長田浜高校ミステリー同好会の事件日誌

浜 タカシ

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「それでは会議を始めましょうか」

10分後、俺たちは居間に集合し、部活の活動らしいことを始めた。
この部屋はしっかりとエアコンが効いていて、快適に活動できそうだ。

「まずはみんなが持ち寄った資料の見せあいをしようと思います」
「そうだね、誰から発表する?」
「はいはい!私からでいい?」
「おう…、じゃあ小郡から」
「じゃあプリント配るから取ってね」
「なぁ駿之介」
「なんだい博人」
「小郡のテンション戻ってないじゃないか」
「戻ってないねぇ。でも、今日の夜はきっと見ものだよ」
「というと?」
「それは今夜のお楽しみさ」
「周ったかな。じゃあ私は、備品倉庫にあった他の部活の1981年度部誌を研究してみたんだ」
「なるほど、確かに部誌をこの年に発行しているのはミステリー部だけじゃないだろうしね、いい着眼だよ真由美」
「えへへ。それで、どの部誌にも共通点があったの」
「共通点?」
「えぇ、この年のだけどの部活も冊子が薄いの」
「たまたまだろ」
「この年に部誌を発行しているのは、文芸部・美術部・書道部・放送部そしてミステリー部だったんだけど、文芸部に関しては私が言ったことが顕著に表れてたの。ほら、この写真を見て」

そう言って小郡が取り出したのは、備品倉庫の本棚を写した写真だった。

「ここから、ここまでが文芸部誌なんだけど、ここ、ここだけがやけに薄いの。調べてみると他の年はだいたい80~90ページくらいの冊子なのに、この年だけは30ページだけ。さらに奇妙なことに他の4つの部活も一律で30ページずつしかなかったの。これって変だと思わない?」
「確かに、この年だけ全ての部活が30ページの部誌でなおかつこの年だけ薄いというのは、なんだか偶然ではないような気がします」
「僕も同感だね。じゃあ真由美の調べたことと少し重なる所があるから次は僕でいいかな?」
「はい。それでは熊毛さんお願いします」
「僕は塑網の前書きのように他の部の部誌にも同じような、当時の状況を書いてあるものがあるかもしれないと思って、1981年の各部の部誌の前書きに注目したんだ。これがその一覧だよ」

駿之介はそう言いながら机に一枚の紙を置いた。
皆がそれを覗き込むようにして凝視する。
俺は鹿野の横に座っていたので、自然と顔が近くなる。なんなんだ、なんでこんなにいい匂いがするんだ。というか顔近すぎだろ。
俺が顔を赤らめていると、鹿野も顔の近さに気が付いたらしく、ほんのりと顔を赤らめ、距離を取ってくれた。

――――――――
・文芸部誌
『今年も完成させることができました、文芸部誌「Story」。今年のは自分で言うのもなんですがなかなかの力作ぞろいだと自負しています。
さて、今年もこの部誌を皆さんの手に届けることができたのは、ミステリー部の先輩のおかげです。ここで言うのは非常に失礼であり、先輩のしてくれたことに到底恩返しできるものではありませんが、部員一同感謝を述べたいと思います。
この「Story」が皆さんの心に残る一冊になることを願っています。』

・美術部
『まず最初に感謝を申し上げたいと思います。ミステリー部の先輩のおかげで今年も恙無くこの作品集を文化祭で販売できることを大変うれしく思います。本当にありがとうございました。部員一同感謝を申し上げます。
さて、今年の美術部作品集「ゴッホ」では、テーマを祭りと題して、部員が描き上げた作品たちをご紹介します。ぜひ、作品をみて祭りの気分を感じていただき気分を盛りあがていただければと思います』

※書道部・放送部の部誌には前書きがなかった
―――――――――ー

「これを見てもらって分かると思うけど、塑網の前書きに出てきた先輩が他の二つの部活の前書きにも出てきているんだ」
「これは同一人物と仮定していいのよね」
「えぇ、たぶん同一人物だと思います」
「なんか先輩先輩言うのもあれだな。ここはミステリーっぽくXとかどうだ」
「いいね」
「そうですね、あだ名みたいなものでしょうが、私は賛成です。じゃあ次は私でいいですか?」
「うん、琴ちゃんお願い」
「私は当時の記録や資料が少しでも残っていないかと思って、部室や職員室、もう一度備品倉庫にも行ってみました」
「なんだ鹿野、夏休みなのに学校行ったのか?」
「えぇ、この謎についてはなんだか他人事じゃない気もしますし、自分のできることは少しでもやっておこうと思いまして」
「流石、ミステリー同好会の部長だよ、琴ちゃんは偉い!」
「えぇっ、いや、そんなに褒めないでください真由美ちゃん」
「それで、何か見つかったのか」
「結論から言うと何も残っていなかったです」
「何も、名簿とか活動記録とかもかい?」
「えぇ、先生にも聞いたんですが、保存期間の過ぎているものが多くて。でも不思議だったのは、備品倉庫に行った時です」
「…?というと、どういうことだ鹿野」
「備品倉庫にはかろうじて資料が残っているものもありました。でもその資料たちも1979年~1981年の資料がなぜか欠落していたんです」
「その3年だけってこと?」
「はい、どの資料を見てもその3年が欠落しているものがほとんどでした」

3年分の資料の欠落。なぜ、永久保存用資料の一部、それも特定の3年がどれもないのか、俺は、この偶然と言われてしまえば言い返すことのできないような小さな事実に興味をそそられた。

―――――――――

この後も、休憩をはさみながら会議は続けられ、気が付けば時刻はお昼になろうとしていた。

「もうお昼ですね。そろそろお昼ご飯にしましょうか」
「やった!ねぇ鹿野さん、今日のお昼は何?」
「うふふ、それは後のお楽しみという事で。準備してくるので少し待っていてください」
「琴ちゃん、私も手伝うよ」
「ありがとうございます真由美ちゃん。戸田さんと熊毛さんは机の上を整理してもらってもいいですか?」
「もちろんだよ、ご飯のためならなんでもやるさ」
「この食いしん坊が」

机の上をテキパキと片付ける駿之介を眺めながら、俺は会議についてもう一度整理していた。

「考え事かい、博人」
「あっ、あぁ。ちょっとな」
「でも、不思議だよね。ミステリー部・文芸部・美術部、3つの部活が前書きにXの話題を出しているのに、どこもXがなぜ学校を辞めなければいけなかったかについて触れていないんだから」
「確かにな。偶然にしては、出来が良すぎる」
「僕は必然だと思うな」
「どういうことだ駿之介」
「多分Xの学校を去ることになったのって、みんなの持ってきた資料から推測して不本意、祝われて去っていったとかじゃないと思うんだ。きっと、なにか学校に対して事件を起こしてしまった。だから退学させられたんじゃないかと、僕は勝手にそう思ってるよ。あくまで僕の仮説として聞いてくれよな」
「あぁ、いい仮説だと思う。筋は通てるしな」

駿之介の仮説の筋は通っている。たぶん、Xは学校を退学させられたんだ、その原因は英雄的行動で、部誌を発行する部活から感謝の情を持たれている。その一方で、それは公にはできない事件、こんなところか。

「これは長期戦になりそうだな」
「今日の晩御飯、なにかな⁉」
「はぁ…。まだお昼も食べてないだろうがこの食いしん坊」
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