎士団長とかって、この国の軍の最高位なんだろうし。

「陛下…仮にも謁見の間なんだ、礼くらいさせて欲しいんだが」

「あぁ?んなもん必要ねぇよっ、他国の使節じゃあるまいし。んな事より早く話聞かせろやっ」

「陛下、お客人が居るのですからエルの言う通りじゃないですか…?」

「そうよ陛下、少しは落ち着いてくださいな」

「いいんだよっ!んな堅っ苦しいのは俺がゴメンだっ!オマエ等も気にしねぇで普段通り話せよっ!」

 皇后様二人に宥められても変わらずな陛下…普段通り話せとか言われても普通は出来ないんじゃ…こんなんでも一国の王だし。

「全くしょうがないな陛下は。では普段通りにさせてもらうぞ」

「おうっ、それでいい!んで、まずは何だ?ソイツらの紹介からか?見た事あるヤツもいるな?」

「そうだな、まずはそこから始めないと話が進められないか」
 
 と、エルムさんがさも当然のように普段通りにするとか宣言して、まずは全員で自己紹介からとなった…俺達と弘史達はあのお披露目会で顔だけは合わせたことがあるけど、そう言えばあの時ちゃんと挨拶とかしてなかったな、と…今思うと大変失礼だったんじゃないかと思…うだけ無駄かな、今の陛下見てると。
 本当に細かい事気にしなさそうで、逆にこっちが謙ってたらやめろとかいってツッコんできそうだもんな…まぁ本人がいいって言ってるんだからそうした方が良さそうだな…。

 で、俺と弘史、それから勇者のパーティーとシルファ達は自分達から名乗り、騎士団の人達と烈華絢蘭は陛下にじゃなくて俺達に自己紹介してくれた…陛下は当然知ってるだろうから。
 そしてオーガは…ケージ達の事を陛下に教えた。

「ゼクト、コヤツらが別大陸…パペンダの魔王とソノ配下だ。撃魔王ケージと言う」
 
「……もう魔王じゃねーのか?」

「あぁ。勇者達が力ヲ削いでクれたからナ」

「……なんでこの大陸に来た」

「………勇者を潰しにだよ。一月程前、この大陸に勇者がいるって分かったからね…。今の実力からすると、どうせ覚醒スキルでも暴発させたんだろうさ」

「っ!?えっ、ウソっ!ボクの、せい……っ!?」

 …最初の訓練の時か、リオが火竜魔法で止めた…。
 そうか、魔王は勇者固有の力を感知出来るのか…ならオーガも当然知ってたんだろうな、別大陸の魔王が気付いたんだ、同じ大陸に居るオーガが気付かない訳が無い。
 けど知ったところで何かするつもりは無かったってことだろうな…オーガだし。
 しかしアレのせいだとしたら…攻瑠美が相当責任感じそうだ、ケージの言う通り暴走しちゃったんだからな…。

「どっ、どうしよう…っ!ボク…の、せい……で………」

「攻瑠美………」

「あークルミっつったか、気にするこたぁねぇよ。こうして別大陸だが魔王の一角を潰せたんだ、よくやってくれたよ」

「でっ、でも…この大陸のみんなを……っ」

「心配すんな、こんな事態になったってのによ…奇跡的に人的被害は無ぇんだ」

「……通リで落ち着いテいるわケだ」

「まぁな。何故かは分からねぇが…襲われたのは全部街だったんだよ。村落なんかは見向きもされなかったらしい。マジ助かったぜ…村落までは流石に防げなかっただろうしよ。あとは各街で頑張ってくれたおかげでこの結果ってわけだ。オマエ等んとこが一番大変だったはずだぜ…?流石に無傷ってわけにゃいかなかっただろうよ……」

 それは本当に奇跡…いや、もしかしてケージの命令のせいか…?近くの街を襲えとか、そんな感じで命令出してたとか…。
 けど、何にせよ結果的に良かった事に変わりは無いからな…万事オーケーってことで。
 あとは魔王が居たこっちだけど…。


「あー…それなんだがな、陛下……」

「ん…?やっぱそれなりに被害はデカかったか……?」

「いや、逆でな…。こちらも被害はゼロだ」

「………は?んなバカなことがあるかっ!報告では倍の魔物達を相手にしてたらしいじゃねぇか!それで無傷とか…あり得ねぇだろがっ!」

「まぁ、勿論負傷者はそれなりに出たんだがな…」

「陛下よぉ!そいつはなっ、このマールのおかげなんだよっ!すっげーんだぜっ、こいつの回復魔法はっ!」

「ちょっ、ちょっとぉ~…レディちゃんん~っ!」

「……冗談言ってるわけじゃ無ぇみてぇだな…。マールっ!」

「はっ、はいぃぃ~っ!」

「助かったっ!大事な騎士達の為に力を尽くしてくれたこと…感謝するっ!」

 そう言ってマールに対し玉座に座りながらも頭を垂れるゼクト陛下。
 いや、本当にこの国の人達ときたら…相手が自分より下の身分だろうが、平気で頭下げるんだもんな…ゲシュト様もそうだったし。

「えぇ~っ!やっ、やめてぇくださいぃ~陛下ぁ~っ!」

「やめられるかよっ!そんだけ凄ぇことやってくれたんだ、こんなもんじゃ足りねぇよっ!」

「マールさん、私からもありがとうございます、と。騎士達の身を案じてくれたこと、心より感謝します」

「本当によくやってくれたわ、マール。アナタのような人がいてくれて騎士達も心強かったでしょうね…ありがとうっ」

「こっ、皇后様達までぇぇ~っ!わ、私はぁ~自分にぃ出来ることしかぁ~やってぇませんからぁ~っ!」

「ここだけの話だがな、騎士達の間ではマールの事を『聖黒兎』様と呼んでいるそうだ」


『『『『聖黒兎……』』』』


「やぁっ、やぁめぇてぇぇええ~っ!!」


 ついにマールに二つ名が…聖女ならぬ聖黒兎とか、うん、マールにぴったりなんじゃないか?これ多分マールの称号に付いちゃってるだろうな…。

「聖黒兎だってよ…クハっ」
「よかったじゃない、聖黒兎様っ」
「ええやんなぁ、聖黒兎様ー」
「……聖黒兎…様……凄い、ね…………」
「…………」

「みんなぁもぉぉ~っ、やめてぇよぉぉ~っ!イアちゃんん~までぇ~聖黒兎様ぁとかぁ~言わないでぇぇえ~っ!私はぁそんなぁ~大層なものじゃぁないぃのぉぉおお~っ!!」

 皆冷やかしてるし…まぁ、それだけの事をしてくれたのは事実だしな、マールの癒しを受けた皆がそう思うのも分かるというか…そう言えばマールって他にも称号付いてたような…何だっけ?あぁ、確かブレストヒーラーズだったか、あれはリオと一緒だったからこそ付いたやつなんだよな。
 今回はマール一人で頑張ってくれたからこその二つ名なんだろうな、と。
 それはそれとしてマール、いつの間にイアの言ってること分かるようになってたんだ…?あれか、イアのお気に入りには分かるようになるってことなのか?それでいくとリズとかメイ辺りもいずれは…ってこと?まぁ、分かってくれる人が増えるのは助かるからいいんだけど、その基準はどうにかならんのかと…うちの嫁達にいらぬ波風を立てないでほしいんだが。

「よしっ!ともかくアレだっ!今回やってくれてたオマエ等にゃとっておきの褒美でもくれてやらんとなっ!」

「いりませんよ、陛下」
「そーだぜ、んなもん寄越すくれーだったらとっととキャトローシャニアをどうにかしろってのっ」
「そうね、私たち勇者だってそんなことの為にやってるわけじゃないんだし」
「そ、そうですっ!それに今回たまたま上手くいったけど、ボクのせいでこんなことになったのは変わらないし……」

「それとこれとは話が別だっ。当然キャトローシャニアは早急に立て直す。オマエ等の働きに対しての正当な報奨だっ、黙って受け取れや!」

「…言い出したら聞かないからな、陛下は。分かったよ、全員有り難く頂戴することとしよう」

「エルムさん…」

「いいんだよナオト。ここで貰っておかないと収拾がつかないからな…延々と言ってくるぞ?私達が受け取るまで」

「そういうこった。んじゃ後日正式に渡してやるっ。何か欲しいモンあるんだったら遠慮なく言えよっ!」

 …なんて強引な…本当にそんな事の為にやったわけじゃないんだけどな…ここにいる全員そうだと思う。
 けどまぁ、エルムさんが言うなら本当にここで貰っておかないと、俺達が受け取るまで延々と言い続けてくるんだろうな…この御仁は。
 そこまで頑なに断る理由も無いし、復興はまた別でしっかりやってくれるみたいだし、ここは言う通りにしておこうか。

「…フンッ、倒した僕の目の前で報奨とか、どうなってるんだよこの国はっ」

「あースマン、すっかり忘れてたわ、お前の事。で?コイツはどうすりゃいいんだ?」

「…我がコのまま面倒を見るシカあるまイ。同じ魔王トしてな」

「そうか…んじゃ頼めるか?オーガ」

「ウむ、引き受けヨう」

「チッ…何でこの僕が他の魔王の下なんかに……」

「こノ大陸へ勝手に来て敗レたのはケージ、御主だロう。それトも元の大陸ニ戻りたイノか?」

「冗談だろっ、こうなった以上、元の大陸になんか戻ったらあっさり狩られるに決まってるさっ。くそっ、こんな筈じゃ無かったのに…それもこれも全部尚斗っ!お前のせいだからなっ!このクソチーターがっ!」

「いや、それはちょっと酷くないか?まぁ自分でもおかしいとは思ってるけどさ……」

「クソ強いうえにハーレムとか、どこのラノベ主人公だよっ!」

「待って!そこは違うからっ!ホントいつの間にかこうなっちゃってたんだってっ!そこだけは否定させてっ!」

 チートはもう完全におかしいとは思ってるけどさっ、ハーレム系ラノベ主人公では無いよっ!あんな自ら侍らせてウハウハとか全くしてないからっ!来るもの拒まずじゃなくて来るもの拒めずだし、その来るものってトコロがもう俺にはどうしようもないんだって!勝手に吸い込んでくるんだからっ!

「ま、尚斗がおかしいのはもうどうでもいいとしてよ、後はなんかあんのか?」

「そうだな…細かい話は後でエル達に聞くとして…とりあえずこんなもんか?」

「いや、サラッと流さないでくれるっ?」

「んだよ、早く帰りてーんじゃねーの?」

「あ、うん、そうね…」

「よしっ!本当にご苦労だったオマエ等!後はこっちに任せてゆっくり休んでくれっ!近い内にまた呼ぶからそのつもりでなっ!」

「りょーかい」
「分かりました。それじゃ俺達はこれで…ガルムドゲルンに戻ります」

「おう!ゲシュトによろしく言っといてくれっ」

「はい、言っておきます。では」


 ふぅ…なんかいろいろ残ってるような気はするけど、とりあえず一段落ということで…これで皆の所へ帰れるっ!
 もう気が急いてどうしようもなくなってて、ここが謁見の間だっていうのも無視して転移した…冷静に考えると陛下達の前で全員くっついて何やってるんだって思われただろうけど、もうそんな事どうでもいいって感じで我が家へ戻りましたっ!




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